植物生理学I 第3回講義

植物の葉の構造

第3回の講義では、植物の葉の内部構造を中心に、気孔の開閉や境界層抵抗の意味なども含めて、構造を機能のかかわりを解説しました。講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。


Q:植物は水分の損失を防ぐために気孔を閉じ、蒸散によっての温度調整をほとんど行っていない。しかし、高温化においてはルビスコのオキシゲナーゼ活性とカルボキシラーゼ活性の優位が逆転し、光合成の効率が著しく落ちてしまう。また、オキシゲナーゼ活性の上昇によって活性酸素の放出が増加し、植物細胞に深刻なダメージを与えることが考えられる。よって植物にとって温度調整は必要不可欠な要素であり、特に砂漠などの高温地域に生息する多肉植物類にとっては死活問題である。そこで、多肉植物の高温に対する防御機構について議論する。一般的にサボテンなどの多肉植物は夜間に気孔を開いて炭素源を確保するCAM植物であり、昼間は気孔を閉鎖し水分の損失を防いでいる。しかし、日光のある昼間は明反応による光合成が行われているため、植物内部の温度を一定に保つ必要があり、次のような防御メカニズムがあるのではないかと仮説を立てた。
1.表皮組織が分厚く発達し、空気の層を作ることによって断熱材として機能している。
2.根を低温の地中深くまで張り、植物体内の水分を循環させて体温を一定に保っている。
3.多肉植物は水分を大量に含むため、水の熱伝導率の悪さを利用して、温度の上昇を抑えている。
 以上の三つについてそれぞれ考察した。まず1について、植物の細胞は液胞によって満たされるため、空気の層を作っているとは考えられにくい、ただし、ウツギのように細胞間隙を広くとれば可能性としては考えられる。この仮説はサボテンの断面を顕微鏡で観察することで正しいかどうかを判断できる。2について、植物の水分は根圧によって導管内を一本の水柱となって途切れずに移動している。しかし、もし植物体内を水分が循環するとすれば、光合成組織から戻ってくる水分は多量の空気を含むことになり、導管内で気泡が発生してしまうためこの仮説は考えにくい。3について、今のところ最も現実的な仮説であるが、この仮説を証明するためにいくつかのモデルを用いた実験が必要になる。まず、植物は表皮近くに葉緑体が集中しているので表皮近くが最も高温になると考えられる。そこで、表面を黒色に塗った容器を用意し、内部に水分を満たす。これを通常の葉のような表面積に対して体積が小さいものと、サボテンのように表面積に対してある程度大きな体積を持つ二つのパターンを準備し、それぞれ表面付近の水温と中心部の水温を計測し、時間変化とともに温度の上昇がどのように変わるのかを調べる。このことによってサボテンの温度に対する防御機構の一つが多肉植物であることを証明できると考えられる。

A:よく考えていると思います。しかし、最後の部分、多量の水を含んでいれば熱容量が大きくなるのは、実験をしないでも自明です。つまり、実際にはサボテンが多肉である理由が水分の保持にあって、温度上昇については防御機構として働いていない場合でも、実験結果は変わらないでしょう。メカニズムを明らかにする実験系というのは比較的立案しやすいのですが、「目的」を明らかにする実験系を考えるのは案外大変です。


Q:今回の講義でCO2濃度が上昇すると気候は閉じて葉の温度が上昇することから、植物は温度が上がっても水を失わない方を選ぶと知った。高校までの知識として機構の役割の一つに葉の表面温度を下げることがあったが、実際には温度調節のために気孔を開くのではなく、気孔を開いた結果、温度が低下すると知り衝撃であった。ここで、スイレンの葉は空気に面した側に気孔が存在するが、水上で生活し、水が豊富にあるスイレンにも「温度が上昇しても水を失わない方を選ぶ」は当てはまるのかどうか疑問に思った。水が豊富にあれば、二酸化炭素を多く取り込むために気孔は開いている方が成長に有利だと考えたからである。よって、これを調べるための実験系を考える。(1)水が豊富にある状態でCO2濃度を上昇させて気孔の開閉を調べる。(2)水がない状態でCO2濃度を上昇させて気孔の開閉を調べる。(3)水が豊富にある状態で温度を上昇させて気孔の開閉を調べる。(4)水がない状態で温度を上昇させて気孔の開閉を調べる。(1)(3)において気孔が閉じた場合はスイレンも陸上で生活する植物のように温度が上昇しても水を失わない方を選び、水が豊富にあるのにもかかわらずそのようなシステムを持っているのは、気孔の開閉を司る遺伝子が陸上で生活する植物と共通していると考えられる。また、気孔が閉じない場合は気孔の開閉のシステムは陸上で生活する植物とスイレンでは異なることが示唆される。また、(2)(4)で気孔が閉じた場合にはスイレンは水が豊富にある時とない時での気孔の開閉システムが異なっていて、水の有無を感知するものがあると考えられる。

