植物生理学I 第10回講義
植物の花
第10回の講義では、植物の花について、色素、ABCモデル、花成ホルモンなどを中心に解説しました。講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。
Q:花の話が中心であった。特に興味を惹かれたのは、花色の決定因子の話で、ただ単に、色素だけで花の色が決まるわけでなく、液胞のpH、金属錯体の形成といった、制御が難しい機構によっても作用されている、というのが目から鱗であった。調べてみると、現在青いバラとして販売されているものは、まだ色素をいじったものにすぎず、液胞のpHと、金属イオンについては調整がなされていないらしい。うまく調整がなされることによって、さらに青いものが作れるとのこと。青いバラは不可能の象徴とも言われているが、そういえば緑色の花はみたことがないなと思い、調べてみたがこれもあった。ある、となると不思議なのが、一般に、花は受粉の媒介をしてもらうために、虫に発見されやすくする必要がある。緑色の花では、葉と区別がつきにくく、目立たないと思われる。予想されるメリットは二つある。①その花の色が葉緑体によるものである場合、光合成産物を増やすことができる。それだったら、花はいらず、葉だけでもいい気がするが。。。②虫に発見されることが不都合な場合のときである。例えば、花の形状を工夫し、吹いてくる風でうまく受粉がなされるようになっていた場合、虫が運ぶという不確実な方法は選ばないだろう。なので、なるべく葉と同化することで、花粉を取られないようにすることができる。あくまで予想に過ぎないが、緑の花を咲かせる植物は、このような理由から緑色を選択しているのだと思われる。
A:基本的な考え方はよいと思います。もう少しアイデアに独自性が欲しい気もしますが。
Q:ソメイヨシノは夏に花芽を形成して、春に開花することを学んだ。本当に花芽を夏に作っているのか気になった。そこで、近くの小学校に植えられているソメイヨシノを観察してみた。葉と枝の間には長さ約1.5 mmの花芽と思われる小さな芽が観察できた。それぞれの葉と枝の間には一つずつ芽ができていた。枝の先端には複数の芽があった。枝の途中に生えた芽をとって観察してみた。見た目はタケノコのようであり乾燥した褐色の皮に包まれた構造をしている。皮をめくってみるとさらに褐色の皮があった。数層の皮が内側を包むようにあるのでピンセットで破いて徐々に内側をみていくとやがて湿った黄緑色の皮が出てきた。芽の一番内側も黄緑色の皮で湿っていた。どうやらこの皮が複数枚筒状に折りたたまれていて芽を作っているようである。花芽であるならばこの皮が花弁であることも考えられる。皮は最低でも5枚以上みられた。ソメイヨシノの花弁数は5枚であるから皮にがく片が含まれていることも考えられる。しかし、めしべやおしべに相当しそうな部位は見られなかった。花芽がまだ成長途中であることも考えられる。一番驚いたことは芽の内側にある黄緑色の皮が5分程度でうすい褐色に変色し、乾燥していたことだった。外側の皮は褐色であり、内側の皮を乾燥から守る役割があるのかもしれない。この皮はどのような器官になるのか気になった。駅に行く途中にソメイヨシノを通るので、観察を続けていこうと思う。
A:良いと思います。僕も講義をするばかりで、きちんと観察をしたことがないので、是非、経時的に見てください。どのように変化していくのかが重要でしょう。
Q:風媒花は別として、虫に花粉を運んでもらうために虫を引き付けるのに花は派手である必要がある。だが、おそらく虫にとって一番目を引く色というのはあるはずなのに、なぜ花の色は様々なのかと疑問に思った。地味な色の花の遺伝子が淘汰されないのはなぜだろう。アジサイやアサガオのように土のpHで色が変化してしまう花もあるが、遺伝子的に色が決まっているものが多い。虫の目を最も引く色があるのかを調べるために実験系を考えた。様々な色の花を並べて、虫がどの花の色に集まりやすいかを調べる。もしかすると、虫の種類によって色の見え方が違う可能性もあるので、虫の種類ごとに調べる必要がある。もし一番虫を引き付けられる色が存在するなら、花の色を変えることによって野菜や果物の収穫量を増やすなど、農業に応用できるはずだ。
A:もちろん虫の種類によって違います。最後の部分、進化の過程で、まさにその一番虫を引き付ける色が実現されているとは思いませんか?
