植物生理生化学特論 第3回講義

発光測定

第回の講義では、解説しました。以下に寄せられたレポートとそれに対するコメントを載せておきます。


Q:深海生物は発光する生物が多い印象があるが、ルシフェリンやルシフェラーゼがそれぞれ異なるということは収斂進化で発光機能を獲得したと考えられる。光の届かない深海において被食リスクを高めてしまう発光機能をあえて利用しているということは、発光機能の獲得に何かしらのメリットがあると考えられる。まず考えられるのは、同種間でのコミュニケーションである。深海生物には希少な種が多く、生殖相手を見つけるのが困難であるため、特定波長の発光を利用することで同種間でコミュニケーションを取っている可能性が挙げられる。次に考えられるのが海面からの光との同化である。海の表層にいる魚は、腹部の光沢を利用して海面の光と同化することが出来るが、深海においても同じことが起きているのではないか。海面からの光はほとんどが海水に吸収され、深海に届くのは青色の弱い光である。そこで、青色に弱く発光することによって魚影を消すことが出来るのではないか。

A:2つの可能性を考えていてよいと思うのですが、せっかく後者の可能性について発光の色を議論しているのですから、前者についても色を考えて、それを合わせて考えれば、単に二つの可能性を考えた段階から、その可能性を論理的に議論できる段階に進めることができます。そのあたり、もう一工夫ですね。


Q:発現調節因子のスクリーニングについて考える。強光(HL)は弱光(LL)と比較し、光合成遺伝子の発現を抑制することができる。これに関係する発現調節因子を特定することは発現の抑制を応用するために必要であると考えられる。コスミドの遺伝子をトランスポゾンにより部分的に破壊し、抗生物質で選抜することにより遺伝子が破壊したコロニーのみが現れる。これに発光剤を添加し、HLあるいはLLにおける発光状態を見ることができる。この情報からHLでも発光する遺伝子やLLでも発光しない遺伝子を特定し、発現調節因子を特定することができる。このスクリーニングにより、ある光の強さに対して発現する遺伝子を特定することができる。つまり、発現が必要である場合に、どの遺伝子に注目すればよいのかが分かる。それに応じて、遺伝子組み換えなどを行い、発現のしやすい遺伝子をそろえることができれば、用途に応じた活用の幅が広がると考える。このとき、遺伝子組み換えによる発現状態の変化を定量化するには、再び同じスクリーニングを行えばよい。また、発現が不要である場合も遺伝子組み換えにより用途に応じて遺伝子を変化させ、活用しやすくすることができる。スクリーニングによる遺伝子情報の確認方法も同様である。また、光の強さにより注目すべき遺伝子が変化する。HLとLLと言っても、2つのギャップの大小やより多くの光の強さによる比較により注目するべき遺伝子が変化することが考えられる。そのため、ある2つの光の強さの比較では特徴のある遺伝子(HLでも発現する、あるいは、LLでも発現しない)でない遺伝子であっても、他の光の強さでは特徴のある遺伝子になることが考えられる。よって、すべての遺伝子はある光の強さで特徴のある遺伝子になり得るのではないかと考える。このとき、特徴のある遺伝子数が光の強さにより平均的であるのか、光の強さにより大きく変化するのかということについて大変興味深い。これを明らかにするための実験として、光の強さを一定量ずつ変化させて、それぞれでスクリーニングを行うということが挙げられる。しかし、これは精度を高めようとするほど回数が多くなってしまうという課題点がある。スクリーニングを自動で行えるシステムを作る。初めから終わりまで自動でスクリーニングを行うことができれば、人の負担がなく、スクリーニングを行うことができる。この結果を自動で記録することにより、光の強さによる影響を確認することができるのではないかと考える。