A:これも頭を働かせていてよいとは思うのですが、スイレンにおいて「水がない状態」というのをどのように実現しようとしているのか、イメージできませんでした。葉が水に浮かんでいない状態のスイレンは、かなりストレスを受けそうで、その影響を排除するのが難しいのではないかと思いました。


Q:金曜日の生物学実験の時に、屋上で大山研が栽培しているハエトリグサを見せて頂いた。その際に、どうしてハエトリグサがあのような構造になったのか疑問に思ったが、今週の植物生理学の授業内容からある程度考察ができると思う。まず、ハエトリグサの捕虫器(葉)の内側の表面には獲物の存在を感知する毛(感覚毛)があるが、これは元来葉の表面に存在し葉身の保護・保温に働く毛が進化したものだと考えられる。ここで刺激をキャッチすると、通常の葉の主脈にあたる線を境に両葉身を折りたたんで捕獲する。捕虫器の内側は向軸側であり、通常の葉では光を吸収し光合成をおこなう。しかし、ハエトリグサは栄養のほとんどを、虫を消化酵素で消化し吸収しているため、ほぼ光合成を行っていないと考えられる。そのため、葉の表面にはほとんど葉緑体を持っていないために、緑色ではなく虫をおびき寄せやすい目立つ色をしているのだろう。しかし、タンパク質を分解する過程で光合成と同様に水が必要になることは変わらないため、またハエトリグサは暑さに弱いので葉の温度を低く保つためにも、蒸散は盛んに行っていると考えられる。そのため、気孔を多く持つ葉の背軸側には補虫のための機能は備えなかったのだろう。

A:このレポートでは、講義の内容から自分の観察の結果を説明する、という形式をとっていて、これはこれで面白いと思います。ただし、前提の「ハエトリグサは栄養のほとんどを、虫を消化酵素で消化し吸収しているため、ほぼ光合成を行っていない」という点が全くの誤解です。この学年は僕の生化学の講義を聞いていないので、この点については、植物生理学の講義のどこかできちんと話そうと思います。


Q:今回の講義では、気孔は葉の裏面に多く存在する種が多く、そこから取り入れたCO2を光合成の場である葉緑体が多く存在する葉の表面に近い方に存在する柵状組織に細胞間隙を通して拡散させているということを学んだ。その証拠に、柵状組織の細胞間隙に接した部分に葉緑体が多く配置しているという画像もあった。葉緑体が表側に近い方に多く存在するにも関わらず、気孔は裏側に存在するという矛盾にも感じられる事柄にとても興味がわき、葉が薄い(共通性)ことはこの矛盾を解消するためなのではないかと考え、これについて考察したいと思った。(進化的に気孔が裏側に多くなったのが、葉が薄くなったのより前であるという仮定のもとである)
 これを検証するためには、葉の厚さを決定づける因子を遺伝子操作し、葉の厚さが通常より厚い植物を用意し、この厚い葉をもつ方が通常の葉をもつ方よりも光合成の効率が悪ければ、植物の葉が薄いのは気孔から取り入れたCO2を効率よく柵状組織の葉緑体に届けるためだと考えられる。まず、葉の厚さを決定づける因子について調べたが、これがはっきり分かっていないようである。しかし、シロイヌナズナの葉の厚さを計測する方法と、その方法で計測した結果、有意に葉が厚いと言えるような変異体(N692)が存在することは分かっている(1)。この変異体を用いて光合成効率の評価を行えばよいと考えた。ここで気をつける必要があるのが、単純に変異体がもつ葉緑体数が多いことによって、変異体の光合成量が多くなる可能性である。これを解消するためには葉緑体数を計測し、1葉緑体あたりの光合成量を求める必要がある。また、CO2が限定要因になるような条件にも注意しなければならない。
・参考文献 1.成田典之 (2005) “Isolation and Analysis of Arabidopsis Mutants with Altered Leaf Thickness or Leaf Length” 総合研究大学院大学学位論文 Permalink: http://id.nii.ac.jp/1013/00001393/ 2017年4月26日閲覧

A:これもよく考えています。特に最後の部分、葉緑体の数の問題や限定要因の問題について考えている点が評価できます。ただ、実際にやろうとした場合は、各葉緑体に均一に光を当てるのはほぼ不可能でしょう。葉の厚み方向に急激な光量の勾配ができ、しかもその勾配は葉の厚みが変わることによって変化するでしょうから、その要因の影響をどのように排除するかは、極めて難しい問題であるように思われます。


