植物生理学II 第8回講義

窒素同化、生物時計

第8回の講義では先週解説した窒素固定について補足したのち、生物時計について触れ、残りの時間で窒素同化の仕組みについて解説しました。今回の講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。


Q:植物の窒素同化作用には吸収された窒素源がNH4+の場合はそのままアミノ酸合成に利用されるがNO3-は還元作用によりNO2に変換されたあとにNH3にしてからグルタミン酸などに合成される。また、植物が栽培される際にNO3-が十分にある場合それを窒素同化に使ってしまうので体内にNO3-を蓄積してしまう。これを防ぐためにはNH3を十分に与えた環境で栽培すればよいのではないかと考えられる。これはNO3-からNH3に還元するためにはエネルギーが必要であるためにはじめから多量のNH3を与えた環境で栽培すればNO3-をわざわざ吸収する必要がなくなるのでNH3だけを窒素同化のために吸収し、体内にNO3-を蓄積することがなくなるのではないか。

A:「蓄積してしまう」という表現からすると、おそらく議論の前提として、アンモニウムイオンあるいは硝酸イオンは、多すぎると生物にとって良くない、ということがあるように思います。論理の流れをわかりやすく示すには、まず、そのような前提条件をきちんと明示することが重要です。


Q:授業で生物時計について学んだ。一日単位のリズムが基本だが、生物によっては潮の満ち引き、月の満ち欠け、一年単位という生物時計を持つ生物もいるようだ。おそらく、生物に密接な(無視できない)環境が時間によって変動する場合、それぞれ独自の生物時計を遺伝子の配列を変化させる事で構築するのだと推測できる。地球に存在する生物の生物時計は地球の自転公転などの運動の周期から考えて最長でも一年単位となるはずだ。もちろん地球にも様々な環境が存在し、例えば海底の熱水噴出孔や火山などの付近に生息する生物は一年よりもはるかに長い生物時計を持つかもしれない。しかし、例に挙げたような極端な環境は推測もしやすいが、普通といわれる環境に生育する生物が特殊な生物時計を持っている場合は原因を追究していく事で今まで知られてこなかった環境変化の周期性、法則が発見できる可能性があると考えられる。例えばタケ類は一般的に数十年に一度開花(※モウソウチクで67年)し、その後ジェネット(地下茎で繋がった同個体の株全体)が枯死するという特殊な生態をしている事で有名だ。私は葉に存在するであろうFTホモログが開花を促進するメカニズムを調査することによって環境の法則性を発見できるのではないかと考える。仮にこの方法で望ましい結果が得られなくても数十年という長く、かつ一定の期間を正確に把握し遺伝子発現を制御する機構を解析することは分子生物学の発展に大きく貢献するのではないだろうか。タケ類の研究には人間にとって非常に長い期間を要すため難しいが価値ある結果が期待できる。
(※Clonal structure and flowering traits of a bamboo [Phyllostachys pubescens (Mazel) Ohwi] stand grown from a simultaneous flowering as revealed by AFLP analysis, Molecular Ecologyより

A:面白い考えだと思います。確かに67年に一度データが出るのでは、研究することは難しいでしょうね。そこをうまく切り抜ける方策を考える必要がありそうです。


Q:根粒菌で連作障害が起きないのかを考える。根粒菌は窒素固定を行い、植物と共生し、窒素固定をするための莫大なエネルギーを得ている。インターネットで調べてみたが、根粒菌による連作障害はない。なぜだろうか。根粒菌は植物と共生している間、アミノ酸を植物に渡し、エネルギーを得ている。この対応関係は、植物の生育状態に応じて変化すると考えられる。つまり、植物が小さいうちはエネルギーを根粒菌に渡せないが、植物が育ってくると渡せるエネルギーを多くなり、その分 根粒菌も増え、植物に渡せるアミノ酸も多くなる、そして植物も育つ。次に、植物のシーズンが終わり枯れてしまったときに、根粒菌は植物から得ていたエネルギーを自ら生成することになるが、自ら作れるエネルギー量は微量であるため、数がかなり減少する。新しく植物が植えられた時に、根粒菌もわずかしかいないために、その植物の生育段階に合わせて根粒菌も増えていく。このことから連作障害を起こす菌との違いを考察する。植物と供与の関係が一対一対応されていること。そして、根粒菌は生きていくために必要なエネルギー量が大き過ぎることである。

