植物生理学I 第10回講義

花芽分化とABCモデル

第10回の講義では、植物の花芽形成のタイミングの決定要因と、花器官の作られ方を説明するABCモデルを中心に講義を進めました。


Q:「同じ種類のオオバコを同条件で育てても北海道に生息するものはすぐ枯れてしまうのに対し、沖縄に生息するオオバコは青青としている」と本日の授業でありました。これは生息地が違うオオバコでは臨界日長(この日長を超えるとオオバコは種を残し枯れる)の違いが生じるためではないかと考えた。それを証明するための実験系を以下に記す。
1.各緯度(例として北海道、東北、関東、九州、沖縄の5つ)に生息するオオバコを十分な個体数採取する。
2.採取してきた個体の臨界日長を測定する。
3.横軸に緯度、縦軸に臨界日長をとり、測定したデータを一つずつプロットする。
4.プロットしたデータを線で結び数式化する(私は一次曲線になると予想)。
以上の手順で証明できるかと思われます。

A:授業の中で、栄養成長から生殖成長の切り替えの話はしたと思いますので、それを繰り返すのではなく、自分で考えたことをレポートに書くようにしてください。また、この講義のレポートで求めているのは論理です。予想するのは良いのですが、占いでは困ります。そのように予想する根拠をきちんと示してください。


Q:ABCモデルでは、ABC3つの異なるクラスの転写因子が花の異なる部分で働くことにより、A:がく、A and B:花弁、B and C:おしべ、C:めしべ にそれぞれ分化させる。もちろん、進化学的に見ればこれらのシステムは初めから備わっていたものではないと考えるのが自然である。まず、生殖にかかわる、という点からおしべとめしべは持っていたと考えると、Aの遺伝子は一番後天的に獲得したものと考えられ、A,Cの遺伝子が単一で器官形成を担うのに対し、Bの遺伝子はA,Cとの組み合わせでしか組織を形成できないところから、獲得順序はC→B→Aの順であったことが予想できる。つまりC遺伝子による胞子体形成で無性生殖を行っていた個体が、有性生殖獲得の段階でB遺伝子を獲得し、後に虫媒花のシステムとともに必要となったA遺伝子と既存のB遺伝子を用いて花弁を形成した、と考えることができる。

A:きちんと考えていてよいと思います。講義で説明したように、C遺伝子は、そこで無限成長を停止させる働きを持ちますから、ここで述べられた仮説によれば、無限成長の停止も初期に獲得された形質ということになりますね。


Q:今回の講義で花のABCモデルによる花器官形成についての知識を得た。植物の中には八重咲きの花を咲かせる植物がある。全ての植物が花器官形成にこのABCモデルを取っているわけではないと思うので、ABCモデルの植物で八重咲きをする個体について考察する。シロイヌナズナなどのABCモデルは極めて単純な構造をとっており、3つの遺伝子をそれぞれA、B、Cと表記すると、Aのみが働くとがく、AとBが働くと花弁、BとCだと雄しべ、Cのみだとめしべが形成される。一般にB遺伝子は広がらないことが知られているため(突然変異体では広がる可能性もあるが)、八重咲きの個体はA遺伝子の領域が広がり、雄しべに相当する部位が花弁に変異していると考えられる。このような個体は、八重咲きの美しい花を咲かせるにも関わらず、子孫を残すことができない。桜の中にもこのような個体が存在し、これらの個体は接ぎ木によって子孫を残すという。もし、人工的にB遺伝子をA遺伝子側に広げる、または花器官形成に関わる4つの領域を5つに増やすことができたら自然交配できる八重咲きの個体ができるのではないかと考えた。

A:ここでの仮説が正しければ、八重咲の花の中心には、必ず萼があるはずですよね。そのあたりの考察も欲しいところです。


Q:産地によってオオバコの成長の仕方が異なるという話が興味深かった。これについてすこし考えてみると、あの写真が撮られた時点でオオバコそれぞれがそれ以降の外気温の変化について”予想”をしていたということである。オオバコは1年草なので、その個体自体が学習したということはなく、遺伝子的に花成ホルモンを出すタイミングが初めから決まっているということである。このことから1つ思ったのは、植物は「動かない」という最大の特徴から”日差しの強さ”と”緯度”すなわち”気候”の相関関係については知らないのではないかということである。種それぞれにある一定の受容できる最低の光エネルギーレベルと限界の光エネルギーレベルが決まっていて、その範囲外であるときにそのことは情報として伝達されることはないのではないか。

