植物生理生化学特論 第6回講義
呼吸・進化と光合成
第6回の講義では、呼吸と光合成の代謝て気相と作用と、研究室内の変異による順化応答変異株の研究例について解説しました。以下に寄せられたレポートとそれに対するコメントを載せておきます。
Q:維持呼吸速度が温度上昇に伴い上昇しているのに対し、構成呼吸速度は温度に影響されないことが講義中で示されていた。構成呼吸が温度上昇で変化しないのは、植物体生存のために細胞の維持が優先されているためであると考えられる。呼吸速度は維持呼吸と構成呼吸の和で示されていたが、シアン耐性回路による影響はどちらに含まれているのか疑問に思った。シアン耐性回路がATPを産生しない呼吸経路であり、ATPの余剰が軽減できる点をふまえると、温度上昇によって代謝が活発になるとシアン耐性回路の呼吸割合が大きくなると考えられる。温度上昇で呼吸速度が変わらない構成呼吸に対し、維持呼吸速度は温度と共に呼吸速度の上昇がみられるため、維持呼吸速度の上昇はシアン耐性回路の割合増加による影響を受けているのではないかと考えた。シアン耐性回路を阻害した状態で同様に維持呼吸速度を計測できれば、温度が上昇しても維持呼吸速度の変動が少ない図が得られるのではないか。
A:言おうとしていることはわかりますが、内容がやや行ったり来たりしているので、日本語をもう少し整理するとぐっと読みやすくなると思います。
Q:講義内では適者生存について同じ光条件下でグルコースの添加の有無で、シアノバクテリアがWS型かWL型になるかを調べることで再現している研究が紹介された。この点について、グルコース付加の条件を継代ごとに変えることで細胞はどちらの型による場合が多いのかを疑問を持った。実験ではグルコースを付加して培養を続けることでWS型が、付加しないとWLが大きな割合を占めるように適者生存が再現された。これはシアノバクテリアがその環境に適応する過程を代を重ねるなかで観察している。これを適者生存によって型がどちらか一方に寄らない段階でグルコースの条件を変えることで、シアノバクテリアにおける適応が同じ条件下で代を重ねることで起こる現象であることを確認する。また、この実験でシアノバクテリアにおいてWL型とWS型の適者生存が起こる際のグルコース濃度について、濃度をいくつかに分けて実験することで、適応が起こる条件が淘汰される型では生存が難しいような厳しい条件によって引き起こされることを示す実験を考え、こうした小進化が通常では起こらず、従来の細胞では生存に困難が生じる場合のみ発生することを実験的に確かめる。
A:これも最初の問題設定であるはずの「グルコース付加の条件を継代ごとに変えることで細胞はどちらの型による場合が多いのかを疑問を持った。」の部分の日本語がありまりよくないので、わかりにくいですね。一度書いた後に、日本語をちょっと読み直すだけでも、格段に人に読みやすい文章にできるはずです。また、最後の方の「小進化が通常では起こらず」の「通常」というのはあいまいな単語なので、きちんと定義する必要があると思います。
Q:Synechocystis sp. PCC 6803のΔpmgA株が光混合栄養条件下で死滅する理由が気になったため、考察する。まず、ΔpmgA株の性質を調べてみると、他に、強光下での培養で生育阻害を受ける、野生株と比べて強光下での光化学系Ⅱの量子収率が高い(強光であまり低下しない)、野生株と比べて強光下で光化学系Ⅰの量が多い(強光であまり減少しない)という性質があった。また、強光下では、野生株は光合成活性を低下させる応答を行うことで阻害が防がれるとする考えがあった。以上のことから、ΔpmgA株の阻害は、光化学系Ⅱでの電子伝達の抑制を起こせないことに起因するものであると予想する。光合成生物において致死的な影響を与えるものとして、活性酸素は主要なものの一つである。光合成の電子伝達系では、主に光化学系Ⅰで酸素が電子を受け取ることによって活性酸素が生成される。よって、電子伝達系の電子伝達体が還元されている割合が高いことが、活性酸素の生成頻度を高めることが予想される。電子伝達系がより還元されるのは、光化学系Ⅱからプラストキノンへの電子伝達速度が高い場合が挙げられる。よって、光化学系Ⅱでの電子伝達速度が高まる強光下では、活性酸素発生のリスクが高くなるため、光化学系Ⅱの量子収率を低下させる仕組みが働くことでそのリスクが低減されるのだと考えられる。また、電子伝達系を還元する要素として、シアノバクテリアの場合は呼吸鎖からのプラストキノンへの電子流入が挙げられる。そこで、光混合栄養条件の場合を考えると、こちらの条件では呼吸基質となるグルコースが供給されるため、呼吸の速度が高くなり、プラストキノンプールが還元されると考えられる。