植物生理学I 第2回講義

形は機能に従う

第2回の講義では、最初に形と機能の関係の一般論と、植物の器官の構成について紹介したのち、葉の形態と機能を中心に講義を進めました。以下に、いくつかのレポートをピックアップしてそれに対してコメントしておきます。レポートを求めるのは初回なので、少しでも、どのようなレポートが求められているのかがわかるようにしたいと思い、少し多めに選んでコメントをしました。次回以降は、選ぶのはせいぜい10前後にするつもりです。なお、レポートの選択は、その良し悪しによっているわけではありません。良くも悪くも特徴がはっきりしたレポートを取りあげています。


Q:植物の葉に関して、遺伝子変異や欠失は葉の形状を変化させるトリガーであると学んだ。葉の形状について思い出していたら、疑問が生まれた。経緯としては勘を占める割合が多い上での疑問になるが、太陽光からエネルギーを生産するために広げる葉は光吸収という共通の目的に進みながらも多くの多様性を確保したのは何故だろうか。進化の過程で葉の形状が異なる種が生まれる理由としては、そのままでだと生存できない(太陽光が得られない)が、形状が異なれば得られるから進化したと思う。つまり優位種からのおこぼれを狙う戦略である。しかしその戦略だと多様性を得るには限界があると思う。おこぼれはそもそも絶対量が少ない上に進化の手間と比べて得られるものも少なくコスパが悪いからである。私はそのようなネガティブな進化より、現環境を上書きするポジティブな進化の繰り返しが今の植物の生態の特徴であり、多様性の根拠ではないかと考える。

A:全体として、自分で考えを展開しようとしている点は評価できますが、「形状が異なれば得られる」というのは何が得られるのか意味不明ですし、「現環境を上書きするポジティブな進化」というのが具体的に何を意味しているのかもよくわかりません。もう少し、相手に伝わる日本語にしましょう。


Q:葉の遺伝子についてan変異体は葉身が細くなり、rot3変異体は寸詰まりになるという内容が挙げられていた。このことについてどのような得があって長さと幅がそれぞれ別の遺伝子に対応していて、一つの遺伝子のみで成長しないのか考えた。一つは単純に葉面積を増やすだけでは単位面積当たりに得られる太陽光の量が増えず、効率が悪いということが考えられる。葉身は光合成で太陽光のエネルギーを取り込んで有機物を合成し、呼吸によって生成した炭水化物からATPを生成する。葉身と葉柄の関係のように太陽光が当たらない部分に関して長さや幅を長くして葉身を設けることは、光合成による生産を行わずただ炭水化物を呼吸によって消化してしまうため植物全体として得られるエネルギーの総和を減らしてしまうことになる。したがって、下のほうの葉でも光の当たる部分にのみ葉身を設けるために長さや幅を調節して育つように設計されているのではないかと考えた。
 二つ目の点として他の植物と生えている位置が近い場合に競争で有利になるのではないかと考えた。一つの遺伝子のみで葉面積を増やせる植物と遺伝子が一対一に対応して長さと幅を決められる植物を比較した場合、前者は光を得ようと同じ縦横比で葉を成長させていくが、後者は光の当たりづらい部分は幅を細くし、光の当たりやすい部分は葉身を長くして相手の葉に覆いかぶさるという発育の仕方を選べるためそうでない植物からエネルギーを奪って前者は淘汰されるのではないかと考えた。
 三つ目の点として葉面積を増やす遺伝子の遺伝子変異のリスクを減らすことが考えられる。例えばan変異体によって葉身を太くすることができなくとも、縦の長さを伸ばすことができる。葉にとって長さと幅ともに葉面積を増やせないことはエネルギーを得づらくなり致命的であるから、長さと幅のそれぞれに葉身の成長を分けた種が生存確率が高くなって淘汰されなかったのではないかと考えた。

A:一つ一つ丁寧に考えている点は評価できます。一つ目は、内容としては葉柄のメリットの話なのではないでしょうか。もし、そうであれば、幅を調節する遺伝子を使って葉柄を作り出しているという議論の前提を最初に提示すると、話が分かりやすくなると思います。あと、考え付いた点を並べるだけでなく、できたら、その考えが他の事実から、補強もしくは場合によっては否定されるかどうか考えることが重要です。例えば、二つ目が正しければ、植物の葉の形態は、光の当たり方によってその形が大きく変化するはずです。にもかかわらず、同じ種類の植物の葉の形態がだいたい同じであるとすれば、それは二つ目の考え方は支持されないことになると思います。そのような論理の積み重ね(単発の論理ではなく)がこの講義のレポートの評価ポイントです。


