植物生理学I 第3回講義
光の吸収
第3回の講義では、前回の続きとして光合成研究の意義について触れた後、光の吸収と光合成色素について解説しました。講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。
Q:クロロフィルとヘムの構造の相違について:今回の講義でクロロフィルの構造式を見て、ヘモグロビンを作るヘムと似ていると思ったので調べてみると、分子の中心部に環状構造であるポルフィンが共通にみられることがわかった。また、どちらも金属イオンをもつ錯体であるが、クロロフィルはMg2+を中心に持ち、一方ヘムはFe2+を持っている(講義でも習ったがバクテリオクロロフィルの中にはZn2+を持つものも存在する)。つまり、クロロフィルのMg2+をFe2+に置き換えるとヘムに類似した分子になる。このことから、よくサプリメントとして市販されているクロロフィルには、抗貧血作用をもつものだと考えられる。また、レバーとホウレンソウの炒め物が貧血の予防に良いとされている理由は単に鉄分が多いというだけではなく、同時にクロロフィルをホウレンソウから摂取できるためであると推察できる。
A:きちんと考えていると思います。ただ、最後の部分、ポルフィリンの部分が重要なのか、鉄の部分が重要なのかという点で、なぜ鉄だけではなくポルフィリンも重要と考えたのかの根拠がちょっとあいまいですね。高校でリービッヒの最少律というのを習ったかもしれませんが、生体内では一番少ない栄養素で全体が律速されます。ホウレンソウを取るとよい、というだけでは、鉄が重要なのかポルフィリンが重要なのかはわかりません。実はポルフィリンを体の中で合成する原料はアミノ酸なので、基本的には摂取したタンパク質を分解すれば原料には事欠きません。実質的には自分では合成できない鉄が重要だと考えられます。
Q:今回の授業では地球外からきた光エネルギーが光合成によって二酸化炭素と水を酸素と糖になり、呼吸や腐敗によって酸素と糖が二酸化炭素と水になり、その際発生した熱が地球外に放出されるという一連のサイクルを学んだ。そして、そのサイクルの中から糖が石炭や石油として保存されたため二酸化炭素が減り酸素が増えたと学んだ。この理論に従うとなると当然水も減っているはずである。光合成によってもともと大気中に存在しなかった酸素が現在では20%もの割合を占めているのであるからそれに相当する量の水が別のものとして保存され、海も縮小したと考えられる。それにもかかわらず今でも海が地表の7割を覆っているというのは少し疑問に思う。個人的な推測でしかないが、多くの水は地球内部から火山活動などを通じて地上にもたらされたのではないかと考える。この考えに沿うと、地球が形成された際に重い元素である鉄などは内部に沈んでいるはずなのにそれらが酸素と反応し鉄鉱石となって保存されたり海水に溶けていることの説明も綺麗になる。このように様々な物質が海に溶けこんだことも体積を増やしたことに貢献しているのではないかと考えられる。
A:これもよい着眼点だと思います。水は無視されがちですが、案外重要ですからね。レポートとしてはこれで合格点ですが、最後に地球の大気中の酸素の量と、地球の海洋中の水の量をどこからかデータを探してきて比較して結論を出すことができたら満点です。
Q:紫外線は、私たち生物にとっては有害なものである。紫外線は、光量は少ないが一粒のエネルギーが高いということを今回の授業で学んだ。したがって高いエネルギーによって生物の表面を通過し細胞内まで届きDNAを破壊してしまうと考える。日焼けやシミといったようなものは紫外線による影響でできるものである。したがって私たちヒトは日傘や日焼け止めなどを使って紫外線を人体に直接当てないようにしている。では、紫外線はDNAを破壊するにも関わらず、なぜ植物は1日中、太陽光を浴びていることができるのであろうか。もちろん植物にもDNAは存在し紫外線によって破壊されてしまうのも私たち動物と同じである。そこで植物と動物の違いについて考えてみる。植物には動物にはないクロロフィルと呼ばれる色素が存在する。このクロロフィルによって光合成を吸収しているため葉の表面にはクロロフィルが絶え間なく存在している。したがってそのクロロフィルの壁によって紫外線が奥まで到達するのを防ぎDNAを守っているのではないかと考える。また逆に色素がない‘ふ’のある葉を考えてみるとわかりやすい。その葉は時間が経つと茶色や黒になってしまう。それは一種の日焼けと同じ現象なのではないか。したがって、クロロフィルが紫外線を吸収し植物のDNAを守っている。