このとき、野生株では光化学系Ⅱの電子伝達を抑制することによってプラストキノンプールの過還元を軽減し、Δpmg株ではこの軽減の仕組みが働かないのだろうと考えられる。このように、ΔpmgA株では強光と光混合栄養条件の両方で、活性酸素の発生を抑制できないことによる阻害を受けるものと考えられる。それから、ΔpmgA株では強光条件下で光化学系Ⅰ量があまり減少しないことに関しては、変異株においては強光下で系Ⅱ抑制による電子伝達系の過還元の抑制ができないため、それを補うように光化学系Ⅰの量を増加させることで電子伝達系を酸化させている、という説明が一応成り立つものと考える。
参考:園池先生の過去の東京農業大での講演のプレゼンテーションファイル https://www.nodai.ac.jp/teacher/symposium/pdf/2009/2009sonoike.pdf
A:これは、還元力過剰仮説ですね。この説の場合、還元力を消費する系、つまりカルビン回路の活性が上がる条件である高二酸化炭素濃度条件では阻害が軽減するはずなのですが、実際に実験してみると、むしろ阻害が増大していました。とすると、どのような仮説が考えられるでしょうか?
Q:昨年東京大学の発表した論文において、老化細胞の純培養法を確立し、その老化細胞のコロニーに対してレンチウイルスshRNAライブラリーを添加することで老化因子としてGLS1が発見された1)。この研究では老化細胞のコロニーにshRNAライブラリーを添加した際に形成したコロニーに対して遺伝子群の探索を行い、GLS1阻害が老化細胞を選択的に除去することが分かった。一方でこの実験系はネガティブスクリーニングであり、この研究チームは成功していたがかなり困難な実験であると考えられる。ポジティブスクリーニングかつガン抑制に関わるタンパク質の効率的な探索は他にないだろうか?個人的に考えた実験系としては、ガン細胞を静止期に誘導できるタンパク質をスクリーニングする実験系ではあるが、既知の静止期関連タンパク質を安定発現できる細胞株をまばらに播種し、shRNAライブラリーを添加することで静止期から脱して形成したコロニーに対して遺伝子群の探索を行えばポジティブスクリーニングとして成り立つと考える。一方でこの実験系は静止期に安定的に誘導できる細胞株をどのように培養し、アイソレーションも可能なのかという疑問は残る。Doxycycline誘導型プラスミドを用いれば細胞株の培養は可能だろうが、やはりアイソレーションまでは厳しいと考えられる。
1)老化細胞を選択的に除去するGLS1阻害剤が加齢現象・老年病・生活習慣病を改善させることを証明、https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00065.html
A:これは、講義のどの話にかかわるレポートなのでしょうか?話題自体は、老化細胞のスクリーニングでもよいのですが、講義で紹介したスクリーニングと対比させて議論するなど、講義に対するレポートというスタンスは保ってください。
Q:シアノバクテリアは自身のゲノムを複数持っているため、EMSなどで人為的に変異を入れようとしても全てのゲノムに変異が入らないことがある。致死な変異が全てのゲノムに入らないのは理解できるが、ナンセンスな変異が全てのゲノムに入るのは何故だろうか。8つのマルチコピーがあるとしたら、最初に変異が入ったゲノムDNAが多数派になっていく確率はかなり低いのではないか。考えられる可能性としては、1つは相同組み換えの際、変異が入ったDNAを鋳型としやすくする機構が存在する可能性、もう1つは、入ったナンセンス変異は全て相同組み換えの際に鋳型とされやすい配列であった可能性である。前者を調べる手法はあまり検討がつかないが、後者は継代培養した株とストックしておいた株のゲノムを比較して、入っていたナンセンス変異・遺伝子間領域の変異に関してそのDNA配列の柔軟性や結合力について調べてみたい。
A:これは、シアノバクテリアでの遺伝子破壊の手法の話でしょうか。そうであるとすれば、相同組換えを行なう際に、抗生物質耐性カセットを導入することと、そのカセットの数と耐性の間に正の相関があることが鍵になります。
