植物生理学II 第4回講義
葉の中の水と二酸化炭素の移動
第4回の講義では植物の葉の中での水と二酸化炭素の動きを気孔の開閉とからめて考えてみました。今回の講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。
Q:今日の授業では気孔の開閉について勉強しました。その中で「二酸化炭素濃度を上げると気孔は閉じて葉の温度が上昇する」、しいては「植物は温度上昇より水を失わないほうを選ぶ」ことについて考えてみます。温度上昇によって植物が被る被害は、1.細胞内の酵素が正常に働かなくなる、2.温度上昇に伴う葉表面からの蒸散などです。一方で、水を失うことで植物が被る被害は1.植物体内での生産物質の移動が出来なくなる、2.植物体を支えられなくなる、3.光合成に回す水分が足りなくなるなどです。これしか挙げていなくても、前者より後者の被害のほうがより大きいであろうことが確かに想像できます。しかし、実際に温度上昇より水を失わないほうを選ぶ状況は成立しがたいと考えられます。地球上の二酸化炭素濃度は現在約0.03%であり、大きな変動は見られません。おそらく「二酸化炭素濃度を上げると気孔は閉じて葉の温度が上昇する」という事実は、空気中の二酸化炭素濃度を大きく操作した実験で得られたものと考えられます。したがって、植物が温度上昇より水を選ぶのは究極の選択であり、慢性的な高二酸化炭素状況におかれた場合、もっと適応しやすい植物体に進化していく可能性が考えられます。
A:最後の部分はまさにその通りです。つまり、現在の大気中の二酸化炭素濃度は、少なくとも高い方へは大きく変動しておらず(ただし現在の値は約0.04%です)、したがって、二酸化炭素の濃度を0.08%に倍増させたときの植物の応答は、必ずしも生理的なもとは考えられない、ということでしょう。よく考えていると思います。これに関しては、地中から二酸化炭素が噴き出すCO2スプリングという場所があるので、そのような場所で植物がどのように高二酸化炭素濃度に応答しているか、という研究が、東北大学の彦坂さんのところで行なわれています。
Q:今回の講義で話されたことの中で植物の昼寝現象について、以下に私の考えを述べます。授業中に時間軸を横軸に、光合成速度を縦軸にしたグラフで昼寝現象下では光のピークとずれ、その限定要因が気温にある、といった説明がありました。すなわち、植物にとって気温が上がると相対湿度が下がり、光合成活性が低下させてでも蒸散による水分の損失を防ぐために気孔を閉じる選択をします。この昼寝現象は自然界において真夏に見られる現象なのですが、家庭菜園を行っている私の知人の祖父の話で、植物に水遣りをするときに朝方にあげるのが良いというのを思い出しました。しかし、本来昼寝現象が見られる時間帯は相対湿度が最も低くなる14時前後なのではと疑問に感じました。これに対する私の考えでは、昼寝現象中の植物ではそもそも光合成活性が低下しており、蒸散を最小限に防いでいるため、吸水量も低下するため、朝方に水遣りをする必要がある、という結論になりました。
A:実は水やりについては、非常にいろいろな要因を考える必要があり、一筋縄ではいかず、また、季節によってもいつ水やりをすればよいのかは変わります。水をまくと水は土にしみこみますが、直後には土壌の粒子の間が水で満たされます。しばらく経つと、余分な水は除かれ、土壌粒子中に含まれる水を残して粒子間の水はなくなります。土壌粒子の中の水は、その状態が普通の水の状態とは異なっており、温度が下がっても凍結しづらいですし、温度が上がっても、植物にそれほどダメージを与えません。しかし粒子間の水は凍結しやすく、また、この水の温度が上がって温水になると植物の根を傷めます。ですから、夜間の凍結が心配される冬季は朝方に水をやった方がよいですし、日中の温度上昇が心配される夏季には夕方に水をやった方がよいことになります。もっとも、これは植物の種類によっても、気象条件によっても異なりますから、必ず正しいとは言い切れませんが。
