植物生理学II 第14回講義

光受容体、雨と光合成

第14回の講義では、前回に引き続いて、光受容体による環境センシングのメカニズムについて説明したのち、植物生理学の研究例として雨と光合成の関係を解析した研究の紹介をしました。今回の講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。


Q:講義でフォトトロピンと葉緑体集合運動、葉緑体逃避運動のお話があった。正常なシロイヌナズナと突然変異体(強光下でも逃避行動が起きない)に強光のストレスを与えると、光化学系2が変異体ではより強く阻害される。さらに光を加えると、変異体の葉は傷害を受け、壊死して白くなってしまうという。逃避行動が植物を強光から守るために重要なのがわかる。逆に光が弱い環境下では葉緑体集合運動が起こるのだが、これも植物が生きていくのには重要である。葉緑体集合運動にはフォトトロピン1と2が関与し、逃避運動にはフォトトロピン2のみが関与する。フォトトロピン2は、光が強い環境に生息している植物では割合が大きく、光が弱い環境に生息している植物では割合が小さいのではないかと考えられる。光が強くなりやすい環境に生きているとき、逃避する必要性がより高くなるからである。
参考URL http://www.orion.ac.jp/data/main_html/oshirase/houdou/pdf/221219.pdf#search='%E8%91%89%E7%B7%91%E4%BD%93%E9%9B%86%E5%90%88%E9%81%8B%E5%8B%95'

A:前半は調べた事実なので、論理は最後の部分にあることになりますが、これだけだと当たり前ですね。もう少し考察がほしいところです。


Q:今回の授業では光受容体の構造と機能について学んだ。そこで、光受容体の進化について考察する。授業でも扱ったように、高等植物の持つ光受容体としては、花芽形成や光発芽に関わるフィトクロムや、光屈性や葉緑体の集合運動に関わるフォトトロピンなどが挙げられる。ここで、原核生物であるシアノバクテリアは、シアノバクテリオクロムと呼ばれる光受容体を持つ。シアノバクテリオクロムはフィトクロムと構造がよく似ているが、シアノバクテリアの走光性をはじめとする様々な機能に関わると考えられている。このように下等な生物であるシアノバクテリアの光受容体は多様な機能を持つ一方で、高等植物は異なる機能を持つ複数種の光受容体を持ち、環境に適応している。これは高等植物がそれぞれの光受容体を適材適所に発現させ、より良い環境へと生育していくためであると考えられる。

A:これだけだと、シアノバクテリアと高等植物はそれぞれ別々だね、という指摘で終わってしまいます。あまり論理になっていません。ここから、なぜシアノバクテリアは一つの受容体を多様化させる一方で、高等植物は複数の受容体を使うのか、その理由を考察して初めてきちんとしたレポートになります。


Q:青色光の受容体であるクリプトクロムは体内時計に関与し、光を浴びて体内時計をリセットする、という話をきいて、青色光ならば太陽光でなくても人工光で充分なのではないかと考えた。また、青色光や赤色光などの単色光下で育成すると成長が促進される植物がある、ということを思い出した。一定の強度の青色光を当てていれば体内時計は常に同じ時間を示すと考えられる。それでも成長し続けるのであれば、人間でいう睡眠は植物には必要ないのではないかと考えられる。それでは夜間植物はなにをしているのか。例えばCAM植物は夜二酸化炭素を吸収する。それでは、CAM植物を青色光下で生育するとどのような挙動を示すのか。二酸化炭素の吸収はしなくなるのだろうか。二酸化炭素からつくるリンゴ酸のプール量にも限度があるため、使い切ってしまった後はどうするのだろうか。CAM植物がどのように夜を認識するのかはわからないが、青色光は赤色光や赤外光と比べ熱量が少ない。そのため、もしCAM植物が赤色光や赤外光がなければ夜と認識し、二酸化炭素を吸収するならば、青色光下では、夜でなくても二酸化炭素を気孔から吸収するようになるだろうと考える。

A:まず「青色光は赤色光や赤外光と比べ熱量が少ない」などということはない、という話は植物生理学Iの講義でしたと思います。また、体内時計が直接生物の活動を制御しているというわけではありませんから、ずっと明るい部屋に居続けた人間でも眠ることはできます。睡眠のリズムは狂う可能性はありますが。でもレポートからは考えようという姿勢は感じられます。