Q:今回の講義を視聴して、実験室内進化を利用すれば任意の周期の体内時計を備えたシアノバクテリアの株を得ることができるのではないかと考えた。シアノバクテリアでは様々な周期の体内時計を備えた変異体が発見されている(Kondo et al., 1994)。そして外界の明暗サイクルの周期と同じ周期の体内時計を備えているシアノバクテリアは、異なる周期の体内時計を備えているシアノバクテリアと比べて適応度が高いことが知られている(Ouyang et al., 1998)。これらの知見を利用すれば、以下のような実験系によって任意の周期の体内時計を備えた株を得られるのではないかと考えた。まずシアノバクテリアを変異原で処理する。次に変異原で処理したシアノバクテリアを明暗サイクルの下で継代培養し続ける。このとき明暗サイクルの周期は、自分が得たい体内時計の周期にする。この条件では継代培養を続けると、外界の明暗サイクルの周期に近い体内時計を備えたシアノバクテリアが、他のシアノバクテリアを淘汰するため、望んだ周波数の体内時計を備えた株が得られると考えられる。この実験はシアノバクテリアの体内時計が外界の周期に合ったものに進化する過程を再現するという意味で面白いと考える。また外界の周期と体内時計の周期を合わせることで適応度が上がるのは、どの範囲の周期までなのかを調べられるという意味でも面白いと考える。例えば極端に短かすぎたり長すぎたりする周期の明暗サイクルの下では、周期に合った体内時計を備えた株よりも、明暗サイクルの周期に依存しない発現制御をした方が高い適応度になる可能性があると考えた。例として外界の周期を備えた時計タンパク質がつくり得ないという時計タンパク質の構造上の制約がある可能性が考えられる。このような場合は体内時計が外界の周期に合ったものに進化しない結果になると予想している。ただしこの実験では仮に外界の周期に合わないシアノバクテリアが最終的に得られた条件があったとして、それが培養時間の不足によるものなのか、明暗サイクルの周期に依存しない発現制御をした方が高い適応度になる条件であるからなのかは判断が付かないことに注意が必要になると考えられる。
参考文献 (1) Kondo, Takao, et al. Circadian clock mutants of cyanobacteria. Science. (1994).(2) Ouyang, Yan, et al. Resonating circadian clocks enhance fitness in cyanobacteria. PNAS. (1998).
A:これは面白いアイデアだと思います。適応度の差が十分に大きければ、実際に面白い実験系になりそうですね。強いて言うと、遺伝子の破壊というon/off(質的な)変化によって、異なる概日リズムという量的な変化を連続的に生み出せるのか、という問題はあるように思います。
Q:今回は呼吸、光合成、エネルギーの関係について、そして培養中の表現型の変化について学んだ。今回授業中に提示されたSynechocystis以外にも、育成中になぜか表現型が変化してしまうシアノバクテリアは多く存在する。株によって走光性が真逆になっているほか、本来まったくもっていないはずの抗生物質耐性を獲得してしまうことなども起きる。また、継代培養によって野生株に変異が蓄積されていき、いつの間にか「野生株」が「野生株」としての働きをなしていないようにも考えられる。シアノバクテリアについて、他大学で出された論文を再現できないどころか同じ研究室で再現実験を行えないこともある。そのため、今一度「野生株」と示すことのできる野生株を定義するため、シアノバクテリアを研究している多くのラボで「野生株」として扱っている株を提出し、そのDNAを解析することでお互いの研究室間でどの程度の差が生じているかを確認し、再度「野生株」の定義を行う必要があると考える。
A:これはその通りなのですが、「お互いの研究室間でどの程度の差が生じているかを確認」することはできたとして、その後は、どのように「再度野生株の定義を行う」のかがよくわかりませんでした。
Q:今回の講義中での実験データでは実際の自然環境とおおよそ同じである19時~7時の太陽が昇っていない時間帯で植物の呼吸を確認しており、Spinaciaの呼吸速度は光合成をおこなわなくなった瞬間が最も高く、次第に低くなっていくというデータが取れている。ここで、このデータが呼吸基質の量に依存しているというデータが示されていたが、概日時計の影響も考慮してみるのもよいのではないかと考えた。主に動物で存在を知られている概日時計だが植物にも存在しており、時計遺伝子により制御されている。私は光合成と呼吸もこの概日リズムの影響を何かしら受けているのではないかと考える。確かめるための実験としては、Spinaciaを12時間ごとの明暗サイクルにより育成する。その後、明状態の時間を一気に24時間にして呼吸速度を観察する。時計遺伝子により呼吸や光合成が制御されている場合は、明状態が12時間続いた後は呼吸速度及び光合成量のいづれかもしくは両方が落ちていくことが考慮される。
