植物生理学II 第10回講義
オーキシンの働き
第10回の講義では、植物ホルモンの代表例としてオーキシンの働きについて解説しました。同時に、オーキシンが重要な役割を果たす光屈性や重力屈性の仕組みについて解説しました。今回の講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。
Q:オーキシンの濃度勾配による成長について考察する。オーキシンは頂芽で合成されて根の先端に向かって極性移動する。日が昇り光が当たっていない方にオーキシンの濃度が濃くなると光りが当たってない側の成長が速くなり、結果的に茎全体が太陽の方に向くようになる。また、重力によってオーキシン濃度が下側に高くなると茎の下側の成長が速くなり茎が上を向くようになっているが、もしこのオーキシンが根の方に送られると根は放射状に広がっているので根の下側に少し濃度がたかくなることになる。すると、根の下側の成長が少し早くなり、根が地面から表面へと向かってしまうことになる。これは根としての役割を妨げるうえ、実際は下に向かって根がはえていくことから、茎の部分と根の部分ではオーキシンの働く機構が少し異なっているのではないかと考える。よってオーキシンに対する反応条件を場所によって変えることで器官ごとの目的に沿った形の形質を得ることが出来るのではないかと考えられる。
A:最初のオーキシンの働きのところで、伸長生長に対する作用は葉の場合と根の場合で逆になるという話を講義でしたのですが・・・。また、重力によってオーキシンが動くようなニュアンスになっていますが、あくまでメカニズムとしては極性移動によって動くわけですから、重力が直接効くわけではありません。
Q:植物ホルモンのオーキシンは主に植物の伸長生長を促進する非常に重要な物質である。このオーキシンの作用メカニズムから有用なものが発見できないか考察してみる。オーキシンは細胞膜のプロトンポンプをリン酸化させて活性状態にする性質がある。そして細胞膜プロトンポンプが細胞内の水素イオンを放出する。その結果、細胞壁が緩み、細胞膜の電位が変化するためカリウムイオンが細胞内に侵入し、その影響で水の流入が起こる。こうして個々の細胞自体の体積が増大することで伸長生長が起こる。しかし、この植物が大の伸長生長は野生環境では有利に働くが、細胞分裂による通常の成長ではなくどちらかというと膨張に近いため、例えば作物に投与すると大味なものができてしまうのではないだろうか。また、このことから伸長生長を抑制すると味の濃い作物が出来るのではないだろうか。抑制にはオーキシンの産生を抑制する方法とプロトンポンプの活性化を阻害する方法の二つが考えられるが、オーキシンは他にも色々な生理作用を持つのでその影響は多大であると予想される。これらのことから細胞膜プロトンポンプの活性化の阻害は作物の品質向上に役立つ可能性が存在する。
A:自分なりの論理を展開しているという点では評価できます。ただ、プロトンポンプも細胞のいろいろなところで重要な役割を果たしているので、結論についてはちょっと乱暴かな、と。
Q:オーキシン排出輸送体(PIN)について学んだ。授業では、光によって細胞内でPINの局在が変わるのかもしれないとあった。また、茎頂の少し下を切って上下反対にすると湾曲しないと習った。しかし、もしPINの局在が変わるのであれば、光によってPINの局在を変えれば湾曲するはずである。 では、どうなっているのであろうか。私は、PINの局在が変わるのではなく、細胞の基底のまま固定されていて、光によってPINの活性が変わると考える。つまり、光がよく当たる方ではPINは不活性(阻害される)になり、光があまり当たらない方ではPINは活性する。これを確かめるためには、茎の間に垂直にオーキシンを通さない膜(仕切り)を挟み、片側は強い光を当て、もう片側は暗くしたとき、オーキシンに蛍光タンパクを付け、明るくした方では茎頂から遠ざかる程オーキシンが薄いこと、仕切りの近くにもほとんどオーキシンがないことを結果として出せればよい。(仕切りの近くにばかりオーキシンがあるのならば、PINの局在が変化した可能性があるため。)