Q:自分は今回の授業で、葉の形状は基本的に平たい形状になっているのはエネルギー密度が低い太陽光エネルギーをできるだけ多く吸収するためだという話から、珍しい葉の形状を持つ植物がどのような得があってそのような形状になったのかに興味を持った。自分が興味を持った植物は大型緑塔(Crassula pyramidalis)というベンケイソウの一種である(文献1)。大型緑塔は葉が一枚一枚ほとんど隙間なく重なり合うことで、名前の通り緑色の塔のように葉が積み重なった形状をしている。このような形状になっている目的は、恐らく蒸散をできるだけ防ぐためであると考えられる。葉の1枚当たりの表面積を小さくすることで蒸散のための気孔の個数を減らし、乾燥から身を守っていると考えられる。実際、東京と自生地である南アフリカ共和国の首都であるケープタウンの年間降水量を比較すると、東京の降水量はケープタウンの3倍近くになっており、ケープタウンの方が日本と比べて水が貴重であるということがわかる(文献2、3)。さらに、本来の葉の目的である光合成のためには平たい形状が適しているのにもかかわらず、乾燥から身を守るために光合成という目的から遠ざかるように葉の表面積が小さくなっている。これらのことから、授業で触れた「植物は温度上昇を防ぐことよりも蒸散によって水を失わないことを優先する」という話に加えて、「植物の中には、光エネルギーを効率よく得ることよりも水を失わないことを優先するものもいる」という仮説がたてられる。光合成に用いられる水と光エネルギーのどちらを優先するのかは、その植物が生育する環境によって左右されると考えられる。
参考文献
1.みんなの趣味の園芸 「クラッスラ 大型緑塔」 多肉植物・サボテン図鑑 <https://www.shuminoengei.jp/?m=pc&a=page_p_cactus_detail&target_cactus_code=29> 2023/10/21アクセス
2.旅行のとも Zen Tech 「ケープタウン気温」  https://www.travel-zentech.jp/world/kion/South_Africa/South_Africa.htm 2023/10/21アクセス

A:論理展開はだいたいよいと思うのですが、このこと自体は、多肉植物やサボテンに一般的に言えることですよね。大型緑塔をわざわざ取り上げる必要性が、現在の形ではないように思います。一方で、普通のサボテンで議論した場合、おそらく多くの人で同じ論理展開になってしまい、独自性を示すのは難しいように思います。重なった葉の部分は、どのようになっている(と予想される)のか、同じような形態の柱サボテンと比べての損得はどうなのかなどを議論できれば、大型緑塔を取りあげる意義があると思います。


Q:葉と飛行機翼の断面構造が類似していて耐久性に優れた特性を持つことについて、これとは少し違うが、「バイオミメティクス」という技術が存在する。バイオミメティクスは、生物の構造や機能を模倣し、活用する技術のことである。さまざまな企業で、例えばハスの葉を模倣し、表面に微細な低表面エネルギー物質で覆われた突起物を施すことでヨーグルトの付きにくいフタを開発したり、タコの足を模倣してあらゆる形状の物体を把握し吸着できるロボットアームを開発したりしてきた。生物の進化の過程と、技術開発の過程はよく似ていて、同じような機能を求めると、自然と人工物のどちらも似た構造を持つようになるのではないか、と考えた。それを逆手に取り、生物の仕組みを利用することを考えたのがバイオミメティクスであり、とても有効で興味深い研究分野であると感じた。 参考文献 “薄く平らな葉は翼と同じ超効率的構造”. Science Portal. 2015.02.13 https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2015/02/20150213_01.html(参照:2023.10.21) “バイオミメティクスの活用が製造業にもたらす新たな変革”. 三菱総合研究所. 2019.06.10, https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20190610.html(参照:2023.10.21)

A:前の方の、「開発したりしてきた。」までは、(調べた)事実ですよね。次の一文は「考えた」ですが、なぜそのように考えて、それをどのように検証するのかの論理がなければ、サイエンスとしては不十分です。最後は「感じた」と感想になっていますので、これだけでは、この講義のレポートとしては満足するものにはなりません。


Q:今回葉の機械的強度を維持している形態の一つに葉脈があると習った。その際スライドに添付されていた図では四角い紙の中央に、端から端まで折り目をつけていた。一方、実際の葉ではこのように端から端まで画一的な折り目を付けるわけにはいかないだろう。物質の輸送を担う維管束組織としての葉脈は、基部に近いほど輸送量が増大し、先端部ではその逆であるはずである。先端部に、物理的支持のためだけに図太い葉脈を用意することは不経済であろう。結果、現実の葉で見られるように、先端部に近づくにつれ葉脈は細くならざるをえないはずである。その結果、先端部では強度が不足し基部と同じだけの面積の葉を維持できなくなるはずである。このように、葉のかたちが長方形ではなく基部を底辺とする三角形型を取ることが多いのは、先端部ほど組織が新しいという理由もあるだろうが、葉脈の強度不足による制限でこの形を取らざるをえなかったという理由もあるのではないか。

A:これは、ユニークな考え方で、高く評価できるレポートです。葉の先端が細くなる理由を葉脈の強度不足による制限に求めた論理展開は始めてみました。ただし、茎の近くでは、すべての葉の重さが曲げのモーメントに寄与するのに対して、葉の先端部分の曲げのモーメントには、その部分の重さだけが寄与すると思いますから、実際には、先端が四角い葉でも大丈夫なのかもしれません。