Q:今回の講義ではFt遺伝子によって発現するFtタンパク質が葉から茎頂に運ばれることで開花が促されることを学んだ。では、サボテンのように葉がとげへと進化し葉本来の働きを失っている植物はどうなっているのだろうか。調べてみるとほとんどのサボテンが花を咲かせることが判明した。サボテンがどこでFtタンパク質を作成しているか調査するためにまずは講義中にも説明のあった明暗の最適な長さを調べる実験でサボテンが花を咲かせる最適条件を調べる。次に、その最適条件に0日、半日、1日、1日半、2日…と置いたサボテンを用意し、それぞれのサボテンの根、表皮、サボテン内部、棘など様々な部位から細胞を採取する。これらの細胞の中でFt細胞がいち早く発現、また、Ftタンパク質含有量を増加させた細胞がFt細胞を発現させている可能性が高いことが考えられる。
A:サボテンの花芽形成がどのようになっているか、というのは、僕もあまり考えていませんでした。ただ、そもそもサボテンが自生地で一定の季節に花をつけるかどうか、という点から調べる必要がありますね。
Q:今回の授業で、遺伝子操作などによって花の色を変えることができることを知った。そこで遺伝子操作によって自然界には存在しないはずの色の花が、何らかの原因で自然界に解き放たれてしまった場合どのようなことが起こる可能性があるのか考える。まず考えられる可能性は、もともとそこにいた植物を駆逐してしまう可能性である。虫媒花であった場合、より虫に目立つ色をした花を持つ植物の方が授粉に有利である。したがって遺伝子操作によって派手な色をした花ができ、それが自然界に入り込んだ場合、元々そこにいた植物の授粉できる可能性が下がってしまうかもしれない。次に考えられる可能性は、元々そこにいた植物と遺伝子操作された植物が交配して、また新たな色の植物が生まれてしまう可能性である。どんどん交配が進んでしまえば、元々の花の色を持つ植物が絶滅してしまうかもしれない。このように遺伝子操作された植物は、自然界に大きな影響を与える可能性がある。したがって、遺伝子操作をした植物の取扱いには十分に注意する必要がある。
A:生物学教室の学生がこれでは困りますね。ここで述べられた問題点は、育種によって得られた植物の場合でも同じです。まさか、遺伝子操作をすると遺伝子が変わるけれども、普通の育種の場合は遺伝子に変化がないと考えているわけではありませんよね?遺伝子操作の問題点は、単に遺伝子が変わることにあるわけではありません。
Q:先日、花が緑色のアジサイを見かけた。園芸植物なので、おそらく人が手を加えてこのような変異体を品種として固定したのだろうと考えたが、調べてみるとアジサイが緑色になるのは葉化病といって、ファイトプラズマが感染することで引き起こる病気のようだ[1]。今回は、ファイトプラズマの感染後どのような仕組みで緑色のアジサイが咲くのか考えてみたい。考えられることとしては、アントシアニンの合成経路に異常をきたし装飾花が緑色になった、もしくは装飾花そのものがABCモデル的な異常により葉様に分化したということがあげられる。前者に関しては、アントシアニンの合成経路の異常で、同じくフラボノイド系のオーロンなどの黄色い色素が合成されることはあるかもしれないが、クロロフィル(非フラボノイド)のような緑色の色素が合成されることは考えにくい。そのため、ABCモデル的な異常の可能性が高いように思われる。緑色のアジサイの特徴として、花の中心部から新たな芽が形成される「突き抜け症状」があるようだ[1]。これは授業でも扱われていたC領域欠損による二次花の形成に似た現象であると考えられる。したがってファイトプラズマはABCモデルにおいて、各クラス(特にCクラスか?)の遺伝子発現に何かしらの影響を与えていると考えらえる。葉化病についてはシロイヌナズナを用いた研究があるようだ。この研究ではファイトプラズマが分泌するファイトロジェンが、カルテットモデルのA・Eクラスの転写因子を分解し、その結果各花器官が葉化するとしている[2]。アジサイにおいてもおそらくこのような機構で葉化しているのだろう。
[1]「アジサイ葉化病について - 農林水産省」http://www.maff.go.jp/j/seisan/kaki/flower/pdf/youkabyo.pdf
[2]「「花」を「葉」に変える病気の謎を解く-原因遺伝子の発見と発症メカニズムの解明-」http://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2014/20140318-3.html