Q:葉の濡れの光合成活性に対する影響について、濡れを定量化し、種によって葉の濡れによる影響が異なることが説明された。実験で使われたインゲンなどの濡れの影響を受けやすい種では、影響を受けにくい種に比べ、雨処理による光合成活性の不可逆的な変化に達するまでの時間は短いと考えられる。日が当たっていてかつ6時間以上の雨が数日降り続ければ、結局光合成活性はどんどん失われていくのではないだろうか。日が当たらなくなった際に、失われたルビスコ、b/fの回復が成されると考えられる。ルビスコは量自体が減少していることから、光のストレスと濡れによって形を変えてしまい、一旦ルビスコとしての機能を失うが光ストレスがなくなった際に元のルビスコの形状に戻ることができるのではないだろうか。サトイモなどの濡れの影響を受けにくい種ではこの回復能が高く、日中の失われたルビスコ量をその日の夜のうちに回復させることができると推測できる。これらの回復能は雨の多い土地の植物が選択的に得られたのではないだろうか。

A:ルビスコが回復するという点が、このレポートの土台となっていますから、なぜそのように判断したのかを論理的に説明しないと、レポート全体が砂上の楼閣になってしまいます。Western Blotで検出できなかったわけですから、一般的にはタンパク質自体がなくなっていると解釈するのが自然なだけになおさらです。


Q:今回の授業は、これから研究室配属になってどんな研究をするのだろうと考えさせられるものでした。面白かったです。雨と光合成の関係の話でしたが、この話を聞いて、雪での研究していくのも面白そうだと思いました。雪が降るのは冬なので常緑樹でないとできないですが。雨では葉のぬれやすさが光合成阻害に影響するのではないかという話でした。雪ではこれも要因の一つになりそうですが、それとは別に雪の溶けやすさが影響するのではないかと考えられます。(植物に葉を暖めておく機能があるのかわかららなかったので、その場合は考えないことにします。)葉が暖かい方が雪は溶けやすいと考えられます。よって、葉が濃い緑のもののほうが、太陽の光で暖まりやすいので雪は溶けやすいので、雪は溶けやすく、雪がそのまま残っているものよりも光合成阻害が少ないと考えられました。また、針葉樹のようなものは葉が細いので、雪がそもそも積もりにくいので光合成阻害が少ないと考えられました。

A:植物の葉が発熱する例はあまり知られていない気がします。また、外気温は零下に下がりうるのに対して雪の中はだいたい零度に保たれますから、寒さが厳しいときには、むしろ雪の中の方がすごしやすいという点も考慮する必要があるかもしれません。


Q:今回は、雨が与える植物への影響について学びました。その中で、葉の濡れやすさの定義についての議論がありましたが、私の考える葉の濡れやすさは異なる方法で測れるのではないかと思います。私が考える方法とは、葉の表面に一定量の水滴を乗せ、光を当てながら葉の裏から観察し、水滴が葉と接している面積を測れば、円の面積を比較することによって濡れやすさが定量できるのではないかと思います。ただし、葉が分厚い場合は、アルコールを用いて脱色すると、葉は透けて見えるようになります。この場合、アルコール脱色法が葉の表面に与える影響がわからないので、脱色前と後で表面が変化するのか準備実験で確認すべきである。

A:講義で紹介した測定方法を鵜呑みにせずに対案を考えていてよいと思います。ただ、対案を出したからには、元の案とのメリット・デメリットの比較がほしいですね。


Q:植物の青色光受容体のフォトトロピン1、2が気孔の開閉や葉緑体集合離散などに関係していて。クリプトクロムなどは日周リズムなどの感知に関与している。つまり、青色光が植物の一日の動きに関連していることがわかる。これはおそらく朝の太陽の光が青い光から始まるからと思われる。日が沈む時に空が赤く見えるのの逆で朝は波長の短い青色光が先に来るのである。光合成を行える時間になった事を知るために青色受容体が主要な動きに関連しているのであろう。逆に日が落ちる時間では赤色光そして遠赤色光のみが当たる事になる。これらはレタスなどの発芽にも関連している。また、今回フォトトロピンのどちらかが働くならば片方は変異しても働くという話だったが、もしそれが正しければ生き残るのは必ずしもどちらも正常なものとは言えないはずなのでなにかしら不具合があるのではないだろうか。アベナテストなどを行い働きの度合いを測定してみると分かると思われる。

