植物生理学I 第14回講義

植物の光環境応答

第14回の講義では、強すぎる光による損傷を避けるための植物の様々な工夫について解説しました。講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。


Q:今回の講義では葉緑体が光の強さに応じて移動することにとても驚いた。そして葉緑体の逃避運動にはphot2が、集合運動にはphot1が関わっているということであった。わたしはそこで葉緑体がわざわざ移動しなくても、葉緑体の数や大きさを自由に調節することができたなら、吸収する光の量も調節することができるのではないかと考えた。しかし葉緑体を作るのは植物にとってとても大変なことであると以前きいたことがあるので、葉緑体の大きさを調節できる因子が光の強さを感知して光が強くなったら葉緑体を収縮させ、光が弱くなったら葉緑体を大きくする、ということができれば葉緑体が移動する必要もないのではないかと考えた。葉緑体の大きさを調節する因子はないのか調べたところ、PDV1、PDV2というタンパク質は葉緑体の数と大きさを調節するという研究の結果を発見した。この論文によるとPVD1とPDV2は葉緑体分裂装置の構成因子であり、PDV1、PDV2の量を人為的に増やすと葉緑体数が増えて大きさが小さくなり、PDV1、PDV2の量を減らすと逆に葉緑体数が減って大きさが大きくなる(文献1)ということであった。つまり、PDVが葉緑体の分裂速度を制御しており、さらに、PDVの量が植物ホルモンであるサイトカインによって制御され、組織ごとに、葉緑体分裂の速度が変化している(文献1)とのことであった。しかしPDVは葉緑体の大きさだけでなく大きさと数の両方がバランスよくなるように調節しているので、数は変わらず大きさだけを調節するのは難しいと感じた。
文献1:植物と葉緑体の数と大きさを調節する仕組みを解明|理化学研究所、http://www.riken.jp/pr/press/2009/20090701/

A:これは、分裂しなければ1個が大きくなる、という話なので難しいですね。そもそも、収縮するためには余裕がなくてはなりませんが、葉緑体の場合、チラコイド膜とルビスコでかなりの体積が占められますからねえ。


Q:今回の授業の最後に、活性酸素の話が出てきた。そこで、植物に水素水を与えてみる実験を思いついた。水素水とは水素を溶かした水のことで、還元作用により活性酸素に対して効果がある、と世間で話題になっている。人体にどれだけ良い影響があるかは分からないが、水素水がもし活性酸素に対して効果があるのであれば、植物に対しても何らかの効果があるはずである。そこで、普通の水(この場合は蒸留水が適切か)を対照として水素水の投与実験を行うことで、水素水の効果を測ることができる。実験結果として、水素水は活性酸素に対して有意に効果があると出た場合、農業への応用が予想される。しかし、水素水は比較的高価なものであり、農業への応用は難しいと推測される。

A:先だって、水素水よりもおならのほうがよほど水素を含んでいるというコメントが話題になりました。健康食品的な話題の場合は、そもそも科学的にまともなものなのかどうか、という議論から始めたほうが良いように思います。


Q:今回の講義で光合成の際の葉緑体の移動についての話があった。暗所では葉緑体が全体に広がり、弱光下では細胞の上面と下面に、強光下では細胞の側面に並ぶという内容であった。ここで疑問に思ったのは弱光下でなぜ葉緑体が下面に並ぶ必要があるのかということだ。弱光の場合少しでも多くの光を効率よく取り入れようとするはずである。その場合下面に並ぶより上面に2層に並ぶ方が良いのではないかと考えた。なぜ上面と下面に分かれるのだろうか。理由としてまず2層になると葉緑体同士の重なる部分が増え、表面側の葉緑体は多く光を受容できるが、2層目の葉緑体に光が届きにくくなる可能性が考えられる。そうすると2層になるメリットはあまりないように思われる。そして次に、細胞内に分散して葉緑体が存在するよりも下面に整列した方が効率よく光を取り込める、ということが挙げられる。光が細胞内を侵入する際直進しているわけではないため、葉緑体が分散していると取りこぼす量も必然的に多くなる。下面に隙間なく並んでいる方が細胞内を侵入して来た光を面で受け取ることができる。そのため下面に並んでいると考えた。以上のことより弱光下において、葉緑体は細胞内に分散したり上面に2層になったりせず、上面と下面に均等に整列している状態を取ることにより効率よく光を吸収していると考えた。