Q:薄い光のエネルギーを効率的に集めるためには葉は平たい必要があると学んだが、効率的に集めるための条件は他にもあると考えられる。今回は環境の条件を一度排除してこの条件について3つ考えた。1つ目は、葉が地面と平行である必要がある。エネルギーを集めるためには、太陽光が当たる面積を広くする必要があり、葉が地面に対し角度を取っているより平行の方が同じ体積で広い面積を得る状態として効率的である。2つ目は、葉にしわなどの細かい段差があり葉の表面積を大きくする必要がある。段差がなく限界まで葉を平たくするよりも、細かい段差を増やすことのほうが葉の表面積を大きくでき、太陽光のエネルギーを集めることが可能である。しかし、葉を平たくすることと細かい段差をつくることはどちらも必要な要素であり、最も表面積を大きくできる割合をとる必要があると考えられる。実際、葉脈があるところでシワがあり顕微鏡で観察すると小さな段差が多くあると考えられる。3つ目は、葉柄を細く頑丈にする必要がある。ここまで葉について述べてきたが、葉を支えている葉柄についても考える。葉柄が長ければ、葉同士が被ることなく効率的にエネルギーを集めることができるが、葉の質量を葉柄に多くかけるよりは、葉にかけて葉を増やす方が効率的である。そのため、葉柄はできるだけ質量をかけず、光合成をすることができないため細く、葉を支えられるだけ頑丈にする必要がある。その結果、葉柄がほぼない植物もあると考えられる。このことから、葉は光のエネルギーを集めるために複雑な事象が絡まって最も効率の良いかたちに変わっていったと考えられる。

A:これもよく考えていてよいと思います。ただし、2つ目については、段差をつけても投影面積は変化しないので、1つ目での角度の議論と矛盾するように思います。あと、細かいことを言えば、1つ目で「地面と平行」とあるのは、実際には「光に対して垂直」でしょうね。


Q:授業では植物の葉などがなぜ「葉のような」形をしているかについて扱いました。その中で葉の葉柄は通常葉身と違って平たくないという話題がありこれは葉の根元には日光が当たりにくいため、根元部分の面積を増やすコストをおさえる目的があるだろうというお話だったと思います。しかし葉柄が存在しない植物も散見されます。これがなぜかについて考えたことを述べます。まず葉の多い成木や節間が短い植物では確かに葉柄があることで光合成可能面積は増えるでしょう。しかし例えばつる性植物をはじめ長く伸びる生態を持つ植物などでは節間を比較的大きくとることになるでしょうから、直上の葉が光合成を邪魔することはあまりないと考えられ、葉柄を作る労力が無駄になってくると考えられます。また葉柄は葉身と比べて物理的に弱いことが考えられます。風や水流に流される環境にいる植物は、簡単に葉がちぎれないように根元までしっかり平たい葉を持っていた方が有利であるとも考えることができます。

A:非常に独自性がある、とは言えないかもしれませんが、論理の流れはよいと思いますし評価できるレポートです。さらに改善するとすれば、現在は、抽象論で終わっているところに、少しでも具体例を入れると説得力が増します。例えば、つる植物は、実際に葉柄を持つのか持たないのかないのか、持つとすれば短いのか長いのか、は身近なつる植物を思い浮かべればわかるでしょうし、たとえしらなくても、ちょっと検索すればわかると思います。そのような具体例を入れると、論理の深みがぐっと増します。


Q:植物の重要な機能として光合成が挙げられるのは納得出来るが、一方で光合成で合成された糖はそのままでは新たな組織の形成などに使われるためのエネルギーとしては使えない。エネルギーとしては合成された糖をATPに酸化する必要がある、そのための機能が呼吸であり光合成と同程度に重要な機能では無いかと私は思う。しかしながら、現在の葉の構造としては呼吸に必要な気孔は各々の葉の裏面にしか存在しない。私なら、日当たりの良い上の方にある"光合成をする専用の葉"と日当たりの悪い下の方にある"呼吸をする専用の葉"を分けた方が効率がいいという仮説を立てる。今回はこの仮説について議論していく。まず、葉を分けるメリットとしては昼間に光合成し、夜に呼吸してATPを作り溜めする必要がなく、昼間でも必要なだけATP合成が出来無駄がない。つまり糖消費が糖合成を上回って植物が衰弱しづらい。また、裏面にも柵状組織を作ることで太陽光の地面からの反射も受け取れる。次に葉を分けるデメリットとしては、日当たりの良い方にある光合成専用の葉がなにかしらの影響で枯れたり取れたりしたときに、日当たりが悪いはずだった葉に光が差しやすくなるかもしれない。そのような場合にその葉が光合成が出来ないとむしろ損である。よってこれらのメリット・デメリットを天秤にかけた際に様々な要因で葉を失う恐れがある自然界では今回挙げたデメリットの方がメリットよりも大きく作用すると考えられる。つまり現在の葉の表で光合成、裏で呼吸の構造が一番理にかなっている。

