植物生理学II 第10回講義
オーキシンの働き
第10回の講義では植物ホルモンについて、オーキシンを中心に解説しました。また、オーキシンシグナルに重要な役割を果たすプロテアソームによるタンパク質分解系についても触れました。今回の講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。
Q:オーキシンは茎方向には重力に依存しない移動をし、茎に垂直方向には重力に依存する移動をするという。これは何故だろうか。オーキシン中のアミロプラストが重力方向に沈降することによって、オーキシンがその方向に移動すると考えられている。移動経路が同じであれば、茎が地面に対しどのような方向であったとしても、アミロプラストは変わらず同じ重力を受け、オーキシンは同じように移動するはずである。よってオーキシンは茎に沿う方向と、それに垂直な方向では移動経路(もしくは移動する原理)が異なると考えられる。
http://www.keirinkan.com/kori/kori_biology/kori_biology_1_kaitei/contents/bi-1/4-bu/4-2-1.htm
A:どうも、極性移動と重力による移動の2つがあるように思っているようですが、実際には移動は極性移動によっていて、その極性が重力の影響を受けるのです。参考WEBページを見て勉強することは良いのですが、まずは講義の内容を理解するようにしてください。
Q:今回の授業ではオーキシンのはたらきと、その極性移動について扱った。このうち、細胞の外向きにのみ存在するオーキシン排出輸送体(PIN)について考察する。頂芽や根においてPINの作用で、末端から中心の方向へ輸送されたオーキシンは果たしてどこへ行くのかという疑問が挙げられていたが、恐らく、植物の中心にいくにつれてPINの発現量が減少しており、オーキシンはあるところで留まるようになっていると考えられる。さらに、ここでオーキシンの濃度を感知する受容体の存在により、オーキシン代謝のシステムが、いわば、フィードバック調整されることにより細胞の伸長とオーキシン濃度も調整されると考えられる。
A:オーキシンの中心制御説は面白いと思います。ただ、植物の中心ってどこでしょうね。動物と違って植物には中枢と呼べるような部位がありません。そこが動物と植物の大きな違いの一つでしょう。なお、「細胞の外向きにのみ存在する」という部分の意味がわかりませんでした。「細胞の外向きにのみオーキシンを排出する」ということでしょうか。
Q:頂芽を切除すると本来頂芽である部位以外の場所でも頂芽が形成されるが、オーキシンを本来頂芽である部位に塗布すると頂芽の形成が抑制される。ここから、オーキシンは栄養生殖に関係するのではないかと考えた。オーキシンは成長ホルモンであり、成長促進や阻害などに関与する。植物種によって栄養生殖のメカニズムは異なるが、今回は多肉植物で考えてみる。調べてみると、多くの多肉植物は葉1枚からでも完全な植物体を形成する。葉を土に埋め、まずはじめに根が生え、小さな葉や茎が生える。(同種でも、環境によって逆の生長順をするものもいる。)オーキシンの生理作用として、茎の伸長生長促進、不定根形成の促進、細胞分裂の促進などがあり、これらは先程記述した栄養生殖の初期に必要な生理作用と一致する。つまり、オーキシンの作用によって栄養生殖が進むのではないだろうか。ゼニゴケにおける栄養生殖で、オーキシン低応答株では多くに異常が見られたことから、オーキシンは栄養生殖に関わっていると考えられる。(出典:http://kaken.nii.ac.jp/d/p/23119510.en.html 環境変動下における生存戦略としての栄養生殖機構の解析 京都大学 石崎公庸)もちろん他のホルモンにも同じ作用を示すものがあり、オーキシンのみで栄養生殖がおこるかどうかはわからないため、栄養生殖にどのホルモンが関わるかは実験により確かめてみたい。
A:オーキシンが栄養生殖に関与しているという主張なのだと思いますが、結果として、出典として挙げているページにおける主張と同じですから、独自性が認められません。なるべく自分なりの論理を構築するようにしてください。
Q:オーキシンが光受けた反対側に移動し、オーキシン排出輸送体の極性によって光屈性が説明される。この説明の後半は理解したが、前半について疑問が残ったため考察する。光を受けた側と反対にオーキシンが移動するとき、オーキシンは極性とは無関係に横に移動していることがわかる。これはつまり、オーキシン排出輸送体がオーキシンの横方向の移動も可能にしているということである。しかし上部の不均一性を下部にも伝えるにはこの極性は必要不可欠なものである。この矛盾はどのようにして説明できるか。細胞が受ける光の強さでオーキシン排出輸送体の働きが制限されると考えた。ある一定の光を受けると細胞の底の部分に位置するオーキシン排出輸送体は機能しなくなり、唯一側面に接する排出輸送体のみが働くことでオーキシンを横に輸送しているのではないだろうか。光の反対側に達するまでに光の強度は排出輸送体が普通に機能する程度に弱まることで最終的にはオーキシンを下部に伝えることができる。植物体の中間を一度切り取り、90度回転させて設置し直し、光を当てたときに180℃反転したときには伝わらなかったオーキシンが輸送されれば根拠の一つになる。