A:話の流れとしては、光の方向について、真上からくる場合と、斜めから差し込む場合に分けて説明したほうがわかりやすいかもしれませんね。


Q:葉緑体移動について、暗所が基本形で、弱光下では最大限に光を吸収できるように、強光下では光の吸収を最小限に抑えられるように、葉緑体が配置されている。ここで私が疑問に思ったのは、弱光下においてなぜ細胞の上部に葉緑体が二列に並んでいないのか、ということである。細胞の上部に当たった光をなるべく吸収できるようにしたいだけであるのならば、上下二列に分ける必要がないと思ったからである。葉緑体が上下二列になっている理由を二点考えた。一つ目は、葉緑体は重力に従って下部に位置するのが基本であり、ATPなど何らかのエネルギーを使わないと細胞の上部まで葉緑体を移動できないという点である。葉緑体を全て上部に移動させるよりも、一部を移動させるほうがエネルギー消費を抑えられるからだ。二つ目は、そもそも細胞骨格の構造自体が、葉緑体を上部二列に配置できないようになっているという点である。その理由としては、養分の貯蔵など重要な役割を担う液胞の体積をなるべく大きくするためという点が挙げられる。さらに、暗所で葉緑体が上部に位置していないことについて考える。暗所では光合成を行えないので、エネルギー消費を最小限に抑える必要がある。これは一つ目の理由の裏付けにもなっている。以上のことから、上記二つの理由はどちらも当てはまると考えられる。これらの点を確かめるには、細胞の上下の向きを変えたり、細胞の上からではなく様々な方向から光を当てたりする実験を行い、それぞれの条件での葉緑体移動を比較する必要がある。

A:これも、上のレポートと同じ疑問から出発していますが、全く違う仮説を立てていて面白いと思います。


Q:今回の授業で学んだことは、光が過剰に吸収されたときにおいて葉が如何なる対策をとっているかということである。強光下の条件では葉緑体が逃避運動を起こし、葉の周辺にまとまって、縦に重なるような配置をとる。これにより葉緑体の多くに影を作り、過剰な光による損傷を防いでいることが伺えるが、これだと表面にある葉緑体が直で強光を浴びることになる。なので、せっかく逃避運動を行えるのならば、例えばある程度強光を浴びたら、最上層の葉緑体は影となる葉緑体の下に潜り込み、真下に隠れていた葉緑体が最上層に来て他の葉緑体に影を提供する、などというシステムを取ったほうが、幾つかの葉緑体のみに負担をかけることも少なくなるのではと思った。ただその場合だと、順序交換により強光にさらされて損傷する葉緑体が増加することも考えられるので、犠牲をなるべく少なくして、いざ光が弱まった時に光合成をバッチリ行えるように、という意味合いも込めて、犠牲を最上層の葉緑体でとどめているという可能性が考えられた。光を過剰吸収した場合に対して、励起エネルギーを消去し、活性酸素を除去するというシステムもあるため、特に最上層の葉緑体でそれらのシステムを作用させて、少しでも自身が強光により損傷するのを防いでいるという可能性も推測される。

A:複数の例を考えるのは良いのですが、できたら、その中でどれがもっともらしいのかは、自分なりの論理でよいので、はっきりさせたほうが科学的文章としては読みやすくなると思います。


Q:光吸収の短期的調節には大きくは葉の向きを変えたり、葉緑体の位置を変えることで余計な光の吸収を防ぐということであった。いずれにせよ物質を動かすのであるからエネルギーが必要になるはずである。すると葉の向きを変えることと葉緑体の位置を変えることを同時に行うと、せっかく葉緑体を移動したのに葉が向きを変えて、また葉緑体を移動しなければならず余計にエネルギーを使ってしまうのではないかと思った。そこで葉の向きを変える反応と葉緑体を移動する反応には時間差があるのではないかと考えた。おそらく先にも述べたように葉緑体が先に移動してしまうと二度手間になるので葉が向きを変える反応の方が早いのではないかと考えた。