Q:今回の講義では植物は温度の上昇よりも水を優先するという話があった。そして文献で調べると「陸上植物の葉では、約半分のエネルギーは蒸散に使われ、残りも反射、透過、熱への変換などで光合成色素に吸収されることがない。」(参考文献p61より引用)といった記述があった。入射光を100%とすると、反射される20%、熱になる20%、蒸散に使用49%、透過10%、クロロフィルに吸収1%となり、光合成に利用できるのは照射光のうち約1%である。ここから、約半分の光エネルギーを使っている蒸散を抑えることで、光合成のために光エネルギーを利用できるのではないかと考えた。
 CO2濃度を減らすとCO2をより多く取り込もうとし、気孔が開き蒸散作用も活発になる。逆にCO2濃度を増やすと水分を逃がさないように気孔を閉じ、蒸散を抑えることができる。CO2濃度と蒸散の関係は、このようになっている。あとは光合成速度を高くするために、光の強さ、温度も調整しなくてはならない。CO2濃度を高く設定するため、温度が高いときに光合成速度も高くなる。この時、酸素の熱変性や光呼吸による反応速度低下を考え、35℃を超えないようにする。光も強いほど光合成速度は高くなるので強く設定する。植物種によって光合成速度に違いがあるためその点では調整する。このように蒸散作用を抑えつつ光合成速度が高くなる環境で育てることで、光エネルギーを効率的に吸収ことができると考えられる。これによって普通よりも早く成長させたり、野菜、果実などの栽培で役立てることができると思われる。
参考文献:「NEW PHOTOGRAPHIC 生物図説 生物基礎 生物」 秀文堂 2013年2月20日

A:このような考え方は、いわゆるCO2施肥として実際に行われています。ただし、その際に考えなくてはいけないのは、全体で100%になっているもののうち、あるものの割合が変わる理由としては、そのものが変わる場合と、他のものが変わる影響が間接的に表れる場合があるという点です。また、ここでは「クロロフィルに吸収1%」となっていますが、正確には、光合成産物として固定されるエネルギーが1%であって、クロロフィルに吸収されるエネルギーは70%程度で、その吸収されたエネルギーが光合成に使われなかった場合に、熱になり、さらには蒸散の気化熱として使われるのです。つまり、この場合、CO2の濃度を増やすと、光合成の効率が上がり、そこに使われるエネルギーが大きくなった結果、熱になるエネルギーが減って、蒸散が減少する、という全く別のストーリーによる変化の可能性も考える必要があります。


Q:植物は、陸上進出するにあたって体内から水分を逃がさないためにクチクラ層を形成した。授業内で最も適した方法は、水分子は外へ通さないがCO2は中へ通す膜を形成するのが理想だった。しかし分子量的に水の分子量は18でCO2の分子量は44なので、CO2を取り込むための穴を開けると必然的に水は出て行ってしまう。したがって最終的に植物は、水もCO2も通さないクチクラ層で全体を覆い、ある程度の数の小さな穴を開け、水とCO2の通り道とした。そこで植物の陸上進出においてクチクラ層と気孔を形成するよりも、効率的で簡単な方法について考えようと思う。まず、同じく空気は通すが水は通さない条件を必要とする鶏の卵を考えてみた。イメージでは、卵内部で呼吸を行うために外から空気は吸収するが、卵白は外へ漏れることはないと思える。したがって鶏の卵の構造を調べると、外側からクチクラ膜、卵殻石灰層、卵殻膜で白身が覆われていることが分かった。卵殻石灰層に気孔があり、それを内側と外側両方から薄い膜で覆うことにより、空気の移動のみが可能になっているように見えた。これを植物に当てはめてみると、表皮組織に3層の膜を形成する必要がある。コストも大きく厚くなり、光合成効率も悪くなり表皮組織が3層になることはデメリットの方が多い。というよりも卵より植物のほうがより良い構造を形成しているようだ。開閉できる気孔と、なにも通さないクチクラ層という表皮組織は、植物にとってかなり適していると判断できる。

A:このような考え方のレポートを、この講義では歓迎します。葉っぱと卵を同列に論じたレポートは、この講義が始まって以来初めてだと思います。人が考え付かない論理を考えるというのは、科学の分野においては、極めて重要な素質です。一方で、卵が問題なく呼吸できているのは、このレポートで仮定されているように、三層構造によって選択的に水を保持している、という可能性の他に、単に卵の呼吸速度が低いので問題が生じていない、という可能性もありますよね。そのあたりの考察があってもよかったかな、と思いました。