A:これは、推論がきちんと根拠に基づいていてよいと思います。結果として説得力のある考察になっています。
Q:今回の授業では、花成反応について学んだ。茎頂ではなく葉が光を感知することで花成反応を引き起こすことができるらしいが、どの程度の光強度や時間で花成反応を引き起こすのか、またそれは植物の種によって異なるのか疑問に感じた。そこで、夏の代名詞であるアサガオについて調べてみた。シロイヌナズナをはじめ多くの植物は、花成誘導に数サイクルの光周期を必要とするらしい。一方、絶対的短日植物であるアサガオは、たった一回の短日処理で花成が誘導されるようだ。しかし、一回の短日処理による花成誘導の分子生物学的メカニズムは明らかになっていない。なぜこのような種によって花成反応の敏感さが異なるのか。花成反応が鈍感な植物(サツマイモ等)に、アサガオを接木するという実験で調べることができるのではないか。接木することで開花すれば、花成ホルモンが活発であるためだといえるだろう。開花しても数サイクルの光周期を必要とすれば、花成ホルモンではなく遺伝子的な要因が大きいのではないか。
参考文献:http://gm-edu.sakura.ne.jp/labo/flowering
A:講義の初めに、whyとhowの違いについてやりましたが、ここでの「なぜ敏感さが異なるか」という疑問にも2つの答え方があります。ここではhowのことしか頭にないようですが、whyの理由についても考えてみる価値があるでしょう。
Q:今回の授業で、アントシアニン等による植物の花の色の変化を勉強し、品種改良における花の色の変化を学んだ。この話を聞き、思い浮かんだのがアジサイの色の変化についてである。調べたところ、アントシアニンにアルミニウムは酸性土壌でよく溶け、アルカリ土壌では溶けないため、土を酸性にすれば青花になり、中性~弱アルカリ性の土壌ではピンク花になるとのことであった。この話を聞いた私は、自分の家にあった青い花を咲かせる品種のアジサイに赤い花を咲かせてやろうと思い、土がアルカリ性寄りになるように石灰を混ぜてみたことがある。結果、発色はあまりせず、うっすらと青っぽい花にくすんだ紫色の斑点ができて、あまり綺麗なものとは言えなかった。これが何故なのか推測するに、品種の問題であったと感じる。酸性でないとアルミニウムを吸収して青くなれないものに、本来吸収できるはずのアルミニウムを奪ったのだから青い発色が薄くなり、アントシアニンの斑点が出てしまったのだろう。本来の土壌酸性度で育てるのが、美しい花を楽しむためには重要であると感じた。
A:実際に実験をした結果が面白そうなのですが、あまり文章がきちんとしていませんね。「アントシアニンにアルミニウムは酸性土壌でよく溶け」の部分など、どうも意味がよく取れませんでした。「酸性でないとアルミニウムを吸収して青くなれない」という部分も、前の記述とどのように整合するのかがわかりませんでした。
Q:虫媒花であることの多い被子植物は、鮮やかな花の色をしている。花色を決定する色素は、フラボノイド系と、非フラボノイド系にわかれている。この二つは、そもそも産生の様式が異なるが、機能として異なるのは非フラボノイド系の色素が光合成色素であることだ。これは、そもそも植物の生育に必要であるか否か、という部分に関わる。これが、実は園芸品種の模様に関わっている。園芸品種には、野生の花と異なる模様の見られる花がある。花弁の外縁部と内側の花色が異なるもの、斑点の入ったもの、花の中心から外に向かって筋の入ったものなどである。これは、突然変異、すなわち遺伝子の発現調節の変化を利用して作られた模様である。本来の遺伝子発現の様相と異なるのだから、植物の機能を阻害してしまうような変化であった場合は生育することができなくなってしまう。ここで、非フラボノイド系は光合成色素であるから、これが本来の機能を持っていないと、光合成生成物の産生に影響する。しかし、フラボノイド系の機能は虫への働きかけであるから、これが本来の機能を持たずとも園芸品種は人工受粉をするので影響はほとんどない。したがって、園芸品種の花の模様の変化は、フラボノイド系の色素の合成に関わる突然変異によることが多い。
A:最後に「多い」となっていますが、ここは、自分で考えた結論なのですよね?そうであれば、「多いと考えられる」とすべきところでしょう。科学的な文章では、自分で考えたことなのか、知られた事実なのかを明確に区別することが非常に重要です。