A:夕日が赤い理由は前に講義で説明したと思いますが。それを考えれば、朝日が青いと考える理由がないことが分かるはずです。


Q:今回の講義で雨と光合成に関する研究の紹介があった。その中で葉が濡れると気孔が閉じるという話があったが、今回はこれについて考察する。何故水にぬれると気孔が閉じるのか、これに関しては大きく2つの理由が考えられる。一つはイオンの溶出のような生理的な現象としてこの事象がおこるということであり、もうひとつはそうすることで何らかの利点があるということである。今回はこの事象の原因は後者であると仮定する。では葉が濡れた時に気孔を閉じることの利点は何だろう。そもそも気孔は孔辺細胞が水をためて膨張することで開くようになっている。そのため葉が濡れると浸透圧の関係で水を吸い開くと考えられる。しかし実際は葉が濡れるとすぐに気孔は閉じる。これは雨の日に気孔を開いたままにしておくと不利な点があるからではないだろうか。仮説の一つとして雨の日に気孔を開いたままにしておくと気孔の隙間に水が溜まるということが想定できる。気孔の隙間は小さいため、隙間に水がたまると表面に付着するよりも乾きにくいのではないのだろうか。特に雨が通り雨のような一時的なものであった場合、晴れ次第すぐに光合成をするためにも気孔の隙間に水が入らないようにしていると同時に気孔の隙間から内部に水が入り込むのも防いでいると考えられる。

A:考えようという姿勢は感じられます。ただ、ややありきたりのような気もします。何か独自の視点がもう少しほしいですね。


Q:講義で雨と植物の光合成の関係の研究について紹介された。葉の濡れと光合成の関係で、6時間以上雨処理をした葉は乾燥させてもルビスコの活性が減少し、これは可溶性タンパクであるルビスコの量が減少したことによるもので、自然界でインゲンの葉が長時間陽に当たりつつ濡れる現象が起こりえないことから、対応しきれない条件で放置された結果として扱われたが、水生植物については常時濡れているという条件である。系統学的には、水生植物から陸生植物へ進化するのだから、ルビスコの損失は陸上へ進出する際に失った代償である。水生植物の葉は物理的強度があり、表面はコーティングされたような状態であるが、陸へ進出する際に空気の通路を確保するためにこの強度を捨てて葉の表面積の確保を選んだのだろう。CO2やO2を外界から得るのに液相から得るよりも気相から得るほうが格段に効率がいいことから陸生植物、特にインゲンなどの葉が濡れに弱くなったのだろう。

A:葉の表面のクチクラ層については講義で紹介したように、むしろ陸上に進出したときに獲得されたものです。また、「水生植物」は、藻類ではありませんから、水生植物が陸上植物に進化するという表現は不正確です。


Q:今回の授業では光受容体について扱い、その中でクリプトクロムについて学びました。クリプトクロム1が日周期リズム・胚軸伸長阻害の作用を持ち、クリプトクロム2は・光周性を持っています。クリプトクロムは人間を含む動物も持っています。しかし動物には夜行性動物と昼行性動物がいるため、それらの間では日周期が異なるのではないかと疑問を抱きました。そこでクリプトクロムについて調べると植物のもつクリプトクロムと動物のクリプトクロムは系統が異なる事が分かりました。植物の場合天候によっては一部左右されますが、太陽が昇り、沈むまでの間で光合成をする事ができます。したがって基本的に日中でいかに光を受容できるという競争の中、茎や枝の伸長や葉面積の拡大が起こります。一方で動物は光があったとしても餌を見つけなければ生きていく事ができません。そこで動物によっては夜に行動する事に特化する生存戦略を取り、視覚や聴覚、嗅覚を発達させたと考えられます。その過程でクリプトクロムの作用も変化していったのではないかと考えました。

A:最初の問題設定では、夜行性動物と昼光性動物の比較のように書かれていますが、その後は動物と植物の比較になってしまっていますね。その辺り、きちんと論理が通るようにすると、よりよいレポートになるでしょう。


Q:今回の授業では植物生理学の実験の一例を見せてもらった。葉が濡れており、光が当たっている場合、ルビスコタンパクは分解されてしまうという機構を見つける実験についてであった。本来、雨が降っているときの空は雲で覆われており光が入ってこないことから、自然では絶対に起こりえない実験状況であったためこのような植物に不利な反応が起きてしまうと言っていた。しかし、昔から狐の嫁入りや天気雨といった現象は極たまに起きている。よって、葉が濡れており、かつ光が当たっている状況は自然界で絶対に起こりえない状況ではないと考えられる。では、なぜ植物はこの状況に対応した進化を遂げなかったのだろうか。理由として、生物は希にしか起きない現象に対しては、適応しようとするコストのほうが高くなってしまうため、一々適応しようとしないと考えられる。

A:きちんと考えていてよいと思います。ただ、講義でデータを示したように、光合成は1時間の雨処理では阻害されず、6時間の雨処理で初めて阻害されていました。いくらなんでも、狐の嫁入りが数時間続くことはないのでは?