A:これも紫外線とクロロフィルを結び付けて考えたという点で、独自の論理をきちんと述べたよいレポートだと思います。ただ、時間がたつと斑入りの葉が黒くなるというのは、あまり一般的でない気がしますが。観葉植物にはたくさん斑入りのものがありますが、多くのものは元気に育っているように思えます。そうだとすると、クロロフィルが紫外線保護に重要だという論拠が失われるかもしれません。
Q:講義で植物の遺体が石油や石炭になった習い、それならば石油や石炭の分布は当時の生物分布と一致するはずであると考えた。つまり、石油の豊富なアラブ地域などには大量の生物が存在していたと考えられる。しかし実際に調べてみると、石油の由来が生物であるというのは必ずしも定説ではなく、石油の成分が地域によらずほぼ一定であること、一部の石油の埋蔵場所は生物由来としては深すぎることなどを根拠とし、石油は地殻中に存在する炭化水素由来であるという説もあることが分かった。これに対する生物由来説の根拠は、石油中にはポルフィリン分解物や光学活性物質を始めとした生物由来の因子が含まれれいるということである。どちらの説にも説得力があるが、石油は基本的に無機物に由来し、途中から生物由来の因子が不純物として紛れ込んだと考えれば非生物由来説には矛盾がないと考えられる。
参考Webサイト:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%B3%E6%B2%B9
A:両方の説の紹介に留まってしまうと、この講義で求めるレポートになりません。最後、「矛盾がないと考えられる」というだけでは、論理ではなく感覚です。両方の説の紹介の後に、何らかの自分なりの論理を使って結論を導き出していれば高く評価できます。
Q:今回の授業で、太古の植物が初期の地球環境を形作るのに大きな役割を果たしたことを学んだ。 現在の生物には自らの生活に合わせて周りの環境を変化させるものも多い。川をせき止めダムを作るビーバーや、巨大な塚を建造するある種のアリなどがその例である。中でも人間が最たる例かもしれない。これらの例と同じく、 太古の植物も積極的に自らの環境を変化させていったことが考えられる。酸素を作ることで好気呼吸を可能にし、エネルギーの変換効率を格段に向上させた。また、酸素が化学変化しオゾン層を形成したため植物の陸上進出を可能にした。上記の二つの環境変化は植物が光合成を始めたため、結果的にそうなったのだと思っていた。 しかし、これらのことは消して偶然の産物ではなく、太古の植物の生存戦略による地球規模の環境変化だったのではないか。
A:生物活動による地球環境の変化が偶然ではなく、生存戦略の一環ではないかという発想は独自性があり高く評価できます。ただし、生物の進化は偶然に依存しているという現在の主流の考え方を無視しています。キリンは生存戦略として首を伸ばそうとして長い首を持つようになったのではなく、長い首を持つキリンが偶然生まれた時に生存に有利な場合に生き残る確率が上がるので、長期的にはキリンの首が長くなり、それがあとからみると生存戦略のように見える、というのがダーウィン流の進化の考え方でしょう。
Q:第3回の講義では光を使う生物の存在によって起きた変化、また光合成をおこなうために必須なクロロフィルの種類の解説であった。今回、講義の最初の方で地球の酸素濃度が上昇した理由について光合成で酸素と糖を生み出す生物が死に酸素とセットの糖が地中に埋まってしまうため酸素が残り、結果それが積み重なって現在の酸素濃度であると解説していた。これがもし本当であるならば、石油、石炭を用いて行っていることは、昔の循環に戻している作業をしていることになると思う。つまり昔の気候に戻しているのだ。しかし、実際石油、石炭が間もなく枯渇すると叫ばれているにもかかわらず、大気中の二酸化炭素濃度はあまり変わっていない。昔の気候に戻るならば、もっと上昇してもおかしくないはずである。ひとつの原因として地上に存在する植物の数であると推測される。植物の光合成スピードが速く、二酸化炭素の濃度上昇を妨げているのだ。しかし、これはあくまでも仮説で実際はよくわからない。なので実験として、二酸化炭素で満たした空間に植物を加えどれほどのスピードで酸素に変換するのかを調査し、一日に人工的に排出される二酸化炭素と比較することで仮説の真偽を確かめる。
