植物生理学I 第11回講義

植物の根

第11回の講義では、最初に単子葉植物の進化について触れた後、根による栄養塩の吸収を中心に講義を進めました。以下に、いくつかのレポートをピックアップしてそれに対してコメントしておきます。

Q:水や栄養塩を効率よく吸収するために、なるべく表面積を大きくする構造が必要で、そのために根は根毛を持っているという話があった。一方、表面積を大きくするのであればスポンジ型も有効である。では、スポンジ型の根が存在しないのはなぜだろうか。一つ目は、スポンジ型にして内側に窪ませてしまうことで、水や栄養塩の輸送経路が細くなってしまい、輸送効率が悪くなってしまうからである。ポアズイユの法則により通道量は半径の4乗に比例するので、輸送経路を細くせざるを得ない形に元からしてしまうのは、エンボリズム等で経路を細くしなければならない理由がある場合を除き、成長戦略上不利になってしまう。二つ目は、根が断裂するリスクが高まってしまうからである。根毛構造の根であれば、内部まで組織が充満しているが、スポンジ型では、構造上内部に空洞が多数できてしまうので断裂しやすいと考えられる。また、根毛は細いが故に断裂しやすいはずであるが、根毛が一本断裂してしまったとしても主要部は断裂していないのでさほど大きな影響はない。一方、スポンジ型の根が断裂するということは、断裂した場所以下全ての根の機能が失われてしまうので、断裂した際のリスクが高い。三つ目は、根毛構造を取った方が、より広い範囲で水や栄養塩を吸収できるためである。スポンジ型でも根毛構造でも表面積は大きくなるので、吸収効率は上がる。しかし、根毛構造を取ると、外側に突出した形になるので、その分幅広い範囲の土から吸収を行うことができる。すると、土内部の水や栄養塩量が危篤状態になった時に有利にはたらく可能性がある。このような理由から、根がスポンジ型の構造を取ることは適さず、根毛構造を取っていると考えた。

A:よく考えていてよいと思います。ただ、二つ目の点に関してはどうでしょうね。スポンジは3次元的に連絡していることを考えると、局所的な断裂に対して非常に強いように思います。


Q:カナダモはリン酸を葉からも吸収していた。カナダモは水中で生活しているので葉がある部分も水中であり水中のリンを吸収して,より効率を上げていると考えられる。しかし「化学肥料のリン酸は、水溶性なので溶けて土壌に入ると鉄やアルミニウムとすぐに結合し難溶性になってしまいます」(1)とある。よって水中での効率はあまり良くないと考えられる。「堆肥中のリン酸は有機物とすでに結合しています(有機態リン酸)が、それでも土壌中の鉄やアルミニウムと結合し難溶性となる力はあります。しかし、堆肥中には繊維成分が多く含まれており、リン酸は繊維成分に覆われていて土壌の粘土粒子にリン酸が直接触れない状態になっています。そのため、難溶性(鉄やアルミニウムと結合する)になりにくいのです」(1)とある。ゆえに水中で生活する植物の実際の生態において根からの吸収の方が効率が良いと分かる。では陸上で生活する植物ではリン酸の吸収はどうなっているかを考えた。陸上の植物はリンの確保において「菌類と共生する菌根をもつことでリン不足にならないようにしています」(2)とある。また「食虫植物は、捕獲した昆虫などから窒素やリンを得ています」(2)とある。陸上植物の供給方法から考えて,陸上植物はリンを吸収するというより何らかの形で間接的に得ることで生活していると推察することができる。よって水中で生活する植物のように葉や根から吸収していてどちらかの方が吸収しやすいという話ではなく,リンの形を変えて取り入れているという違いを見出すことができる。植物の進化において,植物が水中から陸上に進出して,空気中での葉からの吸収が行われなくなる。それに伴い間接的な取り入れ方法を獲得していったのではないかと推察できる。
参考文献:(1)YANMAR. Vol.11 堆肥中のリン酸を上手に使う. YANMAR 土づくりのススメ - 深掘!土づくり考. https://www.yanmar.com/jp/agri/agri_plus/soil/articles/11.html , (参照2022-12-24).(2)東京薬科大学. 植物のリン獲得戦略. 東京薬科大学 学科紹介 応用生命科学科. https://www.toyaku.ac.jp/lifescience/departments/applife/knowledge/article-014.html , (参照2022-12-24).