A:これは、考える姿勢は良いのですが、いくつか誤解があるので、評価することができません。まず、中学で習ったと思うのですが、呼吸は夜だけするわけではありません。光合成をするのは昼間だけというのは確かですが。また、呼吸をするために気孔を開く必要はありません。大気中の二酸化炭素濃度は0.04%ですから、少し光合成をすれば枯渇してしまいますが、酸素濃度は21%ありますから、光合成と同じだけの呼吸をしたとしても、その濃度は少し変動するだけです。さらにATPは「作り溜め」できません。生化学Iでやったと思いますが、ATPはエネルギーの貯蔵形態としてはかさばりすぎて使うことが不可能です。この講義のレポートは知識を要求するものではないのは確かなのですが、さすがにたくさんの間違った前提でレポートを書いてしまうと、評価が難しくなります。


Q:葉は、基本的に平たいという話があった。そこで、私は、葉が平たい理由を考察した。考察にあたっては、2種類の葉の形態を想定し、比較した。まず1つ目として、厚みのある球形の葉を想定した。球の半径は、仮に0.5 cmと置いた。2つ目としては、平たい楕円形の葉を想定した。この楕円形の葉は、日常的によく目にする形状の葉として議論を進める。楕円形の葉の大きさは、球形の葉と幅を等しくするために、長軸の長さ2 cm、短軸の長さ1 cmと仮定した。次に、それぞれの葉の表面積を計算した。球形の葉は、π cm^2となった。楕円形の葉については、厚さを無視して、長軸2、短軸1の楕円の面積を2倍した。なぜなら、葉の表裏両方の面積を葉の表面積とする必要があるためである。すると、楕円形の葉の表面積も、π cm^2となった。ここで、球形の葉と楕円形の葉の表面積が等しくなるにも関わらず、葉が平たくなる理由を考える。植物は基本的に、光合成と呼吸によって生命を維持している。光合成をする上で、太陽の光エネルギーと二酸化炭素の取り込みが重要である。また、呼吸においては、酸素の取り込みが重要である。そこで、光エネルギー受容と気体の取り込みという観点から、2種類の葉を比較した。まず、光エネルギーについて述べる。ここでは、1枚の葉に、太陽が当たる場合を考える。球形の葉に光が当たるとき、葉表面が曲がっているため、楕円形の葉に比べ、日光の受容面積が減少すると考えられる。したがって、日照以外の条件が等しい時、楕円形の葉の方が光合成速度は大きくなる。次に、気体の取り込みについて考える。いずれの葉も、背軸側に気孔が分布するものとする。すると、葉の背軸側の表面積は、葉全体の表面積の半分になるので、気孔の分布面積は等しくなる。更に、物理的に流入する気体の体積も等しくなる。したがって、気体の取り込み自体に優劣をつけることはできない。しかし、球形の葉には厚みがあるので、葉の内部空間の体積は、楕円形の葉よりも大きくなる。したがって、球形の葉にはより多くの細胞が分布し、葉全体の呼吸はより盛んになる。このように、球形の葉は、より呼吸が盛んであるのにも関わらず、呼吸に必要なグルコースをまかなう光合成速度が小さい。したがって、真逆の性質を持つ楕円形の葉は、より生存に有利であったため、植物の葉は平たいのだと言える。

A:これは、面白いレポートでよいと思うのですが、論理の流れには少し改善の余地がありそうです。読み始めると、球の半径は0.5 cmなのに、なぜ楕円は、2 cmx1 cmなのかが不思議です。しかし、その後、表面積が同じことが示されて、それならなかなか良い設定だったな、とわかります。そうであれば、むしろ表面積が同じになるように設定した、という流れの方が、疑問を持たずにスムーズに読み進めることができます。あと、ここでの議論展開だけを考えると、球にせずに球殻にした方が、議論は面白くなるように思いました。球ではありませんが、ネギの葉のような例もありますし。


Q:授業の前半での内容に関連したことにおいて考えた。「つるを伸ばして他の木や物に絡みつき、上方向へと生長する」つる性植物には、アサガオのような「自己の茎を絡ませながら伸びていくタイプ」とカボチャのような「茎から出した根を張り付かせて生長するタイプ」がある。授業内容より、つる性植物もほとんどの葉は日光からの薄い光のエネルギーを集めるには広い面積が必要になり、同じ体積で広くするには葉は平たい形をとっていると推測できる。しかしこの2つのタイプに分裂したのであれば、葉柄の存在意義も異なってしまうのか、それとも存在意義そのものは同じで別の要素でタイプが分かれたのかを考察した。アサガオのようなタイプは上方向に生長するのはより日光に近づいていくためであり、光のエネルギーを受けるのに大変な森林を棲息地域としている植物だと考えられる。反対にカボチャのようなタイプは光のエネルギーを受けるのが容易なため根を張り付かせて生長ができる畑を棲息地域としている植物だと考えられる。つる性植物は葉柄の強度はないが伸長には特化しており、どちらのタイプも光のエネルギーを受けるための物理的な支持をすることが葉柄の存在意義であるため、別の要素でタイプが分かれたと考えられる。別の要素として、カボチャのようなタイプも元々は上方向に生長していたが、巻き付くものが少ない環境では地面に張り付かせた方がその環境には適応できて生き残った可能性があると考える。または果実を持つようなつる性植物では、果実の重さで上方向に生長することが難しく張り付かせた方が生き残った可能性があると考える。 引用:屋上緑化システム, 「つる性植物」の解説, https://www.bgpro.jp/, 2023年10月19日

