植物生理生化学特論 第5回講義
光合成研究の方向性
第5回の講義では、現在、光合成の研究がどのようなところを目指しているのかについて解説しました。以下に寄せられたレポートとそれに対するコメントを載せておきます。
Q:今回の授業で、地球規模における海洋クロロフィル濃度の測定が世界で行われていることを知った。「可視域における海水の光学的特性を用いた物質濃度の計測手法」(新井励2008)によると、気象衛星に搭載された海色走査計により海表面の分光衛星画像が計測され、それを用いることで海水表層の植物プランクトンに含まれるクロロフィル濃度を測定できる仕組みが公開されている。海洋に鉄をまくことで海表面の藻類が増え、二酸化炭素が減少することが上記の技術により分かっていることが授業で示されたが、この理論を用いて地球上の炭素隔離につながる手法を考えてみようと思う。まず、海洋に鉄を散布することで藻類が増え、光合成により一時的に二酸化炭素が吸収される。しかし、藻類が死に、海洋中で分解されてしまうと海洋中、あるいは大気中に二酸化炭素が放出されてしまい、結果的に炭素収支はプラスマイナス0になってしまう。そこで、海洋表面の藻類を回収し、比較的低温度、低酸素状態で熱し炭化させることでバイオ炭にすることで、藻類中の炭素が固定され炭素隔離につながると考えた。
A:このようなことを考えるにあたっては、やはりある程度定量的な考察が必要になると思います。目的は二酸化炭素の固定ですから、さらっと述べられている「藻類を回収」あるいは「炭化させる」といったプロセスに必要なエネルギーを得るために、固定できる以上の二酸化炭素が放出されてしまったら意味がありません。別に細かい計算は必要ありませんが、概算により実現可能性があるかないかぐらいは考えたいところです。
Q:今回の講義の中で、トウモロコシやサトウキビの搾りかす(セルロース)を分解して、エタノールを生成ことは難しいという話があった。では、どのようにすればセルロースを効率的に分解することができるのか。セルロースを分解する時には、分解酵素であるセルラーゼが用いられる。つまり、セルロースを早く分解するためには、セルラーゼの反応速度を調べる必要がある。化学反応は温度,濃度に依存して、反応速度が変化するため、段階的にこれらを変化させて、最適な条件を特定すればよい。さらに、セルラーゼのセルロースに対する反応様式(例えば、どのような順番で結合を切るか等)を知るために、セルロースに対して、セルラーゼとの反応時間を変えた複数のサンプルを用意して、これらを比較することも考えられる。セルラーゼの分解速度が比較的遅いことから、サンプル同士を比較することで、 セルロースの分解反応様式を明らかにすることができるのではないか。
A:酵素の一般論になっていますが、そもそもセルロースが難分解性である理由を考えないと、問題の解決にはつながりません。セルロースの分子は、同じグルコースの重合体であるデンプンとは異なり、直鎖状であり、しかもそれらが集まって結晶のような強固な構造を取ります。それが、難分解性の理由なのであれば、その構造を何とかする方法を考えなくてはいけません。
Q:25億年ほど前からラン藻による酸素放出が始まって酸素濃度は上昇し、20~10億年前の間は緩やかに増加していたが、10~4億年前の間では急激に増加している。これは10億年ほど前に、海水中で酸素が飽和し、大気中に出ていったからだと考える。一方で、二酸化炭素濃度に関して、シアノバクテリアが出現したのは約30億年前だが、CO2濃度が急激に減少しているのは20~10億年前の間であり、この間にあった真核藻類の光合成による寄与も考えられる。また、グラフ上、25億年ほど前の酸素濃度の急上昇と当時のCO2濃度変化では対応が見られない、これは二酸化炭素が大気中に酸素に比べて多く存在していたからだろう。
A:これは、グラフの読み取り問題の選択肢のような感じですね。一つ一つが悪いとは思いませんが、全体として論理的な流れを形成していません。起承転結が必要とは限りませんが、科学的レポートに論理の流れは重要です。
Q:陸上植物が現れたことにより、酸素濃度が急上昇したことを習った。その原因として、①生物が化石化して地中に炭素が保存されたこと、②植物が大型化したことにより生物内に蓄積されている炭素が増えたことという2点を習った。ではなぜそれまでにも生物は死んでいるはずなのに、この時期に多く化石化がされたのかが気になった。そもそも動物の骨に比べて、植物は化石として残りにくい。水中に生息していた藻類などは固い構造を持っておらず、更に残りにくいだろう。そう考えると、セルロースを伴って植物が大型化したことにより、水中の藻類よりも化石としても残りやすくなったのではないかと考えた。つまり、化石化したことも大型化したことに付随して起きた現象なのではないかと思った。ここでは授業内で考えたときと同じように、動物が誕生した時期は考慮しなかった。脊椎動物が登場したのは5億年ほど前である。授業プリントの5億年前に着目すると、10億年前に比べて酸素濃度の傾きが大きくなっているように思う。このことから、炭素の固定を更に急速に進めたのは脊椎動物など分解されずに化石として残りやすい生物が誕生したことなのではないかと考えた。
A:考え方は面白いし、よいと思うのですが、化石として残らなかった場合でも、地層に封じ込められてしまえば、生態系の物質循環から隔離されます。化石として残ることの意味をもう少し厳密に考える必要があるように思いました。
Q:The lecture on photosynthesis research and environmental responses introduces me the relationships between plant biology and global environmental systems. This broad perspective on photosynthesis research is essential for climate change and food security.