A:面白そうな話題ですが、論理がきちんと詰められていませんね。この講義で求めているのは科学エッセイではないので、もう少し、一つ一つの論理をきちんと展開するようにしてください。


Q:今回の講義では、様々な植物について、特に花に注目して学んだ。その中で、ソメイヨシノは葉のない時期に花が咲くことが分かった。これは、前年度の葉が落ちる前の時期にすでに花芽の分化が終わっており、翌年度の温度によって開花時期を決定するためである。桜の開花前線などの予報が行われるのはこのためだということである。ここで、今回他に学んだこととして、オオバコの地域差がある。これは、同じ温度条件下でも生息地域(例えば東北、関東、九州)によって栄養成長と生殖の切り替えを行う時期に差があるということである。これは、その土地の気候に合わせてオオバコがそれぞれの最適な時期を分かっているためである。この二つから、ソメイヨシノも単純に温度変化にのみ影響されているのではなく、地域毎に開花条件も変わっているのではないかと考えた。これより、寒い地域のソメイヨシノを暖かい地域に持ってきて早く開花させたり、暖かい地域のソメイヨシノを寒い地域に持ってくると遅く咲いたりすることが確認できれば証明できると考えられる。

A:このレポートの肝心な点は、「この二つから」以下の論理展開の部分ですが、ここの論理は、オオバコでそうだからソメイヨシノもそうだろう、というだけに過ぎません。ぼやっとした類推では、科学ではなくて、フレーザーの共感呪術のような感じです。


Q:私は今回の講義の中で、チューリップの花弁の開閉運動に興味を持った。チューリップは成長の度合いを花弁の内側と外側の細胞で気温によって変化させることで運動を行っているが、気孔やオジギソウのように細胞の膨圧の変化によって運動している器官や種も存在する。なぜ、チューリップはわざわざ花弁を開閉させるために膨圧の変化による運動よりも細胞を成長させると言う点で多くのエネルギーしていると思われるにも関わらず、この仕組みを利用しているかについて考察する。まず考えられるのは、チューリップは園芸種として16世紀から栽培されているため栄養面では困ることが無い、孔辺細胞など一部の細胞でのみ発現する形質よりも全ての細胞で発現する成長に関わる遺伝子の方が変異が起きやすかったためなどが考えられる。しかし、これらの理由は成長による運動を選んだ種が増えた理由としては小さい。ここで、膨圧運動を行う植物細胞は運動に対応するため、細胞壁が薄いという点に注目する(1)。膨圧運動を行う植物としては、オジギソウ、ハエトリグサなどが存在する(2)が、それらの葉はチューリップの花弁と比較して小さい。このことから、チューリップの花弁の開閉運動が膨圧によるものであった場合、チューリップの花弁を十分に支えることができず、開閉運動に障害が生じたり、花弁が取れやすくなり虫などによる受粉に支障が出るためだと考えられる。
参考文献:1.佐藤公行 「みんなのひろば 植物Q&A おじぎ草の仕組み」2006年 日本植物生理学 登録番号 0821、2.神沢信之・土屋隆英「植物運動とそれを担うタンパク質-オジギソウの屈曲運動を中心として-」2003年 J. Mass Spectrom, Soc, Jpn 51巻1号