A:きちんと考えられていますが、結論は、概日リズムの関与をフリーランの実験によって検証するということですから、ある意味で当たり前の実験になっている点が少しもったいない気がします。
Q:Hihara & Ikeuchi (1997)の実験結果のうち、グルコースの非添加条件下におけるWSとWLの割合が変化した結果について、これは必ずしも培養環境における「適者生存」の例とは言えないと考える。そもそも環境への適応度の違いがあるのであれば、未希釈時でもWLの比率は相対的に増加すると予測される。しかし本実験では希釈時にのみWLの割合が増加しており、この結果からは、WLがWSと比較して希釈という撹乱への耐久性が高いため結果的に割合が変化したという可能性も考えられる。よって培養環境における「適者生存」を示すのであれば、シアノバクテリアの増加に伴い培地の水溶液量を徐々に増やし、攪乱による影響を減らしつつも個体数密度を保つような実験系にすべきと考える。
A:おそらく、提案されているのは、連続培養実験でしょうね。希釈を繰り返すいわゆるバッチ培養に比べて、連続培養の実験の方が、余計な問題は生じないという点は、その通りだと思います。
Q:シアノバクテリアの小進化について、考えうる研究にもたらす影響について記述する。講義では、シアノバクテリアで環境応答にかかわる1遺伝子の変異が生じることで、変異株が野生株と駆逐して優占する小進化が観察された例について解説をしていただいたが、例のように表現型に明瞭な差が出ず変異に気づかないことも十分あり得るし、その場合に、コントロールとして扱えない可能性があるためシアノバクテリアの研究ではその都度、配列の解析が必要ではないかと考え、論文でどういった記載がされているのか調べた。結果として、論文に記載されているのはシアノバクテリアの株名のみが多かった。実際、マウスやシロイヌナズナでも表現型に出ない変異は想定されるため、小進化の線引きは表現型に明瞭な差が出るかどうかであり、そこがコントロールとして扱えるかどうかの判断基準となっていると考えた。
A:ここで述べられていることは案外重要で、たまにですが、「野生型」として使った株と、遺伝子破壊株の親株が異なったため、遺伝子破壊の影響ではなく、「野生化于/親株」の違いを見ていただけだった、という研究例が存在します。
Q:構成呼吸係数が温度に依らないのは、一定の物質を作るのに必要なエネルギーは温度によらず一定であるから、というお話があった。これに加えて構成呼吸係数が一定であるのは、成長の観点に立った時、時間的?成長的?制御が大事になってくるからではないかと思った。植物が必要な確保しなければならないエネルギー量を考えた際に、植物が生育し始めた頃には構成呼吸の方が維持呼吸よりも大きく、成長限界を迎えた際には構成呼吸よりも維持呼吸の方が大きくなるのではないかと考えた。すなわち構成呼吸と維持呼吸量の分配は成長段階に応じて時間的な制御を受けることとなる。この時維持呼吸は植物体が大きくなればなるほど必要量が増えるので、他の化学反応と同じように温度上昇に伴って大きくなると考えた。一方で構成呼吸は成長に伴って必要量が減少するため、温度ではなく成長に関連するホルモンの分泌量など他の因子による調整を受ける方が重要なので温度依存性がないのではないかと思った。
A:題材は非常に独自の視点があってよいと思います。ただ、ロジックとして、「他の因子による調節を受ける」ので「温度依存性がない」というところのつながりが理解できませんでした。調節を受けることによってある条件と別の条件で異なる反応速度を示すことは、それぞれの条件で温度を変化させたときに反応速度が変わるかどうかとは独立の事象であるように思われます。
Q:構成呼吸と維持呼吸について考えた。呼吸速度と光合成速度の関係式において、維持呼吸は光合成に依存しないとして要素に組み込まれていたが、それのみを利用した場合、日焼けなどの外部刺激により失われていく細胞の置換頻度の変化に関係する呼吸量に関して、構成呼吸の計測に要素として含まれる可能性が残ってしまうため、成長と外界からの刺激による細胞の損傷が完全に比例しない限り定数の決定に支障が出てしまうはずである。この点において明確化をするのであれば構成呼吸と維持呼吸とは独立した評価が必要であり、その測定には種としての成長の限界を迎え、種子などの形での個体そのものの維持以外を目的とした栄養利用等がなくなった植物の呼吸について測定するといったことでデータを増やすことが必要と考えた。またその場合には光合成量や乾燥重量と同じように、表面積を重視した変数が必要となると予想される。