Temporal Scales in Photosynthesis: One refreshing section of the lecture was the emphasis on temporal scales in photosynthesis research. Understanding photosynthetic processes requires consideration of events occurring in picoseconds, such as photon absorption, to evolutionary changes spanning millions of years. This multi-scale approach is crucial because it allows researchers to connect rapid biochemical reactions with long-term adaptations and evolutionary strategies. This holistic view fosters a deeper appreciation for the complexity and dynamism of photosynthesis.
Genetic Information on Photosynthesis: As for me, the integration of genetic and genomic information into photosynthesis research was another highlight. Advances in genomics through transcriptomics and proteomics have launched a revolution in our understanding of plant biology. Also, these tools enable scientists to map gene expression patterns and protein functions comprehensively, providing insights into how plants respond to environmental stresses at the molecular level. This knowledge is vital for developing genetically modified crops that can withstand adverse conditions and enhance agricultural productivity.
Discussion: Personally, the lecture brings up my interest in the nature of scientific research. The convergence of biology, chemistry, and physics in studying photosynthesis highlights the necessity of a collaborative approach to solving complex problems. Moreover, it lights up my curiosity about the potential applications of photosynthesis research in addressing global challenges, particularly in sustainable energy and climate resilience.
A:The contents of the report is occupied with your impression of my lecture. It is necessary to put scientific logic to your report in the case of my lecture.
Q:今回の授業では、地球の誕生から現在に至るまでの二酸化炭素濃度と酸素濃度の変化について学びました。生命が誕生する前は二酸化炭素濃度が高く、酸素濃度が低かったが、植物の誕生によって、酸素濃度と二酸化炭素濃度が逆転したことがわかりました。この逆転の原因として、藍藻などの微生物による光合成が大きく寄与していることが示唆されています。今回の授業スライドの世界のクロロフィル濃度を示すマップを見ると、南半球よりも北半球の方が濃度が高いことが分かります。この原因について考察してみました。まず、藍藻の生育に適した水温と日照条件が挙げられます。藍藻は涼しい水温を好み、十分な日照を必要とします。したがって、北側のより高緯度地域では、これらの条件がより整っていることが考えられます。 次に、栄養塩の供給が考えられます。藍藻は窒素やリンなどの栄養塩が豊富な環境を好みます。北側の方が南側よりも栄養塩の供給源が豊富である可能性があります。これは、人口密度が高く、工場の排水などによる栄養塩の供給が南側よりも多いことが考察できます。最後に、水の停滞が増殖を促進するという点が挙げられます。藍藻は水の停滞した場所で増殖しやすい傾向があります。北側の方が水の停滞する海域が広い可能性があり、これが藍藻の増殖に促進しているかもしれません。以上のことから、北半球が南半球よりも藍藻の生息地として有利であると考えられます。