A:これは、述べていることは悪いわけではないのですが、前から読んでいっても、最終的に何を結論したいのかがずっと読み取れない文章になっています。文学作品であれば、それでもかまわないし、場合によってはその方がよい場合もあると思いますが、科学的な文章の場合は、最初に問題設定を明らかにして、そこから論理を展開して最終的にその問題に対する解答が明らかになる、といったロジカルな構成をとることが望まれます。もし、この文章の問題設定が、全体の2/3を過ぎたところで現れる「特徴のある遺伝子数が光の強さにより平均的であるのか、光の強さにより大きく変化するのか」であるならば、それより前の文章はほとんど必要なくなります。


Q:今回の講義では蛍光測定法と応用例が紹介された。その中で蛍光の利用として蛍光顕微鏡による画像化とその解析が挙げられた。その1つとしてPI及びFDAによるLife-Deadアッセイとその問題点について考察する。PI及びFDAはそれぞれPropidium Iodide, Fluorescein diacetate の略である。図1(園池注:図はここでは省略します)にPI及びFDAの構造式を示す[1][2]。PIは主に死細胞の核を染色する。染色様式はエチジウムブロマイドと同じく塩基対間への分子のインターカレーションであり、二本鎖DNAとの結合によって赤色蛍光を発する。そのため染色のためには分子が核に到達する必要がある。ここで、PIの細胞に対する最も重要な物性は膜不透過性である。生細胞における細胞膜に対して非透過であることから生細胞では分子が核に移行できず、細胞を染色できないが、死細胞では細胞膜の構造が崩れることで分子が浸入し、核を染めることができる。また、植物細胞において細胞壁に対しては膜透過性を有するので細胞の活性によらず、細胞壁は染色されることも知られている[2][3]。FDAは主に生細胞の核、細胞質を染色する。細胞内に取り込まれた分子が細胞内のエステラーゼによって加水分解されることで蛍光物質であるフルオレセインとなる[4]。これら2つの染色物質をどちらもサンプルに導入し共染色することで蛍光観察によってサンプルの細胞の生死を確認することができる。また、フローサイトメーターなどに応用することでより定量的に細胞の生死を判別することができる。この共染色の応用例としては、ある試薬や操作の細胞毒性の評価が挙げられる。処理群とコントロール群における細胞生存率を算出することで試薬や操作の細胞に対する毒性を定量的に評価することが可能である。これらを植物組織に応用する際に問題になると考えられるのは、クロロフィルなど植物組織内の自家蛍光である。クロロフィルの蛍光波長は680nmであり、これはPIの617nmと近い値である[1]。そのため、PIによる染色時に得られた画像がPIの蛍光のものであるか自家蛍光によるものであるか確認する必要がある。実際にはそれらの違いは大きいため、解析に影響することは考えにくいが、得られる蛍光画像に自家蛍光が含まれ鮮明なデータが得られない可能性が考えられる。これに対して、より狭い範囲を通すバンドパスフィルターを用いることでPI由来の蛍光のみをフィルターで通すことを考える。このとき、バンドパスフィルターやカットオフフィルターにおいても617nmと680nmに中心を持つ2つのピークを完全に分けることは難しいことが予想される。そこで、有効であると考えるのが植物組織の透明化である。具体的には2015年以発表されたClearSeeによって植物細胞内のクロロフィルを除去することで自家蛍光そのものをなくし観察の精度を上げる手法である[5]。ただし、報告された論文におけるサンプルがシロイヌナズナであることや、クロロフィルを除去することの生理学的な意味を理解し、その他の植物に応用可能であるか、また除去による他機能への影響の有無についても確認して使用することが必要だと考える。
参考文献
[1] BIO RAD, “ヨウ化プロピジウム(PI)溶液,” [オンライン]. Available: https://www.bio-rad.com/ja-jp/product/propidium-iodide-solution?ID=N1VMSGE8Z. [アクセス日: 2022-04-30].
[2] K. Jones et al., “Live-cell fluorescence imaging to investigate the dynamics of plant cell death during infection by the rice blast fungus Magnaporthe oryzae,” BMC Plant Bioligy, 2016.
[3] R&D SYSTEM, “Propidium Iodide Cell Viability Flow Cytometry Protocol,” [オンライン]. Available: https://www.rndsystems.com/resources/protocols/flow-cytometry-protocol-analysis-cell-viability-using-propidium-iodide.
[4] DOJINDO製品カタログ, “生細胞染色用色素,” [オンライン]. Available: https://www.dojindo.co.jp/products/C396/. [アクセス日: 2022-03-16].
[5] D. Kurihara, Y. Mizuta, Y. Sato, T. Higashiyama., “ClearSee: a rapid optical clearing reagent for whole-plant fluorescence imaging,” Development, 2015.