Q:【二酸化炭素濃度と気孔】今回の授業で特に興味を持ったのは、二酸化炭素濃度が一定以上になると気孔が閉じることである。水分を失うことを防ぐために気孔の開度を調整するが、もし水草であれば水分の心配をする必要はないと思われる。そのため、気孔開度を下げる大きな理由が水分の消失であれば、水草に於いて、高濃度の二酸化炭素下での気孔開度低下はないと考えられる。そのため、水草で二酸化炭素濃度別の気孔開度を調べる必要がある。通常の実験と同様にサーモグラフィーでの葉面温度の変化を調べることが可能ならば、その手段を用いる。その結果温度変化が確認されなければ、水草では高二酸化炭素濃度に対する応答がないと考えられる。また、二酸化炭素濃度に応答しない変異体の原因遺伝子をクローニングして解析した結果、キナーゼをコードしており、孔辺細胞で特異的に働くことが分かった。また、人為的にキナーゼ活性を消失するように設計したトランスジェニック植物(ドミナントネガティブ形質転換植物;WT::35SHT1kw)ではht1-2株と同様、低 CO2条件下でも高温を示し、CO2応答性が消失した。これらの実験から、HT1 キナーゼは植物におけるCO2シグナル伝達系に重要な役割を担っていると考えられる(九州大学大学院 理学研究院 生物科学部門 植物生理学講座 http://plant.biology.kyushu-u.ac.jp/Kenkyu2.html 閲覧日:2011年10月23日)。以上から、HT1 キナーゼの生成を確認できれば、二酸化炭素濃度への応答性があると判断できる。これらの実験結果から、水草に二酸化炭素濃度への応答性があることが確認できれば、高濃度条件下で気孔開度が低下する理由に水分の確保はそれほど重要ではないと考えられる。
A:葉の形態(厚さ)の変化については、前回説明したと思います。最初の前提なのですが、水草が水中で気孔を開閉しても意味がありません。気孔は、気体中の分子の拡散速度が早いことを利用して葉の中にも空気の層(細胞間隙)を作って細胞内への二酸化炭素の輸送効率を高める仕組みです。水草ではそもそもそれが成り立ちません。前回の講義で述べたように、水草ではむしろ表皮の表面から二酸化炭素を取り込み、その代り葉肉細胞の層の数は非常に少なくしているのです。
Q:今回の授業で気孔の周囲には海綿状組織が少ない可能性があるということであった.このことについて調べてみると,海綿状組織は「二酸化炭素と酸素がそのまわりを循環できるような迷宮のような空間を持っている.その空間は外気とガス交換する気孔の周辺で特に大きい.」ということがわかった.ここで1つ疑問に思うことは,植物が海綿状組織を配置するときに気孔をどのように認識しているのかということである.気孔があるという何かしらの因子が存在し,それを海綿状組織が受容して空間を大きくする場合と,海綿状組織の空間が広く配置された部分に気孔を作る場合の2つの可能性があるのではないかと推論した.そこでこのことをあきらかにするための実験を考えてみたい.参考文献(2)によると気孔の形成と分布パターンを支配する遺伝子が発見されている.そのためこの遺伝子をノックアウトして気孔が形成されないとすれば,モデル植物であるシロイヌナズナの気孔形成遺伝子ノックアウトを作り海綿状組織に空洞が特に大きな空洞が出来るかどうかを見てみるのが良いだろう.もしノックアウトであっても海綿状組織の大きな空間が認められた場合には,海綿状組織を大きな空間に配置する遺伝子が別に存在する可能性が新たに出てくる.一方気孔が存在しない場合に海綿状組織が比較的密に配置された場合には,気孔の形成に誘導されて海綿状組織の大きな空間が発達すると示唆されるだろう.