A:これは、問題設定が明確で、起承転結がありますから、レポートの論理が読み取りやすいですね。よいと思います。


Q:今回の講義では花のABCモデルについて取り扱った。ABCモデルとはAの遺伝子がはたらくと「がく」、AとBの遺伝子がはたらくと「花弁」、BとCの遺伝子がはたらくと「おしべ」、Cの遺伝子がはたらくと「めしべ」となり、これらの組み合わせで花の形状が決定するというものであった。ここで、もし全ての遺伝子が欠損してしまったらどのようになるかふと疑問に思った。基本的な花はがく、花弁、おしべ、めしべで構成されているため、全てが欠損してしまうと花ではない何かになってしまうことは想像できる。花は茎頂および葉の付け根に出来る。この位置にもし器官が出来るとすればシュートまたは葉になると考えられる。花弁、がくを見てみると葉の構造と類似しており、またおしべ、めしべは茎の形状に似ている。このことから葉と茎がセットになっているシュートになる可能性が高いと考えられる。

A:論理展開は別に悪くはないのですが、講義の中で、花の起源が葉であることを、すでに文豪のゲーテが発見していた話をしたと思います。レポートは講義を聞いて書いてください。


Q:今回の授業で、チューリップの花の開閉の仕組みについて学習した。温度が下がると表皮の外側の細胞が伸長して花が閉じ、温度が上がると内側の細胞が伸長して花が開くということであった。では、チューリップがこのように花の開閉を行う意義は何であろうか。チューリップの開花時期及びその形態から考察したい。チューリップの開花時期は春先である。気温の低い朝晩や雨の日は花を閉じて、雨や夜露などで花粉や蜜が流れてしまうのを防いでいると考えられる。花粉を運ぶ昆虫の活動が活発になるのは通常日中であり、夜間に花を開いていても受粉の機会はかなり少ないため、花の開閉は限られた花粉や蜜を無駄なく生かすための適応であるということができる。また、花の開閉を行うごとに、交互に表皮の内側と外側の細胞が伸長するということは、日ごとに花弁の大きさが大きくなるということである。つまり、チューリップの花の開閉は、限られた日中に確実に受粉ができるよう、花が少しでも昆虫にとって目立つ存在となるために必要な機構であったとも考えられる。

A:一応論理的に話が進んでいてよいと思います。しいて言うと、もう少しアイデアに独自性が欲しいところですね。これだけだと、中学生ぐらいでも思いつきそうです。


Q:今回の授業でフラクタル構造について取り上げていた。フラクタル構造は全体と部分が相似形を持つというもので、植物でこの構造をとるものの有名なものとしてロマネスコ・ブロッコリーがある。ロマネスコブロッコリーは16世紀に開発された植物であるが、同様の形の側芽を繰り返し形成することに対しての利点というものは存在するのだろうか。まず一つの利点として繰り返し構造をとることで比較的少ない遺伝子量で構造を賄うことができるというものがあると考えられる。これは少ない遺伝子の組み換えで全体に対して同様の変異を形成することが可能になり効率的な開発が可能であるといえる。またこのフラクタル構造部分が食用になるのであれば通常の植物に比べて一株から得ることのできる作物量は確実に大きくなると考えられる。以上のようにフラクタル構造をとることは植物にとっての利点ではなく人間にとっての利点が大きいものと考えられる。

A:一点目の、繰り返し構造であるために少ない遺伝子で構造を作ることができるということは、確かにそうなのかもしれませんが、別にフラクタル構造でなくても、一般的にな繰り返し構造でもよいはずですよね。二点目の作物の量が多くなるという点は、なぜそうなるのかがよくわかりませんでした。もう少し説明が必要だと思います。


Q:今回授業で扱った一般的なABCモデルの起源について考えてみる。植物は無性生殖が先に存在し、後から有性生殖が起きたため、雄蕊、雌蕊が存在するまではA遺伝子もなかったと考える。まず雄蕊、雌蕊を形成する遺伝子(1.2)が発生する。ここで1はのちにC遺伝子となった。最初は風などによって花粉を移動させていたが、効率を高めるために昆虫に運んでもらう必要がある。そこで花弁が登場する。目立つためになるべく花弁は外に広げたいために、雌蕊の周りにある雄蕊の遺伝子が葉の周辺または茎の周辺細胞を認識したい。そのために茎または葉を構成するための遺伝子(3)を認識して遺伝子(2)は働くようになった。そのため(2)の遺伝子が(3)遺伝子と協力して働くようになる。これがのちに(2)がB遺伝子、(3)がA遺伝子となった。すると、がくが緑色をしていることからも、形成するA遺伝子はもともと葉または茎を構成する(3)の遺伝子ファミリーの変異体から産生されたと考えられる。