A:このレポートも悪いわけではないのですが、頭から半分以上は調べた結果を述べているだけなので、この講義のレポートとしては評価の対象にはなりません。自家蛍光の除去の部分は、おそらく自分で考えた結果なのだと思いますので、ここは評価の対象になります。フィルターについては、講義で光学フィルターの種類について解説しているので、「バンドパスフィルターやカットオフフィルター」といったあいまいな記述ではなく、この場合には、どの種類のフィルターを使うのが一番適切なのかをきちんと考えてほしいと思います。


Q:ルシフェリン・ルシフェラーゼを利用して、発現調節因子(調節遺伝子)をスクリーニングする手法を理解することができなかった。紹介された実験の手法では、A:発現が調節される対象の遺伝子(psa)がルシフェリン遺伝子に置き換えられたシアノバクテリアの株、B:コスミドライブラリー(シアノバクテリアの全ゲノムを分割した遺伝情報を含むプラスミドベクター)にトランスポゾンを作用させてランダムに遺伝子を破壊したもの、を用意して、Bを用いてAを形質転換し、ベクターが導入された細胞を選別して、異なる条件で生育させた場合のルシフェリン遺伝子(=元々の遺伝子)の発現量を比較することで、対象の遺伝子の発現を促進/抑制する遺伝子を特定していた。ここで調節遺伝子を特定するための理屈として、調節遺伝子が破壊されたベクターが導入された細胞では、その調節遺伝子が発現しないので、特定条件下におけるルシフェリン遺伝子の発現調節に不全が生じるという考えを使っていると考えられた。しかし、シアノバクテリアのゲノム自体に調節遺伝子が含まれているはずなので、たとえ遺伝子が破壊されたベクターが導入されようと、元の細胞のゲノムが機能している限り、調節遺伝子の発現量(および調節遺伝子によるルシフェリンの発現調節)に不全をきたさないはずだと考えられる。では、形質転換させる対象が目的の調節遺伝子を含まない株であった場合を考えると、今度は調節遺伝子が破壊されたベクターが導入された細胞だけでなく、調節遺伝子を含まないベクターが導入された細胞全てが発現に不全をきたしてしまう事になる。この場合、使用したすべてのコスミドそれぞれが、シアノバクテリアの全ゲノムを含んでいるとすれば問題は解消されるが、使用した株が調節遺伝子が破壊された変異体だった場合でも、そもそもシアノバクテリアでなかった場合でも、このような実験を行うコンセプトが不明になるので、やはりどこかで自分がこの実験について正しく理解していない部分があるのだと思う。

A:誤解の原因がわかりました。大腸菌でよくやる形質転換のイメージから、形質転換を「プラスミドを持たせる」ことだと思っているのだと思います。実際にここでやっているのは相同組換えです。ゲノムと相同組換えが起これば、当然もともとあった遺伝子は破壊されることになることは理解できると思います。