Q:今回の授業で、気孔の主な働きとして、二酸化炭素の取り込みと蒸散とがあるが、二酸化炭素濃度が上がったときに、気孔は閉じて葉の温度が上昇するというところに疑問を抱いた。二酸化炭素がたくさんあるなら気孔を開くことで光合成をたくさん行い、それによって有機物を多く生産できそうである。しかし、ある濃度以上になると気孔を閉じ、植物の温度が上昇しても気孔を閉じたままなのは、有機物の過剰な生産はかえって植物にとって良くないことなのではないかと考えた。人においても、同じ種類の栄養を偏って摂取すると生活習慣病などの病気になるリスクが高まる。ここから、植物においても、体内に取り込む元素が、Cだけではなく、NやPなどの他の元素とバランスが取れるようにしなければならないのではないかと考えた。そのため、二酸化炭素濃度が高くなった際に、気孔を開けておくと、光合成が促進されてしまうため、それを防ぐために、気孔を閉じ、その結果植物の温度が上がっても、光合成や蒸散によって水を失うことを防ぐためにも、このような作用を起こすのだと考えた。

A:これは、考えてはいるのですが、もう少し何らかの理由付けが欲しいところです。単に、「そうなのだと考えた」と主張するだけでは、人はなかなか納得してくれません。このレポートの場合、人の生活習慣病とのアナロジーが一つの根拠になっていますが、もし、そのような主張をするのであれば、生活習慣病のメカニズムが植物の代謝においても起こりうるといった何らかの補強材料が欲しいところです。もしくは、二酸化炭素を増やした時に気孔を閉じる目的をもう一つ設定して、それを論理的に否定することにより、最初の自分の主張を補強するというロジックも考えられます。


Q:第3回の講義の中で、水蒸気の拡散コンダクタンスについて触れた。各細胞の拡散コンダクタンスの具体的な値をスライドで見たが、具体的にはその拡散コンダクタンスがどのように拡散のしやすさに影響しているのか疑問に思い、調べた。すると、幾つかの公式が提示されており、その中の一つがFickの第一法則であった。この法則は、光合成速度はある比例定数(この値をコンダクタンスという。)を持ち、2点間の濃度差に比例する。というものであった。したがって、この比例定数(コンダクタンス)の値が大きい細胞ほど、より光合成速度も速いということが言える。ということが、数式的にわかった。

A:これは、わかった、という点で落ち着いてしまっているので、書き手のロジックがはっきりしません。人の論理に納得した、という点を書くのではなく、自分なりの独自の論理を展開するようにしてください。たとえば、ここで紹介されている法則が、なぜそうなっているのかを考えてみるというのは一つの方向性でしょう。法則ではこうなっています、と言われて、無条件に納得するようでは、科学的な態度とは言えません。


Q:本授業において、風が強い環境下に存在する植物は葉を小さくしないとCO2を取り込めず、また風が強い場合葉を小さくしないとちぎれてしまうため、風の強さに応じて葉の大きさが変化するということを学んだ。このような因果関係に関して、葉の大きさだけでなく葉の硬度も風の強さに応じて変化するのではないかと考えた。つまり、風の弱いところではCO2を取り込む確率を上げられるよう葉をしなりやすく(硬度を小さく)し、風の強いところでは水分が飛ばされ乾燥しがちであるため硬度が大きくなる、もしくは強硬度であると風でちぎれやすくなるため柔軟にしなりやすく(硬度が小さく)なる、という相関関係ができているのではないか、という仮説を立てた。これを検証するためには、気流条件以外すべての環境が同一な場所で、植物の葉を潰す時に必要な力を測れるような計測器(硬度計の類)を用いて風の強さの段階ごとにその場所に存在する葉の硬度を計測する必要がある。しかし風の強弱以外に湿度条件はどうするか、風以外の気象条件による相関関係はどのように考察すればよいかなど数々の要素が複雑に絡んでいるため、あまり現実的な検証とは言えないかもしれない。

A:まず、最初の一文についてですが、僕自身が学生に学んでほしいのは、「風の強さに応じて葉の大きさが変化する」ということではありません。葉の大きさをそのような観点からみることができるという、「考え方」です。実際に葉の大きさが風の強さに応じて変わっているかどうかなどは、その考え方に比べれば些細なことです。葉の大きさだけではなく、硬さの要因もあるはずだと考えた点は評価できます(とは言え、他にも同じ考え方のレポートがありましたからそれほどユニークな考え方ではありません)。そして、その後の実験系は、単に仮説をそのまま確かめるだけですから、あまり考えている感じではありませんね。もうひとひねり欲しいところです。