A:物質循環のサイクルから外れたものが、石油石炭のほかにあるはずだ、それは植物ではないか、という視点は非常に良いと思います。ただし、「植物の光合成のスピードが速い」せいではありません。光合成の速度は「フロー」です。サイクルから外れる量は「ストック」であり、実際に重要なのはフローではなく、このストックの量なのです。とすると、植物の形でストックされている有機物というのは何だろうか、という方向性で考えるとよいレポートになりそうです。
Q:今回の授業では、近赤外線の光を吸収することができるクロロフィルdをもつ光合成細菌が発見されたということを学んだ。そこで、紫外線を光合成に使用することのできるクロロフィルの存在について、検討したい。紫外線を利用するメリットとしては、紫外線はエネルギーが高いため、少量の光でも多くのエネルギーを得られるということである。つまり、少量の光で高いエネルギーが得られ、効率よく光合成ができると考えられる。したがって、紫外線を利用できるクロロフィルを持つ植物や光合成細菌がいる可能性があると考えられる。しかし、エネルギーが高いということは、物質を破壊しやすいということでもある。紫外線を光合成に利用するためには、紫外線によって破壊されないような構造を持つ必要がある。たとえば、ベンゼン環を含んだ構造を持てば、紫外線を吸収することができると考えられる。また、紫外線は波長が短いため、物体に遮られてしまうと届きにくい。そこで、紫外線を遮るものの少ない標高の高い地域、海水中など紫外線の届きやすい場所に生息する植物や光合成細菌が、紫外線を利用できるようなクロロフィルを用いるだろう。もし、紫外線を光合成に利用できるクロロフィルが存在するとするならば、紫外線の強い場所に生息する植物または光合成細菌内に存在し、ベンゼン環のような紫外線を吸収できる構造を持った、通常のクロロフィルとは異なった構造をしていると考えられる。
A:発想も論理もまあよいと思います。ただ、紫外線を使いながら紫外線からDNAを守るのはなかなか大変そうです。光合成を紫外線で行なう場合には、その保護機構をもう少し考察するか、あるいは思い切って遺伝情報の保持には紫外線を吸収しない物質を使うといったドラスティックな発想が必要かもしれません。
Q:人間には可視光線しか見えないが、ほかの動物の中には赤外線や紫外線の見える動物もいる。人間の可視域は390nm~780nmとされているが、昆虫は300nm~600nmとなっている。たとえばモンシロチョウは人間からしたら羽の色はメスもオスも白色だが、羽の紫外線の反射率によってはっきりと違いがわかり、オスがメスを見つけられるようになっている。また昆虫からすると、エサである蜜を見つける際、花びらは黒く見え、花の蜜は白く反射し見つけやすくなっているのである。夜蛍光灯に虫が集まっているのも同じ原理から説明できる。
引用:「UVカットランプ豆知識」http://www.everise.jp/mamechishiki/cat1/、「太陽光線の種類」http://www.globaltimecreation.com/sight-function.org/sun-light.html
A:これは単なる事実の記載であり、本講義のレポートとしては評価されません。
Q:なぜ波長によってエネルギーが異なるかは、光子1個の持つエネルギーEは
h:プランク定数 ν:振動数 c:光速度 λ:波長
とあらわされ、波長が大きくなればなるだけ割る数が大きくなるのでエネルギーは小さくなる。光合成に使う光として最もいい波長はより小さくエネルギーを多くもつ波長のほうがいいのではないのか?なぜ緑色の波長ではなく赤色の波長を利用するのか?クロロフィルaはなぜ緑色なのかはテトラピロール環というものを構造にもっていて、これは450nmと700nmにおおきな吸光帯をもつので、結果緑色植物は緑色に見える。
