植物生理学I 第8回講義
植物の根と栄養塩の吸収
第8回の講義では、最初に前回言い残した樹皮の模様について説明したのち、植物の根の形の多様性と機能とのかかわりについて解説しました。機能としては、水や栄養塩の吸収の他に、根が光合成をする特殊な場合についても紹介しました。講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。
Q:今回の授業においてオヒルギなどの根を例に出し、通常の植物とは違う、特殊な構造をした根を見た。これらの植物は根から空気を取り入れようと地上部に根を出した植物である。しかし、その根は空気を取り入れやすくするという同一の目的を持っているが形状はそれぞれ異なっている。この違いが生じた原因について考えてみる。まず、今回登場したヤエヤマヒルギ(支柱根)、オヒルギ(膝根)、ラクウショウ(気根)、サキシマスオウノキ(板根)はすべて地面がよく水につかる湿地帯に生息している。具体的にはヤエヤマヒルギ、オヒルギは河口、ラクウショウは「沼沢地に生育」(1)、サキシマスオウノキは、西表島においては「西表島東部を流れる仲間川の上流部の川岸に生育」(2)している。このそれぞれの生育環境は、河口は満潮時には海水につかる環境、沼沢地は水の出入りが穏やかな環境、上流部の川岸は氾濫時には水が押し寄せるがそれ以外は比較的穏やかな環境である。これらにおいてもっとも異なっている点は、水流がどの程度植物に負担をかけるか、ということである。つまり河口は周期的に海水が流れ込み、強い負荷がかかっている環境だが、沼沢地は水の出入りが穏やかな負荷が少ない環境、川岸は一時的に強い負荷がかかるがそれ以外は負荷が少ない環境になっているのである。また水からの負荷に対抗する方法として橋を例にとると、当たる方向に対して平面を少なくし、地面と柱の設置面積を増やして耐える、もしくは柱を細くして多くし、負荷を分散させることがあげられる。これらのことから、河口のヤエヤマヒルギ、オヒルギは潮による定期的な負荷を受け流すように根を発達させたためにオヒルギは円柱状で地面に2点接すること、ヤエヤマヒルギはさらに負荷を分散させるため細い円柱状で地面に複数点接することによりしっかり固定された根になり、沼沢地のラクウショウは負荷が少ないので構造を気にすることはなく、空気の交換のみのために垂直に伸びた根になり、川岸のサキシマスオウノキは一時的な強い負荷と、氾濫後の土壌の流出による土台の不安定化に対応するために地面との設置面積を増やすように板状の根になったと考えられる。よって、同一の目的の根の形状に違いが生じた理由は、それぞれの生息環境における水による異なる負荷に対応したからであると考えられる。
1“植物雑学辞典 ラクウショウ”、岡山理科大学 生物地球学部 生物地球学科 植物生態研究室(波田研)、(2016年6月7日参照)、http://had0.big.ous.ac.jp/plantsdic/gymnospermae/taxodiaceae/rakuusyou/rakuusyou.htm
2沖縄県 環境部環境再生課“沖縄の名木百選 仲間川のサキシマスオウノキ”、おきなわ 緑と花のひろば、(2016年6月7日参照)、http://www.midorihana-okinawa.jp/?page_id=568
A:複数の生物種について、その形態の特徴と生育環境の関係を考察していてとても良いと思います。ただ、この講義のレポートで期待しているのは数百字程度なので、こんなに長い必要はありませんよ。もちろん、長いからといって減点したりはしませんけど。
Q:今回の授業では、根について学習しました。私は、小学生のときに奄美大島に行き、マングローブ林を見たので、マングローブの植物の話に興味を持ちました。マングローブ林を見た小学生のときには、「変な根っこだな」としか思わなかったのですが、それは地上に出ている部分から地下の部分へ酸素を供給していたのだと知り、どうしてあんな形の根をしていたのか納得できました。しかし根が地上部に出ているのは、呼吸のためだけではなく、根が腐らないようにする効果もあるのではないかと考えました。例えば、鉢植えの植物に水をやりすぎると、根が腐って枯れてしまいます。これと同じように、湿った土地であるマングローブに生える植物は、根が腐って枯れてしまう危険を回避しなければなりません。これを回避する戦略として、マングローブの植物は根の一部を地上に出しているのではないかと考えました。
A:まず、現象の説明としては、根腐れの原因自体が酸素供給の不足にあると考えればつじつまが合います。その点を考える必要があるでしょうね。あと、もし根腐れと酸素供給が別のことだとした場合、一部が地上に出ていると、なぜ根腐れが防げるのかの説明が必要でしょう。酸素供給の場合は、地上に出ているところから酸素が供給されると説明することができますが。