参考文献 (1) キャンベル生物学 丸善株式会社 Nell A.Campbell p.807、(2)植物のミクロの呼吸孔,気孔の形成と分布パターンを支配する遺伝子を発見 http://www.jst.go.jp/pr/info/info184/index.html(2011年10月22日閲覧)
A:確かに気孔のそばに大きな細胞間隙があるのであれば、可能性としては、気孔が先にできてそこの細胞間隙が大きくなるか、あるいは大きな細胞間隙があるところに気孔ができるか、という2つの可能性が考えられますね。論理的な考え方だと思います。気孔の形成のメカニズムについては、そのシグナル伝達がかなり分かっていますから、そこにこのような考え方を取り入れるのは非常に面白いと思います。
Q:今回の授業で蒸散について教わった。そこでは蒸散をすることで根からの水分の吸収を促進し、植物体内の水および生存に必要な物質の輸送を行っているということであった。このことは切り花を飾る際に、茎の部分を少しずつ切り落としていくと長持ちするということに直結していると考えた。数日間、切り花を水につけておくと、その切り口が腐食していき、それに伴って維管束がふさがってしまう。すると葉が蒸散をしても新しい水分が入って来ずに水分不足の状態になるか、もしくは水分の不足を感知して蒸散が抑制されるかのどちらかである。これではいずれにせよ水分の通りが悪くなり植物にとってストレスとなってしまう。そのような状態の時に腐食した切り口を少し切り落とし、また新たな維管束がむき出しになることによって、水分の通りが良くなり植物にとってストレスが軽減されると考えた。また植物にとって水分の量が十分すぎるくらいにあるよりも、その正常な通り道が確保されているほうが重要であるとも考えられる。
A:内容的には特に問題ありませんが、もう少し独自の考え方がほしいですね。これだけだと、やや当たり前の感じです。あと、最後の部分「水分の量が十分すぎるくらいにあるよりも、その正常な通り道が確保されているほうが重要である」というのがどこから来た考えなのかがよくわかりませんでした。
Q:今回の講義は植物の茎について習った。茎の断面図の写真を見て海綿状組織の部分の密度が小さい理由についてみんなで考えた。高校時代から見覚えのある図であったため全く不自然に感じたことがなかったが、改めて考えると不思議である。このように密度が小さく見えるのは写真の撮り方の問題でもあったが、もう1度自分なりに考えてみる。気孔の近くである海綿状組織は空気の通り道である。蒸散や呼吸で物質の交換をするために広めに空間をとっているのだと考える。また、なぜ師管が道管よりも葉の裏側にあるのかも考えた。それは葉脈と関係している。葉脈も産生した養分を運ぶ器官である。そのため師管も葉の裏側に面して位置しているのであると考えた。
A:最初の部分「茎」とあるのは「葉」の間違いでしょうね。最後の部分もよくわかりませんでした。葉脈が養分を運ぶ器官であると言って、そのあと「そのため」となっていますが、どのような論理的なつながりがあるのかが不明です。もう少し、論理の流れを意識した文章を書くように努力してみてください。
Q:今回の授業では、「昼寝現象」及び「気孔を開く仕組み」が扱われた。昼寝現象は、植物が乾燥環境下に置かれた時、相対湿度の低くなる気温のピーク時付近(正午過ぎ~午後4時ごろ)には気孔を閉じて、蒸散を防ぐという現象である。昼寝現象が起きるならば、植物には「乾燥ストレス」を感知する仕組みが備わっていると推測される。本レポートの目的は、植物が乾燥ストレスをどのような器官・組織で感知しているのかを考察することである。植物において、水は導管内を根から葉に向かって一方通行に輸送されている。よって、植物において水の主要な排出口は気孔であると推測される。乾燥ストレスを感知するということは、体内の水分量の減少を感知することである。水は根から吸収され気孔から主に排出されるので、根が水の入口であり、気孔が水の出口である。体内の水分量の減少を感知するとすれば、「入口である根において、水の吸収量の減少を感知する」か、または「出口である気孔において、水(水蒸気)の排出量の増加を感知する」かのどちらかであろう。ここで、ある植物が乾燥ストレスを受けたと仮定する。その植物が生存するためには、乾燥による水分ロスを最小限にする必要がある。植物の主要な水排出口は気孔であるから、水分ロスを最小限にするには真っ先に気孔を閉じなければならない。気孔を可能な限り早く閉じるためには、乾燥ストレスを受けたというシグナルが素早く気孔(孔辺細胞)に伝えられれば良い。