参考:http://cacao55.fc2web.com/sub76.html、http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AB
A:これも上と同じです。間に疑問が2つはさまれているだけで、自分なりの論理がまったく認められません。サイエンスを学んでいるのですから、自分で論理を構築っする努力をしてください。
Q:なぜ植物を研究するかという問いの答えに、植物の光合成は人類文明を支えているという理由があると学びました。そこで、その光合成が人間にどのように影響していて、どの点で人類を支えているのか調べ、考えてみました。「何かが動いたり、営まれるためには、原動力(エネルギー源)が必要ですが、森林生態系の原動力は太陽光線をエネルギー源とした光合成です。樹木は大気中から葉の気孔から吸収した二酸化炭素と根から吸い上げた水を原料として、太陽エネルギーと葉緑素のはたらきで糖(有機物)をつくり、酸素を放出します。光合成を式にすると次のようになります。
6CO2(二酸化炭素)+12H2O(水)+光エネルギー→C6H12O6(糖)+6O2(酸素)+6H2O
光合成でつくられる糖(C6H12O6) の中には太陽から得た光エネルギーが取り込まれてます。そして、根から取り入れた地中の無機物(窒素などの養分元素)と結合し、蛋白質や脂質などの複雑な有機物になります。その植物を草食動物が食べ、その草食動物を肉食動物が食べ、有機物とそこに蓄えられたエネルギーは生物間を伝わっていきます。植物のエネルギー源植物が活動するエネルギーは、光合成によって有機物(糖)の中に取り込んだエネルギーから得ています。植物は自分自身の活動エネルギーを自分でつくっているわけです。有機物からエネルギーを取り出すはたらきが呼吸です。呼吸では酸素を吸収し、有機物を分解し、二酸化炭素を放出します。上記のように、植物は光合成によって有機物をつくりますが、一方では、呼吸によって分解されてしまいます。しかし、通常は光合成によってつくられる有機物の方が大きく、植物は成長します。光合成によってつくられる有機物と呼吸によって分解される有機物の差を「(有機物の)純生産量」と呼んでいます。これは植物の成長量に相当します。」(参考文献:森林林業学習館HP光合成について)光合成について調べてみると、二酸化炭素、水、光から酸素だけではなく、糖や水も産生されることを改めて思い出しました。酸素は空気中に放出されて、空気中の酸素濃度を調節しているが、糖はどのように使われているのかと疑問に思いました。糖とはショ糖やでんぷんやグルコースで、人間にとっても必要不可欠なものではないかと考え、また穀物などから摂取する炭水化物なども糖の一種で、酸素と同様に植物は人間にとってとても大切なものを提供してくれているのではないかと考えました。人間の呼吸によって二酸化炭素が放出され、それを植物の光合成で酸素を産生して中和のような働きをし、また人間が植物を摂取することによって呼吸気質またエネルギー源ともいえる糖を取り込んでそれを蓄え、熱・エネルギーとして発散する、というサイクルができています。今回、植物の光合成の基礎からあまり理解できていなかったために疑問点を持つところより、わからない点が多くたくさん学ぶことができました。
A:これは、中学・高校レベルのレポートとしては高く評価できます。しかし、本講義のレポートとしては評価は低くなります。講義で話された内容がまとめられ、そこに自分で調べた事実が加えられていますが、独自の論理性が感じられません。一般的な説明に終始しています。サイエンスに必要なのは独自の考えです。だれしもが唸るような素晴らしい論理である必要はありません。また、長い必要もありません。自分で考えた新しいアイデア、論理、発見、そうしたものを表現するように努力してください。