Q:講義中にソメイヨシノの花芽形成についての話が出た。ソメイヨシノはオオシマザクラとエドヒガンの雑種とされている(参考文献1)。オオシマザクラは開花と葉が出るのが同時、エドヒガンは開花が前である(参考文献2)。恐らく両種とも前年の夏には花芽分化が終了しており、その特徴がソメイヨシノに受け継がれているのだろう。 ソメイヨシノは人工的に作出された種であるので置いておくとして、その他の種類が花芽形成を前年に済ませている理由について考える。一番の理由は、日照の多い時期(活発に光合成できる)に、十分なエネルギーを使いながら花芽を作ることができることであろう。春先に花芽を作らないですむため、エネルギーを新しい葉や葉緑体をつくるために使うことができ、すぐに効率的な光合成に入ることができる。逆にデメリットとしては、冬の内に野生動物に芽を食べられてしまうなどの理由で花芽を失ってしまった場合、修正が効かないことである。
参考文献1:「樹木図鑑 ソメイヨシノ」.http://www.jugemusha.com/jumoku-zz-someiyosino.htm. 2016年7月3日 閲覧
参考文献2:「京都九条山自然観察日記 サクラの葉芽と花芽」.http://net1010.net/2010/03/post_1803.php. 2016年7月3日 閲覧
A:このような考察は、1種類の植物だけを材料にしてしまうと、なかなか説得力を持たせることが難しいものです。これが、前年に花芽分化する全く別の植物を一緒に考えることができると、その共通点から説得力のある考察を引き出すことができます。講義で扱ったヒガンバナなどの例を取り上げてもよかったのではないかと思います。
Q:今回の講義で花芽形成機構について学んだ。この中で花芽分化は栄養成長から生殖成長への切り替えを示しているとあった。しかし、ツバキのような常緑樹で冬から春にかけて開花し、6月あたりに花芽分化をするような植物は例外と呼べるのではないだろうか。ツバキは4~6月までは栄養成長を行うが、この後、花芽分化を行う。しかし、開花までのプロセスまでは進まず、落葉せずに生育する。6月から開花までの時期も栄養成長していると考えられる。このため、通常の植物では栄養成長→花芽分化→生殖成長であるが、ツバキでは栄養成長→花芽分化→栄養成長→生殖成長であると考えられる。
A:栄養成長というのは、単に光合成を行って植物体が大きくなる、ということを意味するわけではありません。新しい葉を出していくプロセスが必要です。そのような観点からすると、ツバキは6月以降は新しい枝葉を伸ばすことはありませんから、基本的に6月までで栄養成長が一度ストップしたと考えてよいのではないかと思います。
Q:講義では花は受粉などのプロセスのために目立つ色を発色し、かつ自分の花粉を運搬してくれる虫や鳥などの可視光の範囲内で最も目立つ色に進化していることが分かった。これは進化学的にみるとラマルク的に言えば、花粉を運んでもらうために色を変えてみて最もその効率が良かったものが子孫に伝わっていったといえるだろう。またダーウィンモデルならば効率よく受粉を行えた花の色を持つ種のみが子孫を残したともいえる。つまりこのことは誰もが知っている進化学の知識が裏付けをしてくれている。私はこのことから発展させて花の色を変化させる方法を考えた。これはある意味ではラマルクの進化論を支持した実験方法だが、花の色と全く同じ色の壁を持つ部屋に植物を閉じ込めてその中で何代か子孫を生ませれば花は受粉に有利であるための色がこの時の色ではないと判断し色を変化させるのではないかと考えた。この方法では時間がかかるが進化学で行われている二つの議論に終止符を打つ可能性もあると同時に遺伝子をいじらずに色を変化させることができる可能性がある。またこれらの発色を見ることにより、花における色という概念がどのように決定されたかということにも迫れるかもしれない。
A:これは、提案された実験方法がユニークなので取り上げましたが、論理展開はややわかりづらいですね。「進化学で行われている二つの議論に終止符を打つ可能性もあると同時に遺伝子をいじらずに色を変化させることができる可能性がある」という部分など、もう少し説明が必要でしょう。