よって、気孔が水蒸気排出量の増加を感知し、自動的に気孔を閉じる仕組みを持っているとすれば、水分ロスを最小限にできるであろう。しかし、気孔が水蒸気排出量の上昇によって乾燥ストレスを感知するならば、土壌内に水が十分量存在しても、空気中の相対湿度が低いだけで気孔が閉じてしまうという場合が想定される。水が十分確保できているのに気孔を閉じてしまえば、二酸化炭素を十分量得られずに光合成量が低下してしまう。光合成量が低下すれば明らかに生存に不利である。したがって、気孔が単独で乾燥ストレスに反応する仕組みを備えていることはないであろう。ゆえに、植物では根における水の吸収量減少が乾燥ストレスとして感知されていると推測される。根の水吸収量が減少すれば、導管で輸送される水の量も減少する。導管から供給される水分量の減少によって、膨張していた孔辺細胞から水が抜け、気孔が閉じるのではないだろうか。
参考文献:園池公毅 光合成とは何か 講談社 2008年
A:実際には、今回の授業で説明したように、気孔の開閉を引き起こす要因は、乾燥だけではなく、光、二酸化炭素など様々です。ただ、このように一つの要因について、その感知のメカニズムを考察してみることは非常によいことだと思います。
Q:今回の授業では、昼寝現象や葉の生長に関わる物質(二酸化炭素やショ糖など)、蒸散について学びました。植物を、二酸化炭素濃度が高い状態におくと気孔が閉じられ、その代わりに葉の温度が上昇する、という話がありましたが、そもそも気孔を閉じてしまったらガス交換が出来なくなり、結果的に呼吸も不可能になるということであるから、気孔を閉じていてもかなりのダメージになり、気孔を開いているために水分不足で枯れてしまうのと大して変わらないのではないか、という疑問を持ちました。ここで、気孔を閉じることと閉じないことでどれだけの差が出るのかを考えてみました。蒸散は、温度調節ができるというメリットに対して、水分を失うというデメリットがあります。呼吸には、エネルギーを得られるというメリットに対して、有機物の糖を消費していくというデメリットがあります。気孔を閉じれば温度上昇とともにエネルギーの獲得も出来なくなります。気孔を閉じるのと閉じないのでは、蒸散による水分の損失か生長のために必要な養分の不足か、どちらが先に訪れるのかで違いがでるのでしょうが、植物はなるべく長い期間生き延びられるような道を選ぶのだろう、と思いました。
A:これは前回の講義で説明したと思うのですが、大気中の二酸化炭素の濃度が0.04%なのに対して酸素濃度は21%あります。これが、呼吸と光合成にとって大きな違いを生み出します。すなわち、気孔の閉鎖は、二酸化炭素を消費する光合成にっては極めて深刻な影響を与えますが、酸素を消費する呼吸にとっては即座に問題になることはないのです。
Q:今回の授業で、気孔が周囲の環境によって蒸散の速度を調節していること、二酸化炭素濃度依存的に気孔の開閉が行われることが分かった。しかし、気孔が閉じている状態でも、クチクラに覆われていない気孔からの蒸散は、完全に防ぐことはできないと考えられる。植物は温度の上昇よりも水の保持を優先するということから、大気中の二酸化炭素濃度が常に高い状態であれば、気孔は減らした方が生存する上で有利ではないだろうか。つまり、大気の温度が上昇しても、気孔を増やして気化熱を促進することはないと考えられる。逆に、大気中の二酸化炭素濃度上昇した場合、植物は気孔を減らし水分を保持しようとするはずである。よって、今後、二酸化炭素濃度上昇による地球温暖化が進行したとすると、植物の気孔密度は低下していくと推測される。
A:面白い議論だと思います。この議論の前提は、気孔を完全に閉じても水の蒸散は有意にあるだろうということですね。つまり、クチクラからの蒸散に比べて面積的には非常に小さい閉じた気孔からの蒸散がある程度なければ、気孔の数を減らすメリットがありません。これが実際にどうなのかについては、残念ながら僕もよく知りません。
Q:今回の授業で、フォトトロピンという光受容体が青色光を感知して気孔を開くというお話がありました。フォトトロピンという名前を初めて聞いたので調べてみたところ、フォトトロピンには1と2があって、気孔の開口だけでなく、光屈性や葉緑体の集合・逃避反応にも関係があるということです。これらの植物の反応が青色光によって起こっていることについて考えました。たまたま青色光を感知する受容体があるのではなく、青色光が植物にとってなんらかの重要な意義を持つのではないかと思います。光に反応して気孔を開くということは光合成のためであると考えられるし、また、葉緑体の集合・逃避反応も光合成にかかわるので、青色光が植物の光合成において特に重要な役割をもつのではないかと考えました。また、プロトプラストに光をあてると細胞が膨張したというお話がありました。このことについて考えると、プロトプラストは細胞壁を溶かしたものであるので、フォトトロピンの存在する場所は細胞壁ではないと考えられます。光を受容する蛋白質であるので、なるべく光を受けやすいところに存在するのがよいと思うので、細胞膜上か細胞膜の内側にくっつくように存在するのではないかと考えました。