A:最初の部分から察するに、光感知とシグナルの伝達が混同されているようです。そもそもダーウィン父子の実験でわかることは、光を感知する部位と実際に屈曲する部位は距離を隔てているということです。だからこそ、何らかの物質がその情報を伝達しているはずだ、という結論が得られたのですから。ですから、光によってPINの局在が変わるとすれば、その場所は茎頂であるのに対して、切り取って上下をさかさまにした茎頂の下の部分は、光の情報を受ける部分ではなく、その信号を下へ送る部分です。このような話の場合は、光検知と情報の伝達をきちんと分けて考察する必要があります。
Q:オーキシンの極性移動にかかわるオーキシン排出輸送体(PIN)について、なぜ細胞の6面すべてに均等に分布するのではなくある1面に偏って存在するのか疑問に思った。まず、PINの数が限られており6面に余すことなく分布するメリットが少ない可能性が挙げられる。オーキシンは植物ホルモンのひとつである。ホルモンの役割は、少量でありながら細胞などに効用をもたらすことである。少量でよいので、そのホルモンを排出するPINも少数でよい。6面すべてに配置するだけのPINはホルモンの量に見合わないため、少数のPINを1面にまとめることで、ホルモンを効率良く輸送することが可能となる。ホルモン伝達の点からすると、わざわざPINの量を増やさずとも、1箇所で確実に伝達出来る方が生存の上ではメリットになりうる。次に、初めは6面すべてにPINが存在するものの次第に消失してしまった可能性を考える。植物は、基本的に一点から自律的には動かない。この場合、オーキシンというホルモンが流れてくる経路も基本的には一定である。この場合PINが常に1/6しか使われないことになってしまう。余程のことがない限り使用されない5/6面にあるPINを維持するためにもエネルギーは必要であり、コストがかかる。そこで、植物体がある程度育ちオーキシンの経路が体系立った時点で5/6面に位置するPINを消失させて、残りの1/6面に位置するPINが残ったという可能性が考えられる。前者はホルモンが少量であること、後者は植物体が基本的には動かないことにより成り立つ仮説である。したがって、前者についてはオーキシンが大量分泌されてしまう変異体を入手し代々その形質が受け継がれていった場合にPINの絶対数がホルモンの量に応じて増えるかどうか、後者では、植物体が常に強風などで動き続ける場合のPINの局在を調べる必要性があるといえる。
A:うーむ。そもそも、6面に均等にあったら極性が生じないはずでは?
Q:今回の講義では、植物ホルモンのオーキシンについて学んだ。授業の中で、オーキシンの輸送速度が、芽や若い葉では師管を1 cm/h、成長した葉では10-24 cm/hであることが分かった。このことから、成長した葉からのオーキシン供給量と若い葉からの供給量は、成長した葉からのほうが多いといえる。頂芽は成長した葉、側芽は若い葉や芽になる。頂芽と側芽でオーキシン供給量に10-24倍と、大きな差異が見られることは、頂芽がオーキシンを多く分泌しているだけではなく、若い葉のオーキシン輸送を抑制していると考えられないだろうか。若い葉のオーキシン輸送が抑制されることで、頂芽からのオーキシン供給により、オーキシンは若い葉にとって、最適濃度を越えた濃度になると考えられる。つまり、オーキシンの濃度調整が頂芽によって、抑制されている可能性があるといえる。オーキシン輸送はオーキシン排出輸送体であるPINによって行われる。したがって、オーキシン輸送の抑制する機構として、PINの活性を阻害もしくは、PINの数の減少が考えられる。頂芽が枯れてなくなれば、オーキシンの供給は止まり、PINの抑制はなくなる。しかし、頂芽の距離に応じて、オーキシンの供給が無くなるまでの時間は異なる。