A:茎に入射した光量の勾配によって排出輸送体の機能が制御されているというアイデアは面白いですね。ただ、90度回転させるのは、維管束などが寝てしまうので、構造的な制約があって比較するのは難しいと思います。
Q:今回平衡石の話に興味を持った。植物は根、ヒトは耳に持っているという話であった。この場所の違いについて考察したい。まずなぜヒトは耳なのか。これは頭が一番守らなければならないところだからではないか。脳を守るために、その近い場所に平衡を感じる機能を作ったのだと考えることができる。では植物の場合はどうか。やはり根が最も大事な部分であるからなのだろうか。多年草の場合、根で冬を越すものもあるため、十分考えられるだろう。よって、ヒトと植物の平衡石の場所の違いは守りたい部分の違うによって生まれたと考えられた。
A:面白い点に着目したと思います。「大事な部分」という概念自体が、実は「動物的」な思考であるように思います。その辺りから論理を展開するともっと厚みのあるレポートになるでしょう。。
Q:高校生物では、オーキシンによってどのようなメカニズムで光屈性や重力屈性が起こるのかは聞いたことがあったが、オーキシン排出輸送体(PIN)については今回初めて知った。特に、PINによって根に送られたオーキシンは再びPINによって上方に送られ、その後の行方がわからないとのことだった。今のところ、上方に送られた後、オーキシンは酸化によって分解されたりアミノ酸や糖に結合して不活性化したりすることや、オーキシンの一種であるインドール酪酸は放出されていることがわかってきている。しかし、同じオーキシンの種類でも分解・不活性の場合と、放出の場合とで異なるのはなぜだろうか。私は、放出されるオーキシンの種類は、放出されることにも植物体内での役割とは違う別の役割を担っていると考える。例えば、花粉媒介者である虫を呼び寄せるためのホルモンのような物質として働いたり、逆に害虫などが嫌がる成分であったりと、植物とは間接的に関わる物質になり得ると思った。
A:これも着目点は悪くありませんが、設定した問題点に関して、自分の意見を述べているだけで、あまり根拠が示されていないので、論理展開としてはやや不満が残ります。
Q:オーキシンの極性について学んだ。細胞の片側にしかない基部から放出されて伝達されていくために逆方向へと進むことができない。神経の伝達と同じようなものである。授業の最後での質問で根っこ側はどうやってオーキシンが動いているのかというものがあった。オーキシンが一方向に動くのならば先端まで向かい噴水のように戻ってくる図の矢印がどうしたものかということであった。この質疑から私は重力によってオーキシンがどのように地面側に移動するのか。ここで気になった事は植物が重力を認識しているのかという事である。無重力の下は根っこは伸び放題なのか、地面に触れていることによる接触刺激によるのであろうか?接触刺激ならば実際に試してみるのが簡単である。重力を感じている部分があるのだとしたら、光の強さによって屈曲具合が変化するアベナテストのように、重力のかかり具合を変えてやることで屈曲具合が異なるのではないだろうか。またそれにより詳しい仕組みが解明できずとも、ある地点での重力を測定する事が容易いのではないだろうか。
A:重力の認識については、講義で平衡石の話をしたわけですから、それを前提にして議論を進めてほしいと思います。
Q:今回の講義ではオーキシンについて学んだ。その中でオーキシンには複数の合成経路が存在するとあったが、今回はこの理由について考察したい。考えられる理由の一つに、植物体にとってオーキシンは非常に重要なホルモンであるため仮に1つの経路が使えなくなっても他の経路が存在することで発現を失わないようにしているというものがある。生存に重要な遺伝子や物質が複数の発現系を持つことで変異に強くなる例はほかの生物でもみられることであり、この仮説を完全に否定する要素は特にないように思える。しかし生存に重要なホルモンの全てにおいてこのように複数の生産経路を持つわけではないため、オーキシンに特異的な他の理由もあると考えられる。合成経路が複数あると聞いて思い浮かぶのはそれぞれが出発地点の違う独立した合成経路であるということである。しかしこの仮説は講義中のスライドにもあったが、合成の出発点は1つであることが分かっているため否定できる。他の仮説としてオーキシンは主に先端で合成され植物体全体に運ばれるとのことだったが、実は生産される場所が複数あり生産場所によって経路が変わるという仮説も立てられる。これと同様に生産場所ではなく生産時期により違う経路を使っているという仮説も立てられる。これらの仮説を否定する要素は今のところ私の手元にはなく、各時期および各器官の生産状況と経路を実験において調べるほかない。しかし、このどちらかの仮説が正しい場合は他のホルモンについても調べるべきだと考える。もし他のホルモンでも生産場所や生産場所によって経路が変化するホルモンがあるのであればこれは一部のホルモン特有のの特徴となるため、それらのホルモンを比較することでなぜこのように複数の経路を持つようになったのかが分かるかもしれない。