Q:現在私の研究室ではWBにおけるタンパク質抽出の際にRIPA bufferを用いている。遠心分離によって細胞膜を崩壊させたのち、プロテアーゼ阻害剤を添加したRIPA bufferを加えることによってタンパク質を可溶化させている。一方でこの方法以外に効率の良いタンパク質抽出法があるのか疑問に感じた。研究室の隈本先生に伺うと、SDSを含んだ1×SBを培養済dishに少量そのまま添加することによって、細胞を溶かし、タンパク質のみを抽出する方法を教えていただいた。実際WBを試すと、明らかにタンパク質量が多く検知された。この方法では先述のRIPA bufferによる抽出とは異なり、細胞膜などの沈殿物を含む可能性が低くなること、また格段に時間短縮になることなどのメリットが考えられる。一方でタンパク質濃度を揃えた条件で電気泳動をしたりしないため、タンパク質抽出時の細胞数が等しいことを必要条件にしなければいけないというデメリットも考えられる。よってsiRNAによるノックダウン効率をWBで観察するだけであったりすれば効率が良いように感じられる。

A:できたら、教えてもらった方法について「結果としてどちらがよかったか」というだけでなく、バッファーの組成を比較することにより、何が違いの原因になっていたと考えられるのか、あるいは逆に、手法の違いによりなぜ異なるバッファーが使われているのか、という点を自分の頭で考える習慣をつけると、今後の実験に応用する場合に役立つと思います。


Q:今回の授業では、FRETに最も興味を持った。FRETはタンパク質同士の結合を試験する手法の1つである。昨年自分は酵母ツーハイブリッド法によってタンパク質の結合を試験したが、レポーター遺伝子のリーク発現が問題となった。評価には青白選択を用いたが、リーク発現の影響を強く受け、定量的な比較もできない手法であった。FRETは、結果が蛍光波長で定量的に比較することができ、レポーター遺伝子を介さないのでリーク発現の影響を受けない。また2つのプラスミドで完結するため、専用のゲノムを持つ酵母を用いるY2H法とは違い、あらゆる生物の体内で実験可能である。もしも蛍光が弱くあまり観測できなかったとしても、菌体を破砕しても融合タンパクがあれば蛍光が観測できる。

A:これだと、FRETの特徴を挙げただけなのであまりロジカルな感じがしませんね。できるだけ問題設定をきちんとして、論理的に解答を導くようなレポートを書くようにしてください。


Q:今回の講義を視聴して、蛍光分子の蛍光強度が低温になるほど大きくなるならば、蛍光分子は細胞内の温度測定に有用なのではないかと考えた。蛍光レポーターを発現量が温度によって変化しにくい恒常発現プロモーターの制御下に置き、蛍光レポーターが細胞内に均一に存在する状態にできれば、蛍光強度を増減させる主要な因子を温度にすることができると考えた。また蛍光レポーターを利用した温度測定が実現できるのであれば、FRETを用いることでS/N比を上げられるのではないかと考えた。蛍光における光エネルギーの吸収と発光の過程では、温度が高いほど熱として失われるエネルギーが増加するため、蛍光強度が減少する。FRETでは光エネルギーの吸収と発光の過程が2回起こるため、温度依存的に放散される熱エネルギーを増幅することができるのではないかと考えた。蛍光分子による細胞内温度の測定技術は実際に開発されているようである。ただし実際に開発された測定方法では蛍光分子の構造変化などを利用して、温度依存的な蛍光強度の変化を実現している(Arai et al., 2015; Vu et al., 2021)。蛍光分子は一般に温度依存的に蛍光強度が変化する性質を備えているのにも関わらず、このような工夫を凝らしているということは、一般的な蛍光分子が備えている温度に対する蛍光強度の変化率では、細胞内の温度を測定するために不十分であることを推察させる。また温度に対する蛍光強度の変化率が小さい場合、プロテアソームの局在による蛍光分子の分解速度の違いや、pHによる蛍光分子の構造の違いが、蛍光強度により強く反映され、温度が蛍光強度として反映されているとは言えない状態になると予想される。したがって今回のレポートで考案したように、熱エネルギーの放散のみを利用して細胞内の温度を測定することは、温度変化による蛍光強度の変化率が小さすぎるために難しいのではないかと結論付けた。
参考文献:Arai, Satoshi, et al. Mitochondria-targeted fluorescent thermometer monitors intracellular temperature gradient. Chemical Communications. (2015).
Vu, Cong Quang, et al. A highly-sensitive genetically encoded temperature indicator exploiting a temperature-responsive elastin-like polypeptide. Scientific Reports, (2021).