A:短いですが、最低限のロジックは盛り込まれていると思います。


Q:今回の授業で、光環境によって葉の向きを変化させたり、また細胞の葉緑体を移動させることによって受ける光量を調節しているということを知った。実際にこの調節によって光量を調節しているのだが、果たしてどちらが先に光量の調節機構として優先されるのであろうか?葉の向きを変えることは、葉に受ける光量を簡単に変化させることが可能であるが、葉の向きを変化させることにエネルギーを多く用いるであろう。対して葉緑体の移動による調節の場合、光を受ける面積の変化量は細胞ごとによるので小さいが、細かい調節が可能となる。また本来細胞内では原形質流動が行われており葉緑体は細胞内を循環している。フォトトロピンが青色光を受容して葉緑体の配置を変えることにエネルギーはあまり用いないのではないだろうか。その場合、エネルギー消費が少ない葉緑体の配置の移動が光量調節機構として優先されてくるのではないだろうか。

A:これも、上のレポートと同じ話題ですが、別の角度から考えていて面白いと思います。


Q:今回の授業では光の短期間調整のために植物は葉緑体を移動させるということについて学んだ。その中でシダ類以外の植物は葉緑体を光に集めるのはphot1とphot2の両方のよって、葉緑体を光から逃避させるのにはphot2のみによって行われているとのことであった。そこでphot1とphot2の2種類で葉緑体の動きを誘導している意味について考えていきたい。まず2種類で行うということの利点に片方が損傷して使えなくなっても、光合成の機関全体が働かなくなることはないということが挙げられる。もしphot1が機能しなくなってもphot2だけ働けば葉緑体の集結も逃避も行えるため、あまり問題ない。逆にphot2が機能しなくなるとphot1しか働かないため集結しか起こらない。しかし光が強い時に集結さえすれば光合成は行えるため、生きてはいけるのではないであろうか。このとき、phot1もphot2も葉緑体の集結を誘導するという働きを持っていることから、植物にとって強光から葉緑体を逃がすより、光の当たるところに葉緑体を集結させることを優先していると考えられる。これは短期間の強光照射に対しての反応である。植物の反応は時間がかかり、反応が起こるまでに照射は終わっているということもあると実験で証明されている。ゆえに短期的調節は次の照射に対する備えであると考えられる。短期間の強光照射であれば過剰エネルギーによる周りの器官の破壊もさほど影響が出ないのではないであろうか。そのため強光に対する備えよりも少しでも多くの光を吸収するという備えの方が優先されているのだと考えられる。逆に長期的調整にはアンテナ複合体を減らすなど強光に対する反応が中心となっている。これは長期間強光に当たると過剰エネルギーによる活性酸素の生成により周りの器官が破壊されるのを防ぐことに重点が置かれているからではないであろうか。

A:いろいろ考えていてよいと思うのですが、文章のロジックという面では、遺伝子の重複という話題と調節にかかる時間の話題がごっちゃになっていてややわかりづらいと思います。そのあたりを整理すると、より読みやすい文章になるでしょう。