Q:なぜ青い光を吸収すると葉の横幅が広がるのだろうか?フォトトロピンの生理反応(機能)としては、植物の青色光受容体の役割を果たしており、光屈性、葉緑体光定位運動、気孔の開口、葉の横伸展が挙げられる。青色の光は、クロロフィルも吸収することが分かっており、光合成に使われる波長の光だということが分かる。葉の横幅を広げるというのは、どういうことなのだろうか?葉の平面の面積を広げるということと解釈した。葉の平面の面積(表面積と言っても良い)をひろげるということは、光を吸収できる面を増やすということだと考えられる。光を吸収できる面を増やすと、より効率よく光合成をする為の光エネルギーを吸収することができる。葉の横幅の伸展以外のフォトトロピンの生理反応を見ると、光合成を効率よく行うための反応であることが考えられる。もしこのフォトトロピンを針葉樹に多く持たせたとしたら、葉の形は針のように尖ったものから広葉樹のような葉のかたちになるのだろうか?そこまでいかなくとも、葉幅が少し広くなって笹のようなかたちになるのだろうかと考えたが、葉の形は遺伝的に組み込まれたものであるので変わらないだろうし、細胞の大きさにも限度があるから青色の波長光を受けたからといって葉の幅が明らかに違うものになるというのは自然界の中では起きないだろうと考えられる。このことを断言するには、フォトトロピンの合成経路を調べ、フォトトロピンが、どの程度の青色の光を受けるとどのくらい葉の横伸展をするのかということを調べる必要があると思われる。

A:よく考えていてよいと思います。このようなテーマの場合、環境によって変動可能な部分と、遺伝的に決定されている部分を分けて考える方がよいかもしれませんね。


Q:今回の授業で、フォトトロピンが光屈性、気孔開閉に関係し、その気孔の開閉にも青色光受容体が働いているということが分かった。この植物光受容体・フォトトロピンを活用して、農場技術の向上に役立つことができないだろうか。フォトトロピンは光屈性、気孔開閉などの植物の運動反応をコントロールする役割を持っている。この生理作用は光合成の活性化に非常に役立つ。光屈性、気孔開閉などをコントロールする役割である光受容体の光情報受理、信号伝達による運動反応管理機構を解明することで、それを農場技術に還元し生産性を向上することも可能なのではないか、と考えた。

A:これは、よくいっても新聞記事レベルです。生物学のレポートとしては、抽象的な議論ではなく、具体的に何をどのように変えたら、どのような理由で生産性が上がるはずだ、という具体的な議論をするようにしてください。


Q:クロロフィルとフィトクロムのスペクトルが重なることを習った。これに関して考察した。スペクトルが重なる利点として、フィトクロムが得た光の量という情報をクロロフィルと共有できるという点だ。具体的にはフィトクロムが光の量が多いと検知する。言い換えるとクロロフィルに適した波長の光量が多いことを意味している。もし、クロロフィルとフィトクロムのスペクトルが異なると、フィトクロムで光の量が多いと検知しても、クロロフィルでの最適な波長の光が少ない可能性があり、光合成活性は落ちてしまう。これは発芽のときにリスクがあるだろう。対して、スペクトルが重なる欠点として、同じ波長の光を利用することは、それだけ片方の物質が利用できる光量が減るということがある。光合成で用いるはずの光がフィトクロムに奪われ、光合成活性が低下するという可能性がある。しかし、植物では、この欠点としてあげた問題より、利点のほうが重要とし、リスクを回避していると考えられる。

A:これは、面白い点に着目していると思います。色素の量を考えると、「光合成で用いるはずの光がフィトクロムに奪われ」という点は心配する必要がないと思いますが、クロロフィルの存在がフィトクロムの光受容に影響を与えてしまう可能性についての考慮は必要でしょうね。