A:多くの色素の蛍光強度の温度依存性は、液体窒素温度まで冷やすと蛍光収率が室温の数倍になる、といったオーダーなので、ここで「推察」しているように、小さな温度変化を検出することは難しいと思います。でもきちんと考えていてよいと思います。


Q:化学発光によるWestern検出の説明のところで、複雑な有機化合物が簡単な化合物へと変換された際の化学変化によって生じるエネルギーが光となって出るとありますが、例えばタンパク質が分解されてアミノ酸などになる際に生じるエネルギーも光となる可能性はあるのでしょうか。生じるエネルギーは熱エネルギーとなって放出されることもあると思いますが、効率よく光エネルギーだけとして放出するために熱エネルギーを必要としない環境にすることで化学変化によって生じるエネルギーは光エネルギーのみとして放出させることができるのではないかと考えました。蛍光の研究への応用としてGFPの利用や、DNA量の定量とありましたが、例えば、GFPの転写が阻害されることによって蛍光が弱くなるなどのことを読み取ることで、転写条件を変えてそれぞれのGFPを見ることで転写条件のどの部分が阻害剤として働いているか、もしくは促進剤として働いているかという事象が、蛍光測定により判明することができるのではないかと考えました。

A:タンパク質がアミノ酸になる際の放出エネルギーはそれほど大きくないので、それで発光するのは難しいでしょうね。Westernの発光検出の場合には、窒素分子にまで分解していますから、ある程度のエネルギーが得られます。また、多くのルシフェリン・ルシフェラーゼの反応のように、酸化反応を使っても比較的大きなエネルギーが得られます。全体として、科学的な文章としては、表現がややふわっとしていますね。もう少し、きちんと論理的に文章を書きましょう。また「熱エネルギーを必要としない環境にする」というのが、具体的に何を意味しているのかが分かりませんでした。


Q:今回は生物発光と蛍光の違い、蛍光フィルターについて学んだ。FRETに関して、授業で紹介されていた方法はタンパク質に蛍光タンパクを融合させ、あるタンパクとあるタンパクが結合した際に蛍光タンパクを二回励起光が通ることによって蛍光波長が長波長としてかえってくることで結合したかどうかを見極める手法であった。これは酵母を用いた酵母ツーハイブリッド法に非常に似ており、むしろ蛍光で見る分ツーハイブリッド法よりも優秀であるといえる。酵母にはツーハイブリッド法の他にも、ワンハイブリッド法というタンパク質とDNAの結合能があるかを見るための手法がある。そこで同じようなことをワンハイブリッド法にも応用できないか?と考えた。具体的にはタンパク質側には同じように蛍光タンパクを融合させ、一方のDNAには末端に蛍光を発することのできるマイクロビーズのようなものを結合させる。その後タンパクの精製液をDNA側に流し、DNAとタンパクが結合した場合には蛍光タンパクとマイクロビーズを通った励起光が長波長でかえってくるといった仕組みである。これにより目的のDNAとタンパクが結合しているかどうかを蛍光でチェクすることができるため膨大なwetの検証をスキップすることができる利点があると考える。ただし問題として、FRETでは蛍光タンパク同士の物理的距離によって蛍光の強度が変化してしまうという欠点があるため、ワンハイ型においても同様の懸念が生じると考える。対策としてはビーズを大きくするほか、調べたい対象のDNAの配列をより厳密にすることでタンパクとの結合をより強力かつ密接にできると考える。

A:面白そうなのですが、文章からだけでは、考えている実験系の仕組みを完全にイメージすることができませんでした。全く新しいシステムを知らない相手に伝えるためには、もう少し丁寧な説明が必要かもしれませんね。