A:これは問題点をきちんと設定して論理を進めているという点で評価できます。仮説を立てる部分も論理的なので、結論が出ていなくても十分だと思います。他のホルモンの合成経路についても今後解説する予定です。あと、講義の中では、茎頂での合成のほかに、成熟した葉での合成についても触れたと思います。
Q:今回の講義ではオーキシンについて学んだ。オーキシンは茎の伸長を促進させる働きだけでなく、環境条件に応じて様々な働きに関与していることを知り、興味深いと感じた。今回、疑問に思った点はオーキシンは茎の伸長を促進させる働きと根の伸長を抑制させる働きの両方に関与しているという点である。相反する2つの働きをなぜ、同じホルモンが関与しているか疑問に感じた。確かに一見、1つのホルモンだけでなく、複数のホルモンが関与したほうが働きやすいと思えるが、恐らくホルモンを1つにすることで、環境条件に応じて根と茎の両方を管轄したほうが効率が良いためではないかと考えた。植物が細胞分裂などをして、成長を行う際、様々な器官が同時に成長してしまったら、その分使用するエネルギーも同時期に多くなってしまうため、非効率的になると考えられる。つまり、オーキシンのように濃度に応じて茎では促進、根では抑制とすることによって、より条件に合った成長を行うことができるのではないかと私は考える。
A:よいポイントに着目していると思います。同一の物質が組織特異的に働く例は、動物などでもあると思いますから、それらと絡めて議論すると、論理の説得力が増すと思います。
Q:今回の授業で、植物は動物の成長とは異なる「非対称的な成長」をする事を学んだ。説明の際に例として挙がったチューリップは光ではなく温度変化に応じて成長することで花弁の開閉が起きる。ここで、茎が成長し多くの光を吸収できるようになる事と比較して、花弁が成長することは光合成を効率的にする事に繋がるわけではない。花弁の成長に要するエネルギーを貯蔵器官等に貯蓄したほうが効率的ではないのか、なぜ温度変化によって花弁の成長部位と速度に違いが生まれるようになったのかについて疑問を抱いた。花弁の開閉は光合成の効率化ではなく、受精に必要な花粉や花粉を運ぶ昆虫を誘引する蜜を守る働きを持っているのではないかと考えた。特に気温が低い時間というのは日が出ていない時間であり、運び屋である昆虫の活動が少ない、または日がでていない時間に活動する運び屋以外の昆虫に付着してしまう可能性もある。さらに気温が低い日は雨や曇りの日が多く、雨が降っている場合に花弁が閉じていないと花粉や蜜が雨水に流されてしまう。チューリップは植物体あたりの花の数が多くはないので、このように花弁の成長によって大切な花粉や蜜を守る必要があるのではないかと考えた。
A:花弁の開閉の必要性という問題を設定し、自分なりの論理でその必要性を論証していて評価できます。特に最後のチューリップの特殊性の部分は非常に重要です。開閉が一般的に必要であるという論理にしてしまうと、なぜ開閉しない植物があるのかが説明できなくなってしまいますから。
Q:オーキシンは茎の成長を促進させるのに、根の成長は阻害すると習った。オーキシンが分泌され地上部が成長するのに対して、地下部の成長が抑制された場合、植物体は安定しなくなってしまうのではないかと疑問に思った。植物体は地上部が大きくなればなるほど、地下部もしっかり支えるためにより広く根を張らなければならないと考えられる。なぜ植物は地上部のみが育つ物質を分泌しているのだろうか。考えられることは、オーキシンが促す地上部の成長は、根がオーキシンに阻害されていないときの成長と同じくらいの効果しかない、または、今回はオーキシンについてしか授業の中では習わなかったが、オーキシンが分泌された場合地下部には連動して根の成長を促進させる物質を分泌しているということである。オーキシンが分泌されているときの根の成長量の測定、またはオーキシンが分泌されているときに連動して分泌されている物質がないか調べることにより、この疑問に対する何らかの解決点が見つかると考えられる。さらに、つる植物などの植物体を安定させる必要のない植物と安定させる必要のある植物で、同じ高さ分の茎が育つ間のオーキシン分泌量を測定し、比べることで、もし安定させる必要のない植物と安定させる必要のある植物が同量のオーキシンを分泌していた場合、安定させる必要のある植物は地下部で根の成長を促進させる物質を分泌していると考えられる。
A:これも、問題設定から自分なりの仮説をしっかり立て、それに加えてつる植物を対比させることによって仮説の検証の方法まで示唆しており、高く評価できます。