参考:戦略的創造研究推進事業発展研究(SORST)「光受容体フォトトロピン2の機能解析と葉緑体運動」http://www.jst.go.jp/kisoken/sorst/hyouka/2004/pdf/h16_kagawa.pdf
A:光受容体にはフォトトロピンのほかに、クリプトクロームやフィトクロームなどがあります。これらについては、時間があれば今後の講義の中で説明したいと思っています。
Q:前回の講義の中で、「二酸化炭素濃度が上昇すると植物は気孔を閉じ、結果として葉の温度が上昇する」という話題が出ました。私はこの事象に興味をもったのでこの事象についてもっと調べてみることにしました。まず、なぜこのような現象が起きるかというと、同気温下で二酸化炭素濃度が上昇すると光合成速度が高くなります。光合成の化学反応式は
6CO2+6H2O→C6H12O6+6O2
なので光合成の結果として酸素が放出されます。酸素を放出するために植物は気孔を開くのですが、植物は昼間は蒸散活動も行っているので気孔から植物内の水分が出ていくことになります。植物はこれを防ぐためにたとえ植物内の温度が高くなっても気孔を閉じ、水分が出ていく方を選びます。では植物は気孔を閉じると水分を失われることはないのでしょうか。調べてみたところ、蒸散には2種類あることがわかりました。1つは我々がよく知っている気孔蒸散、もうひとつは細胞の表面からの蒸散であるクチクラ蒸散です。この2つの蒸散量を比較したところ、クチクラ蒸散は全蒸散量の約10%であり、ほとんど蒸散に影響しないということがわかりました(参考HP:THE TORTOISE、http://www001.upp.so-net.ne.jp/tortoise/the_tortoise_023.htm)。よって植物内の水分の放出を抑えるのに気孔を閉じるという現象はとても理にかなった現象であるということが判明しました。
A:酸素を放出するために気孔を開く必要はありません。上にも書きましたが、大気中の0.04%の二酸化炭素濃度がすべて酸素になったとしても、酸素の濃度は21%から21.04%になるだけで、これはほとんど誤差範囲です。植物にとっては二酸化炭素の濃度こそが重要なのです。
Q:植物の気孔は一般には昼間開いて夜に閉じ、晴れた高温の日にはよく開き、雨や寒い日には閉じる。今回の授業では、葉の水分量が少なくなり乾燥ストレスを受けると、葉の表面の気孔を閉じて気孔からの水分の蒸発を防いでいるとのことだった。植物は、気孔を通して年間440兆トンもの大気中の二酸化炭素を体内に取り込み、70兆トンもの水を蒸発させている。このように、地球上の水分循環において気孔は大きな役割を果たし、大気中の二酸化炭素濃度を決める大きな要因であることが分かる。植物の気孔ができるまでの一連の細胞分化を司る遺伝子を見つけ出し、品種改良などにより、気孔の開閉を人為的にコントロールできるようになれば、光合成による二酸化炭素の取り込みを促進することによって作物の生産量を上げたり、乾燥に弱い作物を雨の少ない地域で栽培することができるようになると思う。気孔を早めに閉じ、蒸散する水分を減らすことによって萎れにくい園芸作物を作ることができ、貯蔵性を向上できる。また、気孔を十分に開いて大気中の二酸化炭素を大量に吸収する植物を作ることができれば、地球温暖化対策にも繋がるのではないかと思った。
参考文献:・倉石晉、西成典子「植物生理学入門 上」東京大学出版会(1979年5月20日)、・http://www.jspp.org/17hiroba/kaisetsu/kinoshita.html
A:二酸化炭素の取り込みに比べて水の蒸散量が少ない気がしますが、そんなもんですかね?それはさておき、後半の部分、気孔の開閉を人工的にコントロールできれば・・・、という部分ですが、その前提としては、植物が充分に気孔の開閉をコントロールできていない、ということがなくてはなりません。それは正しいでしょうか?長い生物の進化の過程で、気孔の開閉を最適化できない、という前提を置くのであれば、なぜそうなのかの説明が必要なのではないかと思います。