A:これだと、三つの可能性を列挙しただけで、論理的な展開が今一つ感じられません。中では、2番目の栄養塩について、北半球の人口密度が高いことに言及している点は論理的な展開になっているので、全体としても、そのような論理展開が感じられるようなレポートにしてください。
Q:植物にとって光はエネルギー源にもストレス源にもなり得るということから、どこを境界線としてストレスと捉えられるようになるのか興味を持った。これまでの経験から必要以上の強光はストレスになり生育に影響すると考えていたが、連続明という環境もストレスになるのではないかと感じた。いくつかの論文によると連続明条件は光合成速度や光合成能力、光利用効率を低下させる、と報告されていた。その要因の一つには種固有の概日リズムを連続明によって乱してしまうから、ということがあるのではないかと考えたが、その場合固有のリズムとは異なるリズムで明暗サイクルをかけることとどちらの方がストレスとしては大きくなるのか、疑問に思った。種により影響は様々だと思うが、私はある程度の暗期の長さが存在することが重要だという考えから後者の方がストレスは小さいのではないかと考えている。また、これまで目を通してきた様々な論文の中で連続明条件下で培養しているものと明暗サイクル下で培養しているものが混在していることが気になっていた。光環境以外の条件について生育を比較するような内容の研究の場合、前提とする光についての培養条件が異なる結果同士は安易に比較できるものではないと改めて感じた。
A:これは、全体としては悪くないと思います。また、最後の結論もその通りだと思います。最初の「いくつかの論文によると」という部分には、必ず引用文献の書誌情報をつけるようにしてください。
Q:ノムラモミジという春夏の1週間から3か月ほどのみ紅葉するモミジについて考察する。一般にモミジは光の少ない時期に光合成から得られるエネルギーよりも呼吸で消費するエネルギーが多くなった場合に落葉する。その際に葉緑体が分解されるまでの時期に植物の組織を壊さないようにアントシアニンが生成され、赤くなる。そのため、一見、夏は光が多く紅葉する時期ではないと考えられる。夏に紅葉する理由としては光阻害による影響であると考えられる。光が過剰であると、光合成で利用しきれないエネルギーによって光合成能力が低下するものである。光阻害が理由で夏に紅葉するとすると、光からエネルギーを取り出しやすいか、光化学系の速度が遅いという2つの可能性が考えられる。前者については光電効果による物理的な特性のため考えにくい。後者については酵素活性などの生化学的な特性が影響すると考えられる。したがって、このノムラモミジは光化学系の速度が遅く、春夏の光で光阻害を受けるため光合成を分解すると考察できる。一方で秋に緑色の葉をつけているため、弱い光環境でも光合成と呼吸のエネルギー収支のバランスが保たれていると考えられる。その理由については、酵素活性などの生化学的な特性の影響などで、呼吸速度が遅いことが考えられる。
A:ノムラモミジは個体差も大きく、気象条件によってもその葉の色は変化するようなので、一般論を議論するのが難しいかもしれませんが、一定の前提のもとに考察することはレポートの題材として面白いと思います。その際に、新芽が赤い植物は他にも比較的多くみられるので、そのような植物との対比は考察に必要なのではないかと思います。もう一点、栽培植物の場合、人間の選択によって維持されている可能性は、常に考慮する必要があるでしょう。あと、光合成における光の吸収は、光電効果ではありません。
Q:今回の授業では、海洋への鉄散布の話があった。海洋に鉄をまくと、硝酸や二酸化炭素の濃度は減少し、藻類は増えるが、課題として、「大量の鉄を、広い海にまき続けなければならなくて、現実的ではない」という話があった。私はそれをうけて、他に「持続的に鉄を海洋に提供する方法」を考えた。その結果、①人工林を手入れする ②川から鉄の錯体をまくという2つの方法が考えられた。まず前提として、鉄散布の意義とどのように運ばれるかを確認する(参考文献1)。
・植物が利用できる鉄は二価の鉄イオン(酸化した三価の鉄イオンは沈殿を形成するため、植物は利用できない)
・自然界では、フルボ酸という腐植酸と土壌中の二価鉄イオンが結びつく(フルボ酸鉄(錯体)を形成して、山→川→海と運ばれる)
また、現状としてなぜ鉄をまかなければならないかということを確認した。鉄をまかなければならなくなったのは、ダムや河川の改修工事、手入れの行き届かなくなった人工林の増加により、このシステムが機能しなくなっていることが原因である。またその対応として、使い捨てカイロの中身を丸めた「鉄炭だんご」で鉄イオンを供給している例があるという(参考文献1)。
