植物生理学I 第12回講義
窒素固定と共生
第12回の講義では、根粒菌やシアノバクテリアの窒素固定と、植物と微生物の間の共生関係を中心に講義を進めました。以下に、いくつかのレポートをピックアップしてそれに対してコメントしておきます。
Q:根粒菌と植物との共生について考える。授業内で植物は何度も独立に窒素固定を失っているという話があった。私にはそれ以外にも理由があると考える。それは、植物のレグヘモグロビンをコードする遺伝子の変異である。根粒の断面は鮮やかなオレンジ色をしており、この色の由来がレグヘモグロビンであった。これより、根粒菌が窒素固定を行う上で相当な量のレグヘモグロビンが必要であることがわかる。仮にタンパク質であるレグヘモグロビンをコードするゲノムDNAに変異が生じたとすると、転写・翻訳を経て発現したレグヘモグロビンは正常に酸素を吸着できないことが予想される。この場合植物が窒素固定を必要として根からフラボノイドを出し根粒菌が共生を始めようとしたとしてもニトロゲナーゼが吸着されなかった酸素によって失活してしまい窒素固定が正常に行えないことが考えられる。このような場合植物にとっては窒素固定産物であるアンモニアが得られず、根粒菌と共生するメリットがなくなってしまう。また、根粒菌にとってもニトロゲナーゼが正常に働く条件が整えられないため植物側から養分が供給されたとしても窒素固定は行えず、共生する意味がなくなってしまう。私はこのような原理によって植物と根粒菌との共生が失われていったと考える。
授業内でレグヘモグロビンはマメ科植物特有のものであるという話があったが、そのほかの植物においても窒素固定細菌と共生していたならばニトロゲナーゼが正常に働けるよう酸素濃度を低濃度に調節する仕組みを持っていたはずであり、この仕組みがマメ科植物のように酸素を吸着するタンパク質を利用するものだったならばこのタンパク質の遺伝子が変異することで窒素固定が失われた可能性は十分に考えられる。これを証明するには、窒素固定を過去に失ったことがわかっている系統の現生種についてゲノムを解析し、レグヘモグロビンと相同なタンパク質をコードする遺伝子を発見し過去の変異の有無を調べることが必要になるだろう。
A:面白い考え方ですが、生物の進化の理解がやや不足しているように思います。ある共生植物個体でニトロゲナーゼに変異が起こった場合、その個体で窒素固定の能力が失われるのはその通りだと思います。しかし、そのような個体は、窒素欠乏条件では圧倒的に不利になりますから、適応度が低下し、そのような変異が集団中に広まることはあり得ないでしょう。個体が窒素固定能力を失うことと、ある集団において窒素固定能力が失われることは、区別して考える必要があります。
Q:授業の中でクローバーと牧草の割合を変化させていく実験が紹介されていた。その結果としてクローバーだけではなく牧草にも窒素が供給されているという結果が得られていた。クローバーと牧草は光などの資源を奪い合う競争関係にあると考えられる。根粒菌と共生関係にあるのはマメ科のクローバーであるため、クローバーの味方をするのが筋であり、イネ科の牧草にも窒素を渡してしまっては敵に塩を送るようなものであるように思える。ではどうして牧草にも窒素が供給されているのだろうか?この理由としてクローバーのみに窒素を供給し続けて野原がクローバーだらけになった場合、病気等が蔓延しやすくなり、かえってクローバーの生存に不利になってしまうからではないかと考えた。そのためクローバーの周囲にある植物にも窒素を送ることでクローバーの周囲に緩衝地帯としてほかの草を生えさせることでクローバー同士が隣接するのを防いでいるのではないかと考えた。他にもクローバーの周りにほかの草を生えさせることは、クローバーを餌とする虫等に見つかりにくくしたり、風よけとなったりすることや、クローバーがかく乱に強い種であると考えると、ほかの草もわざと増やすことでかく乱を誘発し、かく乱に弱い植物を排除していることも理由として考えられる。