A:これは、非常に面白いポイントに注目していると思います。ただ、読んでいて、前半でなぜ葉柄に着目したのかがよくわかりませんでした。むしろ、最後の方に議論しているように、葉柄にはこだわらずに、2つのタイプに分裂した理由を考察したほうが、すっきりしたレポートになったように思います。


Q:今回、授業で植物の葉がなぜ葉のような形であることについて触れられていたが、葉の形がまるで虫を喰らう意思があるかのような食虫植物について考察していく。まず食虫植物の定義について調べると、死んだ小動物から栄養を吸収する。もしくは積極的な誘因、捕獲、消化の少なくとも一つに投資している。とよく定義される。ここからわかるように食虫植物は従来の植物のように光合成を完全には捨てていないが、小動物から栄養を吸収するという手段をメインに進化している。それにより光合成がしにくかったり、土壌の栄養分が乏しい環境、例えば湿原や、池、高山から低地、熱帯雨林などに分布している。食虫植物は小動物から栄養を得ているが、パッと思いついた中で植物と動物での大きな違いはタンパク質だと思った。タンパク質を構成するアミノ酸から窒素などの栄養素を吸収して、光合成に変わっているのだと考えた。ここで、食虫植物が、どの段階で食虫植物となるような葉の形であったのか、引用文献(3)によると葉が成長する際に表側に迫り出す遺伝子と、裏側に葉が迫り出す遺伝子があることがわかり、その発現する部位によって葉の形状が決まる。なので、この遺伝子を発現させる部位が食虫植物の種ごとにプログラムされているわけである。ここで考えついたのは、人為的に植物の部位を形成する遺伝子を操作し、消化液の生成の元となるような遺伝子を組み込めば、既存の植物も新たな食虫植物になれるかも知れない。実用性はない。逆にこの葉の形成する遺伝子を抑える遺伝子を組み込み、葉を普通葉に変化させれば、食虫植物をある意味ただの光合成する植物に変えることもできるのだろうと考える。
<引用文献>全て2023年10月21日閲覧
(1)食虫植物における形態複雑化メカニズムの解明,-福島健児,藤田浩徳 (https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophys/56/5/56_255/_pdf)
(2)食虫植物の適応進化―小動物からの栄養で貧栄養地で生育-長谷部光泰 (http://www.nibb.ac.jp/evodevo/pdf_JP/2016_Hasebe_iden.pdf)
(3)食虫植物サラセニアの小動物を食べる葉ができる仕組みの発見ー細胞の変化が著しい形の変化を引き起こすー自然科学研究機構 基礎生物学研究所,総合研究大学院大学,東京大学大学院 理学系研究科 (https://www.nibb.ac.jp/press/2015/03/16.html)

A:途中の「光合成に変わっているのだ」は「光合成に代えているのだ」と言いたいのでしょうね。おそらく、小動物から取り込む栄養と、光合成でえる栄養を同じものだと理解しているのでしょう。文献の(2)の要旨に、「普通の植物には光合成が困難で生育できないような貧栄養地にだけ生育している」とあるので、誤解したのかもしれませんが、本文をよく読むとわかるように、小動物から得る必要があるのは主に窒素化合物です。光合成の代わりに炭水化物を小動物から得るのではなく、窒素を得ることによって光合成の反応を進めることができるようにしているのです。文献を参考にすること自体は問題ないのですが、やや専門的な文献の場合は、注意深く読む必要があります。


