植物生理学I 第11回講義

植物の果実と種子

第11回の講義では、葉なの続きとして花粉管の誘導の話をしたのち、種子や果実の形が、どのような機能を反映しているのか、という点を中心に講義を進めました。この講義のレポートで求めているのは、論理的な展開を持つ文章なのですが、どうも、その点がわかっていない人が多いようです。


Q:花柱を通った花粉は花粉管の伸長により胚珠へ誘導する、その際に花粉の選別が行われ、同種の花粉のみ選択的に受精するということを講義内で学んだ。他種の花粉まで誘導することは植物にとってのリソースの無駄あるいは生物として何かしらのエラーが起こるために他種の花粉による受精を行わないのかなと考えたが、ではどのようにして花粉の判別を数μmの直径の花粉管で行っているのかと疑問に感じた。誘導物質が種それぞれにおいてまるで磁石のS字とN字のように振る舞うのならば、それぞれの誘導蛋白質の立体構造が種ごとにやや異なっているのではないかと考えられる。その誘導蛋白質を解析することで異種交配の可能性や、新種の開発、そして別アプローチからの分類学の観点が見えてくるのではないのかと私は考える。

A:あれこれ書かれてはいますが、全体として一貫した論理が感じられません。「疑問に感じた」という部分が問題設定なのだとすると、そこからが肝心の論理展開ですが、単に「考えられる」とあるだけで、なぜそのように考えるのかの理屈がありません。最後の一文も感想という感じでしょう。


Q:今回の講義でLUREというタンパク質により植物生体における謎が解けたことに興味を抱いた。このタンパク質により花粉管がどのように胚珠に伸長しているかが明らかにされた。また、このタンパク質は、ディフェンシンの抗微生物ペプチドと類似した構造であり、胚珠の卵細胞に存在する助細胞という細胞から分泌されている誘導物質である。この発見は「トレニア」という植物を使って明らかにされた。ここで私は、以前に食虫植物がモノを捕獲するときにある点に触れるとその食虫植物がモノだと認識して捕獲しようとする。と観察したことがある。私は、この生体現象もなんらかのタンパク質により誘発していると考える。

A:何度も繰り返しになりますが、この講義のレポートに求めているのは自分で考えた論理です。最後の一文以外は、全く考えたことではありませんし、最後の一文も「考える」となっているものの、何の根拠も示されていませんから、論理になっていません。これでは評価の対象になりません。


Q:今回の講義では種子の形態について学んだ。その中で種子の散布方法について学んだのだが、思いついたのが服にくっつくものである。有名なものはオナモミで、硬い果皮の表面に大きな棘をつけており先端がフック状になっている。一方で、マメ科のヌスビトハギがあり見た目は細かい毛が生えているのだが、その毛が1つの細胞でありその先端がフック状になっており同様に服にくっつくことができる。前者は組織レベルのフックであり後者は細胞レベルのフックである。進化的な観点から見たとき、これは収斂進化であるといえよう。どのような過程でこれらの形態が生まれたのか考えたとき、後者は果皮の細胞が偶然に突起状に変形したものから生まれたと考えられるが、前者のような組織レベルのフックが生まれるためにはかなりの変異が起きなければならない。丸い部分から突起が生えるという発想よりは、硬い部分以外が小さくなり硬い組織が棘状になったと考えた方が自然かもしれない。どちらの過程で生まれたのかを知るためにはオナモミの果皮でどのように遺伝子が発現しているのかを調べる必要がある。