A:「味方をする」という表現にびっくりしましたが、この場合は、「窒素を供給する」という意味なのでしょうね。クローバーと他の植物の相互作用を考えるという観点は、非常にユニークでよいと思うのですが、病気等の蔓延や、攪乱、虫に対する対策だとすれば、それは窒素欠乏とは直接関係ありませんよね。根粒菌と共生関係を持たない場合にも必要な対策だとすれば、その点を根粒菌に頼るのは危険な気がします。
Q:今回の講義で根について学ぶ中で、寄生植物ストライガのことを学んだ。ストライガは根菌と共生する宿主植物が共生菌を誘引する際に分泌するストリゴラクトンに反応して発芽し、寄生できる可能性をあげている。私はストライガがストロゴラクトンによって宿主を間接的に感知し、発芽するため農業に大きな被害を与えることは知っていたが、その対策あまり考えたことがなかった。そこで今回の講義を通して感じたのは、もしストリゴラクトンを分泌するが、ストライガの宿主にならない植物がいた場合、それを被害を受けている畑に植えればストライガ被害を抑えられるのではないかということだ。私は菌根菌と共生関係を形成するのはかなり限られた種だと思っていたので、自分が今まで思っていたより多くの種類がストリゴラクトンを分泌できて、さらにその中にはストライガの宿主にならないものもいると考えた。そこでそのような種を調べたところ、まずストライガが共生するのはイネ科植物であることが分かった。そこでイネ科以外の植物に注目したところ、アブラナ科であるシロイヌナズナは菌根菌とは共生しないが、ストリゴラクトンを分泌することが分かった(1)。ストライガが同じ農地にイネ科植物とシロイヌナズナがあったときに、シロイヌナズナのストリゴラクトンにも反応して発芽してしまい、成長できずに枯れるのか、また結果としてイネ科植物の被害が抑えられるのかは実験的に検証する必要がある。例えば実験室で主に被害が報告されるトウモロコシなどを用いて、トウモロコシのみの場合の発芽率と枯死率、シロイヌナズナのみの発芽率と枯死率、トウモロコシとシロイヌナズナを混ぜ、さらにその割合を何段階かで設定したときの発芽率と枯死率を調べる実験系を考える。また、今回の小レポートの内容には補足的なので、十分に考察できなかったが、シロイヌナズナが菌根菌と共生しないにも関わらずストリゴラクトンを分泌するという報告がとても面白かった。ストリゴラクトンの機能を調べたところ、シロイヌナズナのストリゴラクトンは光により生産量が増え、暗所でもシロイヌナズナの発芽を促進する作用があることが分かっているそうだ(2)。シロイヌナズナは光発芽種子だと記憶していたので、この結果はとても興味深く、その意味についてより考察したい。
(1) 米山弘一,謝肖男,米山香織,竹内安智. ストリゴラクトンの構造多様性と植物界における分布. 日本農薬学会誌. 2009, 34(4), p.302-305、(2)理化学研究所. ”寄生植物「ストライガ」の発芽を促す「ストリゴラクトン」の新機能を発見”. 研究成果(プレスリリース)2010, 2010年9月6日, https://www.riken.jp/press/2010/20100906/index.html (2025年1月10日最終閲覧)
A:全体として面白いレポートだとは思いますが、その面白みは、自分で考えたというよりは、参考にした文献の研究の面白みに依存する部分が多いように思えます。あと、シロイヌナズナの話に文献(1)が引用されていますが、文献にその記述を見つけることができませんでした。
Q:今回の講義では、カスパリー線という外界と内部を隔てる防御壁が根の最外部ではなく内側にあり、これは共生微生物が共生しやすいように防御を弱めているのではないか、外傷からカスパリー線を守っているのではないか、という意見があった。私は共生しやすいように防御を弱めているという考えに納得できなかった。もしこの考えが正しいのであれば、根と微生物の共生が始まる以前にカスパリー線が発達していたのであれば、共生を開始してから世代を経るごとにカスパリー線よりも外側の細胞層が肥厚していく様子や、あるいはカスパリー線がより内側にできるようになる様子が観察できるかもしれない。また、共生微生物と共生しない植物の根ではカスパリー線は最外層にあってもいいはずである。このような植物が見つかればこの考えを肯定できる。なければ、もともとカスパリー線は根の内側にでき、外側を表皮の細胞で覆うことでカスパリー線を外傷から守る。その副次的効果として共生しやすい環境が形成したのではないかと考えられる。また、カスパリー線はそもそも細胞壁を通る物質輸送を防ぐものであるから、カスパリー線より外側の細胞層は溶液の点で外部との緩衝剤なのではないかと考えた。
