植物生理学I 第15回講義
光合成と地球環境
第15回の講義では、いわゆる地球環境問題について、様々な面から解説しました。講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。
Q:原始の地球において、二酸化炭素濃度が減って酸素濃度が増加した理由は、光合成によるものだけではなく有機物が地面に固定されたからであり、したがって石油を使用すると昔固定された二酸化炭素が大気に放出されて二酸化炭素濃度が上がるということを知った。ところで、現在の地球では石油の枯渇が騒がれている。しかし、二酸化炭素の増加は、太古の濃度と比べたら微々たるものである。したがって、石油はまだまだ地中に存在するのかなと考えた。しかし、だからといって石油を使い続けると濃度が上昇していく。これは、地球温暖化を引き起こすだけでなく、我々生物の生存に直接的な危機をもたらす。なぜなら、現在0.036%ほどの濃度が3%を超えると人体に有害だからである。(二酸化炭素の毒性:http://www5f.biglobe.ne.jp/~wakannai/CO2_dokusei.html)この濃度を超えるにはまだまだ時間がかかると思われるが、二酸化炭素が有害であるということをもっと社会に浸透させれば、人々は地球温暖化を防ぐという理由よりも必死になって二酸化炭素を減らそうとするのではないかと考えた。
A:確かに3%CO2は体にはよくないと思いますが、おそらくその濃度に至る以前に、CO2のより間接的な影響により人類は絶滅しているのではないかと思います。ただ、「社会に浸透」するためにはショッキングな表現が必要かもしれない、ということは残念ながら本当かもしれませんね。
Q:森が二酸化炭素を吸収しているかどうかは、森全体に蓄積した炭素量を測ることで調べられる、という話を聞き、大気中の二酸化炭素を減らすことはすなわち、CO2のCを他の炭素化合物に固定することだということに改めて気づいた。地球の環境の決定には様々な要因が複雑に絡み合っているだろうが、もし地球温暖化の主な原因が大気中の二酸化炭素濃度増大なのだとしたら、植樹をするよりも効率よく大気中の二酸化炭素を人為的に固定出来るようになれば、温暖化問題も解決されるのではないかと考えた。しかし、そのようなことができるようになったら、地球規模の炭素循環そのものに人類が介入するということであり(単純に二酸化炭素を排出したりするだけ、ということでなく)、そのことでまた新たな環境問題が発生しそうである。
A:そうすると、結局は、地球環境を正常に保つためには人間が多すぎる、という結論に達しそうですね・・・。
Q:地球温暖化は二酸化炭素が原因である、温暖化は深刻な問題である、というのは私は偽りだと思っている。高校生の時の先生に教えて貰い、その後資料を集めてみただけだが、どうもそうらしい。世界が温暖化だと叫ぶのは、発達しすぎた人間への警告や経済面を考えてのことなのだろう。いつだって一般市民はメディアに踊らされる。しかしヒートアイランド現象は問題である。今ある建物を壊すわけにはいかないので今後どのような対策がとられていくのか。
A:せっかくのレポートなのですから、「どうもそうらしい」ではなくて、きちんと自分の言葉で表現することが必要です。また、「今後どのような対策がとられていくのか」というのも人ごとのようですね。
Q:「地球は人が絶滅しても困らない」その通りだと思った。私たちは自分本位に考えがちである。こうしたら(結果として自分たちにとって)良いと思うからということを理由に決断することが多いのではないだろうか。地球温暖化を気にしているのだって、自分たちが暮らしにくくなることを危惧しているのではないかと問われれば否定することは難しい。連日猛暑が続いている。去年までもこんなに暑かっただろうか?東京の温度の上昇の理由には、温暖化とヒートアイランド現象の二つが挙げられると授業で扱った。ヒートアイランド現象の主な原因には、アスファルト道路の増加、緑地面積の減少、人口集中による排熱量の増加、高層建物による多重反射などがあり、これらにより都市部の気温が高くなっている。この現象による気温の上昇を防ぐ対策として実行されているのは、屋上緑化、壁面緑化、遮熱性舗装などだ。しかしオフィスビル等が立ち並ぶ都心部ではなかなか対策が進んでいるとは考えられない。早稲田大学周辺も戸山公園がある以外は目立った緑地は見られないし、なかなか目に入らない屋上緑化は別としても壁面緑化を進めているところは見たことがないように思える。