植物生理学I 第13回講義
植物の光センシング
第13回の講義では、植物と光のかかわりについて、光受容体を中心に解説しました。今回のレポートは、話題が光受容体に限定されていたせいか、あまり独創的なものがありませんでした。
Q:青色光によって気孔が開口すると今回の講義で学んだが、青色子以外にも気孔の開閉を決定する因子はある。そこで疑問に思ったことがある。それは青色光によって開口しようとする一方で、例えば水分不足による閉口を促す作用とが拮抗した場合にはどうなるのか、ということだ。その時の植物の状況によって優先順位は変化していくだろうが、どのようにして優先する作用を決定するのか。これを調べる方法を考えた。まずは、開口を促す環境と閉口を促す環境の両方を併せ持った環境に植物を置く。そして気孔の開閉を確認する。そして開口及び閉口の反応経路をそれぞれ確認してくことで、どこで気孔の開閉への作用が変化したのかが確認できると考えた。
A:なんだか、小学生の夏休みの自由研究みたいで、実験系としては物足りないですね。「その時の植物の状況によって優先順位は変化」していくのを、どのように確かめるのかも明確ではありません。もう少し、作業仮説をきちんと考えなければいけないでしょう。
Q:今回の講義では光環境応答についてであったが、今回の講義で興味を持ったのは光がある場合とない場合で育ち方が違うもやしの話である。もやしは光がないと葉ができずに白い色をしたまま伸長していく。このときもやしは本当に無作為に身を伸ばしているのか?光を求めるために身を伸ばすのなら、少しでも光がある確率の高い場所に伸ばす方が良い。例えば、太陽の当たっている所は温度が高いため、1方向から暖かい空気を流したらそちらからそちらにもやしが身を伸ばすかもしれない。また、植物は音を聞いているという話を聞いたことがあり、葉が風で擦れる音を1方向から流したらその方に伸びるかもしれない。
A:これも、やや自由研究的ですが、発想はユニークでよいと思います。ただ、発想だけで、サイエンスにはなっていません。やはり、もう少し温度や光がどのように伝わるのか、という実際の物理環境について考えたうえで実験を計画しないといけません。
Q:今回の授業で葉は可視光、特に赤色と青色を吸収してしまうため、森林内では可視光の強度が弱く、赤外線は強いという話があった。そのため植物はフィトクロムで赤色光と赤外線の比率を感知して光合成に関連する遺伝子の転写、発現を調節しているとのことであった。しかし他の植物の陰で光合成をするには光が弱くなってしまうために植物体内部の構造を変えるより、他の植物が光合成で使わない赤外線や緑色光を使えば、森林の中のように他の植物に光をさえぎられても光合成に使う光の強さにはあまり差ができず、内部構造を変える必要がないのではないであろうか。光合成色素には赤色や青色光を吸収するクロロフィル以外にも緑色や青色を吸収するフィコビリンなど様々なものがあるのだから、植物種ごとに異なった色素によって異なった波長の光を使って光合成をすればよいのではないだろうか。このように考えていくと、植物の葉の色はもっと多様性に富んでいてもよいのではないかと考えられる。ではなぜ実際には植物の葉は緑色なのか考えていきたい。
まず赤外線は可視光に比べて波長が長く、エネルギー量が小さいということが挙げられる。同じ照度の太陽光を同じ時間受けたとしても、その中の赤色や青色の光を吸収するときに比べて赤外線を吸収したときの方が吸収できるエネルギー量は少なくなってしまう。またクロロフィルa以外の光合成色素は光を吸収はできるものの光合成の反応中心としては働けない。実際にクロロフィルdのように赤外線を吸収できる色素はあるものの、そこで吸収した光は反応中心であるクロロフィルaに集められて光合成に使われる(文献1より)。これではクロロフィルdとクロロフィルaの両方を発現させる必要があり、多くの遺伝子とタンパク質を使うのではないであろうか。これらのことを総合すると植物は光合成に赤色や青色の光を使った方が短時間でより多くの光エネルギーを得ることができ、また光を吸収する色素も光合成の反応中心と似ているものが使えるために効率が良いのではないであろうか。そのため植物の葉の色は緑色なのだと考えられる。
参考文献 1.Laboratory of Plant Physiology, Waseda University.“光合成色素”.光合成の森.2012-3-25.https://www.photosynthesis.jp/shikiso.html(2016-07-19参照).
A:これは、きちんと考えてはいます。ただ、いかにもありそうな結論で、もう少し自由な発想がほしいように思いました。
Q:講義中に暗所で発育させた植物は光を探し求め様々な方向へと伸びていくということが取り扱われたが、一方で自然界では光環境が激しく変化するということも講義内にて扱われていた。この二つの出来事は光合成が植物においてどれほど重要な役割を担っているかを示しているともいえる。しかし光環境が激しく変化する自然界においては目先の光に対して超高感度での認識が必要でありまた今光がある方へ伸びることが得策ではないことも多くあると考えられる。このことについて私は二つの実験を考えた。一つはどこがそこまでの感度を持つ光の受容体となっているのかである。これは暗所に飼育している植物にそれぞれ葉や茎などの部位のみに光を照射しそれらがどのように伸びるかを観察する。対照として暗所で光を照射せずに発育させたものと明所で発育させたものも作成する。これにより植物が光の方向へ動いたというデータがより有意に出た方が光の受容体として働いていると言える。私の予想では光合成は葉で行うため、葉の方が有意に光を認識すると考えている。二つ目の実験では一つ目のデータで有意に光を認識する部位に暗所から光を当て、それにより光の方向へ発育が開始されてから少し時間を空けて今度は別の位置から光を照射してみるという実験である。これにより、植物は光に対して臨機応変に対応し成長する方向を随時変えているのかそれとも最初の認識に運命を委ねているのかを確認することが出来る。
A:これも、実験系を考えるレポートですが、最初に問題点が明確に定義したほうが良いでしょう。「このことについて」というだけだとあいまいです。内容からすると、「光をどこで感知するのか」という問題と、「植物が方向性をもって成長するか」というてんが混在しているように思えます。2つの問題はきちんと分けて考える必要があると思います。