A:おそらく、このレポートの論理の面白みは、もともと葉を構成するための遺伝子であった(3)がA遺伝子となったという点であるように思います。これでも面白いと思いますが、もう少し、葉と萼の関係に焦点を絞ったほうが、しっかりしたレポートになったかもしれません。


Q:今回の授業では植物のABCモデルについて扱った。植物はABCの3つの遺伝子の組み合わせで花の形成を担っているということであったが、なぜ花弁なら花弁、雄蕊なら雄蕊のの遺伝子をそれぞれ作らなかったのかという点について考察する。生物にとって、複数の遺伝子を組み合わせることで得られる利点とは、遺伝子をコンパクトにできるという点である。一方、遺伝子をまとめてしまうことで、どれかの遺伝子が欠損した場合、複数の器官に影響が及ぶという欠点がある。それでも現在植物の花器官形成がABCモデルのように行われているということは、遺伝子のコンパクト化または何か別の利点が遺伝子欠損のリスクよりも優先すべきことであるのだと考えられる。

A:話題としては悪くないと思うのですが、ここで述べられた利点と欠点は、おそらく誰でもまず思いつくことなのではないかと思います。その後を、一歩でも二歩でも考察を進めることができるかどうかが勝負です。


Q:思い通りの時期に花を咲かせる植物のホルモンである花成ホルモンというのがある。これは70年前にロシアの植物学者によりその存在が提唱され夢のホルモンだと言われていた。しかしそれを取り出すことが出来ず最近まで解明されていなかった。そんなホルモンが2007年に奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科の島本教授らによって発見された。このホルモンがイネの開花を促進する遺伝子(Hd3a)により作り出されたタンパク質であることをつきとめ、分子生物学の手法を使い、イネにこの遺伝子を導入したところ普通は50−60日要する日数が15−20日で花を咲かせることができた。この花成ホルモンの発見はどのような効果を引き起こすのか。このホルモンの発見は花を咲かせる薬剤の開発ができるだろうと考えられている。好きな花を好きな時に咲かせるという夢のようなことができるであろう。また、フロリゲンはどの植物にも共通な花成ホルモンであるため、全ての作物の花を咲かせることができる。穀類の生産の拡大に大いに期待できるだろう。
参考文献:http://www.naist.jp/pressrelease/2007/04/002423.html

A:前半の2/3は、単なる研究の紹介ですし、後半1/3は、フロリゲンを使えば自由に花を咲かせることができる、としか言っていません。論理が書けているレポートは、この講義のレポートとしては評価されません。


Q:講義の中でガーベラなどの花は四方が埋まっていると頭状花、一方に空白があると舌状花になるという話があった。しかしガーベラの開花が進むと開花ベルトが中央に移っていくわけで、四方が埋まっている状態から舌状花が開いていくことになる。このことから私は1層目の舌状花と2層目の舌状花では開花の機構や花成ホルモンのつくられ方が異なるのではないかと予想した。この仮説を確かめるため、以下の実験を提案する。まずガーベラの最外周部の舌状花が開く前に花弁を除いておく。これで中央部に開花ベルトが移っていくのかを観察する。ここで順々に開花していかなければ、開花ベルトが移動するのは最外周部の花弁によって何らかのシグナルが発せられていると考察できる。またもう一つの実験としてガーベラの最外周部と中央部の間の舌状花を開花する前に除いておく。ここで開花の順番を観察した際中央部に舌状花が開花しなければ、外側の層からのシグナルによってより内側の層が開花するということを結論付けられるのではないかと考えた。

A:どうやら筒状花が開花すると舌状花になると勘違いしているようですね。生物学専修としては少し恥ずかしい気が。筒状花と舌状花はそれぞれ別個のもので、筒状花は開花しても筒状花のままですよ。