Q:1年間どうもありがとうございました. 今回は光受容体に関し, たいへん興味深い講義をお聞きすることができました. ここで, 愚問かと存じ上げますが, 今回の講義で自分が気になった点に関して記述させていただきます. それは,光の波長が, 植物の光合成の調節とどの程度関係しているかについてです. 受容体の結晶構造が変化すれば吸収スペクトルの形状も変化すると考えられます. また, 光は波長に応じてエネルギーが異なるので, 波長によって植物体にもたらす影響も異なると考えられます. 従って受容体のタンパク構造が変われば, 受容する光の波長ごとに植物体にかかるストレスの度合いも異なり, 光合成活性や調節機能などに影響が出るはずです. ただし, 活性が下がっただけであればタンパクが壊れたせいなのか受容できる光の波長が変わったせいなのかが判断できないので, コントロールとして使用する個体に関しても特定の波長だけ吸収できないよう照射光を制限して比較する必要があります. これだけで活性が下がったりその受容体が担当する機能に支障を来たすのであれば, 特定の波長の光がその機能に直接関わっていますが, 変化がないようであれば, 該当する機能自体にその波長の光が不要であると考えられます.

A:丁重なご挨拶痛み入ります。とはいえ、その後のレポートの内容に関しては、あまり説明が丁寧とはいいかねるようです。受容体タンパク質の構造変化とストレスの関係がわかりません。後半は受容体の破壊株の話でしょうか。その辺りもわかりませんでした。


Q:講義で青色光受容体が葉緑体の集合運動、日周期リズムに関わっている話が触れられていた。なぜ青色なのだろうか。下等・高等問わず光合成生物にとって基本的であるこれらの環境応答に対して、陸上植物が青色光を利用しているのは、もしかしたら陸上植物が単細胞の藻類であった頃からの名残かもしれない。このように考えたのは、水中の光合成生物が獲得できる太陽光の波長が青色光の波長ということからである。原始的な単細胞藻類に青色光受容体があり、その遺伝子が陸上植物のものと分子進化学的に類似していて、さらに、青色光を集合運動(日周期リズムの決定)に利用している、もしくは他の波長の光による集合運動が全く行われていないとすれば、上のような仮説を裏付けになると考える。

A:やや短いですが、一応問題設定と論理の展開があるので、レポートとして合格点でしょう。ただ、これだけだと、講義で紹介したシアノバクテリアにフィトクローム様の受容体があるという話との整合性が難しいように感じました。


Q:日が当たっている状態で長時間葉が濡れていると,乾いた後も光合成活性が元に戻らなくなるという説明があった。光合成活性が回復しない主要因はルビスコが減ったことなのか,あるいはシトクロムb6f複合体が機能しなくなったことなのかを考える。低二酸化炭素処理ではルビスコの量は変わらない一方,雨処理は,低二酸化炭素濃度処理した状態に加えてイオンの漏えいが起こっているような状態で,これがルビスコ量が減る要因ということであった。葉が濡れると気孔を閉じて低二酸化炭素状態に移行し,葉が濡れたことでイオンが漏えいするのは,昼夜を問わないはずである。しかし,夜間雨が降り続いたせいで植物が枯れることはあまりない。このことから,ルビスコの量は減ってもすぐ回復することができるのではないかと推測される。以上の推測が正しければ,光が当たっている状態で長時間葉が濡れていると乾いても光合成活性が回復しない原因は,低二酸化炭素条件で電子伝達系を動かしたことでシトクロムb6f複合体が機能しなくなったことにあると考えられる。シトクロムb6f複合体自体が壊れても,シャペロンによって直されたり,量が減ったとしても後に回復することができるはずなので,シトクロムb6f複合体そのものの障害が原因なのではなく,シトクロムb6f複合体近傍のチラコイド膜が破損することが原因なのではないかと考えられる。つまり,低二酸化炭素状態の電子伝達系を動かしたことで,何らかの理由でチラコイド膜が破損し,その回復が難しいので光合成活性が元に戻らなくなったということである。

A:よく考えていると思います。おそらく、ここで展開される論理の前提は、光が関係するのは電子伝達系であって、炭素同化系ではないということだと思います。ところが、実際には電子伝達によって生じた活性酸素が炭素同化系のルビスコの分解を引き起こすという実験結果があります。世の中、なかなか一筋縄ではいきません。