ここで、課題となっているのは、「広い海に鉄をまかなければならない→持続可能ではない」ということである。そこで、この課題を解決するために、3つの施策を考えた。①原因のダムや工事した川を元に戻す。②手入れの行き届かなくなった人工林を、手入れする。③川からフルボ酸をまく。それぞれについて詳しく考えると、以下のようになった。
①原因のダムや工事した川を元に戻す(人間の生活を考えると、現実的に不可能)。②手入れの行き届かなくなった人工林を、手入れする(どのように人材を確保するかという問題は発生するが、手入れをすることは可能→手入れをするための機械の開発)。③川からフルボ酸をまく(海という膨大な広さにまかなくて良いので、その点ではメリット(機械でまけば)→フルボ酸は微量しか生成することが出来ない→他の錯体を用いて散布する(ヘモグロビン・ミオグロビン・P450酵素・ヘモシアニン・フェレドキシンなど)(参考文献2))
よって結論として、②手入れの行き届かなくなった人工林を手入れする③川からフルボ酸以外の鉄の錯体を散布するの2つの方法で、持続的に鉄を海洋に散布することが出来るのではないか。
参考文献:1.JFSジャパン・フォー・サステナビリティ,「キーワードは「鉄」~鉄イオンが拓く海の持続可能性~」,https://www.japanfs.org/ja/news/archives/news_id032903.html,参照2024年5月25日、2.嘉納克仁,「錯体の例」,http://kp.bunri-u.ac.jp/kph04/2_sakutaiex.pdf,参照2024年5月25日
A:参考文献1は、自然保護を考えるサイトとしては良いかもしれませんが、科学的な事実として鵜呑みにすることは避けた方がよいと思います。海洋環境で鉄が栄養塩の律速段階となる可能性があるのは確かですが、講義で紹介したように、沿岸域ではそれは必ずしも当てはまりません。また、1トンの鉄を海に入れることに、何も入れないことがの対照実験として適切かどうか、という点も考えて欲しいと思います。WEB上で情報を検索することは極めて簡単になっていますから、今後求められる能力は、それらの情報を批判的に検証する力だと思います。
Q:植物にとって光は生育に必要であることに関連して、種子には光発芽するものと暗発芽するものが存在する。光発芽は、光が当たることで胚のフィトクロムが変化しジベレリンを合成して、種子に蓄えられたデンプンが糖に分解されることで発芽に必要なエネルギーを得る方法である。暗発芽は光が当たらなくともフィトクロムが活性化されジベレリンを合成することができる。この光の有無は何によって決められているのか疑問に思う。発芽に必要な条件は温度、空気、水分と知られており、これらは環境によって大幅に変化するものである。光が強すぎると植物のストレス源になると言われているが、他の発芽に必要な条件も過剰であったり少なすぎたりするとストレスになると思われる。環境が整っておらずフィトクロムの活性化に条件が満たされていないため、光によってそれを補っていると考えられる。暗発芽の種子に光を当てると発芽の効率が落ちることからも、発芽における光というのは補助的なものであると考えてよいと思われる。
参考文献:https://www.try-it.jp/chapters-15371/sections-15413/lessons-15414/point-3/、https://tohokuseed.co.jp/planting/hikarihatuga.html
A:日本語としての問題がまず目につきます。レポートが科学的なものになっているかどうか以前の問題として、書いた後に見直して、平仄があった文章にしてください。
Q:今回の授業で時間スケールの大気の変化を学んだ。その一つに二酸化炭素の変化があった。授業では陸上植物が木に炭素を蓄えることで大気中の二酸化炭素濃度が減るという話を聞いた。ここで新たな植物が出現することは何かしら大気組成に影響を与える、または大気組成の変化に影響されて新たな植物が出現するのではないかと考えた。そこで授業の年表には細かく書かれていなかった、800万年前と7000万年前の二酸化炭素濃度の変化について調べた(参考1)。資料によればC4植物が出現した800 万年前、被子植物が出現した 7000万年前でも二酸化炭素濃度の低下が見られた。それぞれの植物の光合成の特徴を比較する。まず7000万年前の被子植物の一つ前に栄えていた植物は裸子植物である。裸子植物は被子植物に比べてペルオキシソーム内のカタラーゼが少ないため被子植物に比べて光呼吸で二酸化炭素が発生しやすい。当時の環境は現在よりも温暖であったと考えられるため光呼吸は盛んであったと推察できる。被子植物の登場によって光呼吸で生じる二酸化炭素が減り、濃度の低下が見られたと考える。また800 万年前は森林から草原にC4植物が出現した。C4植物もC3植物に比べて低い二酸化炭素濃度でも二酸化炭素を濃縮することによって光合成を行える特徴がある。これに関してもC4植物が草原など新たなニッチを広げたことで植物量が増え、二酸化炭素濃度が下がったと考えられる。このように新たな植物が出現することで効率の良い二酸化炭素の吸収法を獲得し、二酸化炭素濃度に影響を与えていると考える。