例えば、頂芽から10 cm/hの速さでオーキシンが供給されていたとすると、5 cm先の側芽には30分で最後に輸送されたオーキシンが届くが、10 cm先の側芽には1時間かかる。つまり、最も頂芽に近い側芽は、他の側芽に対して先にオーキシン濃度に調整できる時間があると考えられる。これによって、頂芽が無くなった後、2番目に上にあった側芽が新しい頂芽になる。新しい頂芽はオーキシンを分泌、他の葉のオーキシン輸送を抑制することで、側芽の成長は抑制され、最も日の当たる頂芽が優先して成長し、効率的に光合成が行われると考えられる。
A:最初の前提がちょっと。講義で触れたと思いますが、芽や若い葉からのオーキシンは極性輸送によって動くのに対して、生長した葉からのオーキシンは篩管を通ります。1つ1つの細胞を経由する極性輸送でオーキシンの輸送速度が遅くなるのはある意味で当然でしょう。
Q:今回の講義ではオーキシンについて学んだ。このオーキシンには、葉序を決めるという性質があることが調べてみて分かった。葉序とは、茎に葉が付くパターンのことである。この中で互生葉序という一節に一つ葉が付く葉序がある。これについて考察した。この葉序は多くが螺旋状である。これは、オーキシンには光屈性があり光が当たっている逆側に集まり屈折する。よって、互生葉序の場合は太陽の位置によって決まると考えられる。つまり、太陽の光の反対側にオーキシンが集まることで、本来ならば屈曲する機能を、屈曲しない代わりにその分を葉が分化するエネルギーとして使っていると考えられる。葉を形成することは単に茎が成長することよりもエネルギーを必要とする。よって、太陽光の反対側にオーキシンが集まりその部分に葉が形成されると互生葉序の場合は考えられる。これは、光が当たっている側に通常の植物の茎が屈折しないことからも証明できると考えられる。
A:葉序が決まるのはまだ葉ができる前の茎の先端の非常に狭い領域です。光の当たり方がその狭い領域で異なると考えるのはなかなか難しそうですね。なお「調べた」という時は、なるべく参考文献を上げるようにしましょう。ここでは引用ではないので、著作権法違反にはならないとはいえ。
Q:今回の講義では植物ホルモンの作用について、オーキシンを例に挙げて学びました。オーキシンとは主に植物の伸身成長を促す植物ホルモンの一群であり、最初に発見された植物ホルモンでもある。今まで植物ホルモンは体内に必要なもので、植物の成長に貢献しているものだと思っていた。しかし、アビシジン酸という植物ホルモンはオーキシンの成長促進を阻害する働きを持つことがわかった。なぜ植物ホルモン同士で阻害する必要があったのか。この原因はオーキシンの成長促進が植物体内でしか行われないという特徴にあると私は考える。オーキシンは外から植物にかけても成長は促進されないことがわかっている。しかも合成オーキシンにいたっては、ダイオキシンを含みやすくなっており、枯葉剤としての役割を果たしてしまう。よってこのダイオキシンを阻害するために生成されるのではないかと考えられる。
A:講義の内容とあまり一致しませんし、事実誤認もだいぶあるように思います。何を参考にしたのでしょうね?上にも書きましたが、自分で考えたことではなく、調べたことについては参考文献を挙げるようにしてください。
Q:オーキシンについて学んだ。オーキシンの役割の一つに伸長成長の促進があるがこれを促進するしくみについて考察してみた。茎などの伸長を行うためには細胞分裂と細胞伸長の二通りが考えられる。細胞分裂はオーキシンが細胞内を通る過程で、細胞分裂を促進するようなシグナルとして働くと考えられる。細胞伸長に関しては、細胞を縦方向に取り囲む微小管を分解することで微小管の環を緩め、縦方向への伸長を促進するか、横方向の微小管をきつくすることで環を閉めて細胞を縦長にしていることのどちらかが考えられる。横方向に閉める方法では細胞損傷などが予想されるので、この場合は縦方向の微小管を緩める方法のほうが、可能性としては高いのではないか。また植物細胞には細胞壁が存在するので、同時に細胞壁の分解も行っていると考えられる。