A:よく考えていますね。そもそも、構成呼吸、維持呼吸という分類自体が、かなり恣意的なものですから、それを具体的な生理的メカニズムに当てはめる際には注意が必要です。最後の一文は、何やら面白そうなのですが、なぜそのように予想したのか、ぱっとわかりませんでした。もう少し説明が欲しいところです。
Q:本講義では呼吸と光合成の関係、および研究室レベルで確認できたシアノバクテリアの進化について学んだ。世代を重ねる必要があるとはいえ、シアノバクテリアの繊毛による運動性の程度の変化や、講義で挙げられていた強光への耐性獲得とグルコース存在下での致死的影響など、研究室で行われる世代交代のレベルで小進化と呼べるような遺伝子変異が確認できる点が気になったため、この変異の起こる理由について考察した。そもそも微生物の細胞分裂時における遺伝子変異の頻度は、各遺伝子あたり10-7-10-8となっているが、研究として培養されている場合は微生物の個体数自体が大量に存在するため、遺伝子変異そのものが起きても不思議ではない。(1)本来遺伝子に変異があった場合でも、特定の変異が起こった個体がそのまま生存し、数を増やして集団として成り立つ可能性は低い。しかし変異が起こった個体が、その環境により適応したものであるなら、個体数を伸ばし、集団として確立する。例としては薬剤耐性菌であり、耐性を持つ菌が優先的に生存するため、継続した薬剤使用環境下でそのような菌が発生しやすい。これを踏まえて研究室での小進化が多数確認される理由として、本講義で挙げられていた強光下というシアノバクテリアにとっての制限条件が、WL3株のような強光に耐性を持つ個体の発生を助けていると考えられる。また研究室で実験生物として使用される以上、微生物を捕食するプレデターがおらず、たとえ変異が起こり、逃走のための移動能力が著しく低下したとしても、それは制限要因にならないという点も、変異の蓄積と集団内での個体数増加の一因となっていると考えられる。
(1)微生物遺伝学I,池田 庸之助,化学と生物1965,3巻7号
A:きちんとした論理展開になっています。発想自体はある意味で当たり前の所に落ち着いているように思いますが、このテーマの場合はしょうがないかもしれません。
Q:シアン耐性回路の比較について考える。ホウレンソウとクワイズモの呼吸速度を比較すると、ホウレンソウは減少してからある値に収束しているのに対し、クワイズモはある値でおおよそ一定である。早い時間と遅い時間のホウレンソウ及びクワイズモのシアン耐性経路とシトクロム経路の吸収速度値を見ると、ホウレンソウは時間の経過によりシアン耐性経路の値がほぼなくなりシトクロム経路の値が増加しているのに対し、クワイズモは時間の経過によりシアン耐性経路の値がほぼなくなり同様のシトクロム経路の値を示している。この2つのグラフより、シアン耐性経路は一定となる呼吸速度と特定の時間(計測している時間)の呼吸速度の差に依存しているのではないかと考える。そのため、時間が経過し、ほぼ一定の値になると、シアン耐性経路の値がなくなるのではないかと考える。ホウレンソウはその差が大きく、クワイズモはその差が小さいことで、シアン耐性経路に関してもホウレンソウは大きく、クワイズモは小さいという結果に表れている。これを実験的に証明するためには細かい時間周期で連続的にシアン耐性経路の呼吸速度を測定することが必要である。その結果をグラフ化することで確かめることができる。また、シトクロム経路に関しては一定値が速い時間における呼吸速度になると考えられる。ホウレンソウとクワイズモの呼吸速度を比較すると、ホウレンソウは時間の経過によりシトクロム経路の呼吸速度が大きく増加しているが、クワイズモは時間の経過によりシトクロム経路の呼吸速度が変化していない。これは、シトクロム経路のエネルギーがシトクロム経路のエネルギーに変換されるのではないかと考える。ホウレンソウのシトクロム経路の呼吸速度が大きくなり、クロム経路の呼吸速度がほぼ変化していないことに矛盾していない。これを実験的に証明するためには、同様に短い時間周期で連続的にシアン耐性経路とシトクロム経路の呼吸速度を測定することが必要である。その結果をグラフ化することで確かめることができる。
A:独自の考えによって論理を展開していてよいと思います。ただ、「シトクロム経路のエネルギーがシトクロム経路のエネルギーに変換される」といった部分は、意味が分かりませんでした。もしかしたら、「エネルギーの変換」ではなく、「エネルギー供給経路の転換」と言いたいのでしょうか?