A:調べたことを元に考えていることは評価できますが、最後の部分の考察はやや言葉足らずのように思います。「間接的な取り入れ方法」というのは、菌類との共生などを頭に置いているのだとは思いますが、そのあたりはもう少し丁寧に説明したほうがよいでしょう。また植物の進化を論じるにあたっては、藻類と水草は区別するようにしましょう。


Q:単子葉植物の出現と草食動物の変化(歯など)には関係があることを知った。特にイネには草食動物に食べられにくくする対策として、葉の中にケイ酸を含むことが紹介された。葉を硬くすることで草食動物に食べられにくくするのだ。これは、すべての単子葉類に認められるものではなく、植物全体を通してもケイ素を積極的に吸収する種から排除的に吸収する種までさまざまである。また、ケイ素は植物の必須元素ではなく、過剰摂取による悪影響がないことが報告されている(*1)。よって、草食動物に食べられにくくする以外のケイ素を吸収するメリットがあるということあり、それは何なのか考えることにした。
 けい酸は植物内に吸収されると「特定の細胞の細胞壁に蓄積しガラス質の細胞体を形成する。イネに吸収されたけい酸は葉の表皮組織の一番外側にあるクチクラ層の下に集積して、けい酸だけで組織化された固いシリカ層と、外側の細胞膜の間隙がけい酸で充たされたシリカセルローズ膜をつくる(*2)」(=ケイ化細胞)。これは、講義中に述べられていたイネが草食動物から食べられるのを防ぐ方法としても挙げられる。また、このようなケイ化細胞の発達は力学的強度の増加に寄与すると考える。茎の強度が増すことで倒れにくくなり強風等の影響を受けにくくなるだろう。また、葉の表面にシリカ層ができることで、葉の垂れ下がりが解消され、受光姿勢が良くなることより多くの太陽光を受けることができ、光合成効率の上昇が期待できる。そして、けい化細胞により葉が固くなることで虫による食害を防ぐこともできると考えられる。一般的に、虫は産卵するとき柔らかい葉を持つ植物を選ぶ性質がある。これは、生まれた幼虫が柔らかい葉を好んで食べることを予期してとる選択であろう。よって、固い葉を持てば虫の産卵場所になりにくくなるだろう。よって、虫の食害や虫による病気からの抵抗力が高まると考えられる。このように、ケイ素を吸収すること(特にイネでは)は進化的に見れば草食動物に対する挑戦であると考えることもできる。しかし、それ以外にもケイ素を取り入れるメリットがあるためケイ素を吸収する道を選択する植物がいるのだと考えた。
*1 石澤秀紘, 「植物によるケイ素利用の謎」,日本生物工学会, 生物工学会誌. 95(1),2017
*2 植物とけい酸, 「科学肥料に関する知識」,BSI生物科学研究所, File No.22(閲覧:2022.12.24)knowledge22.pdf (bsikagaku.jp)

A:これも調べたことを元にきちんと考察をしていて評価できます。考察内容は、ある意味で当たり前の部分も多いのですが、葉の垂れ下がりの解消というのは、今までのレポートに見たことがなく、特徴的でよいと思います。