A:これも、細菌が連作障害を引き起こすことが前提になっているのかな。そうだったら、それを明示して、どのような条件で何が原因で連作障害を起こすと考えるのかを明示しないと、それとの差を議論した場合に論理が曖昧になってしまうと思います。


Q:生物時計がマウスやヒトで起こることは知っていたが、単細胞生物レベルでも生物時計が存在することを学び驚いた。生物時計の機構は複雑な因子がいくつも絡み合い、成されるのだと思い込んでいたものの単細胞生物で起こるということは、案外簡易的なメカニズムで生物時計が成り立っている可能性が示唆される。そこで、単細胞生物レベルでも生物時計が存在するならば、共生説が有力とされている葉緑体が現在も生物時計を持っている可能性を考える。葉緑体はかつてラン藻がシアノバクテリアに取り込まれ共生を辿ったという説が有力である。単細胞生物レベルで生物時計が成り立つということは、ラン藻が生物時計の機構を持っていたと推測出来る。共生説に基づくと共生した後も、葉緑体は独自のDNAで独自に分裂・増殖を行っており、生物時計の機構を司る因子を転写し続けている可能性が高いと言える。つまり葉緑体は生物時計を持っている可能性が高い。あくまで上記の結論は仮説にすぎないため、立証するためには、葉緑体のみを単離して昼と夜のように光照射を適宜調節、24時間単位でサイクルを繰り返し2週間ないし1ヶ月ほど照射を続ける。葉緑体が実験の最中に死んでしまわないよう、溶液内は限りなく細胞内に近い環境に整える。そして、いきなり光照射を止めて、その後同様のサイクルで光合成が行われていることを確認すればよいと考える。葉緑体が生きていれば、独自のDNAから転写された生物時計の機構因子により、生物時計が確認されるのではないだろうか。

A:アイデアは非常によいと思います。ただ、実験系の方は、そのような実験を考える前に、まずは、葉緑体ゲノムに時計遺伝子のホモログが残っているかどうかを調べるのが第一歩でしょうね。昔はそのような作業は研究者しかできませんでしたが、今なら学生でも簡単にできますから、実際にやってみると面白いと思います。


Q:窒素固定の過程において、植物は窒素をアンモニアではなく、硝酸として吸収し、細胞内で再びアンモニアに戻して使う。窒素固定細菌は窒素からアンモニアを合成しているため、アンモニアは地中に十分に存在していることになる。それにも関らず、なぜ植物は窒素を硝酸イオンとして吸収し、エネルギーを使ってアンモニアに戻して利用するという非効率的なことをしているのか。まず、アンモニアを直接吸収しない理由として考えられるのは、①アンモニアが根から吸収できない構造であることと、②アンモニアは植物にとって有害であることが考えられる。①であるが、アンモニアは水によく溶けるため、水を吸い上げる際に根から吸収できるため、①が原因であるとは考えられない。②の場合、アンモニアは確かにヒトや鳥など多くの生物にとって有害であり、動物は体内にため込まない仕組みを持っている。しかし、植物では、細胞中でアンモニアをアンモニウムイオンとして利用し、再同化をして窒素を循環させている。このことから、植物にとって細胞内のアンモニアは有害ではないと考えられる。アンモニアを直接吸収できない理由がないとするならば、逆に、硝酸イオンとして吸収する理由は何かを考察してみた。植物は窒素を硝酸イオンとして吸収すると、大量の還元力を使い、アンモニウムイオンとする。この過程に硝酸イオンとして吸収する理由があるのではないか。例えば、硝酸イオンからアンモニウムイオンへと還元する過程を経ることで、細胞内の窒素量を調節していることが考えられる。アンモニウムイオンは、細胞膜を透過するため、容易に窒素が増減しうる。よって、あえて硝酸イオンとして取り込み、硝酸イオンの還元を促進したり、制限することで窒素量を調節しているのではないか。