A:自分で考えているという点は評価できます。ホルモンは動植物を問わず、作られる場所と移動する場所と働く場所が異なることを考える必要があります。「細胞内を通る過程で」単純で働いてしまうと、移動するそこここが全て伸びてしまって、それは困ると思います。
Q:今回の授業では植物のホルモンについて中心に勉強をした。自分はあらかじめ植物は光の強い方向へと曲がり、伸びていくことは知っていたが、それが植物ホルモンの働きによるものであるということは知らなかった。その植物ホルモンがオーキシンであることが授業で分かった。オーキシンは植物の茎の部分では伸長を促す作用があるが、根っこのほうでは伸長を抑制する作用があると知ったが、なぜ茎では伸び、根っこでは全く反対のとどまらせようとする働きをするのかとても疑問に思う。実際に調べては見たが、オーキシンはまだ謎の多いホルモンであり解明がされていないと聞く。なので、疑問について考えていきたい。茎と根でどうやって働きが変わるのか、オーキシン自体が成分したとはまず判断できない。オーキシンが細胞からの水素イオン(プロトン)放出を促進することで細胞壁を酸性化して細胞壁のゆるみを引き起こすことから茎を伸長させやすくしているということが過去のデータから言えるので何か根の中の他の要因から細胞壁の引き締めがオーキシンを使うことで言えれば抑制することも論理が通るためそれが根の何が原因になっているのかを調べてみる必要がある。また、茎と根の違いは周りに土があるかないかの違いもあるので土にも要因があるかもしれない。
http://www.nagoya-u.ac.jp/research/pdf/activities/20120418_sci.pdf
A:植物ホルモンは一種の信号物質ですから、受け取る相手によって解釈が違うという考え方は当然あると思います。土が関与しているという考え方は面白いと思いますが、もう少し具体的なメカニズムを想像してみないと単なる思いつきで終わってしまいます。
Q:植物ホルモンの1つとして古くから知られているオーキシンについて習った。これは茎の伸長生長促進、果実の生長促進など様々な働きを見せる。芽や若い葉が供給場所のとき極性移動をし、その働きは植物の茎の先端の頂芽の生長を優先させる頂芽優勢という傾向にある。また植物ホルモンは生成される場所が様々で、動物ホルモンと違って一定の器官で生成されるわけではないということだが、これはなぜだろうか。一定の器官で生成した方が効率がいいように思える。まず植物と動物の大きな差異について考えると1つの大きな違いに気づいた。動物は身体の頂(頭)を切除されると絶命するものがほとんどだ。しかし植物は芽の頂を切除されたとしても頂芽優勢によってその下の部分が再び生長を始める。ほとんどの動物が切除された時点でその生命を絶ってしまうため別の器官でホルモンが生成できたとしても無駄になってしまうが、植物はホルモンを別の場所で生成できれば再び生長することができるだろう。よって植物ホルモンは動物ホルモンと違って供給場所が異なっているという可能性があると考えた。
A:考え方は面白いと思います。ここで動物というのは人間を中心とした高等動物が考えられていると思いますが、ここまで考えたら、器官が再生するようなタイプの動物ならばどうだろう、といった方向に考えてみるのもよいかもしれません。
Q:1919年にパールは,幼葉鞘の先端部を切り,中心からずらしたところ植物の伸長に違いがあることを発見した.ずらした方の細胞が良く成長し,ずらしていない方に曲がった.このことにより,先端から放出されるホルモンにより,細胞が成長し伸長することがわかる.成長するにつれて根元から離れていくので,古い細胞の伸長はだんだんととまっていき,植物の全体の細胞の大きさが一定になるのではないかと考えられる.