Q:今回の講義では序盤に茎部分における形成層の有無による違いや植物の形・性質の戦略について学び、その後は根の形の意義や諸々の構造・機構について学んだ。そこで植物の形と根を関連づけて、今回までの講義において葉と茎の形にはそのような形をとる意味があることを学んだが、根においても何か意味があるのかについて考えていこうと思う。根は水分や無機塩類などの供給効率を上げるために表面積が大きい必要があると学んだ。また、根を地中に張り巡らせる理由としては自身の身体を支える必要があるためであると考えられる。根の形は主に主根と側根をもつものと、ひげ根を伸ばすものに分けられる。両者とも表面積を大きくする面に関しては対等であると考えられるが、身体を支える面においては主根と側根を持つ植物の方が強く感じられる。雑草を抜いた時の感触として背が高く育つ植物は概ね主根側根を形成しており、背の低い植物は集約して太い根を持つひげ根を形成していた記憶がある。ひげ根のデメリットは先に述べたように支える力が弱いことであると考えられるが、メリットとして土壌の柔らかい部分を占領できるため早く成長できると考えられる。また、栄養を早くに取り込めることから主根側根の植物よりも必要な光の量が少なくて済むとも考えられる。このことから、ヒゲ根を持つ植物は身体を支える必要がない環境、例えば周りに別の植物によって囲まれていたとしても浅く根を張って他の植物よりも早くに成長できる戦略を取り、主根側根をもつものは深くまで根を張ることで栄養を得て日があたる高くまで育つことを戦略としたのではないかと考えた。ただし、あくまで植物は後世に種を残したいので目立つ方が有利だし障害物がない方が良いと考えられる。ひげ根の植物は主根側根の植物に比べたら現世に存在する種は少ないと経験からして思うのは、不利な要素が多くあるために主根側根の植物に比べて繁栄しなかったからであると考えられる。

A:よく考えていてよいとは思いますが、講義の中では、(地上部の背を高くするために)幹を太くすることと(主根を作るために)根を太らせることの両方に形成層がかかわっている話をしたのですから、地上部と根の関係を考える上では、そのような機能的制約についても触れて欲しいところです。


Q:乾燥過程の水ポテンシャルのグラフの形を変える原因は葉による蒸散であることが分かった。蒸散によって葉の水ポテンシャルが減少すると根の水ポテンシャルも減少し、周りの土壌の水水ポテンシャルも減少する。これより水分の供給がなくなったとき、最初に枯れてしまう部分は葉なのではないかと考えらえる。グラフの形状より葉と根の水ポテンシャルはそのときの土壌の水ポテンシャルに従う。また土壌の水ポテンシャルは比較的緩やかに減少していくため、水の供給が止まってから植物が枯れるまでの時間をある程度計算できるのではないかと考えらえれる。

A:きちんと考えていて悪くないのですが、AだからB、CだからDという感じに一段階の論理なので、もう少し論理を積み重ねたレポートにしていけるとよいでしょう。


Q:今回の講義で、水が移動できる場所として膜を通過する場合にはアクアポリンによって輸送が行われることが挙げられる。アクアポリンの発現量は細胞の種類や細胞の状態によって異なるとあったため、乾燥の具合や蒸散の速度などの要因によってその発現が制御されているのではないかと考えた。調べたところ、アクアポリンは性質によって複数の種類がありシロイヌナズナでは35種あることが知られている。「根に着目した場合,根のみで特異的に発現するPIP2 ; 4やPIP2 ; 5は 環境応答性が高いのに対し,全身で多く発現する PIP1 ; 1やPIP2 ; 1などは環境の変化に対する発現応答が鈍い。」(参考文献1)とあり、アクアポリンの中にも恒常的にはたらく種と環境に応答して発現量を制御する種があることがわかる。このような種では概日リズムではなく日中の蒸散量によって数時間単位で発現量が制御されているため大気の乾燥具合によっても変化が起こる。
1 ”イネが環境に応じて水分量を調節するしくみ 地上部からの蒸散要求に応じて根のアクアポリン発現量が変化”, (石川(櫻井)淳子,村井(羽田野)麻理,(独)農業・食 品産業技術総合研究機構東北農業研究センター)、https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/50/6/50_402/_pdf

A:これは、一般的なレポートとしては悪くないのですが、この講義のレポートとしては、調べた結果で終わっているところが残念です。調べた結果をもとにして、環境と発現の間にどのような関係があるはずだ、ということを自分なりの論理で考えられるとよいでしょう。