A:講義で触れたと思うのですが、窒素源として何を好むかは、植物の種類によっても異なります。アンモニア態の窒素を積極的に取り込む植物もないわけではありません。アンモニウムイオンが膜を透過するということは、脱共役剤として働くということでもありますから、植物であれ動物であれ、高濃度のアンモニアは毒として働きます。


Q:今回の講義内容で、私はなぜ毒性のあるアンモニウムイオンを用いるのか、という疑問を抱いた。私は硝酸イオンとアンモニウムイオンの性質に原因があると考察した。アンモニウムイオンは脂溶性であり、細胞膜を通過するという特徴がある。一方硝酸イオンは、多くの金属と反応し塩を生成する。この金属との塩は水溶性である。植物には養分に、リン、カリウムなどの金属を用いるまた、クロロフィルはマグネシウムを配位している構造である。よって、金属を多く含む植物体にとって硝酸イオンは適さないため、アンモニウムイオンを用いていると考えられる。

A:ここで、「用いるのか」と言っているのは、アミノ酸への窒素の取り込みの際に、という意味でしょうかね。そうだとしたら、まず考えなくてはいけないのは、硝酸イオンの炭素をどうやったらアミノ酸に転移できるのか、という点です。生体物質の多くは還元剤ですから、硝酸イオンのような酸化剤を使って窒素を同化するのは一筋縄ではいかないでしょう。


Q:個体の大きさ(重量)と果実優先度の関係がどう変化するのかを根粒を通して測定できないか考えてみた。根粒は特にマメ科植物によく見られる→根粒の生産する窒素は主に豆に用いられる(マメ科以外にも根粒を持つものもいるが)のでは、という仮定を置いて考える。単純に「根粒の数が多いほどマメの優先度は高い」とはならないので、具体的にはその個体が生産する光合成産物のうち、どれくらいが根粒への供給に回されているのかを調べる。 一分子の窒素固定を行うのに必要な光合成産物量×窒素固定速度×時間×根粒個数によって根粒全体へ供給されている生産物量がわかり、全体の生産物量と比較することで優先度(割合)を調べる。大中小それぞれの個体において測定を行うことで個体の大きさ(重量)ごとに豆の優先度がどう変化するのか測定できるのではと考えました。

A:これは、中の論理はよいのですが、そもそも出発点の疑問、すなわち個体の大きさが優先度にどう影響を与えるのか、という疑問がどこから生まれたのかがわかりませんでした。出発点となる疑問の面白さが伝わるとだいぶ雰囲気が変わると思います。


Q:今回の授業では生物時計について面白いと思いそれについて書きたいと思う。人間にも体内時計があり朝起きて、夜には寝る。それが習慣づいて大体、起床時間、就寝時間が決まってくる。この人の体内時計と同じことが植物の体の中でも起きているというのが生物時計である。実際にこの時計は時計の制御に関係する遺伝子が抑制されることにより光合成と、窒素同化を使い分けている。その遺伝子中で重要なのがPRR9.PRR7.PRR5などのPRRファミリーである。これらが、時計遺伝子(CCA1遺伝子と LHY 遺伝子)を抑制する。だが、ほかにもっと重要な遺伝子があるとされていて真の時計遺伝子はPCL1であるとされた。生物には体内時計がある、としても必ずその例外はあるのではないか?と思い「体内時計のない生物」はいないのかと思い調べてみたが、全くいないみたいであった。それはなぜかというと、自分の考えでは、体内時計の意味は日々の生活と同じように仕事をするときと休憩をするときの切り替えであると考える。仕事だけになってしまえばいずれくたびれてつぶれてしまう、逆に休んでばかりであれば生きるための資源がない。やはり、効率的に考えて、生物時計がないのはありえないと思う。あとは、他の生物のおこぼれを狙うようなハイエナの様な生物であれば時計はなくなるのであろうか。だが、おこぼれ程度では十分なエネルギーは得られないと考えるため、必ず生物時計はあるのだと思う。
参考資料:http://www.gene.nagoya-u.ac.jp/~ishiura-g/zairyou%20link-2onai2-2/Link2/Link2.htm、http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2010/100318_2/index.html