Q:【生物発光と化学発光】の講義において、発現調節因子のスクリーニングの説明の際にin vivoで実験を行っていましたが、どの程度の割合で発現調節因子が壊れている株が発生するのか気になりました。1回の試行により発光の強さが異なる変異株を発見できるのならよいのですが、数10回かかるとなると、in vivoでは時間がかかりすぎると思いました。そのため、in vitroにより実験することで一回の試験にかかるコストがin vivoの時と比較すると高くなりますが、短時間で結果が出る上に、細胞内環境を自分で都合の良いように調整することができることから適しているのではないかと考えました。

A:これも、in vitroの実験をどのように行うことを想定しているのか、in vitroの場合には、どの程度の頻度で「あたり」があると考えるのか、といった点をもう少し説明した方がよいと思います。「どの程度の割合で発現調節因子が壊れている株が発生するのか」という部分も、複数の意味に撮れるように思います。「ゲノムにランダムに変異を入れた場合に、その変異が発現調節因子に落ちる確率」という意味でしょうか。


Q:今回の講義では発光の種類をその原理別に分類、整理し、蛍光を用いた実験を組む際の注意点や測定に用いるフィルターの特徴などを学習した。私は現在シアノバクテリアにおける、ある概日時計因子タンパク質についての研究を計画している。そのタンパク質は構造にRNA結合ドメインを持っており、RNAの編集に関与することで概日遺伝子発現に貢献していることが予想される。端的にいうとあるタンパク質のRNA標的探索とその後の作用経路解明が目的である。このテーマに対し講義内で紹介されたFRETが応用できるのではないかと考え考察を行う。標的RNAが無事に特定できた場合、おそらくin vivoでの作用と他概日時計因子の振動を比較することが必要になってくる。そこでFRET法をもちいてタンパク質-RNA間の相互作用を発光波長のリズムで解析することができるのではないだろうか。このデザインの場合、やはり問題になるのはRNAに結合させる標識か。タンパク質に比べて分解されやすいため蛍光標識の選択は慎重に行う必要がある。あるいは小さな蛍光体に結合して蛍光を増強する配列である蛍光RNAアプタマー(https://numon.pdbj.org/mom/229?l=ja)を標的RNA配列の前後に導入することで、蛍光標識同様の効果を得ることができないだろうか。

A:内容は悪くないと思うので、「標識か」「できないだろうか」といった言いっぱなしの表現ではなく、科学的に論理を進める文章にしてみてください。


Q:ルシフェラーゼを用いた解析に関する注意点の一つとして時間分解能が触れられていたが、今回はこのデメリットを克服する方法を考える。ここで私は、ルシフフェラーゼ遺伝子の下流にルシフェラーゼに特異的な抗体の導入を考えた。時間分解能に関するデメリットの要因はルシフェラーゼの分解速度とあったが、つまり目的遺伝子の非発現下でルシフェラーゼが反応しなくなれば良いのである。ルシフェラーゼに特異的な抗体を導入した場合、その抗体の親和性がルシフェリンよりも高ければ、中和抗体と同様に抗体とルシフェラーゼが結合することで、生物発光が阻害される。よってルシフェラーゼ遺伝子の下流にルシフェリンよりも親和性の高い抗体を導入することで、目的遺伝子発現と同時に産生されたルシフェラーゼがルシフェリンと反応した直後、結合部位のルシフェリンと抗体が入れ替わるため発光が止まる。ここで産生されるルシフェラーゼと抗体のモル比を等しくすることで、時間当たりの目的遺伝子の発現量と生物発光量をより対応させ、時間分解能を向上させられると考える。ただし遺伝子発現の増加速度が低い場合、発光量の減少から過小評価してしまう可能性があるので注意する必要があると考える。