Q:今回は植物の根についての授業だった。根が栄養を吸い上げることについての話が大半だったが、さて授業のはじめごろに出てきた大根はなぜあんなに大きな根を持っているのだろうと思った。表面積を増やすという目的においてはあまりに効率が悪すぎるし、大根を収穫したことは何度もあるがそんなに細かい根がたくさんついていた、もしくはその跡を見かけた覚えはない。調べてみると、どうやら栽培品種であるが故の特徴のようだ。以前にもレビューシートに書いた覚えがあるが、人間による選択の影響力の大きさに改めて驚いた。そして、もとは自然のものであるのに、あれほど肥料や栽培する間隔といった細かい点で工夫が必要なことにも納得がいった。多くの(特に家畜と呼ばれる)動物に比べて、植物は成熟(と呼べばいいのだろうか)するのが早い。その分、望ましい形質をもつもののみを選択し品種改良することは動物のそれに比べて随分と容易であり、その結果我々になじみ深い植物の多くが野生とは異なる形態になっているのだろう。
A:「成熟するのが速い」は、「世代交代にかかる時間が短い」というべきでしょうね。人間による選択圧の大きさについてはその通りでしょう。
Q:ダイコンの地上部を取り去り光を照射すると、白色だった根が緑色になるという話が興味深かった。つまり、地上部が根における葉緑体の分化を阻害しているのだ。確かに日の当たらない根に葉緑体が存在しても光合成はできない。しかし、根における葉緑体の分化を阻害する意味は果たしてあるのだろうか。通常根には葉緑体ではない色素体(主に白色体)が存在している。この研究のように根を緑化すると、根でもクロロフィルが合成され、根に元から存在した色素体が葉緑体に変化すると思われる。したがって、根における葉緑体分化を阻害する意味があるとしたら、それは他の色素体を失うのを防ぐためと考えられる。葉緑体の分化はオーキシンやサイトカイニンなどの植物ホルモンによって制御されているようだが、根が均一なホルモン条件下にさらされたとき、ある色素体はそのままで、別の色素体は葉緑体へ分化させるというような細かな調節は難しいと思われる。つまり、葉緑体分化を全面的に阻害しなくては、日の当たる箇所に存在するほとんどの色素体が葉緑体に変化してしまうはずだ。では、色素体が根において重要な理由は何か。色素体には葉緑体を含め様々な種類があるが、根において重要なのはデンプンを貯蔵するのに特化した色素体であると思われる。よって、植物が根における葉緑体分化を阻害する理由は、葉緑体以外の色素体にも重要な役割があるため、全てを葉緑体に変化させるわけにいかないからと言えそうだ。
参考:「白い根を緑に?根で葉緑体の分化を調整する仕組みを解明?」http://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/news/topics/20120315111706.html (accessed 2016/06/07)
A:何やらごっちゃになっていますが、地上部を切り離して緑化が見られたのは、大根ではなく、シロイヌナズナです。緑化を抑える意味として、ほかの色素体を保つため、というのは面白い考えだと思います。
Q:今回学んだ根の形質について、植物体を支える役割然り、イオン・水・栄養の吸収然り、根は植物を土壌環境をつなぐ役割があるのだなと改めてわかりました。同じように気体の出入りなどを担当して、空気環境と植物をつなぐ役割の気孔とは形態の異なる物質の吸収機構があり、また、放出することこそ無いものの貯蔵器官としても働く根は非常に興味深い形態の一つです。さて、今回の授業で気になったのはクローナル植物についてです。この形態は栄養を共有すること自体が目的ではないと僕は感じました。そうであれば個体として分離する必要がないからです。僕は、この目的は栄養を吸収する機構が発達していないか、吸収できないときの調整機構が発達していない幼生植物に対して、養分を共有することが目的なのだと思います。これはちょうど、動物でいう哺乳類に似ています。たまごや不完全な幼体で生んで母親の体から分離させるのではなく、自分の体と接合した状態である程度まで育てているからです。クローナル植物は、哺乳類の他の動物種との比較と同じく、他の植物より、環境の変化に強いのではないかと考えられます。
A:クローナル植物と哺乳類の共通性というのは面白いと思いました。途中「そうであれば個体として分離する必要がないからです。」の位置づけがよくわかりませんでしたが。