Q:光吸収に対する短期的な調節として、植物は細胞内の葉緑体を移動させる。授業では円柱状の植物細胞に垂直から光を当てた場合の葉緑体移動について学んだ。授業を聞いていて細胞と光のなす角度が45度の場合は葉緑体はどのように動くのか気になったので考えてみる。そこで葉緑体移動について考えるためにいくつか条件を設定する。①液胞やCO2供給の都合で葉緑体は細胞膜付近に存在する。②光は主にある一定の円の断面積で円柱状に直進し、光が通る横断面から離れると同心円状に光量が低下する(この横断面の直径は細胞の幅よりも小さいとする)。③細胞は円柱形である。④葉緑体を通った光量は少なくなる(光が弱くなる)。⑤光を当てる細胞は一つだけである。
 上記の条件のもとで強光と弱光の場合について考えてみる。弱光の場合では、45度方向から進んできた光の横断面を中心として、細胞に初めに光が当たる面では細胞膜付近で光の横断面内で葉緑体が高密度に分布する。同心円状に光の量が少なくなるので、光が当たる部分の葉緑体密度を最大にして葉緑体の密度も同心円状に徐々に低下するだろう。光が直進を続け、液胞を超えて反対側の細胞膜に到達するときも、上述と同じような葉緑体分布が見られると考えられる。しかし、最初に光が当たる面よりも光の量は少なくなっているため、反対側の面の方が葉緑体の分布域は小さくなり、密度も小さくなると考えられる。強光の場合では、光の横断面内に葉緑体が入ってこない。光が通る経路の円周上で細胞膜付近に葉緑体が集まる。細胞内部に液胞があり、光の横断面も細胞の幅より小さいため、光は細胞内部を直進するがその円周上に葉緑体が集まることはできない。光が出ていく際に細胞膜を通過するのでそのときに葉緑体が集まることが考えられる。その際、出ていく光の強さが強光のままであれば葉緑体は光の横断面の円周上に分布する。しかし、出ていく光が弱光となっていた場合、光の横断面内に葉緑体密度が最高になり、同心円状に葉緑体密度が減少していくことが考えられる。屈折することを特に考慮せず、植物細胞一つに対してななめから細い光を照射した場合について考えたが、葉緑体分布の大体の傾向としては垂直方向から細い光を細胞一つに照射した場合と同じであると考えられる。

A:面白い考え方だと思います。45度の場合は、それほどでもないかもしれませんが、角度が小さくなると、実際には屈折の影響が大きくなるかもしれませんね。


Q:植物の光合成調節機構の1つに「葉緑体の移動」がある。弱光(数W m-2 s-1以下)下では葉緑体は上部に密集し、強光(10 W m-2 s-1以上)下では側面に集まって影を多くし、強光阻害を防いでいる(数値は情報1参考)。一般的に葉緑体の移動が完了するまでは2時間ほどといわれるが、現実では弱光~強光へのシフトはあまりにも短い。気象庁のページの数値を参照し実際に計算してみたところ(2016年6月10日, 東京の全天日射, 天気は晴れ、情報2)、特に早朝では5時の5.56 W m-2(弱光)から6時の88.9 W m-2(強光)と、日射量変化はとても急激である。葉緑体の移動時間を考えると、少なくとも移動は完了できていないであろう。この変化に植物は対応できているのか、またその解決策を考えてみた。強光阻害に対しては防御機能があり、活性酸素でもスーパーオキシドや過酸化水素ならこの機能が働く。長期間であれば活性酸素による被害は大きいが、上記の場合のような1時間弱であれば防御機能の働かないヒドロキシラジカルへと進む反応も少なく、防御機能も働くため被害は少ないと考えられる。また葉緑体の移動に関しては、移動時に分布を変えるcp-アクチンが関与している。このcp-アクチンの量比に伴い移動速度が変化する(情報3)。強光下ではcp-アクチンの量が増え、移動速度が速くなることから、光の強さに対応しているが、これに対応する遺伝子に変異を起こし、この量をさらに増やすことができればより速い応答をすることができるかもしれない。
情報1、「葉緑体光定位運動[chloroplast photo-relocation movement]」、日本光合成学会のページ、参照日2016.7.30、http://photosyn.jp/pwiki/index.php?%E8%91%89%E7%B7%91%E4%BD%93%E5%85%89%E5%AE%9A%E4%BD%8D%E9%81%8B%E5%8B%95
情報2、「気象庁−東京 2016年6月10日 (1時間ごとの値)−気象データ検索」、気象庁、参照日2016.7.30、http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/hourly_s1.php?prec_no=44&block_no=47662&year=2016&month=06&day=10&view=p1
情報3、「陸上植物の光応答戦略?陸上植物における葉緑体の運動メカニズムの新機軸?」、末次憲之・和田正三、植物科学最前線、2013年、p9、参照日2016.7.30、http://bsj.or.jp/jpn/general/bsj-review/BSJ-Review4-45-60.pdf