Q:今回の講義で乾燥すればするほど水ポテンシャルが低下し、土壌中の水分が減少すると栄養であるイオンの吸収も低下するという話があった。これは植物にとっての水の重要さを物語っていると感じた。植物はもっと水を保持する能力を高めた方が水問題の解決につながるのではないか。水の吸収を高めるために、根での水の吸収を高めようとすると、細菌や微生物に侵入されやすくなってしまうため、サボテンのように水分を保持した方がいいと考える。では、植物で水を保持する機構を発達させるデメリットについて考える。水を貯えるとなると、水の蒸発を防ぎ、水の影響で重くなった体をささえるための頑丈な細胞壁やセルロースでの補強がより必要になる。そうすると、高さを生むことができなくなることによって光競争で勝てなくなり、光合成でのATP合成がしにくくなる。つまり、水の保持に特化すると光競争で勝てず、結局生育不足になってしまうと考えられる。よって、水がある程度ある環境では水の保持よりも植物自体の高さを優先したのではないだろうか。しかし、光が強すぎる環境では、植物は気孔を閉じ水分を保持しようとするという話も過去にあったため、水と光合成での有機物生産はその植物にとっての程よいバランスを保つことが重要であり、水と有機物のどちらが重要であるかの判断はつかないのではないか。

A:これも、自分で考えている点が評価できます。最後の所は、「判断がつかない」というよりは、置かれた環境によって異なるということなのかもしれません。


Q:今回の授業では硝酸輸送体の酵素が二重親和性を持つことを学んだので、このことについて述べる。二重親和性を持つことで基質濃度が低いときには、酵素の親和性を高く保ち、反対に基質濃度が高いときには、最大活性を大きくすることができるというメリットがある。しかし、酵素の中には二重親和性を持たない酵素も多く存在するため、二重親和性を持つことによるデメリットもあるはずなので、そのデメリットについて考える。自分の結論から言うと、二重親和性の酵素は複雑な構造をとるため、合成のコストが高いからであると考えられる。タンパク質の合成にはアミノ酸や有機酸などの材料、エネルギーを必要とし、その材料は人体内においては食物から得るものである。他の生物に関しても材料は限られているため、ただ単にタンパク質の機能を増やすことは、必ずしもメリットにはなりえない。なるべく最小限のコストで必要な機能をもつものが生体内で働く物質として適していると考えられる。また、なぜ硝酸輸送体の酵素が二重親和性を持つかを考える。一般的に生体内においては恒常性が働いているため、基質の濃度が大きく変動することはなく、二重親和性の酵素を持つ必要はあまりない。しかし硝酸輸送体は、硝酸イオン濃度が不定の生体外からの取入れを行うため、このような機能を持っているのだと考えられる。以上より、生体外から物質を取り入れることにより、二重親和性のある酵素を合成するコストを十分に賄える場合に限り、二重親和性のある酵素も持つメリットがデメリットを上回るため、生体内に二重親和性のある酵素を保有できると考えられる。

A:二重親和性の輸送体を取り上げたレポートには、これ以外にも複数ありましたし、その論旨もだいたい同じでしたが、これが一番きちんと書かれていたので、ここに挙げておきます。


Q:アクアポリンに着目する。アクアポリンは植物では30種以上発見されているが、動物では13種類しか発見されていない。この違いの原因としては植物は水辺に能動的に移動をして水分を摂取することができないことが関わっていると考えられる。1つめに気候条件によって吸収率を変えることを可能とするために乾燥しているときのみはたらくような種が存在すると考えられる。2つめに吸収効率をよくするために根と茎とで異なる種類が、イオン組成や酸素濃度に対応して発達していると考えられる。
参考文献:アクアポリン研究の現在 佐々木成<https://www.kuba.co.jp/syoseki/PDF/3203.pdf>

A:2つの理由を考えている点は良いと思います。ただ、どちらもちょっとそっけないですね。例えば2つ目の方の場合、茎と根で異なることの利点を挙げて議論すると、より論理的なレポートになります。


Q:今回の講義の中でもとくにクラスター根は興味深いと感じた。リンが欠乏した土壌にさらされたある種の植物は、房状に四方八方に根を広げたクラスター根を形成するとのことだった。根の表面積を増やすというのはわかりやすいメリットだったが調べてみると他にも機能があることがわかった。クラスター根では酸性フォスファターゼの分泌や有機酸の分泌も行われているらしい。それらにより有機態のリンの分解や難容性のリン化合物の分解を行っているらしい。これらのことを知り、似たような機能として菌根があることを思い出した。菌根は大半の植物の根に共生し、宿主にリンや窒素を供給している。しかしクラスター根を形成する植物種には菌根がつかないものがあるらしい。これは先述した有機酸の分泌によるものと考えられる。有機酸の分泌により根圏のpHが低下し、菌根の生育に不適当になっていると考えられる。またクラスター根により効率的にリンの吸収を行えるため、そもそも菌根と共生するメリットがなく、病原体として排除している可能性も考えられる。