Q:◎問題提起: 植物の器官の一つである葉を「形」の観点から考察する。葉の形は、遺伝子により決定され、「光合成を行う」という共通性(=制限)を持ちながら植物界の中でも多様性のある葉が存在している。光合成という目的のために、光合成を行う葉は広い面積かつ平たい形をしているのが主である。ここで問題提起をすると、広葉樹と針葉樹で葉の形が違うのは寒い地域で凍るのを防ぐためと言われているが、面積が同じくらいの葉の中でも、周りが丸いものとギザギザしたものなどはなぜだろうか。
◎考察: 大きさの点では、あまりに大きすぎると支えるのにコストがかかったり先の部分に養分が行き渡らなかったりなどがあり、それぞれ生存競争により得た地域の気候に合った大きさをとっていると考えて、同じくらいの大きさの葉を持つ植物と仮定して考察をする。昨年の植物形態学・実験で今回考察する葉の部分は「鋸歯」という部分であると習った。同じ大きさの葉で鋸歯が大きくあるものとないものについて比較する。今回の講義の中で葉脈があると葉が下に垂れにくいことを先生が紙で実演されていたので、自分でも真似して、紙を持っている方とは逆の方を葉の先端としてはさみで切れ込みをいれてみた。紙の持っている部分から中心まではそのまま真っすぐに保たれており垂れていないが、切れ込みを入れた部分は少しだけ垂れていた。この様子を葉が自然界で実践する目的を考えると、先端がぎざぎざしていると雨などの水が切れ込みから流れ落ちやすいと考えられる。第一に水が葉に溜まっていると水の中で雑菌が繁殖して葉が腐ったり、蚊も数ミリの水があれば卵を産めるので、幼虫が住み着いたりなどがあり危険だと考える。また、水が葉の表面に溜まることで光合成のための光の吸収の妨げにもなる。第二に、葉がギザギザしたりチクチクしたりしていると虫が歩きづらいので、害虫による捕食も防ぐことができると考える。第三に、これは葉の大きさによりけりではあるが、人間の小腸の柔毛のように、ギザギザした部分まで(ギザギザの断面も含めて)光が傾いたり反射したりなどの光も吸収して光合成ができるように面積を増やしている可能性もあると考えられる。以上が鋸歯を持つ目的の考察として考えられる。一方で鋸歯がなかったり、見えないくらい小さくてほぼ丸に見える葉もある。この場合、水の観点では日当たりの良い場所に生えていれば解決できると考える。害虫は茎などにトゲをつけたりクチクラ層を厚くして防御したりなどの解決方法が考えられる。光合成の観点では、やはり日当たりの良い場所に生息できればいいのかと考える。
◎結論: 以上のことから、葉の形「鋸歯」は植物がさらに効率よく光合成を行い、生存する環境を整えるための戦略の一つであると考えた。上記のように考察すると、進化的な話になってしまうが、植物において鋸歯は、生存するための自然選択のために獲得した機能、もしくは、鋸歯があったけれど生存の中で必要でない、コストが大きいなどから、この機能をなくしたものがあるという考えに至った。このようなことからも植物の「多様性」が見られる。

A:非常にきちんと考えられていてよいと思います。特に、鋸歯のメリットを考えるだけでなく、そのメリットが打ち消される条件を考えることによって、鋸歯の無い葉を説明している点が評価できます。環境によってメリットが変動することが多様性を生み出すわけですから。欲を言えば、3つの考察がいずれも一段の論理になっている点を、二段構え、三段構えにできるとぐっと説得力が増します。例えば、もし鋸歯が先端を下垂させるために必要なのだとすれば、樹木の厚い葉のように、硬くて下垂しにくい葉では鋸歯を持つ意味がなくなるはずです。一つの仮説を思いついただけで満足するのではなく、その仮説を自ら検証することもできるはずです。ただし、この講義のレポートは長いものを要求しているわけではなく、このレポートは既に十分以上に長いので、このレポートにそこまで要求しているわけではありません。


Q:植物は動物と異なって、植物自体の移動は言わずとも不可能であるが、細胞レベルでも不可能である。という事実から、植物がどのようにしてその欠点を補っているかを学んだ。その中でも、「基部では細胞分裂をしているうちに 先端の細胞の大きさが決まる」という論題に興味をもち、そのメカニズムを自分なりに考えてみた。まず、基部によって先端の細胞ができるのは、どこかしらにその環境に合った葉の形を決めている器官があると考えた。植物全体を観察したときに、最もその器官を持っていると考えられるのは子葉である。というのも、一番最初に地上に出る子葉と本葉の形がほとんどの場合異なっているからである。子葉は種子の中の胚にすでにできており、この状態で基部が先端の細胞に影響を与えているとは考えにくい。そこで最初に地上にでた子葉が、温度、照度、湿度など生息地の周辺の環境を読み取り、以降に生えてくる本葉に情報を与えているのではないかと考えた。子葉をもつのは種子植物のみのため、シダ植物においても基部が先端の細胞に影響を与えているのか、実験を行ってみたいと思った。

A:これは、最初と最後は基部と先端の話ですが、途中は子葉と本葉の話になっていて、論理のつながりが理解できませんでした。あと最初の部分など、日本語もややわかりにくいですね。本人には、何か前提があって論理が通っているのかもしれませんが、重要なのは、前提条件なしで読み手に意味が伝わる日本語を書くことです。