A:後半が論理の部分だと思いますが、最後の一文はやや投げやりですね。「遺伝子発現を調べる」だけだと、ほとんど情報量ゼロです。


Q:今回の講義で、果実の色について触れていた。そこで果実の色が変化する理由について考えていきたい。まず大半の果実がはじめは緑色をしているが、時間がたつにつれて色が変化していく。これは果実が形成され始めの時は植物の表皮細胞由来のクロロフィルがまだ果実中に残されており、果実が熟れるにつれて分解され、クロロフィルに代わりアントシアンやカロテノイドが合成されているのだと考えられる。ではなぜ果実中ではクロロフィルが合成されないのであろうか。それについては、前回考察した花色と同様に、動物の目につきやす色であることが考えられる。果実の色を葉と同様の緑色ではなく、赤や黄色にすることで鳥や哺乳類などの目につきやすくしている。さらに、熟れれば熟れるほど果実の美味しさを増し、より動物に食べられやすくしているのだ。
参考文献 https://books.google.co.jp/books?id=h2R2DgAAQBAJ&pg=RA2-PT65&lpg=RA2-PT65&dq=鳥+色+目立つ+果実&source=bl&ots=YefLx3oO5a&sig=azG32PT8yLcDx3oMOmQRRGOk5FU&hl=ja&sa=X&ved=2ahUKEwjL4p7wqozcAhWJNpQKHerpBL4Q6AEwDHoECAIQAQ#v=onepage&q=鳥%20色%20目立つ%20果実&f=false

A:考えてはいますが、これだと中学生レベルの感じです。ここでは直してしまいましたが、誤字なども目立ちます。もう少し大学生らしいレポートにしてください。


Q:【なぜウラジロカンコノキは特定の1種が独占できているのだろうか?】 私はウラジロカンコノキの虫と植物の共生に非常に興味を持つと同時にある疑問を抱いた。それは他の虫も繁殖するにはウラジロカンコノキは絶好の場所だと考えられるのに、なぜ特定の1種に限定されているのだろうか?競争が生じれば、胚珠の食べられる量が少ないなどのウラジロカンコノキにダメージが少なく、効率的に受粉してくれる虫を選択できると考えられる。でも今の形態を選択しているのは何か理由があるのと思うので考察したいと思う。もし集まった虫の中から選択する仕組みをしていたら、その場に最適の虫とマッチングできる。しかし、選択するのに時間がかかり、選択的に落とせなかったときなどデメリットもある。また、途中でより効率的な虫が現れたときの対応が難しい。だから、ウラジロカンコノキはある程度相性がいい特定の1種を選んで独占状態にして安定的な繁殖をしているのだろう。

A:結論としては、冒険をしない保守的な戦略をとっているということですね。この場合、独占されていない植物の例がないので、ある意味で論理展開が難しくなっています。そこに工夫の余地がありますね。


Q:つくしの胞子には4本の弾糸があると知った。弾糸は遠くに飛ばすためにとても便利な器官だが、胞子で増える植物すべてに共通しない理由は、進化と関係あるのではないかと考えた。調べてみると弾糸を持つのは主にコケ植物であり、シダ植物ではつくしが属するトクサ属だけである。ここでコケ植物とつくしの共通点は多湿な環境を好むことである。つまり風に運ばれ乾燥した場所に落ちた時生存する確率が減るため、それを回避するためにコケ植物やトクサ属で弾糸が備わったのだろう。そしてコケ植物もシダ植物も太古から存在する植物である。地球の歴史上水分が欠乏した期間、氷点下にさらされた期間など過酷な環境下になったことも少なくない。その中で長年生存し続け現在も生きているのは、環境に対応できるようにしたのではなく、適応できる環境に移動する進化を身につけたのだと考えた。植物には移動するための足はない。種子植物は目立つ花で虫を引き寄せ生息範囲を広めたが胞子植物には種子植物のような花はない。花を形成させる進化を選ばなかったのは、太古にはまだ昆虫が存在しない時期があったからだ。乾燥している環境なら弾糸を伸ばし風に乗って移動する。湿潤な環境なら移動する必要がないので弾糸を広げずそのままとどまる。このように自身は移動できなくてもいいが、子孫を残すために胞子だけは広範囲に広げるために弾糸が生まれたのだと考えた。

A:全体としては面白いのですが、論理が入れ子になっているので、読み手に伝わりにくくなっています。最後の文を読む限り、現在の環境にフィットしているかどうかによって、胞子の散布距離を変えているのではないか、という仮説が眼目なのだと思います。そうであれば、途中の種子植物の話は逆に邪魔になりますし、地球上の歴史の部分も、もう少し書き方を変える必要があるでしょう。文章は、一度書いた後、論理が通るように推敲すると、ぐっと良くなります。