カスパリー線が根の内側にある意義確かめるための簡単な実験を考えた。人工的に、異所的にカスパリー線を形成させることが可能である1)。共生微生物と共生する植物を用いて、A:正常株、B:カスパリー線より外側の細胞ができないようにした(or外側の細胞を取り除いた)株、C:カスパリー線を根の最外層に形成させた株 を作成する。まず、共生微生物のいる環境で育て、Cで共生が(若干共生しにくくても)成立した場合、共生のために防御が弱い場所を設けているという考えは否定される。次に、共生微生物のいない環境で育て、栄養塩の吸収効率を見る。AよりBの方が吸収効率が低い場合、カスパリー線が最外層に無いことで(カスパリー線よりも外側に多数細胞があることで)、外界と接触する表面積を増加させ吸収効率を上げていると考えられる。さらに、共生微生物のいない環境で育て、根の周囲の栄養塩の濃度を変化させたときの導管内の栄養塩濃度の変化を観察する。BがA、Cよりも激しく変化した場合、カスパリー線より外側の細胞が、溶液濃度の点で外界との緩衝作用を担っていると言える。A、B、Cが同様の濃度変化を見せた場合は、カスパリー線より外側の細胞層は溶液緩衝作用はないと言える。また、通常生育している環境で育てたときにCの最外層のカスパリー線が外傷を受け損傷していた場合、カスパリー線より外側に細胞層を設けることでカスパリー線を外傷から守っていると考えられる。
1)神谷岳洋.カスパリー線形成の分子機構 植物の内と外を分ける構造.化学と生物,Vol. 55, No. 11, 2017, p.p. 727-729.
A:緩衝作用という考え方は斬新でよいと思います。ただ、実験で確かめている緩衝作用は栄養塩の濃度に対するものだけですよね。緩衝作用は、それ以外にもいろいろな作用があり得ると思いますので、その点がやや気になりました。
Q:カスパリー線が外側でなく内側にある理由について考察する。根を横方向に切断して円としたとき、根の外側よりも内側の方が円周が短い。そのため、エネルギーコストの観点からカスパリー線の維持にかかるコストやカスパリー線の内外を物質が透過するのにかかるコストが大きいならば、よりカスパリー線の総距離が短くなる内皮細胞の内側に配置するのが合理的だと考えた。カスパリー線の維持にかかるコストについて調べたところ、構造の維持に関するコストについての記載は見つからなかったが、カスパリー線は細胞壁に蓄積するスベリンやリグニンによって構成され、これらの化学物質の合成にはエネルギーや資源が必要である(1)ことが分かった。そのためカスパリー線は長いより短い方がエネルギーコストの面から有利であると考えられる。また、カスパリー線の内外を物質が透過するのにかかるコストについて考える。アポプラスト経路では基本的に受動輸送によって物質が輸送されるのに対し、シンプラスト経路では細胞内に入る必要があるため物質や物質の濃度によっては能動輸送をする必要がある。そして能動輸送には大量にATPを消費する。ここで、カスパリー線の外側はアポプラスト経路とシンプラスト経路が混在しているのに対してカスパリー線の内側にいくにはシンプラスト経路に入る必要であることから、ここで大きなエネルギーがかかると考えられる。また、カスパリー線の内側では必要な物質だけを特異的に維管束に取り込むために能動輸送が必要な場合も考えられる。したがって、カスパリー線の外側よりも内側の方が圧倒的にエネルギー消費量が多い。そのため、カスパリー線がより根の内側にあることでエネルギー消費が少ない外側の領域を広くし、より狭い範囲のみで能動輸送を行ってコストが少なく効率的に維管束に物質供給ができると考えた。以上より、エネルギーコストの観点からカスパリー線が外側でなく内側にある理由を考察した。