A:悪くはないのですが、「調べてみると」の場合には必ず出典を載せてください。


Q:今回の授業では、植物の栄養塩吸収について学んだ。水草であるカナダモがリン酸を吸収する時には葉と根の両方から吸収できるが、根から吸収した場合には葉の方へリン酸が流れていくのに対し、葉から吸収した場合には根には行かず、葉に留まるという物質の移動に極性があるという画像を見た。ここで、私はこの極性の原因について気になった。つまり、この物質の移動には葉へ物質を引き付ける何かしらの原動力があると考えられる。陸上の植物であれば気孔からの蒸散によって水ポテンシャルの違いで水とともに葉へ物質を吸い上げることが可能だが、カナダモでは気孔がない。また、授業で紹介された水を吸い上げる植物ごとの水を吸い上げる速度よりもかなりリン酸の分布の広がりが遅いように見えたので、これは拡散つまりは浸透圧によるものであると予想でき、単に葉でリン酸が消費されることでリン酸濃度が薄くなり、それによってリン酸が葉の方へ拡散していくということが考えられる。
 しかし、植物におけるリン酸の役割は “光合成を促進する”(参考文献1) という葉における役割もあるが、DNAの構成にも使われるので根の方では全く必要ない訳ではなく、むしろ根を伸ばすというDNAを合成しなければならない状況もあるので、根の方にも輸送する必要があると考えられる。つまり、このような葉へ向かう輸送は根へ物質を届けるということでは明らかに成り立っていないものであると考えられる。では、なぜあのような検出結果が出たかというと、あれは光合成によって二次的に起きた現象であるからだと考えられる。そもそも、カナダモは葉の表面から栄養塩を吸収できるので、根からわざわざ物質を輸送しなくても葉で栄養塩を吸収すればよく、根からの輸送システムは陸上のように土壌からしか水や栄養塩を得られない環境ではないことから陸上植物ほど発達していないと考えられる。植物体全体で吸収を行えるならば、わざわざリン酸を輸送する必要もないだろう。根からリン酸が移動したのは炭酸イオンや二酸化炭素が葉で消費されたことや光合成産物が葉で濃度が高くなったことによるものだと考えられる。これを確かめるには暗い環境下でリン酸を根から吸収させたものと明るい環境下でリン酸を根から吸収させたもので時間ごとのリン酸の分布を調べればよいだろう。
参考文献1:株式会社ミズホ, “リン酸について知りたいのですが?”, http://www.mizuho.to/faq/%E3%83%AA%E3%83%B3%E9%85%B8%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E7%9F%A5%E3%82%8A%E3%81%9F%E3%81%84%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99%E3%81%8C%EF%BC%9F (参照2022/12/22)

A:これは、非常にきちんとしていて素晴らしいと思います。一つのポイントを複数の方面から検討していて高く評価できます。


Q:授業では単子葉と双子葉植物の大きな違いとして形成層の有無とそれによる茎や葉、根の違いを学んだ。単子葉植物は形成層を失い頑丈で高くなることはせずに、繁殖力が強く葉が食べられてしまっても復活ができるような構造になっている。しかし、なぜ子葉の数に違いが生まれたのだろうか。それは、子葉の果たす役割の違いだと考えられる。双子葉植物の場合は多くの植物が子葉に栄養分を蓄えておりその栄養を使い切ると枯れ落ちてしまう。しかし、単子葉植物では栄養を蓄える部分は種子に残り、幼葉鞘となる部分は本葉が出てくるのを守る役割をになっている。単子葉植物は本葉も根元から伸びていくためにこのようなあ役割を持った構造が必要であったのだろう。そのため子葉の違いは本葉がどこから発生するかに関わっていたのだと考えられる。
参考文献:日本植物生理学会、みんなのひろば、1枚の子葉の役割、https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=1976、閲覧日2022/12/24