道路の舗装工事を行うにもこの暑さでは作業する人が倒れてしまうのではないだろうか。また性能の良い舗装剤は廉価で手に入るのだろうか?行われている実感があるのは、公共交通機関の利用やエコカー利用の呼びかけだ。省エネ家電が流行りだしてずいぶん経っただろう。緑地を増やすということはなかなか時間がかかるし、場所がない都心部だからこそ、企業が力を入れている“地球に優しい”家電を使って未来の自分たちを助ける必要があるだろうと思った。私たちだって、家でクーラーをかけるより図書館に行くこともできるし、打ち水ならば明日からでもできる。そういう積み重ねで地球と共存していかなくてはならないと思った。
参考(アクセス20100725):『ヒートアイランド現象と対策』http://heatisland.tetum.info/、『東京都のヒートアイランド対策』http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/heat/
A:確かに壁面緑化などはもう少しとり入れられてもよい気がしますね。地球温暖化自体は、なかなか小手先で食い止めるのは難しそうですが、ヒートアイランドを緩和することは、努力で何とかなるのではないかと思います。
Q:石炭や石油など、酸素に触れずに地中深くに隔離されていた炭素が、現在掘り起こされて使用されることによって、大気中の二酸化炭素濃度が上昇しているということを授業で習った。このことから、単純かもしれないが、地球上の炭素化合物を宇宙なり海底なりに沈めて酸素と触れる機会をなくしてしまえば二酸化炭素濃度の上昇による地球温暖化を食い止めることが出来るはずであると考える。現実的には宇宙に炭素化合物を持っていくのは、宇宙汚染につながるので避けるべきである。また海底に沈めるとして、沈めるものは何が適しているかが重要である。わざわざ生育している植物や動物を沈めるわけにはいかない。炭素量が多く、量的にも多量な燃えるゴミが最も適しているのではないだろうか。海は陸地よりはるかに広い範囲を占めているので、環境汚染対策やその他の技術が伴えば、水深何千メートルとなる場所を選択することによって、狭い範囲の海域でも長年にわたり、多量のゴミを沈め、炭素を隔離することが出来ると考えられる。そして二酸化炭素濃度の上昇が止まり減少すれば、そこからまた燃えるゴミを取り出して、二酸化炭素濃度の変動が無くなるように焼却処分などをして二酸化炭素濃度を増やせばよい。そうして人間が二酸化炭素濃度の変動をコントロール出来れば問題は解決すると考えられる。
A:二酸化炭素を海底に隔離するなどの方法は研究されていますが、人類が今の生活スタイルを続ける限りにおいては、一度ある量の二酸化炭素を海底に隔離すればよい、というものではなく、それをずっと続けなくてはなりません。それを考えると、あまり有効な対策とは思えないのですけれどもね。
Q:今回の授業では大量絶滅の話があったが、この大量絶滅に関して考えていくうちにヒトはもう進化しないのではないか、と思った。毎年様々な新種が発見されているが、ヒトは地球上に大多数存在しながら少しも進化する気配がない。これは、ヒトが周りの環境を現時点の自分たちに最も合うようにつくりかえて生きているからではないだろうか。進化は突然変異を除くとその場に適応しようとするために起こるもので、自分が変わらずに適応できない環境を自分好みにつくってしまうような生き物は進化する必要がないのではないか。そう考えると恐ろしいのが、過去に大量絶滅を起こした原因が再びやってくることである。隕石で考えてみると、過去に地球に衝突して大量絶滅のきっかけを作ったサイズの隕石が再び地球に衝突するということになったらどうだろう。ミサイルかなにかで防げなかったとしたら、衝突地点周辺(といってもかなり広範囲)はその衝撃でなにもかもがふっとび、空は塵で覆われ太陽光は届かず一気に気温が低下してしまう。地殻変動で火山活動が活発化したり大地震が各地で起きても周りの環境は一気に崩れる。自身を変えようとしない生き物であるヒトは、その時点でかなりの可能性で絶滅してしまうのではないだろうか。
A:人間が環境を制御することにより、人間の進化が遅くなるということは十分に考えられるでしょう。ただ、隕石が当たるなどといった大きな変化に適応できるかどうかは、それ以前にどの程度の多様性を持っていたかが重要なのではないかと思います。これが、生物多様性が重要であることの一つの理由であるようにも思います。