【参考文献】(1) 神谷岳洋."1. 根におけるカスパリー線およびスベリン層形成の 分子機構と養分吸収における機能".日本土壌肥料学雑誌.2021,92(2), p. 70~75
A:まず、一か所「内側」と「外側」が逆になっていたところを修正しました。構造を作るコストとエネルギーコストからカスパリー線の位置を考えるという方向性は面白いですね。非常に良いと思います。
Q:今回の講義にて、鉄分は植物の葉緑体の光化学系の産生に必要になることについて触れられた。また、以前の私のレポートにて、「一部の植物の茎が葉のように葉緑体を持つのは何故か」ということについて考え、「茎で葉緑体を作ること自体はそこまでコストがかからず、負担になっていない」、あるいは「葉に加えて茎で行われる光合成量も無視できないほど大きい」などの可能性が考えられるということを書いた。植物は光合成のために葉緑体を作る。そして葉緑体内の光合成器官には鉄分が必要になる。したがって、もしも鉄不足が深刻になれば、植物の光合成量は下がってしまうだろう。では、もしも「長い世代をかけて少しずつ鉄が不足する」という状況になった場合、茎に葉緑体を持つ植物にはどのような影響が出るのだろうか?これは「茎の光合成量や効率がどの程度か」によって起こる事象が変わってくる。それぞれについて、以下の①②を考えた。
①茎での光合成は効率が悪く、光合成量もけして多くはない。茎は自身の葉に隠されて日陰になり、葉ほど効率的には光を浴びられないという状態の場合である。世代をかけて少しずつ鉄が不足し、鉄不足で葉緑体を作るのが今より困難になった場合、光合成効率が悪い部分の葉緑体は積極的に無くし、無駄なコストを削減するという方向へ進化が起こる可能性が考えられる。光合成をするのは効率が良い葉だけに絞り、それ以外の部分は余計に葉緑体を作らない。葉緑体の数を最小限に抑えることで、鉄不足の環境に適応する。
②茎での光合成量も無視できないほどであり、効率もそこまで低くはない茎でも光合成を続ける。鉄が不足するので大きさや成長量に制限は出るが、それでも茎の葉緑体は無くならない。
A:よいと思うのですが、せっかく方向性を2つに絞ったのですから、そのどちらがもっともらしいのかについて一言あるとよいと思います。論文などで可能性が二つあってどちらかを結論できない場合でも、これこれの理由で自分たちはこちらだと思うけれども、もう一方の可能性を否定できない、といった書き方にした方が、著者のメッセージが明確になります。
Q:カスパリー線が内側にある理由として肥大成長時のコストが少ない、外傷などを受けにくいといった考えが出ていて、どちらも正しいと思うが、私は、カスパリー線がフィルターの役割をすることから、分離する物質だけがカスパリー線まで来るように内側にあるのではないかと考えた。カスパリー線よりも外側にも細胞があり、外部の物質は外側の細胞間を通る中で、粒子の大きい物質ほど内部にたどり着きにくくなる。するとカスパリー線部分には粒子の小さい物質が集まる。そうすれば細胞のチャネルなどで吸収する際に分子量の大きい物質が詰まって物理的に吸収の邪魔をすることが無くなると考えられる。フィルターの役割を高めるための構造が成長時にコストが少ない、外傷を受けにくいといったメリットがあったことで現在までこの構造が残ったのではないかと考えた。
肥大成長のコストに関して、根の外側に位置している構造が存在するのは成長のたびにその構造を伸長する必要があり、コストが高いが、根毛や根端組織のように根の外側に位置する構造もある。これらの組織はなぜコストをかけてまで外側に存在するのか疑問に思った。まず根毛だが、大きさが小さいため一つの構造を作ること自体にかかるコストは少ない。そのため、コストをかける余裕があるのではないかと考えた。次に根の先端に位置する根端組織だが、実際に伸長するときに分裂する部分は外側には存在していない。外側にあるのは根冠で丈夫な構造をしているため外傷などのリスクも少ない。これらのことから、肥大成長する際に外側にある構造はコストをかけないものまたはコストが小さいものが配置されているのではないかと考えた。