A:これは、悪くはないのですが、参考文献の小学生への説明が非常にきちんとしているのと比較すると、大学生のレポートとしては、それを上回るものが欲しいように思います。


Q:土壌含水量によるマトリックスポテンシャルと拡散係数の変化を表したグラフの右半分を見ると、マトリックスポテンシャルには問題が無い土壌含水量の減少段階でも、拡散係数が大きく下がっていた。講義中でも、それにより植物の元気がない状態でも、水より肥料を多く与えてやると回復する例もあると学んだ。これは、拡散係数が土壌中の含水量だけに関係しているのではなく、土壌中のイオンの濃度にも関係することを表す。ここで、肥料を推奨量より過剰にあげてしまった事で植物を枯れてしまった経験を思い出した。表中の土壌含水量0.15付近では、マトリックスポテンシャルはほぼ最大となり、拡散係数も高い値を示していた。よって、水を十分に与えている時、水の吸収もイオンの移動も盛んに行われている。ここに過剰量の肥料、つまりイオンが投じられることで土中のイオンの濃度の方が植物体より濃くなり、浸透圧が働いて、根にあった十分な水分が外へと排出されたことが枯れた原因だと考えられる。

A:よく考えていると思いますが、前半の流れからすると、後半の過剰量の肥料を与えた際の水ポテンシャルの影響が、水不足の場合にどうなるかが気になってしまいます。少し説明があるとよいと思います。


Q:今回の講義では、脂質二重膜からなる生体膜に水を通すチャネルであるアクアポリンについて学んだ。アクアポリンはヒト(哺乳類)では13種類見つかっているが、その中でも生理反応としてわかりやすく理解できるものは肝臓でのアクアポリン2である。アクアポリン2は腎臓における体の水分量調節を大きくになっている。体が脱水すると脳の下垂体後葉から分泌されるバソプレシンによってアクアポリン2が刺激され、アクアポリン2は細胞内から細胞表面へ移動し、水チャネルとして水分子のみを内部に取り込む。ヒトの生体機能的に考えれば、ヒトの体の細胞では腎臓や汗腺の細胞、また血液内の赤血球などの細胞に多く含まれていると考えられる。
 では植物の場合を考えてみる。まず水の吸収として考えられるのが根の細胞である。ヒトの場合では脱水し下垂体から分泌されたバソプレシンの作用によってアクアポリン2が細胞の表面に出できたが、植物ではバソプレシンは分泌されない。植物でもアクアポリン2が細胞内部から細胞表面の脂質二重層に移動していると考えれば、代わりに根内部と外部環境の密度や浸透圧の差によって作用され移動していると考えられる。しかし、植物は必要以上に水をやりすぎると枯れてしまう事例を考えると、アクアポリン2は常に脂質二重層に存在し常に水を吸収しており、水分過多では必要以上に植物内部に水が増えてしまいネガティブな影響をもたらすとも考えらえる。そうだとするならば、水上に生息するスイレンやハスなどの水生植物では、陸上植物よりも根の細胞のアクアポリンの数が少なかったりするのかもしれない。根以外では、花弁などの伸長する部分の細胞や、茎や葉, 根の先端にある分裂細胞でも水の運搬が必要なのでアクアポリンの発現量が多くなっていると考えられる。
参考文献:Yumenavi.TALK, 尿量の調節に関与する、細胞膜の水の通り道「アクアポリン」とは?,https://talk.yumenavi.info/archives/2305?site=p ,閲覧日2022/12/24、野田裕美, 尿濃縮を担うアクアポリン複合体, https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/139/2/139_2_66/_pdf, 閲覧日2022/12/24

A:よく考えていてよいと思う一方で、動物と植物のメカニズムに類似性があるはずだという立場で議論しているのか、違うはずだという立場で議論しているのかがはっきりしない点が気になりました。科学的なレポートの場合でも、書き手の立場をはっきりさせて書いた方が、読み手に論旨が伝わりやすくなります。