Q:今回の講義で葉の形を変える仕組みとしてan変異体とrot3変異体の話がなされた。このとき細胞の数や大きさが変化すると元の葉の形に戻ろうとする恒常性があることも教わった。そこで、この恒常性がなぜ存在するのか機構・メカニズムの観点を考える。植物は神経系がないため自らの葉について目で認識して異常を発見するということは不可能である。そこで、この葉の面積の恒常性について、重さや光合成量がシグナルになっていると考える。重さの観点は葉の面積が小さいと重さも軽くなると考え、基準の重さに到達するまで葉の大きさを大きくしたり、葉の細胞を増やしたりするという考えである。実際に、植物の根ではアミロプラストによる重力屈性が起きていることから、似たような機構が葉の根元にあり、葉の重さを感じ取って恒常性を維持していると考えられる。確かめるためには、an変異体株などにおいて葉に重りをつけた株とつけない株を用意し、葉の大きさを比較することが有効であると考える。光合成の観点は葉の面積が小さくなると光合成量が減ると考え、光合成によって生成された有機物量が基準値に達していないときに葉を大きくしようとする仕組みがあると考えるものである。植物には陰葉と陽葉があり、一般的には陰葉の方が葉の細胞も大きくそれに伴って葉の大きさも大きいことが言われている。これは光合成量を確保するためだと考えられるが、葉の小さい変異株でも本来の野生型なら得られる光合成量に到達しないとき葉を大きくしようとして結果として恒常性を維持しようとしていると考えられる。確かめるためには、an変異体株などにおいて、日照量を増やしたり、葉緑体を増やす変異を入れたりし、葉の大きさを比較することが有効であると考える。

A:これは面白いことを考え付きましたね。ただ、アミロプラストが感知しているのは重力の向きなので、力の大きさを検知するためには、また別の方法が必要であると思います。また、「有機物量」に関していえば、「量」を感知するための方法は考え付きますか。「濃度」は、酵素などによって感知できると思いますが、「量」というのは、1つの細胞内では測定できませんよね。そのあたり、もう少し詰められるとよかったかな、と思います。


Q:今回の授業では植物の葉の形と光合成効率には関係があることについて触れていた。そこで私は一見光合成効率を考えると不利であるように思えるマツの葉の形について考えることにした。マツの葉は細く針のような形で、多数生えているのが特徴である。マツは針葉樹に分類され、寒い時期でも葉を残せるようにするため(葉を落とさない)に針のような葉を持つことが一般的に知られている。しかし、今回私は風への耐性の面でもマツの葉の形が適しているのではないかと考えた。マツは海の近くに植えられることも多く、海の近くもマツにとって適した生息環境であると言える。海の近くでは昼には海風が夜には陸風が吹き、強い風が吹くことが多い。そこでマツの葉のような細い針状の葉は風を受け流すため、海の近くでも育つことができるのではないかと考えた。また前述したように葉の数が多いことは光合成効率を少しでも上げることや風や雪などによって葉が傷ついてしまった際のダメージを少しでも減らすためではないかと考えた。マツの子葉の枚数が多いことも同様の理由であると考えられる。また、葉が細いことで葉が折れてしまったり傷ついたりしてしまっても少ない栄養や少ない光で比較的早く葉を元に戻すことが可能になっているのではないかと考えた。

A:針葉樹の葉の形態についてのレポートはたくさんあり、独自性が感じられるものは少なかったように思います。その中では、このレポートは複数の要因を検討しているので、ここにあげておきました。ただ、一つ一つの考察自体は、論理の流れというには、単発のように思います。


Q:本授業で、葉の形態が決まる要因は、遺伝子の発現の様子や細胞の成長にあり、そのメカニズムによる得は、環境適応による多様性に関連するとわかった。葉の形態に関与する遺伝子について調べてみると、東北大学大学院理学研究科の研究で、葉の形を決める遺伝子をイネで発見した情報をみた。研究チームは、葉身と葉鞘の割合を調節する遺伝子OsBOPを発見した。OsBOPが多く発現すると葉鞘の割合が多くなり、OsBOPの発現が少ないと葉身の割合が多くなる。幼若期は発現が強く、成熟期に近づくと弱まり、つまり、葉の形は葉鞘から葉身へと変化していく。葉身の割合が多くなると光合成の効率が向上するため、幼若期は成長のためだけで足りていた栄養量だが、さらなる成長や穂の生成のためにたくさんの栄養が必要になるから葉の形態が変わると考察した。環境要因だけでなく、個体単位の成長効率のために葉の形態変化も存在すると結論付ける。

A:何かを参考にして書くこと自体は問題ないのですが、必ず出典をつけるようにしてください。初回の著作権の説明で、他人の著作物であっても、言い回しなどが完全に自分の物になっていれば、著作権法違反ではない、という話をしました。その意味では、このレポートは著作権法違反ではありませんが、レポートとしては、やはり出典をつけることが求められます。


Q:授業の初めの方で、動物は細胞の位置を入れ替えることができるが植物はシュートを積み重ねるだけで細胞の位置を変更できないということがあった。動物は古くなった細胞を体外に排出したり破壊して再利用ができる。しかし、植物において細胞の位置を変更できないということは古くなった細胞は残り続けるということになる。植物において古くなった細胞を除去できないことでどのような影響があるのか考えてみる。双子葉植物を例に挙げるが、双子葉植物では頂端分裂組織と形成層で細胞分裂が起こっている。ということは、古い細胞ほど茎の外側が、また地面に近い側に多く存在するということが言える。茎の外側に古い細胞があることによって、内側の分裂途中の細胞や維管束を守ることができると考えられる。地面に近い側では多くの古い細胞があるため安定する形となると考えられる。これらのことを踏まえると、植物にとって古くなった細胞というのは不要なものではなく自信をより強固にするためのものではないかと考えられる。