A:4文のうち最初の3文は講義で話したことです。1文ではさすがにレポートとは言えないでしょう。
Q:植物が重力に逆らい垂直方向に成長する事、葉が太陽の光を受け易い方向を向くことなどは小・中学生の理科において学んでいたことだが、これらの性質がオーキシンが光を避け重力に従って移動することで濃度に偏りができた結果であることがわかり関心を持った。オーキシンのこうした作用を利用して、誘導することで成長の操作することで収穫しやすい果樹などの育成に役立てられるのではないか。 こうした試みは現在まで品種改良として既に行われていることではあるが、生理学的な面からのアプローチも小回りが利いて面白いものだと思う。人間の医療では生理学的アプローチが主で遺伝的方面はあまり発展していない。これはある種タブーの問題も当然あっただろうが、個への対策を重要とする人間と多量の個体に対していじる必要のある植物とでの効率性の問題のように思える。こうした人間と植物においての試みの違いというのも考えてみると興味深いのではないか。
A:自分で考えるという点はよいのですが、一般論だけなので評論のレベルにとどまっています。サイエンスのレポートとしては具体的な方法論が必要です。
Q:高校の参考書等には、オーキシンは光が当たるとその反対側に移動すると書かれている。これは、PINというオーキシン排出輸送体が細胞基部に局在するため、光の当たる側の反対側のオーキシン濃度は高く保たれ、オーキシンの移動に極性があるためである。根のコルメラ細胞には、平衡石が存在し、根の平衡状態を感知して、オーキシン排出輸送体を重力の方向へ配置するので、重力方向のオーキシン濃度が高くなる。根は、芽、茎よりオーキシンの最適濃度が低く、高い濃度側の成長が抑制されるため、結果として重力と反対側の細胞の成長が促進され、根は重力方向へ伸びていく。植物が横になると、茎では高い濃度のオーキシンに最適域があるため、下側の成長が促進され、重力と反対方向に伸びる。しかし、茎や芽のオーキシン排出輸送体が細胞の基部にしか存在せず、根のコルメラ細胞のように輸送体の再配置ができないのなら、植物が横になった時、オーキシンは細胞間を輸送される際にのみ重力によって移動し、細胞内からは外に出られないことにならないだろうか。これは植物にとって不都合なように思える。しかも、芽の部分でも、光が上からくるとは限らないのだから、細胞基部以外にも、光の方向によって自由に配置できる輸送体を備えていなければ、光の当たらない側にだけオーキシンを濃くするという芸当はできないはずである。しかし、幼葉鞘を逆転させる実験からも分かるように、基部の輸送体は固定されたまま動かないと考えられる。よって、少なくとも幼葉鞘では、根の平衡石のようなシステムは働かず、輸送体の再配置は、主に細胞の側面における光の感受性によって行われている可能性が高い。同じオーキシンの輸送に対しても、根と葉・茎部では異なる仕組みになっていることに驚いた。
A:前半の部分は講義の繰り返しなので、レポートに書く必要はありません。後半は自分の考えが入っていてよいと思います。たあ、固定・再配置という場合に、どのぐらいの時間を想定しているのかをはっきりさせないときちんとした議論ができないでしょう。再配置が起こる場合にも、それが3日かかる場合は、3時間後に観察しても何も起こらず、固定されている、と結論されてしまう可能性があるでしょう。
Q:今回の授業では植物ホルモンはお互いに似た化学構造をとっていること、オーキシンの化学構造と、なぜ極性をもって移動を行うのかについての解説があった。私はこの講義を受けた後に、なぜエチレンだけ極端の構造が違うのかと疑問に思った。オーキシンの極性移動についての説明にあった通り、植物内で極性移動を行うためにはpHによって親水性と親油性が変化する必要がある。これは、エチレンには極性移動が必要ないからではないかと思う。エチレンによる作用は成長の阻害や花芽形成の抑制、果実の生成など、植物の表面でおこる反応に関わるものが多い。また、植物ホルモンの中には濃度によって異なった反応をするものも存在する。そのため植物の表面の方が濃度が濃く、中央にいくにつれて薄くなったとしても目的の反応を起こすのに問題がなかった場合、エチレンが極性移動をする必要が無くなる。また、エチレンは常温では気体なので、大気中にエチレンが存在する場合、植物の表面のどの部分でも接する空気中のエチレン濃度は変わらないため、極性移動をさせる必要がない。よって、エチレンがほかの植物ホルモンと構造が違う理由は、極性移動を行う必要ばないからだと考えられる。
A:よい点に注目していると主ます。構造からすると確かにエチレンは非常に特異的ですし、そもそも気体であるという点が他の植物ホルモンと全く違います。一方で、極性輸送がその他の植物ホルモンに一般的に見られる性質か、というと必ずしもそうではありません。その意味では、オーキシンが特異的である、という解釈も成り立ちます。