Q:今回の授業では自家不和合性など植物の生殖について触れられた。植物の生殖について考えたときに、私の頭にはイチジクが浮かんだ。外側に花を露出させていないイチジクはどのように花粉の受け渡しを行なっているのか。このことについて考察しようと思う。イチジクは果実の中にたくさんの小さな花をもっている。この花から他の個体に花粉を渡さなければならない。イチジクの果実を実際に観察してみると内側へと続く小さな穴の存在が確認できる。一般に果実はイチジクの果実のように穴を持っていないので、この穴はイチジクの生殖の仕方に関わるものだと考えた。穴から花粉を放出するか、花粉の媒介者の出入り口として穴を用いていることが予想されるが、穴の小ささという条件を考慮に入れると、やはりこの穴は媒介者の出入り口として機能しており、イチジクの生殖方法は媒介者による花粉の拡散であると予想される。

A:これは、おそらく事実が先にあって、それに論理を当てはめているのだと思いますが、それではダメです。事実を知らない立場で論理を展開すること自体は問題ないのですが、その場合、例えば、今回のイチジクで言えば、まずは自家受粉の可能性を考えるべきでしょう。また、「穴の小ささという条件を考慮に入れると」という部分も論理が不明です。科学の世界では、論理的に考える癖をつけることが重要です。


Q:ソメイヨシノは葉のない時期に先に花が咲いたり、ヒガンバナは花だけ出ることがある。なぜ花のみの形をとる場合があるのか。それは周りに植物が多いため花のみの形をとることでその環境の中で目立ち、鳥や昆虫を寄せ付け花粉を運んでもらうことで受粉を促し、子孫を残すためだと考えられる。では、種や実を作るに必要な栄養を葉を繁らせて光合成をして栄養を蓄える必要があるのに、花のみの形をとる種はどのようにして光合成を行なっているのだろうか。それは次のことが考えられる。1つ目は根から土壌動物などが排出した二酸化炭素や土壌に含まれている水を得て、茎に存在する葉緑体により光エネルギーを吸収することで行なっていると考えられる。2つ目は葉が存在しない分、必要となる栄養は少なくなると考えられるから、茎に存在する少ない葉緑体や気孔から光エネルギーや二酸化炭素を得ることで行っていると考えられる。

A:これまでの講義で、茎や根による光合成産物の蓄積の話をしましたよね。そうであれば、まずは、樹木であるソメイヨシノと宿根植物であるヒガンバナに関して、そのような観点からの考察が必要ではないでしょうか。講義内容を前提としたレポートを書くようにしてください。


Q:今回の講義で花器官形成の単純かつ明快な分子遺伝学的モデルであるABCモデルについて学習した。Aクラスの遺伝子は花の外側に作用し、Cクラスの遺伝子は花の内側に作用し、Bクラスの遺伝子はその中間で作用している。また、AとCクラスの遺伝子はお互いを抑制する役割を持っているため、花に作用する遺伝子範囲がそれぞれ別の範囲で保たれている。このAとCクラスの遺伝子が抑制する力が、遺伝子発現のどの段階でバランスが保たれるのか、また、両方の抑制力が常に均衡を保ち形成されるのか疑問に感じた。この疑問を解決するために、AとCクラスの遺伝子を発現初期の段階で特定し、マーキング、観察する必要があると考えた。

A:300字に満たないレポートのうち、前半は講義の繰り返しですから、レポートとして評価の対象となるのは後半の2文だけです。これで、この講義で求める論理を展開するのはそもそも無理でしょう。