Q:今回の講義では、マングローブに生息し、根を地中ではなく地上にもつオヒルギやヤエヤマヒルギなどの植物を取り扱った。調べてみると、ヒルギだましなどの通気根を持つ植物では、根から海水をそのまま取り入れ、葉にある塩類腺から塩分を排出する。また通気根では呼吸と光合成をするため、葉緑素が存在している(参考:http://www.geocities.jp/yuko_in_egypt2005/okinawa/o4_29/mangrove.html)。だが、通気根の画像を見てみると根は緑色ではなく茶色であった(参考:http://www.tokiomarine-nichido.co.jp/world/mangrove/about-mangrove/mystery.html)。つまり、根の表皮に葉緑素は存在していないということになる。これについて疑問を感じたので、考察してみようと思う。表皮に葉緑素が存在していないということは、表皮にあると損害が生じるということである。光合成の系Ⅱでは、多量の光エネルギーにより電子受容体が破壊され、光阻害が起こる。マングローブの観察される沖縄(石垣島など)では非常に強い量の紫外線が照射されるため(参考:http://www.okinawainfo.net/uv01.htm)、表皮に葉緑素が存在すると光阻害が発生してしまう。表皮に守られることによって、光阻害が起きないようになっているのではないだろうか。
A:マングローブに関しては、実際に沖縄に行って実験も行っています。ただ、かなり専門的になるので、僕の講義の中では大学院生向けの講義で扱っています。
Q:今回の授業で、幹が太くなる過程で外周の死んだ細胞からなるコルク層および樹皮が強い圧力を受けて亀裂が入ったり、はがれたりするということ、そして樹皮への亀裂の入り方は樹種によって多様であるということを学んだ。一般に近縁種では樹皮の形状が類似している傾向が見られるが、これはどのように説明できるであろうか。広田光一, 加藤弘和, 金子豊久の三氏は樹木の成長を考慮した樹皮のCGモデルに関する研究を行っている。三氏は樹皮の性質にまつわるパラメータとして、樹皮の密度、ヤング率、剪断弾性弾性係数、材料のばらつき、バネの限界平均伸び率(樹皮を含むすべての組織を微小体積領域とそれらをつなぐバネおよび剪断バネで表現した。この際のバネの性質のパラメータである。簡単に言えば、樹木を構成する組織を、三次元的にバネで結びつけられた積み木とモデル化している。)を、成長に関するパラメータとして、層の厚さ、初期ノード(微小体積単位)間隔、初期高さ、初期半径、最大成長期間、半径成長、高さ成長を設定している。さらに樹木の成長様式を相似拡大と半径方向への拡大と仮定してモデル化している。三氏はクスノキ、ナンキンハゼ、マツの三種類について、パラメータを測定し、モデルのシミュレーション結果と実際の樹皮の割れ目構造の類似性が高いことを示した(1)。このモデルが妥当であると考えるならば、近縁種間では樹木を構成する成分の量やミクロな構造が類似していると考えられることから、パラメータの値は極めて近いものになり、シミュレーション結果も類似度が高いものになることが予測されるため、近縁種では樹皮の形状が類似している傾向を説明できる。しかしモデルに基づいたシミュレーションの結果が現実と類似度が高いことだけをもって、モデルの正当性を主張するのは困難である。そこで次のような実験系を提唱したい。このモデルの主張は、樹皮組織のヤング率や剪断弾性係数、バネの限界平均伸び率が変化することによって形成される樹皮パターンが変化するということである。これを証明するために、例えばクヌギのような樹皮パターンが明確な樹種の深く割れ目の入った樹皮パターンが形成される寸前の若木について、以下の個体群を用意する。①何も手を加えない(コントロール群)、②樹皮およびコルク層に樹脂を浸透させる、③樹皮の表面に樹脂(接着剤)の層を形成させる。①~③において形成される樹皮パターンと、操作によるパラメータの変化を踏まえたシミュレーション結果を比較することにより、成長に関するパラメータなど、操作を加えた点以外が全く同じ試料で比較できることから、さらにこのモデルの正当性の検証を深めることができると考えられる。考えられうる難点としては、②については成長に影響を与えずに樹皮及びコルク層にのみ樹脂を浸透させることが困難性、③についてはシミュレーション結果が有意に変化するほどの影響を持続的に与え続けることの困難性が挙げられると考えられる。
参考文献:(1) 広田光一, 加藤弘和, 金子豊久. 成長を考慮した樹皮のCGモデル. 情報処理学会論文誌. Vol.39. No.11. pp.3027-3034 (1998)