Q:今回の講義で花の色の決定因子の話があった。以前受講していた他の授業でも青色のバラの話があり本来の色ではない色を人工的に作り出すことが出来ることを知った。私の地元に紫陽花がたくさん生えているところがある。そこには色が少しずつ違うものがばらばらとある。おそらく人工ではないのだがではなぜ色が違うのだろうか。。。花の色素には鮮赤色を示すぺラルゴニジン、赤紫色を示すシアニジン、紫赤色を示すデルフィニジンがある。調べてみると紫陽花にはシアニジンが多くあり本来は赤紫色を発色するようだ。しかし植物の発色のもとである色素は土壌の酸・アルカリ条件により赤に近づいたり青に近づいたりする。全体の左側が赤みがかった色、真ん中が赤紫色、右側が青みがかった色のようにグループごとに色が違う場合おそらく土壌の酸・アルカリによる影響だと考えられる。しかし実際は同じ場所においても色がばらばらで特に場所による違いのようなものはなかった。土壌の酸・アルカリは根から吸った水で分かる。これよりここで考えられるのは紫陽花1本1本で水の吸収効率が違うため発色に違いが出たのではないかと考えられる。また、たまたまかもしれないが日が経つにつれ、花が薄い色をしていた紫陽花が先に枯れていき、もともと濃かった紫陽花は色がどんどん薄くなっていった。紫陽花は日が経つにつれどんどん色素が壊れていき薄くなっていくのではないかと考えられる。
A:これは自分の観察に基づいて考察をしていてよいと思います。水の吸収効率の違いに結び付けていますが、もし土壌に大きな差がないとすると、吸収効率の違いは蒸散の違いに依存するでしょうから、日当たりの違いが原因かもしれません。実際に日当たりには違いがなかったのでしょうか。
Q:今回の授業では、花弁の色を作り出している要因について学んだ。この話を聞いて長年自分が疑問に抱いていた話を思い出した。それはアジサイに関してである。アジサイは土壌のpHによって色が決まっているとよく言われるが、隣り合っている株なのに赤と青などまったく違う色の花をつけている株が隣あっていたり、同じ株に違う色の花がついているものをたまに見かける。これは単にpHによる違いなのか気になっていた。隣あっているということは土壌でそれほどpHの差はないと考えられるし、同じ株では遺伝子が同じであるため同じ色素をもっているのではないかと考えられるからだ。今回の授業を通して、この違いに2つの可能性があるのではないかと考えた。1つめは、クロロフィル等の光合成色素の割合が違う可能性である。花のつく位置や個体によって光合成量に差が生じているため花の色に違いが生まれるのではないか。この可能性を調べるため、花における光合成量を測定したり、クロマトグラフィーなど光合成色素を比較したら確かめられるのではないかと考える。2つめは、金属錯体の形成量である。土壌には様々なイオンが存在するが個体によって吸収する量や、個体において位置によって運ばれるイオンの量が異なっているのではないか。これを調べるために、根や茎における導管内のイオン濃度や、花弁をすりつぶしその溶液のpHおよび金属イオン量を測定することで確かめられるのではないかと考えられる。
A:なぜ個体によって違うのか、という疑問に対して、個体によって違う、という結論を答えにしてしまうと、事実上何も説明していないように思います。やはり、個体差の出現要員まで考察する必要があるでしょう。
Q:今回は主に植物の花に関して学んだ。自分は特に「花色」に関して興味を持った。講義の延長として、自身で面白そうな花色を持つ植物を調べたところ、「ランタナ」という植物を見つけた。ランタナは花が咲き始めてから、花色が変化するという特徴を持つ。この機構としては、色素の合成の変化が関わっている(カロテノイドが減少し、アントシアニン生合成系が働き出す)のではないかと考えられているが、どのタイミングで花色が変化するのかはまだ未解明らしい。花色が変化するタイミングとして考えられるのは、①開花からの時間経過で変化する、②受粉をきっかけとし変化する、という2つのことが主に考えられる。以上のことを踏まえて、自分はランタナの花色が変化する要因が、②受粉をきっかけとしていた場合、面白い実験ができるのではないかと考えたので以下に示す。まず均一な土壌条件を持つ広大な土地に、同じ遺伝子型であるランタナの種を同じタイミングで植え、その成長、特に花色の変化を観察する。花色の変化は受粉をきっかけとしているので、ランタナのポリネーターはどのような順序、位置関係で受粉を進めていくのかということを明らかにできるかもしれない。もしも、花色が変化する位置関係に法則を発見できたのならば、そのポリネーターは受粉を行う順序に関して法則を持つということであり、その結果は動物行動学の発展に寄与するかもしれないと考えられる。
参考文献:日本植物生理学会, ランタナの花色の変化について、https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=2692 (アクセス日時 2016/7/3 17:30)