A:「古い細胞」に着目した視点はユニークでよいと思います。「古い細胞ほど茎の外側が」は「古い細胞は茎の外側に」でしょうか。


Q:授業で動物は新たな器官を増やすことで新しい機能をもつようになったのに対し、植物は葉、茎、根の器官のみをもち、新しい機能が欲しい場合は既存の器官を変容させるという動物と植物の違いについてふれたが、この違いはなぜ出るのか考えた。まず、植物と動物の違いとして挙げられるのは独立栄養生物か従属栄養生物かである。植物は独立栄養生物で有機物を外部から取り入れなくても生存が可能で、太陽光や空気中や土壌でのCO2やH2O、養分などは大きく動き回らなくても手に入ることため、動物のような餌を見つけるのに役立てられる器官を加える、基本の構造を変える必要がなかったのだと考えられる。また、特定の機能だけをもつ器官をたくさんもつよりも1つの器官にあらゆる機能を詰め込むように組織など器官よりも小さいスケールで発達させた方が、複雑さを保っていく必要が無いため、基本的に動かず、非常に限られた範囲における資源しか摂取できない植物にとって都合がよかったのかもしれない。

A:論理展開はなんとなくわかるのですが、細かく考えると、そもそも器官を変容させるのと、新しい器官を増やすのとの、根本的な違いは何なのだろうか、という点がむしろ疑問として浮上します。また、後半も、具体的になぜ「都合が良かった」のかが、完全には理解できませんでした。


Q:今回私が授業を受けた上で興味を持った範囲は植物の葉がなぜ今のような形をしているかということである。今、現状の植物の葉身は薄く平べったいものが多い。この理由について考察したい。まず、薄く広い理由としては広くすることで太陽光の吸収をいっぱい集めるためだけでなく、自分の植物よりも高さが低い植物の光合成を邪魔することによって生存競争で勝つためだからではないかと考察した。仮に葉身の面積が小さく、それより低い位置にある植物の方が成長効率が良かった場合それ自身より高くなると元々高い方に存在していた植物が光を吸収しにくくなって成長できなくなり枯れてしまうため、葉身を薄く平べったくしているのは他の植物の光合成を邪魔して生存競争に勝つためだからであると考察した。

A:真ん中あたりの「考察した」が問題設定ですね。最後の「考察した」で終わる次の一文が考察の中身だと思いますが、内容は問題設定の繰り返しのようです。もう少し論理的な展開が欲しいところです。


Q:植物の多くは、葉柄を付けて効率よく光合成を行うことを学んだ。また、葉柄には「葉身を支える」1)役割もある。一方で、葉柄を持たない植物も存在し、これはどういった場合なのか自分なりに考察した。まず、植物同士が比較的近距離に生える場合である。地面に対して平行に体を伸ばすことが難しくなり、逆に葉柄を付けているとその部分に葉が無いことがロスとなる。特に同種が近距離に生える場合は、シュートの間隔が似通っているため、葉が重なりやすく、絡まりやすくなる。そのため、丈夫な茎を付けて体を支え、地面に対して垂直方向に体をのばす方が効率的なのではないかと考えられる。続いて、太陽光が自身より高い植物によって大きく遮られる可能性が低い場合である。葉柄の利点として、風などによって葉を揺らがせ、葉の角度が変えやすくなることが推測される。もし、他の植物が上部に生えており、自身の影ができやすければ、このはたらきはとても有益なものとなる。しかし、光が遮られることが少なければ、このはたらきはそれほど重要視されないのではないだろうか。なお、これらの例外となるのは樹木である。樹木は、ある範囲に密集して生え、自身より高い植物によって光も遮られないが、多くの場合において葉柄を持つと考えられる。しかし、そもそも樹木は大きな体を支えるために大きな根を張る必要があり、草本植物等のようなレベルで近距離に生えることはできない。その結果、木の上部には、十分な空間ができ、葉が地面に対して水平方向に伸びることができる。また、多くの葉を付けるため、葉同士が重なり合う可能性が高まり、葉柄を付け、葉の角度を変えるなどの利点が大きくなってくるのではないかと考えた。 1)原襄, 基礎生物学選書3 植物の形態(増強版),株式会社裳華房 ,1991年 ,p156

A:これは、よく考えていますし、考察の内容も面白いと思います。欲を言えば、やや論理の流れがわかりづらい日本語になっている気がします。文同士の関係が、よく文の意味を考えてからでないと、パッと理解できない部分があります。例えば、前半の話と後半の樹木の話のつながりが「なお」であっさりとつながれていますが、最初に、草本と樹木の場合に分けて考える、といった一文を加えると、論理の見通しは格段に良くなります。見通しがよくなると余韻がなくなるので、文章としての面白みは減ってしまうこともありますが、理系の文章では面白みよりは論理の明確性をとったほうがよい場合が多いと思います。