Q:今回の講義では花の発現について、ABCモデルが取り上げられた。そこで、キク科の植物などでみられる、頭状花序の発現についてABCモデルと関連付けて考察することとした。頭状花序をもつ植物として文献1にあるツワブキを代表的な例に取り構造を調べた。頭状花序は主に筒状花と舌状花の2つの花が集まってできている。筒状花は外側から順に冠毛(がく片)、筒状花弁、雄蕊、雌蕊という構造をしていて、舌状花は外側から順に冠毛(がく片)、舌状花弁、雌蕊という構造をしている。頭状花序全体の構造を見ると、内側から順に若い筒状花が並び一番外側の部分に筒状花が位置し、筒状花は雄蕊や雌蕊、舌状花は花弁として特出した役割を持ち、頭状花序全体が一つの花のようになっている。筒状花と舌状花の構造の違いは、ABCモデルの各遺伝子の発現位置の違いによって生じているものと考えられる。筒状花は外側から順にがく片、花弁、雄蕊、雌蕊をもつABCモデルの典型例とすると、舌状花はB遺伝子の発現領域がより外側に偏っていると考えられる。B遺伝子の発現が外側に偏ると、A遺伝子とB遺伝子の両方が発現する領域が多くなり、花弁がより大きく発達することが予想される。また、B遺伝子とC遺伝子の両方が発現する領域が少なくなり、雄蕊が生じなくなるとも考えられる。したがって、大きな花弁を持ち、雄蕊を持たない舌状花について上記の仮説を考えた。頭状花序をもつ植物では花序の内側から外側にかけて遺伝子Bの発現領域を変化させることで、花序全体を大きな1つの花のような形に形成していると考えられる。
参考文献1:ツワブキとキク科の頭花 Web site of FUKUHARA, T. (Fukuoka Univ. of Education): Plant Morphology & Systematics (参照:2018-6-27)

A:全体としては悪くないと思いますが、前半の前置きはもう少し簡略化してもよいかもしれません。基本的に、この講義のレポートで評価の対象となるのは論理ですので。あと、最後の1文は、意味がよくわかりませんでした。


Q:花の開閉する仕組みが、花弁の内側と外側の非対称な成長によるものだと知り、面白いと思った。調べてみるとチューリップのような「傾熱性」のほかにもタンポポなどの「傾光性」があり、アサガオなどは前日の日没時間が関係するらしい(文献1)。しかし開閉するメリットはあるのだろうか。一度開いた花弁をわざわざ閉じるのは理由があるのだろう。カラスウリなどの夜に咲く花も存在する(文献2)ことを考えれば、一つの理由として受粉を媒介する虫の活動時間が考えられる。しかし、これはわざわざ花弁を閉じる直接の理由にはならないだろう。おそらく大切な雄蕊や雌蕊を保護しているのではないだろうか。夜に花弁を閉じるチューリップ、タンポポ、アサガオなどは春から夏に向けて咲くものが多い。季節の変わり目は昼夜の寒暖差が大きく、夜の低温によって雄蕊や雌蕊に障害が出る恐れがある。植物種は異なるが、「イチゴの場合低温限界はマイナス1℃であり、これより低くなると雌蘂や雄蕊に障害が発生し、変形果の原因となる(文献3)」といった報告があることから、夜間に花弁を閉じることは雄蕊や雌蕊を低温障害から守る効果があると考えられる。さらに夜間は湿度が上昇する。雄蕊や雌蕊が湿ったり、濡れた状況で長時間置いておくと雑菌が繁殖するなどのデメリットがある。また雨の日は気温が上がりにくく、照度も低い傾向にあるといえるので、傾熱性や傾光性によって雨の日に花弁を閉じることができれば、雨による物理的損傷や既に述べた湿度の影響を受けにくくすることができるだろう。一方で夜間に花を咲かせるカラスウリなどが昼間に花弁を閉じるのは、彼らにとっての害虫が昼行性である可能性や、雄蕊・雌蕊が直射日光および高温に弱い可能性などが考えられる。いずれも雄蕊や雌蕊をなるべくいい状態で管理して生殖確率を向上させる狙いがあるのではないだろうか。
文献1 咲いたのに夜になると閉じる不思議、花の種類とその仕組みとは? https://zakizaki-loglog.com/191.html 2018.6.27閲覧、文献2 vol.45 植物の不思議。よく見て観察しよう! http://idea.niwagohan.com/archives/262 2018.6.27閲覧、文献3 高設イチゴの実用栽培技術9.気温・湿度管理、https://agri-biz.jp/item/detail/2354 2018.6.27閲覧

A:悪くないと思います。ただ、やや羅列的なので、個々の論点を並列に置くのではなく、何らかの理屈をつけて、例えば、3つン可能性のうち、この可能性が一番高い、といった記述にした方が、読む方は流れを読み取りやすくなります。