A:これは面白いアイデアですね。前提となる「受粉をきっかけに」という部分自体には、あまり説得力がないのが残念ですが、そこをベースに動物行動学まで結び付けた強引さは素晴らしいと思います。
Q:今回の講義は花成の仕組みについてであったが、それに関連して花の色について論じたいと思う。講義では虫媒花である被子植物の花は昆虫と深い関係があるという話であったが、昆虫は人間と異なり紫外線を感知できる眼を持っているため、人間の感知できる波長の色だけについて議論するのは妙な話である。そこで花の色素の紫外線吸収について考えていきたいが、色素に含まれる炭素の二重結合が紫外線を吸収し、共役二重結合が増えていくにつれて吸収波長が上昇するという性質を持つ。どんな色素でもだいたい二重結合は持っているが共役二重結合になっていることも多く、ピーク波長は可視光の波長に収まるものも多い。しかしフラボノイドの中にはピーク波長が紫外光の領域であるものもある。主にピーク波長が紫外光の領域にある色素は蜜のありかを昆虫に示すためにあると言われているため、花の中心部に分布している。この色素の分布の仕方は花の器官形成を支配するABCモデルと似ているため、ABCモデルと同じように色素の分布様式も決定づけられていると考えられる。紫外領域にピーク波長をもつ色素もまたフラボノイドの一種であり、酵素によって生合成されているとするならばABCモデルによって酵素タンパク質の転写制御が行われていることも考えられる。
A:これは面白い考察なのですが、最初の2/3は一般論ですよね。色素の分布とABCモデルを結び付けたところが独自のアイデアだと思うので、その場合には、二重結合の話はあまり考察に寄与しません。前半をバサッと切って、後半を充実させるとよりよいレポートになるでしょう。
Q:今回の授業は花について扱っていた。青いカーネーションや青いバラについては何度か耳にしたことがあった。花の色は色素だけでなくpHや金属錯体の形成も関与していることを初めて知った。色素は遺伝子組み換えで変えられるようになったが液胞のpHや金属錯体の形成は人工的に制御するのは難しいということだったので、どうすれば人工的に制御できるかどうか考えてみた。植物に様々なpHの水を与えたり、金属イオンの含んだ水を与えてみれば、液胞にpHが変化したり植物が金属イオンを取り込んだりしてなにかしらの花の色の変化は得られるのではないかと考えた。また私は同じ花でもなぜ色違いのものが存在するのか疑問に思ったので調べてみた。アサガオについては遺伝子の突然変異で種々の色が誕生し、原種のアサガオの色素はヘブンリーブルーアントシアンという色素による着色であり、ヘブンリーブルーアントシアンはアントシアニジンに糖などが結合して合成されている。また結合する分子の種類や結合の仕方は植物の種類によって違うので、さまざまな構造のアントシアニンがあり、花の色彩が豊かなことの理由になっている、そしてアサガオの色素であるヘブンリーブルーアントシアンでは、基本構造に6つの糖と3つのコーヒー酸が結合している、との情報を得た。そしてアントシアンの発色は液胞のpHや溶けている物質によって異なり、アサガオの場合はpHが弱アルカリ性であるので、青い発色になるとのことであった。またアサガオの突然変異の色の組み合わせは色素を合成するために必要な遺伝子(C,Ca,R,A)、基本となる4色を決める遺伝子(Mg,Pr)、基本色を変更して茶や灰色を決める遺伝子(Dy,Dk1,Dk2,Di)の組み合わせによって決まるということであった。Diを除くそれぞれの遺伝子はさらに色素を構成する酵素の遺伝子、酵素の遺伝子を活性化する遺伝子、液胞の中を弱アルカリ性にする遺伝子に分けられることがわかった。ここで私は液胞の中を弱アルカリ性にする遺伝子(Pr)の存在に気付いた。Prは酵素ではなく、ある種のポンプ・タンパク質の遺伝子であり、このタンパク質は液胞を取り囲んだ膜の上にあって、液胞の外に水素イオンを追い出し、逆に陽イオンを運び込んで弱アルカリ性にしている。このPrを遺伝子組み換えによって導入すれば青い花も作れるのではないか?と考えた。
参考文献:日本植物学会 【第3回】色違いの花はどうしてできてる?-アサガオの多彩な花色を決める遺伝子-、http://bsj.or.jp/jpn/general/research/03.php
A:これも上のレポートと同じで、最初の4/5は調べた結果にすぎませんよね。最後のPrに目を付けたところが独自のアイデアなのだとすれば、そこをきちんと膨らませて、他のサイトに載っていることはバッサリ切るべきでしょう。