A:生物時計が環境変化への適応の一種であるとすれば、生物時計がない生物を探すべきところは、環境変化がない場所です。地表では必ず光環境の日周変動がありますし、それに伴う温度などの変化が暗い所にも及ぶでしょうから、可能性があるのは、地中深くか、深海でしょう。そのようなロジックを追いかけてみても面白いかもしれません。


Q:今回の授業では植物が光合成でエネルギーをつくり細菌に提供する代わりに細菌が窒素固定を行いアミノ酸を植物に提供して共生している仕組みを習った。しかしシアノバクテリアは単独で窒素固定を行うことを知り、他にもこのような細菌は存在しないか調べてみた。結果、非共生細菌と呼ばれるが窒素固定を行う細菌としてアゾトバクターやクロストリジウムという細菌が存在することを知った。ではこれらの細菌は共生している植物に提供するわけでもないとしたら、固定された窒素は行き場を失い窒素循環を阻害してしまうのではないかと疑問を感じた。しかし、大気中の窒素濃度がほとんど減少していないことから固定された窒素がそのまま細菌の中に留まってしまっているとは考えにくい。これらの細菌により固定された窒素もとどまることなく循環しているか、もしくはこれらの細菌による窒素固定が全体から見ると微量なためほとんど影響が出ていないと考えられる。自分は以下の理由により前者の可能性を予想する。下記参考ウェブページによるとこれらの細菌は土壌中に存在しているらしい。固定された窒素がこれらの細菌の中にとどまっていないと仮定した場合、固定された窒素の行き場としてまず最初に土壌が思いつく。つまりこれらの細菌の存在する土壌は窒素肥料の豊富な土壌となると考えられる。その結果微生物などの固定された窒素を必要とする生物が集まり、それらの生物に取り入れられた窒素は再び排泄物として大気中に放出されるだろう。 よって非共生細菌も窒素循環の一部として機能していると考えられる。
参考:啓林館生物Ⅱ第4節http://keirinkan.com/kori/kori_biology/kori_biology_2/contents/bi-2/1-bu/1-3-4.htm

A:生態系における窒素循環の図を見せたと思うのですが、行き止まりはむしろ分子状窒素です。イオンになっていれば、広い範囲の生物が利用できますから、何らかの形で循環していくでしょう。論理自体は、よいと思いました。


Q:今回生物時計について扱いました.生物時計が温度により変化がほとんどないことは酵素がかかわってるらしい(参考のところより).生物時計が修正機能をもっているがこれについても,ホルモンなどがかかわっていることもあるとは思いますが,酵素のようなものもかかわっているのではないかと思います.たとえば,光により分解されたり,生成されたりするものもあるのではないかと思います.
参考:東京大学HP 生物時計が温度によらずに24時間周期を刻む謎を理論的に解明(http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_240508_02_j.html)

A:「思います」だけでは論理になりません。根拠に基づいて議論を展開するようにしてください。


Q:植物による窒素固定や自然放電によるものに対して人工窒素固定の割合が非常に高く驚いた。窒素固定の全体のうちおよそ20%が人の手によるものということは、植物の成長の20%が人の手によると考えてもいいだろう。やや古いデータになるが日本化学会の化学便覧応用編第五版によると世界の植物の年間の生産量(乾燥重量)は172,5Gtであり、この2割となると35Gt程度となる。このうち農耕地からの生産量は9,1Gtであり、仮にこれが全て人工的な成長としても25Gt以上は農耕地以外での植物の成長に費やされた計算である。人工的に作られた肥料等の行方は多くが農耕地へ行き食糧生産の為に使われているものと考えていたが、この数字を見る限りではそうでもないようだ。
http://ebw.eng-book.com/pdfs/57828a98dc46c2d9e971582aeb652964.pdf

A:非常に面白い視点からの考察だと思います。全く異なるソースからの情報を組み合わせて一つの論理をつなぐことは新しい発見につながることが多いと思いますし。ただ、ここで取り上げられているような分析の場合、ストックとフローをきちんと分けて考える必要があります。窒素循環のフローの全てが窒素固定のステップを通っているわけではないというところが一つの問題点かもしれません。