Q:今回の講義で、植物ホルモンのオーキシンについて学んだ。その中でオーキシンは1つの植物で合成経路が様々であるから、オーキシンを合成できない変異体を作ることができないということが言われていた。なぜオーキシンは複数の合成経路を持つのだろうか?1つの物質から様々な酵素が働いて複数の物質を合成するというのは、他にもある。テストステロンやプログネノロンなどの性ホルモンが思い当たる。それらは合成経路を遡るとコレステロールに行き着く。植物のオーキシンも合成経路をさかのぼるとトリプトファンであった。ひとつの物質から様々な酵素を使って複数の物質を作るということは植物も動物も似ていた。どのようなメリットがあるのか考えたところ、まず材料集めに困らないということだろうか?1種類にしぼればその材料が手に入りやすく、量が多いなら、その材料から手を加えれば様々なものが生み出せる。たとえひとつのものからひとつのものしか最初は作れなかったとしても、進化の過程で付け足していくことができるのではないかと考える。ひとつのものからひとつしか生み出せなかったら、材料の種類が豊富でなければならないというデメリットが考えられる。このためトリプトファンを材料に酵素の力で複数の物質を合成しているのだと考えられる。
A:よく考えていると思います。ただ、合成経路と最終産物がさまざまであるということと(テストステロンなどの場合)、合成経路は様々で最終産物が1つである場合(オーキシンの場合)とでは、だいぶ意味合いが違いますよね。そこを分けて考えた方が論理がすっきりすると思います。
Q:オーキシンは茎で作られ、維管束で根へ運ばれて根の形成を助ける働きがあるということがわかった。オーキシンは一番端の根冠に行った後、茎と根間を流れて端にいくと表層の近くを通って端から離れる方向にいき減少する。下に近い側の表皮に近い細胞を通って上に行くオーキシンが多い。これは重力の影響だろう。オーキシンは細胞の伸長を根で抑制するので、重力の方向に曲がる。根が重力の方向に向いてなければ、おそらく根冠細胞はオーキシンを下に近い側に多く分配されると考えられる。
A:考えようという努力は感じられます。ただ、できたら問題設定を明確にして、それに対する論証を行なって結論を得るという形になっていないので、全体としての論旨がはっきりしません。単に考えたことを書くのではなく、書いた後にその論理構造を整えるとよいでしょう。
Q:今回の授業では、オーキシンが重力屈性を制御するときに、オーキシンが根の中心を通って根冠までたどり着き、それが根の縁に移動し、茎のほうにさきほどと逆の方向に進むと習った。このとき、逆の方向に進んだオーキシンがどうなるのかよくわかっていないようだ。頂芽でオーキシンが作られるため、飽和しないために逆の方向に進んだオーキシンは分解されるはずである。これは、オーキシンはあらゆる植物器官で作用するため、誤った作用を防ぐためでもある。この仮説を明らかにするために、ひとつ実験系を考えた。ある植物の根(根冠を含む)をあらゆる長さで切り出し、切り口にオーキシンを含んだ寒天をのせる。オーキシンが十分根に吸収されたら、寒天を取り除き、新しいオーキシンを含まない寒天をのせる。この寒天に根からの逆の方向に進む物質を吸収させ、この物質を解析する。さらに根の長さを変え、根の長さによる寒天に含まれる物質の変化を調べる。この実験系により、オーキシンが分解されるのか、されないのか、また分解されるとしたらいつ分解されるのかを調べることができる。
A:実験の描写がややあいまいなので、イメージがつかめませんでした。切り口に寒天を載せるとありますが、寒天の上には切った根の続きをさらに載せるのでしょうか。「逆の方向に進む物質」という部分からそうかなと思ったのですが、よくわかりませんでした。
Q:オーキシンの除草剤作用について考察する. 講義では, これが茎の成長を促進しつつ根と側芽の成長を抑制する事に言及していた. ところが, (1)によると, オーキシンの作用には, 各器官に応じた最適濃度が存在し, これを大幅に上回る濃度が投与されてしまうと, たとえ茎においても, 成長抑制を引き起こすとされている. 同文献に, オーキシンの最適濃度は, 茎において, 側芽や根よりも極めて高濃度で作用しており, 茎の最適濃度において根と側芽の成長が抑制されることが記されている. この背景として, 各器官の成長を制御する多様な下流シグナル物質がオーキシンの濃度依存的に調節されていることに起因していると考えられる. 従って, オーキシンの散布による除草剤作用の中で, 単なる地上部の急激な伸長だけでなく, 高濃度散布による茎の成長抑制や, 根の伸長抑制による安定性の低下や, N, P, S, Kなどの生元素の供給不良など, 多様な要因が存在しうると考えられる. その要因や経緯を検討するに当たり, 異なるオーキシン濃度下で, フリーになったARFや, その下流で転写制御を受ける物質の挙動を追跡(標識などをつけて), 比較することや, 実際の植物体の成長状況及び器官の分布密度や, 器官ごとの特定の生元素含量の比較(放射線標識したNなどを使って)などの手段が考えられる.