A:長い!前半は他人のシミュレーションの紹介ですから、もっと簡潔にしてください。この講義のレポートで評価されるのは、自分なりの論理の部分ですから。その意味で言うと、実際の操作(樹脂の浸透など)がやや不満です。アイデアとしてはわかりますが、自分で考察しているように成長に影響を与えずに、という部分などの理由により、実際に結果を出すのは難しいように思います。
Q:今回の授業では、植物の根に関して学習した。紹介された根の役割としては、水の吸収、イオンの吸収、サツマイモの塊根のような栄養分の貯蔵、植物体の固定、といったことが挙げられている。そうした役割が多い根の中では、個人的に特殊であると感じたのは、「不定根」に関してであった。不定根とは、枝や幹など、本来の「定位置」ではない所から出た根のことを指す。ここで少し挟むが、樹木医が行う治療として、不定根を利用した腐食部の癒合がある。「腐朽部や損傷部付近で発根した不定根を、生長に適した水分状態に保ち地面まで誘導」し、「地面まで早く到達」させ、「地面に到達した不定根を肥大生長させることで、幹の更新や癒合を行う」そうである。また、不定根の誘導により、「活力のある根を確保することで、樹勢の回復の促進」が可能であるという。この不定根自身、木の腐食部から生えることから、恐らく腐食により機能不全となりつつある部分を切り捨て、腐食部より上の健全な部分だけでも生かそうとしているのではないかと推測される。或いは、不定根を損傷部にまたがるように伸ばすことで、腐食による幹の断裂を阻止しているのではないかとも推測される。上記のような樹木医による治療は、この不定根の特徴を生かしたものではないかと個人的に感じられた。
参考URL:http://www.geocities.jp/colliehiro/jushin_9.html、樹木医事務所・樹診「不定根誘導」
A:話題としては面白いのですが、どちらかというと面白い話題に関する感想という感じで、あまりロジックが感じられません。もう少し、問題設定をきちんとして、それに対して論理的に答えを導くようにすると科学的なレポートになります。
Q:陸上植物の根は地面に埋まっており主根側根やひげ根構造で自身の体を支えて地中の水溶性の栄養素を吸収するのが役割である。ではここで水生植物の根がどのような形態や特性を持っているか考える。水生植物はその住む環境上水に不足することはなくわざわざ水底の土壌から根で水を吸収する必要はなく茎や葉で水は吸収できるため根から水を運ぶ道管は陸上植物に比べてあまり優れてはいないと予想できる。逆にレンコンのように水中で不足しがちな酸素を蓄えるために空洞になっているものも多いと予想できる。また渓流沿いの植物などにその性質ははっきりと顕著にみられると思うが陸上植物などとは違い根はその植物体自体を支えるというよりも流されるのを防ぐため根毛のようなものが発達していたり、蔓上になっていたり、浮力に対抗するため重量密度が大きくなっており釣りでいうおもりのようになっていると予想できた。
A:これは、3種類の植物について、根の形態を議論していますが、あくまでそれぞれの個別の話で終わっていて、それらの植物における議論が相互に結びついていないのが残念です。
Q:根の役割の一つとして水分の吸収があり、吸収速度を上げるために表面積を大きくしているという。根について調べている最中、大根の芽が出たばかりの根毛を見た。そのとき十分に成長した大根の根毛とは太さが明らかに違うことに気づいた。芽が出たばかりの時の方が細い。表面積を大きくすることで水の吸収速度を大きくしているのだから、十分体積のある成長した大根の根毛においても細くあるべきだと私は考えたのだが、実際は成長と共に根毛も太くなっている。それはなぜかを考えた。一つは根の役割のまた一つである植物体を支えるということについてだ。成長と共に植物体は大きくなり重くもなる。よってそれを支えるためには根を太くし強度を強めるためだと考えた。もう一つは、虫に食べられるということについてだ。根が細ければ細いほど虫に一度食べられただけで根が切断される可能性が高くなる。十分に成長した大根は体積も大きくなっているために、根を芽が出たときほど細くしなくとも十分な水分の吸収ができていると考えられる。
A:「十分に成長した大根の根毛」って、細根ではなく、本当の根毛ですか?もしかしたら勘違いをしているように思えますが。それはさておき、その前提をもとに考えを発展させているところは、まあよいと思います。
Q:今回の講義では主に根のことについて学んだ。また様々な種類の根についても学んだ。私が特に興味を持ったのは膝根についてである。膝根は根が地上に出てきてまた地中に戻る形をしている。そこで私が疑問に思ったのが膝根がどのようにして地上を認識して地上にでてきて、地中を認識して地中に戻っていくかということである。予想するに地上に出てくるときに認識しているものは酸素量、光量、重力のどれか、またはその中のいくつかを認識しているのではないかと考えた。地中に戻るときであるが、これはある程度地上に出てくると自重に耐えきれずに戻っていくと考えた。実験的に根の周辺の酸素の勾配を変えたり、光の当てる角度を変えたりするとどのように膝根ができるかがわかるかもしれない。