Q:イチゴの普段種子だと思っている部分は実は果実であると習った。イチゴの果実自体は種子に皮がついたようなもので果実の中ではあまり発達していないと考えられる。果実だと思っているところは花托という部分であり、茎が変化したものである。この花托の部分は動物にとって魅力的な部分であり、桃などの果実と同じく動物に食べられ、種子を拡散する役割を持っていると考えられる。よってイチゴは裸子植物から進化した原始的な被子植物が果実を発達させ、動物に種子を運んでもらうという高度な被子植物への進化する途中の段階ではないかと考えられる。なお現在栽培されているイチゴの大半はランナーと呼ばれるつるを用いた無性生殖で栽培されているのでこの偽果の役割は人間を満足させるためだけになってしまっている。

A:真ん中付近に「よって」とある部分が、この講義のレポートで求める論理の部分なのだと思いますが、その論理が今一つあいまいですね。なぜ「途中」だと判断したのかがわかりません。


Q:今回の講義で、ツクシの胞子には4本の足のようなものがあり、息を吹きかけるとキュッと巻き付き、そのまま放置しておくと巻き付いた足が元のように広がることを知った。足のようなものは弾糸といい、湿度が高いと丸まり胞子を飛びにくくし、湿度が低いとのびて広がることで空気抵抗を大きくし遠くまで飛べるようにする働きがある。このことから、弾糸は湿度の高低で伸び縮みを行ない、胞子を飛ばすタイミングを図っているとされる。しかし、これは湿度が高い時は雨天であると考え、湿度が低い時は晴天であるという考え方によるものだと考える。東京の夏のように、よく晴れて気温が高く湿度も高く、その上風もあるといった、蒸し暑いという天気では弾糸及び胞子はどうであるだろうか。湿度が高い時は弾糸は丸まってしまうが、晴天であり風もあるのであれば飛ぶのだろうか。弾糸は湿度との関係の他に温度との関係はないのであろうか。
 温度が高く湿度があるミストサウナのような空間と湿度が低く温度も低い冷蔵庫のような空間を用意し、湿度が高い方にのみ風を送る。その装置内でツクシを観察すれば、湿度が高くても風があれば弾糸は広がるのか、湿度が低くても温度が低ければ弾糸は丸まるのかということが確認できると考える。私は、ツクシは春の暖かくなってくる時期に見かけるので、気温は寒すぎることなくかつ高すぎることのない、雨は比較的少ない穏やかな天気を好むと考える。それゆえ、弾糸の伸び縮みは湿度との関係の他に、温度や風の有無にも関係があると考える。ツクシの胞子が飛ぶには、湿度が低く、暖かく春一番が吹くような条件が最も好ましいと考える。
参考文献:MAkasaka's Homepage | 高校せいぶつ実験|ツクシの胞子、http://www.makasaka.net/seibutu/tukusi/tukusi.html

A:前半が問題設定なのだと思いますが、科学的レポートではもう少しかっちり記述したほうがよいでしょう。「弾糸の収縮にかかわる環境要因は、湿度の他に風と温度があるのではないか」ということでしょうか。そうであれば、後半も、もうちょっとすっきりした書き方ができると思います。


Q:今回の授業で、受精するのはほかの種類の植物は自他認識が起こり、花粉が辿り着くことはないということを学んだが、植物の交配させたものを聞いたことがあると思ったので、調べたところ、やはり同じ属の植物は可能だが、異種の植物は交配させることができないらしい。だが、トレニアという植物からルアーと呼ばれる花粉管誘引物質であるペプチドが発見されており、この遺伝子に似ているものをシロイヌナズナから見つけ、その遺伝子をトレニアに導入することで、そのルアーを分泌し、シロイヌナズナの花粉管がトレニアの卵装置に向かって誘引され、さらに花粉管が卵装置に進入することが観察された。だが、これはシロイヌナズナの全ゲノムが解析され、トレニアのルアー遺伝子に似ているものが見つかったためにできた実験系である。ほかの植物でもこの現象を行うことができれば、さらに多くの種類の植物を生むことができると考えられる。

A:ルアーという名前は出していないのですが、講義でこの現象を解説しています。なるべく、講義を聞いてレポートを書いて欲しいところです。