Q:光合成色素の存在は光合成生物にとって大変重要な要素である。地球上には地表下や深海など様々な光環境があり、その中で光合成生物は光エネルギーを吸収しなければならない。そのために生物は多種多様な光合成色素を持っておりその色素を研究することでその生物の住み場所やさらには進化過程までも推測することができる。今回はクロロフィルaとbについて見てみよう。シアノバクテリア(ラン藻)はクロロフィルaをもち、原核緑藻はクロロフィルaとbをもつ。クロロフィルbは陸上植物にはあるが、同じ真核生物である紅藻や褐藻にはない。クロロフィルbはいつどこで生じ、これらの生物の中でどう変わっていったのだろう。クロロフィルbはクロロフィルaから2つの酵素反応を経てできる。遺伝子を用いた系統解析によれば、原核緑藻と真核緑藻および緑色植物の遺伝子は独立に獲得されたのではなく、共通の起源をもつ。つまり、原核緑藻やラン藻の共通祖先は、クロロフィルaとbの両方をもっており、ラン藻、紅藻、褐藻は進化の過程でクロロフィルbを失ったことになる。クロロフィルのこのような変遷過程を見ることでその生物の進化が見てとれる。
参考)季刊誌[生命誌]巻30号 2001.08 新しい光合成色素の獲得と植物の進化:田中歩
A:これも上と似ています。短い文章の中にクロロフィルの進化が要領よくまとめられていて中学高校レベルなら満点でしょう。ただし、ここで取り上げられている論理は北大の田中さんのものです。この講義でレポートに求めているのは調べることではありません。自分で考えることです。
Q:今回の授業では、クロロフィルについて学んだ。そこで、クロロフィルと進化の関係について考察してみた。クロロフィルには何種類かあるが、それらの構造はよく似ているという。これより、それらのクロロフィルの祖先は同じであったと仮定できる。光合成を行う生物の多くはクロロフィルaを利用していることから、クロロフィルの中でクロロフィルaが一番初めに生じた、もしくはクロロフィルaを利用するものが生き残ったと考えられる。もし前者が正しかった場合、褐藻などのクロロフィルa以外を利用するものは、クロロフィルaを効率的に利用できない環境に生息していたため、クロロフィルcなどに変化していったのだろう。後者が正しかった場合、クロロフィルa以外を利用する生物は今現存している種よりも多くの種が生まれて絶滅していったのだろう。どちらが正しいかは、進化の分岐と利用するクロロフィルの関連を調べると良いと考えられる。クロロフィルa以外を利用する生物がクロロフィルaを利用する生物よりも遅く誕生していた場合、前者である可能性が高い。クロロフィルa以外を利用する生物がクロロフィルaを利用する生物と同じ時期に誕生していた場合は、後者である可能性が高いと言えるだろう。
A:これは上のレポート比べるとだいぶたどたどしいですが、それでも自分で考えた論理を表現しようとする努力が認められます。問題点がピンポイントに取り上げられて、それに対する回答を考えているという点で合格点のレポートです。
Q:光合成色素としてクロロフィルを学んだ。クロロフィルは緑色の光を吸収しないため、緑に見える。ここで、我が家のサボテンの色について考えてみる。我が家のサボテンは、オーソドックスな丸サボテンである。夏前になると、サボテンの色は濃い緑色になる。逆に、寒い時期になると、色はどんどん薄くなる。仮説①「全体のクロロフィル量は変わらずに、クロロフィルの種類が変わる。」薄い緑色のスペクトルは約500nm、濃い緑色のスペクトルは約450nmなので、薄い緑色のときはクロロフィルb、濃い緑色のときはクロロフィルaが多いと考えられる。仮説②「クロロフィルの種類は変わらずに、全体の量が増える。」夏前に緑色が濃くなるのは、単にクロロフィル量が増えているだけと考えられる。どちらが正しいのか、確かめる方法は光合成色素の定量である。光合成色素の実験といえばペーパークロマトグラフィーや薄層クロマトグラフィーだが、これらの実験の目的は光合成色素の検出であるため、利用できない。夏と冬にそれぞれクロロフィル量を定量し、比較することで仮説を証明することができるだろう。以前、仮説②のような意見を聞いたことがあるが、私の予想としては、紅葉の仕組みのように季節により葉の光合成色素の分布が変化すると考えられるため、仮説①だと思う。
A:これも、自分なりの考察を展開していて合格点です。ただ、最後の「季節により葉の光合成色素の分布が変化すると考えられるため」というところが、なぜそのように考えられるのかが明示されていないのでちょっと弱いですね。