A:「考えた」でおしまいにするのではなく、なぜそのように考えたかの論理をきちんと記述してください。根拠がなければ科学にはなりません。
Q:アクアポリンを阻害する水銀を用いた実験について。水銀によって、葉緑体における二酸化炭素濃度をある値にするために必要な細胞外の二酸化炭素濃度が、高くなることが分かった。また、葉緑体内の二酸化炭素濃度が同じなら、水銀の存在下でも光合成活性は変わらないこともわかった。つまり、アクアポリンの存在が、二酸化炭素を葉緑体内に拡散させる手助けとなっている。ここで、ひとつ思ったのは、二酸化炭素は細胞膜を通り抜けるのではないのか、という疑問だ。二酸化炭素は低分子の非極性分子であり、細胞膜を通過できるはずである。つまり、アクアポリンによって通過する二酸化炭素と、細胞膜を通過する二酸化炭素が存在すると考えた。ではその比率はどうなっているのだろうか。水銀がすべてのアクアポリンの働きを完全に阻害するのなら、実験で移動した二酸化炭素がすべて細胞膜を通過したものと分かるのだが、水銀がどの程度アクアポリンを阻害するのかわからない。そのため、水銀の濃度を変化させながら実験する、もしくはアクアポリンの水輸送に着目し、浸透圧差のある状況での水の輸送にどのような影響があるかを調べることで、水銀の阻害の程度を調べることができると考えた。この阻害の程度が分かれば、細胞膜の二酸化炭素輸送の量を計測できるはずだ。
A:二酸化炭素の分子的性質から、膜の透過性がある程度あるはずだ、と考えた点は立派だと思います。その後の、特に水の輸送と比較する実験も、よく考えていると思います。
Q:今回の授業で木の幹の中心と一番外側は死んだ細胞によって成り立っていると学んだ。動物は基本的に死んだ細胞によって構成される器官はないが植物では多く見られることであるそうだ。このような動物と植物の違いも自ら動けるかどうかの違いによると考えられる。何か危険を感じた時に動物は逃げることができる。このとき助かるためにより迅速に動く必要がある。そのため生きた細胞ならば代謝にかかわったりすることによって役に立つが、死んだ細胞では動くことがないためただ邪魔になるだけである。そのため動物の細胞はほとんどが生きた細胞からできているのだと考えられる。一方植物は逃げることができないため危険に見舞われて傷ついた場合、どれだけ損害が少ないかということに重点が置かれているのではないだろうか。このとき生きた細胞ではまだ代謝を行っているので役に立つため損害が大きくなる。逆に死んだ細胞ならば中の生きた細胞を守るということ以外に役割がないため損害が少なくて済む。また死んでいるということは養分や水分などを送る必要がないため、特に樹木のような導管が細く、水の吸い上げが遅い植物にとっては効率が良い。そのため成長するのに必要な篩管のあたりは生きた細胞だが、他の中心部や外側には死んだ細胞を使うことによって少ない水分を効率よく使いとともに、もし傷つくようなことがあっても大切な生きた細胞は傷つかないような作りになっていったのではないかと考えられる。
A:当たり前といえば当たり前の話かもしれませんが、段階を追ってきちんと論理を進めていてよいと思います。
Q:今回は根について学んだ。根の形にも葉や茎の形と同様に意味はあるのではないだろうかと考えたら、根の根本的な機能や意義から表面積が大きくしっかりと地中に張っていればいいので植物体によって特徴的な形は取り辛いのではないかと考えた。表面積が大きくなければならないのは水分や無機塩類を吸収するため、地中に張り巡らさなければならない理由は植物たいを支えるためであると考える。一般的に根の形は主根側根の形を取るものとひげ根の形を取るものが存在している。どちらも表面積的を大きくするという点では同じだが、植物体を支えるという点では主根側根の形を取るものの方がしっかりしているというイメージを個人的に抱く。小さい頃に地面から引っこ抜いた植物は背丈の高いものは主根と側根を持ち、背丈の低いものはひげ根を持っていたような気がするからだ。もしかしたらこの理屈が植物の一般的な根の形態の決定を裏付けているかもと考えたが、ゴボウやダイコンなどの根を食べる植物においては植物体の大きさに見合わない丈夫な根を持つためにそうとも限らないと考えた。
A:面白いのですが、最後、「そうとも限らない」と終わってしまうと、全体としての主張がよくわからなくなります。その部分も統合するような何らかの結論を、少し強引でもよいので導いて終わりにできるとよいですね。