Q:多くの植物は気孔が背軸側にあるのに対し、スイレンは全ての気孔が向軸側にあることを今回の講義で学んだ。これは葉が水に浮いているためである。ではなぜスイレンは気孔を向軸側にしてまで葉を水に浮かせたのか。まず、気孔が向軸側にあるデメリットとして考えられるのは、背軸側に比べ直接太陽光を浴びるので気温が高くなり蒸散水量が多くなり、乾燥する可能性が増す点。また、本来向軸側の葉緑体で光合成を行うのに対し、気孔が存在すること葉緑体の量が少なくなり栄養を作る量が少なくなってしまうという点が挙げられる。これらのデメリットがあるのに対し、スイレンが葉を水に浮かべたのはそれを勝るメリットがあるためと考えられる。まず考えられるのは葉と茎の関係である。本来ならば茎で葉を支えるのだか、水に浮かべることで茎の負担が減り茎を育てる為の栄養が少なくてもいいことになる。また、陸地に比べ水面では木々などの障害物が少ないため風通しがよく、同じ葉の大きさに対してより多くの二酸化炭素を取り込めることが可能で、日光も多く得ることができるので効率よく栄養を作ることが出来ると考えられる。また空気中よりも常に水の中で生活してるので温度変化が少ないことや常に水を得ることができる点、地上に住む虫等から食されない点、風によって千切れることもないといった点がメリットとして考えられる。このメリットを優先した結果いまのスイレンの形があるのではないかと考えられる。

A:これは、いろいろ考えているという点で、一応評価できます。ただ、やや発想が素直すぎるかもしれませんね。おそらく多くの人が同じようなことを考えると思います。科学の世界では、人とは違う考え方が求められます。


Q:本講義の中で、背軸側の気孔で取り入れた二酸化炭素を、向軸側まで、気体の通りづらい、液体で満たされた葉の柵状組織まで運搬し、効率よく光合成するための葉緑体の配置の工夫が紹介されたが、それならば、その後取り上げられたゼニゴケのように気孔のすぐ近くに光合成組織を配置した方が良いのではないかと疑問を持ったので、以上の工夫の利点について考えた。1つには、多くの植物は光合成のために直射日光にさらされる場所に分布される。そのため、向軸側に葉緑体を配置する事は必然だが、体温調節のために、温度変化の少ない液体で日光に当たる部分をみたす必要があるのだと考えられる。もう1つには、背軸側に気孔を配置する事で、日光の当たる時間は地面が温められ、地面と葉の間の空気層で対流運動がなされるため、常に新鮮な空気を取り入れることができるという利点も考えられる。これらは暗所に分布するゼニゴケより良い光合成効率をなすために進化し、直射日光を得た植物の戦略として納得できる。

A:これは比較的ユニークな考え方ですね。1つ目で言いたいのは、細胞間隙は熱容量が小さいので、葉の胚軸側に持ってきた方がよいだろう、ということですね。面白いと思います。もう一つの点については、葉の表面でも対流は起こる気がしますが、どうでしょうか。


Q:二酸化炭素は、空気を含む海綿状組織の方が効率よく動けると学びました。柵状組織でも、円柱状の細胞のわずかな隙間をぬって供給されているとのことでしたが、海綿状組織の方が圧倒的に空気の体積は多く、二酸化炭素を取り込む気孔が海綿状組織側にあることによって二酸化炭素量は海綿状組織内の方が多いはずです。これらの観点から見れば、柵状組織よりも海綿状組織の方が効率がいいと考えられます。しかし、光合成の反応には二酸化炭素量だけではなく、光のエネルギーが必要不可欠です。光の受容量の観点から言えば、葉の表側に存在する柵状組織の方が、海綿状組織よりも効率よく光合成ができるのではないかとも考えられます。ここで、光合成にとって光の受容量と二酸化炭素量、どちらが優先されるのか考えてみたところ、光合成量がより必要とされる陽性植物では海綿状組織ではなく柵状組織が2,3層あることから、二酸化炭素量よりも光の受容量の方が優先されると考えた。

A:これもよく考えていると思います。最後の部分、上からの光の勾配と、下からの二酸化炭素濃度の勾配が、同じような勾配であれば、そのように結論できると思いますが、もう一つの可能性として、勾配のきつさに大きな差があって(例えば光の勾配はきついのに二酸化炭素の濃度の差はそれほどでもないなど)、それが実際の細胞の配置に効いているという可能性もあるかもしれません。