A:前半部分は面白いアイデアだと思います。ただ、これだとアイデアを説明しただけなので、何らかの形でそれをサポートするような論理が欲しい気がします。後半は、それはそれで面白いのですが、ロジックとしては全く別になるので、可能であれば、どちらかに絞って、その論理をもっと追求したいところです。
Q:今回の授業で根には水と不純物が浸透し、根の細胞壁間を埋めているカスパリー線が水を選択的に通すと習ったが、カスパリー線を通れなかった不純物はどうなるのだろうか。調べたところカスパリー線が水を選択的に透過することに着目した研究は多数見つかったが、カスパリー線を透過できなかった不純物の行方に関する文献は見つからなかったため自分なりに考える。根に入った不純物は細胞壁間に留まる、細胞内に取り込まれる、根から排出される、という3つの運命のいずれかを辿ると考えられる。まず不純物が細胞壁間に留まる場合を考えると、時間経過とともに細胞壁間に溜まる不純物の量は増えるため、新しく入ってきた水が通りにくくなり、根の時間あたりの水の吸収量が減ると考えられる。しかし、時間が経って植物が成長するほど必要な水の量は増えるため、時間経過とともに根の水の吸収量が減ると水の供給が需要に追いつかなくなる可能性がある。そのため、不純物が細胞壁間に留まることはないと考えられる。次に不純物が細胞内に取り込まれる場合について考える。不純物とひとくくりに言っても植物に有用な物質や不必要な物質など様々なものがあると考えられる。植物にとって有用な不純物はチャネルなどを介して細胞内に取り込まれ、使用されると考えられる。不必要な物質はもし細胞内に取り込まれたら老廃物と同様に液胞に輸送されると考えられるが、細胞がコストをかけてまで不必要な物質を取り込む仕組みをもっているかは疑問である。細胞壁間に不必要な不純物を留めておくことで起きる弊害に伴うコストと液胞に輸送するコストを比較して不必要な物質の処遇が決まっていると考えられる。最後に不純物が根から排出される場合について考える。根の外側から中心に向かって不純物を含む水の流れができているため、その流れに逆行して不純物を排出することは難しいと考えられる。これらのことから不純物が細胞壁間に留まる可能性や根から排出される可能性は低く、カスパリー線を透過できなかった不純物の一部または全てが細胞内に取り込まれていると考えられる。
A:あまり不純物という言い方はしなかったと思うのですが……。どのような物質を考えるのかによって、必要な考え方は異なるような気がします。また、根の周りの水の動きを体積流より考えているようですが、拡散の方が効く可能性を考えた方がよいと思います。もし拡散であれば、濃度差が形成されなければ、物質の正味の移動自体が起こらないことになるでしょう。
Q:今回の授業では, 植物の根が菌に出すストリゴラクトンを感知して発芽するストライガという寄生植物を紹介された. そこで私は寄生植物が周りの植物の存在を感知する別のメカニズムとしてフィトクロムを用いたものを考えた. なぜフィトクロムを用いるのかというと, フィトクロムは葉の吸収する波長と葉を透過する波長の割合を認識することで上部に葉があるかどうかわかるからである. つまり, 上に葉があるということは近くに植物が生えていると考えられ, 植物に寄生する寄生植物にとって都合がよい環境であると考えられる. また, このような感知システムはストライガのように発芽のときに限定されず, 発芽後も寄生植物に届く葉の吸収する波長がより少ない方へ茎を伸ばせば宿主となる植物に近づくことも可能になると考えた. そして, 発芽をする閾値となる波長の割合をより上部を植物の葉が覆っている環境に変更すれば, 周りに寄生対象となる植物が多い環境で発芽し成長することができると考えた.
A:考え方はユニークでよいと思います。僕はストライガの種子の大きさを知らないのですが、おそらくかなり小さいのではないでしょうか。もしそうだとすると、発芽直後に寄生関係を樹立する必要がありますから、周りの植物を感知するといった程度の距離のある話ではなく、ごく近くに根がある必要があるのかもしれません。その場合は、やはりストリゴラクトンでなくてはいけないのかもしれません。それでも、考え方は面白いので、どのようにフィトクロムを利用したら寄生が可能になるかを考えてみる価値はありますね。