Q:今回の授業では、根の機能について採り上げた。先生の説明を聴く内に、私は根菜類に分類される植物が持つ根の形はなぜ種よって様々なのか疑問に思った。従って、以下では根菜類の中でも「ゴボウ Arctium lappa L.」を例として議論を進めていきたい。まず、根菜類全般に共通しているのが、その独特な根の形である。ゴボウのように長いものや、大根のように太いものまで様々である。このような形をしている理由は、言わずもがな「表面積を大きくし、効率的に水や栄養塩を摂取するため」であると考える。一見、効率的に生育に必要な物質を得ることが出来ることは、素晴らしいことと思えるが、どんなものにもメリットとデメリットが存在し、いいことばかりではないのが世の常である。根菜類にとってデメリットとなること、それは、「連作障害」である。連作障害は、土壌中における有害な微生物の寡占化や土壌に含まれる栄養素の偏りが原因で生じる(参考1)。根菜類に分類される植物は、他の植物と比較して効率的に水や栄養塩を摂取することができるが、その一方で、土壌中の水や栄養塩はその分失われていく。つまり、先程述べた連作障害に陥る原因のうち、後者の「土壌に含まれる栄養素の偏り」が生じやすくなってしまう。一般的に根菜類が連作障害になりやすいとされているが、これが理由であると考える。よって、根菜類を上手に育てるためには、水だけでなく、肥料も絶やさないことが重要である。
 また、ゴボウという植物に限定すると、ゴボウの根は長いことの理由はもうひとつあるのではないかと考えた。それは、前回の授業で扱った「エンボリズムの回避」ためという考察である。エンボリズムのメカニズムのうち、導管液中の凍結によって発生する気泡が要因となって起こる現象が日本では一般的である。ゴボウは、日本よりも気温が低い地域が原産地で、根部の耐寒性が強く、地上部が枯れても根は変質しないという性質を持つ(参考2)。つまり、この特徴から根は低温に耐えることが出来るため、導管液の凍結が生じにくいことから、エンボリズムの回避につながっているのではないかと考察する。さらに、根自体が耐寒性を持つことと同時に土壌中の温度も影響しているのではないかと考えた。一般的に、深さ約5 m以内の場所の地温において、秋と冬は地表と比較して温度が上昇する結果が得られている(参考3)。ゴボウを人工的に畑で育てる際は、高さ10~30 cmの高畝をつくり植え付けを行い、収穫時期は9月中旬から2月にかけてである(参考4)。このことから、ゴボウは、深い場所まで根を伸ばすことで、その場所が地表よりも地温が暖かいために、エンボリズムの回避に貢献しているのではないかと考える。従って、ゴボウの根の形の理由は、根自身の耐寒性という性質と土壌中の温度の2つの要素が相互作用することで、エンボリズムの回避にもつながっていると考察する。
参考文献:1) セイコーエコロジア by SEIKOSTELLA , “連作障害はなぜ起こる?発生原因と作物への影響、対策方法”, 更新日:2022/06/08, 参照日:2022/12/24, https://ecologia.100nen-kankyo.jp/column/single072.html、2) 市川啓一郎 著, タネ屋がこっそり教える 野菜づくりの極意, 農山漁村文化協会, 2021年10月30日, ISBN 978-4-540-21109-6, pp.124-127、3) 特定非営利活動法人 地中熱利用促進協会, “地中熱とは?”, 参照日:2022/12/23, http://www.geohpaj.org/introduction/index1/howto、4) サカタのタネ, “ゴボウの育て方・栽培方法”, 園芸通信, 参照日:2022/12/23, https://sakata-tsushin.com/oyakudachi/lesson/vegetable/post_33.html .

A:よく考えていますし、いろいろ調べていてよいと思います。ただ、全体としての流れは、案外エッセイ調で、科学的文章としては、もう少し問題点を明確にしてからその答えを論理的に追及していく方向性が欲しいように思います。例えば、後半のゴボウの話も、エンボリズムであるという答えを先に出していて、それを後から説明しています。これは、科学的エッセイではよくあるパターンですから、別に悪くはないのですが、短い文章中で論理性を見せる場合には、エンボリズムが根でおこりうるという点を最初に示して、それを回避するためには何ができるか、という展開の方が、もしかしたらわかりやすくなるかもしれません。