A:よく考えていて面白いと思います。植物の光合成には、複数の強光応答メカニズムがありますから、それぞれの応答時間がどのようになっているのか、という点が重要なのかもしれません。


Q:今回の講義では植物が時間や光環境に合わせて葉緑体を移動させて光合成による酸素発生量を調整していることを学んだ。今回はこの葉緑体の移動によるさらなるメリットに関して考えてみた。まず、強光下において葉緑体は細胞内の横壁面へ集中することで光合成を極力抑えているが、これにより光は葉緑体によって吸収されなかった分通常より多く葉を透過することが予想される。周縁部の葉で透過した光はそのまま内部の葉へと進むことで、普段あまり光の当たらない内部でも光合成が行われようになり植物体全体でバランスの取れた光合成が出来るのではないだろうか。これを確かめるには、強光を当てた瞬間(葉緑体が端に移動する前)と数分当てた後(葉緑体が端に移動した後)の光の透過度を測定し、同時に植物体内部の光合成量も測定する。このとき、葉緑体が端に移動することより周縁部の葉の光の透過度と内部の葉の光合成量が比例して上昇した場合、葉緑体の移動には植物体全体で光合成のバランスを取る役割もある可能性が考えられる。

A:このように、葉の中の光の勾配を含めて葉の光合成を考えることは、東大の寺島一郎さんなどがしばらく前になさっています。葉緑体移動をこれに絡めて考えてみるのは実際の研究としても面白いと思います。


Q:本講義では藍藻類の補色順化について学んだ。藍藻類が生育する水中では、光条件が陸上とは異なり、変化しやすいため補色順化が行われているのだろう。つまり、水面に近いところでは、陸上とさほど光条件は変わらないと思われるので、赤色光も光合成に利用できる。よって、フィコシアニンを増加させ自身は緑色となる。一方、水深が深くなるにつれ、水による赤色光の吸収が増大していくため、フィコシアニンは十分に光を吸収できなくなってしまう。よって、フィコエリトリンを増加させ自身は赤色になる。このように補色順化を生育場所の水深と結びつけて考えると、補色順化が可能な藍藻類は水中の広範囲にわたって生息できることになる。逆に、補色順化ができない藻類は、自身のもつ光合成色素にとって最適な光条件の深さにバンドとなって生息しているのではないだろうか。

A:最後の部分、捕食順化ができない藻類の分布を予想した点が非常に面白いと思いました。


Q:授業で光環境下における葉緑体の葉における位置について触れた。強光下では葉緑体は葉の端(側面)に集中する。これは強光による葉緑体への障害から葉緑体同士が重なることにより障害を防ぐ目的がある。弱光下では葉緑体は葉の表面および裏面に集中する。これは葉緑体同士の重なりなどを最小限に抑え少しでも多くの光を吸収するためである。暗所では葉の裏面と端(側面)に集中する。この理由については授業で特に触れられておらず(聞き逃した可能性あり)、すぐに理由が思いつかなかったため考察する。暗所下での表面は逆に葉緑体の集中していない場所といえる。昼間は基本的に光合成を行うため葉の表面は葉緑体が集中しているだろう。ならば暗所下で葉緑体を葉の表面から移動させなくてはいけない制約、またはメリットが存在すると考えられる。自然界で暗所になる状況として考えられるのは夜である。夜は気温が低下していく時間帯である。そのため冬場などでは、霜が降り葉に障害を生じさせる可能性が考えられ、その対策だと考えられる。しかし、熱帯などの温暖な気候や夏場では霜が降りることはない。そのためすべての植物にこの理由が共通して当てはまらない。また、暗黒下の植物はストレスに強いためこのような対策を行う必要があるのかということに疑問が残る。他に考えられる理由として、光環境下に対する準備をしているのではないか。葉表面に葉緑体を配置すると強光の場合に障害を受けてしまう可能性がある。そのため、葉表面のみには葉緑体を配置されていないと考えられる。また、暗所下の葉緑体の配置は、強光下と弱光下の中間のような配置である。これは光強度に対して柔軟に対応するためと考えられる。以上の理由から暗所下での葉緑体の配置は、光環境下に対する準備のためと考えられる。