A:茎・根・芽に対するオーキシンの濃度依存性は、有名な古典的な実験に基づいているのですが、実際には芽に対する濃度依存性については再現されていないそうです。ただ、茎と根については、濃度依存性が大きく異なることはその後も確認されています。最後の検証実験のところは、単に実験の種類を挙げるだけではなく、むしろ種類は絞って、どのような結果が出たらどのような結論が得られるかを記述した方が説得力が増すと思います。
Q:茎の伸長成長促進、根の成長阻害以外にオーキシンが持つ作用について、なぜオーキシンによる調節するメリットがあるのか考えた。花芽形成の誘導は、光が当たる方向にオーキシンが多く集まる仕組みを利用して、花粉の担い手となる鳥や虫に見つかりやすいような位置に花を配置するためと考えられる。果実の成長促進は、動物に果実を食べられることで種子を運んでもらう植物には、動物の目につきやすい位置にある果実の発達を優先的に行うことができるというメリットがある。木部分化の促進は、茎の進行方向と合わせて物理的強度を維持できるよう、より木部を発達させる向きを決めなければならないが、それを決めるときに役立つ。
A:考えている、という意味では合格ですが、個別の考察を並べたところで終わっているので、できたら全体をまとめる議論を一言加えることができると、ぐっと文章が引き締まると思います。
Q:講義の中で紹介された動画において、屈曲したシロイヌナズナの茎は暗条件になるとまっすぐな状態に(動画では途中まで)戻っていった。まっすぐな状態になるのは,暗条件下になって,生長するにつれて、茎の長さに対して高濃度側と低濃度側で、UV照射によって生じた,オーキシン高濃度側と低濃度側の生長の差が小さくなるからであると考えられる。しかし,暗条件下において,オーキシン高濃度側(であった部分)と低濃度側の生長速度が同じであるとき,UV照射によって生じた生長の差が無視できる程度,つまり茎がまっすぐに見える状態になるまで数時間で回復するものなのかと疑問に思った。そこで,暗条件下において,高濃度側の細胞から低濃度側に,生長を促す物質が流れているのではないかと推測した。そのような物質をAとすると,どのような機構があればAが存在できるのか。例えば,
・光受容器が,オーキシンと,Aの放出を促すような物質(B)について,光が強いときはオーキシンを多く,弱いときはBを多く産生,輸送する
・Bの受容体がオーキシン高濃度の細胞でのみ強く発現し,オーキシン高濃度側の細胞ではAの受容体の発現が弱まる
といった機構があるならば,Aの存在は許容されるであろう。上の機構において,低濃度側の生長促進に至るまでの機序は、1.暗条件となり,高濃度側の細胞にBがやってくる、2.Bを受容した高濃度側の細胞からAが放出される、3.Aの受容体が発現されている低濃度側に,Aがやってきて,受容され,生長が促される、といったようなものになると考えられる。
A:UV照射とありますが、青色光照射です。考え方は面白いと思います。「オッカムの剃刀」は知っていますか。推論にあたって、可能な限り仮定の数は少ない方がよいという原則です。この場合、オーキシンに加えて他の物質の存在を仮定していて、それが面白みであるのですが、できたら、そのような物質の存在を仮定せずに、オーキシンの分布、その受容体の分布、極性移動の仕組みだけで同じ生理現象を説明できないか、と考えて見る必要もあるでしょう。