参考:「地球46億年史には「全球凍結」時代も【脱炭素社会への「本質」理解 第6回】」, https://chematels.com/article/claudxuj71ol60bybochw7j64.図は(出所:横山祐典著『地球46億年気候大変動』を参考に編集部作成された)
A:「C4植物が草原など新たなニッチを広げたことで植物量が増え」という部分が気になりました。これだと、草原になる前は裸地であったようにとれますが、実際には、草食動物の出現により植物が食べられて草原が生じ、その草原により適応したC4植物がそこで優先するようになった、と考えるのが自然だと思います。
Q:本講義内では、植物の環境応答について、順化、適応など様々な時間単位で考えることについて触れられた。環境の変化と言うと、木漏れ日による秒単位の光環境変化から、地球規模による大規模で長期的な環境変化などが思い浮かばれる。しばしば、古生物学的な研究において、過去大規模絶滅が生じた時に、どのように植物が生き残ったかを調査したものが注目されているが、数少ない化石調査によるものや系統学的な推定によるものが主流と言える。できれば、リアルタイムに植物が急激な環境の変化に対して、どのように対応しているかを知る方法はないかと考えた。
そこで、ふと思いついたのが、不幸な過去ではあるが、100年以内で地域単位で植物が全滅した例が、日本では存在していることに気づいた。原子爆弾である。原子爆弾では、中心地から同心円状に被害が拡大し、中心部に近いほど地面がめくれる程破壊され、放射物質による汚染も大きい。当然、生存していた植物は皆無であると考えられる。記憶では、100年は植物が生えないと言われてたそうだが、それよりも早い期間で植物が戻ってきたそうだ。非常に厳しい環境であること、また多少の年月を要したことを考えると、単に他の場所から風や虫によって運ばれたものが根を下ろした、というものではなさそうである。寧ろ、被害の軽かった地域で生き残った(順化した)個体が、円の外側から攻めるようにして次第に中心部に進出(適応)したのではないかと考えるのが、妥当なのではないかと考えた。
放射線による影響が植物に対してどのように、またどの程度影響を与えるのかが不明であり、また植物単体だけではなく、相互作用する他の生物に対しての影響の程度など様々な項目を調査する必要があるが、例えば、生存年数の長い樹木に対して、中心地からの距離に対して、適当な項目について比較する方法があるのではないかと考えられる。古い文献から、事件の前後で見られる植物の比較から、初期に適応した植物は何かを絞り込むことも研究を進める上では有益であると思われる。また、広島、長崎(チェルノブイリ)など事件が起きた場所間で比較することで何かしらの共通点が見られる可能性もある。決して明るいテーマではないが、現代の不穏な社会情勢を鑑みると、生物学研究者がこのような視点から科学的に警鐘を鳴らすこともできるのではないかと考えられる。
A:「生き残った(順化した)」、「進出(適応)」という括弧の内外の対応は、生物学的には不適切だと思います。適応という言葉は、日常用語では広い意味に使われますが、生物学的には、世代と共に遺伝子が変化していくことによりより適応度の高いものが生き残っていく過程を指すことが多いでしょう。また、単に生き残るだけでは、何らかの変化が必要だったかどうかわからないので、純かという言葉を使うのは適切ではありません。また、高校で生物を全くとっていなければ別ですが、生物基礎だけでも取っていれば、一次遷移と二次遷移の違いを勉強しているはずです。そのような知識を含めて考察することが望まれます。
Q:今回の授業において地球規模でのクロロフィル濃度を見てみると、北半球の夏ではロシア北部の北極海ではクロロフィル濃度が高いことがわかった。また、北半球の冬、南半球の夏では南極大陸の沿岸付近でクロロフィル濃度が高いことが見て取れる。これはなぜかについて考察を行う。これは、光環境と栄養塩の豊富さによるものであると考える。まず光環境であるが、これは両極に存在する白夜などが原因となっているのだろう。光の当たる時間が多いために藻類の活性が上がり繁茂しているのだろう。栄養塩の豊かさについては、極付近は冬季に海水温が低くなりすぎるため、藻類が生えなくなってしまう。そのため、冬季の間に栄養塩が蓄積され、非常に方法な状態になると思われる。その状態のまま海水温が上昇していくことで藻類の生育可能な温度域になり、藻類が繁茂すると考えられる。
A:きちんと考えていて悪くはないのですが、前半で光環境と栄養塩で説明していたはずなのが、最後の一文では光が温度にすり替わってしまっています。書いた後に、一度読み直して自分の文章を確認するとよいでしょう。