Q:やはり単細胞のシアノバクテリアは、光合成と窒素固定を昼と夜に分けて時間差で行っているらしい。一方の反応がもう一方を抑制するような場合は、場所か時間を分けて行うのが効率的だ。しかし、その時間差を行うには、光合成と窒素固定を司る遺伝子が必要とされる時間の少し前から発現を始めなければ間に合わない。それこそが生物時計ということだった。植物の花芽の形成には、特定の波長の光(赤色光と遠赤色光)の照射時間やタイミング、暗時間の長さが重要とされているから、特に昼と夜の切り替えのときなど、わずかな光の波長の変化などを認識する機構があるのかもしれない。生物時計が化学反応なのに温度変化に依存しないのはまだ謎だということだった。しかし、日の出や日没の時間は季節によって変化し、これが顕著に現れるのは温度であるから、温度も生物時計の季節変化に関わっているのではないかと考えられる。また、温度が低いとやはり光合成活性も低下する。これは、光合成関連酵素の働きが低下するためだけではなく、温度が低い時期には、光合成関連遺伝子の発現量もコントロールされるからではないだろうか。低温で光合成が最適な環境で行われないような状況では、無駄に光合成タンパク質をつくってしまうよりも、その量自体を減らして節約した方がやはり得策である。一日二日の急激な温度変化には対応できないかもしれないが、年間のような長いスパンでみた場合、暖かくなれば光合成関連遺伝子の発現を促進し、寒くなれば抑制するような季節変化の機構の一部として温度も関係しているのではないかと考える。

A:全体としては、面白い議論だと思います。後半の論旨は、環境の変動として温度が重要であるという点と、生物時計が温度補償性を持っているという点を結び付けているように見えますが、これは本来別個の事象だと思います。温度を感知するために、温度補償性のない生物時計を使うことも可能ですが、その場合は時計が狂ってしまいますから、それはそれで問題が生じてしまうでしょう。


Q:植物の生物時計は温度補償性を持っており、温度に依存することなく機能すると授業で扱った。私はこの話を聞いた時、生物時計には温度補償性は必要無いのでは無いかと思った。例えば、冬の寒い日には太陽が登ってきてからもしばらく寒い時間が続く。この時間帯に光合成を行うよりも、この時間帯は何もせずにエネルギーを蓄え、もっと暖かくなってから光合成を行った方が効率はいいのではないかと思った。以下、生物時計に温度補償性はなぜ必要なのかを考察する。
考察:生物時計に温度補償性が必要な理由
理由1:季節による変動 植物の生息する地域も気候が一年を通じて変化が小さい場合なら、温度補償性は上記の理由の通り必要ないと考えられる。しかし、日本のように一年を通して気候の変化が激しい地域の場合、もし温度補償性がない場合、夏は終始光合成を行う状態になり、冬には終始光合成を行わない状態になる(冬眠状態に近い)。もし冬眠を行う場合、植物は夏の間に栄養を蓄えておく必要があるが、移動の出来ない植物が栄養を蓄えた場合、多くの動物に栄養を蓄えた部分を狙われるため、生存に適さない。よって、冬眠を行わない植物にとって温度補償性は必須である。
理由2:系が複雑になりすぎるから 温度変化の激しい地域で温度補償性が必要なことは理由1より分かったが、温度変化の小さい地域で温度補償性がない、つまり温度変化が生物時計に関係する場合、植物はどんな状態になるのか。この場合、植物は光と温度(その他さまざまな要因)によって生物時計を調整することいなるが、時計に関わる因子が増えれば増えるほど系が複雑になり、環境に対する応答は正確になるが、変化に必要な条件が厳しくなるため環境の変化にすぐに対応できなくなる。なので温度変化の小さい地域でも温度補償性は必要である。
以上の理由より、温度補償性を持つ方が植物に取って生存に有利に働くため、生物時計に温度補償性は必要である。

A:温度補償性のない時計を使った場合には、例えば低温にすれば化学反応が遅くなりますから、時計での1日にが長くなってしまいます。例えば1日が25時間になってしまったら、最初の日には、確かに時計が遅れても、まあちょうど寒いからよいか、で済みますが、12日後には夜昼が逆転してしまいます。そうなったら困るのは目に見えていますよね。