A:いろいろ考えていて面白いのですが、最後の「以上の理由から」というまとめ方がややあいまいです。できたら、考えたいろいろな仮説を、途中でまとめてきちんと比較検討して結論にもっていったほうが良いでしょう。


Q:葉緑体は、光環境の変化に応じて葉の中で立体的に動いている。光が弱いときは葉の表面に集まって、より多くの光を反応に使えるように、強いときは、葉の側面に縦になってあつまり、強い光を受ける葉緑体の個数を減らして被害を減らしている。この植物の生理現象で面白いのは、強すぎる光に対して、多少の犠牲を支払ったうえで対処しようとしていることだ。葉の側面に逃げた葉緑体の、一番光に近い個である。この「犠牲」はどうやって選ばれるのだろうか?おそらく、一番古い葉緑体なのではないだろうか。「古い個体ほど上の方に追いやられ、光のダメージに対する盾になる」という過程をたて、証明のための実験方法を考える。元素同位体のようなマーカーを含んだ水を10日間与え、マーカーされた葉緑体を作る。この日数を1日ずつ減らした植物体を合計で10日~0日の11種類準備する。このそれぞれに強い光を照射して、葉の縦切片を作成し、マーカーが含まれた原子がどれだけ上にあるかと、そのマーカーを与えた日数の相関図を作成する。以上である。

A:これも、話題としては似ていますが、独自のアイデアを出していてよいと思います。


Q:植物細胞の一点に弱光を当てると葉緑体が集まり、強光を当てると葉緑体が離れていく現象が知られている。光受容は細胞膜上のフィトクロムやフォトトロピンによって行われており、何らかのシグナルを介して、アクチン繊維の重合脱重合をコントロールし、葉緑体の運動が制御されることで、上述の現象が起きると考えられている(1)。緑藻のヒザオリは円筒形の細胞が一直線につながったような形態を持ち、一つの細胞は短冊形の葉緑体(円の直径×円筒の高さの長方形というイメージ)を一つ持っている。ヒザオリの葉緑体も弱光を照射すると光が当たる面積が最大になる角度になり、強光を照射すると光が当たる面積が最小になるような角度になる。さらに細胞の一端に弱光を照射し、もう一端に強光を照射すると短冊形の葉緑体はねじれることが知られている(2)。細胞膜上に存在する光受容体が弱光を受けたときにその受容体周辺のアクチン繊維の脱重合を促し、強光を受けたときにその受容体周辺のアクチン繊維の重合を強く促すと仮定する。すると、葉緑体のうち細胞膜に近い部分(すなわち長方形の外周)が、モータータンパク質によりアクチン繊維が重合したところに向けて引き寄せられると考えられ、結果的に弱光を浴びた際は光の照射方向と垂直に、強光を浴びたときは光の照射方向と水平になり、現象と一致すると考えられる。この仮説のもと、光受容体とアクチン重合に方向性があるかどうかを確認するためには、ヒザオリに前述の実験を行ったとき葉緑体がねじれる角度が決まっているかどうかを確認すればよいと考えられる。ヒザオリの葉緑体がねじれる方向が決まっていれば、光受容体とアクチン重合に方向性があり、決まっていなければ、光受容体とアクチン重合に方向性がないことが分かると考えられる。
[参考文献] (1) 末次憲之, 和田正三. 陸上植物の光応答戦略—陸上植物における葉緑体の運動メカニズムの新機軸—. BSJ Review 植物科学最前線. 4. 2013. pp.45-60.、(2) B. Alberts(著), 中村桂子, 松原謙一(訳). 細胞の分子生物学 第4版. ニュートンプレス. 2004.

A:これもいろいろ考えていて面白いのですが、人の話の紹介から始まっているので、もう少し、その部分は簡略化して、自分なりの問題点をもっと初めの方で明確に定義すると、論旨のわかりやすいレポートになると思います。