A:実現可能かどうかは別として、ユニークなアイデアで非常に良いと思います。最初の内は、考えうることを考えられるだけいろいろと考えてみることが重要です。


Q:蛍光測定の基礎について、自分の行っている実験と絡めて疑問を抱いた点があるため、それについて記述する。自分は実験で細胞壁をpi染色して共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察を行ったのだが、励起レーザーが488 nmの時と561 nmの時で得られた光の強度が異なることに気づいた。pi(ヨウ化プロピジウム)溶液は、最適な励起レーザーが488 nmまたは561 nmであり1、像自体に違いはなく光の強度のみが違いであると考えられる。そこで自分はその原因について考えた。自分は特にストークス効果が影響していると考えており、ストークスシフトが小さいと、蛍光検出の際に励起光との区別がつきにくく、蛍光検出時のバックグラウンドが大きくなってしまう2ため、バックグラウンドが大きく影響を与えているのではないかと考えた。自分の観察結果では励起光488 nmの時の方が強い光強度を示したので、488 nmの励起スペクトルに対するストークスシフトが561 nmの時と比べて小さいと考えられる。両励起波長におけるストークスシフトの検証については、吸収スペクトル、励起スペクトル、発光スペクトルをそれぞれ計測し、励起スペクトルのピークと発光スペクトルのピークの波長の差を求めればよいと考えられる。また、観察に際してはバックグラウンドが少ないストークスシフトが大きいものが最適であると考えられる。
1. BIO RAD ヨウ化プロピジウム(PI)溶液 https://www.bio-rad.com/ja-jp/product/propidium-iodide-solution?ID=N1VMSGE8Z 4年4月28日閲覧
2. Thermo Fisher SCIENTIFIC 初心者必見!蛍光プローブの基礎|知っておきたい!タンパク質実験あれこれ 第15回 https://www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/protein-basic15/ 4年4月28日閲覧

A:基本的に蛍光測定はストークスシフトが大きい方が楽なので、少し当たり前に感じられる結論かもしれませんね。むしろ、自分の使っている顕微鏡の光学フィルターがどうなっているのか、それをもっと最適化できないか、といった方向に考えた方が、自分なりのレポートになりますし、実際に自分の実験に役立たないとも限りません。


Q:ルシフェリンを用いた解析の注意点に細胞内環境によっては発光がルシフェリン量を反映しない可能性が指摘されていた。ここでウミホタルのルシフェリン、ルシフェラーゼを用いればこの問題は解決すると考えた。ウミホタルのルシフェリンの反応条件はルシフェリン、ルシフェラーゼ 、酸素のみであるため細胞内の他因子による影響を受けない。またウミホタルの場合、元来発光は細胞内ではなく海水にて起こるためウミホタルルシフェラーゼを培養中の対象細胞に付加することも容易ではないかと考えた。また時間分解能に関してルシフェラーゼの分解能が発現の減少よりも遅ければ意味がない、という話があった。ここで挿入するトランスポゾンをルシフェリンではなく、ルシフェリンールシフェラーゼ反応の阻害剤にすることを考えた。サンプル観察時に環境中にルシフェリン、ルシフェラーゼを用意しておき、発現時の生成物として阻害剤が生じれば蛍光の減少度合いで発現の強さを測ることができるのではないかと考えた。しかし、どのようにして発光の量を一定に維持するかに関しては問題が残る。

A:これも、自分なりのアイデアを出していて評価できます。ただ、阻害剤の場合も、その分解が遅ければ、発現の減少を追うことができないのは同じではないでしょうか。


Q:「蛍光測定の基礎」の映像内において光学フィルターの様々な種類について紹介があった。そこでその活用法において、実験への使用に留まらず街灯への利用について考えた。街灯による生物への影響は走光性を持つ昆虫などに留まらず、近年では鳥類の概日リズムの乱れによる繁殖の失敗などの影響が指摘されており、鳥類以外の生物種への未確認の被害が懸念されるとともに街灯の過剰な利用に異を唱える声も挙がっている。人間の目は黄色の波長を最も感じ取りやすいことや、可視光外の波長を踏まえ複数種を組み合わせた光学フィルターの導入を検討する必要があると考える。また街灯側においても近年ではLEDへの代替が進んでおり、それに伴って蛍光灯や水銀灯といった過去のものに比べ電気代が安価でありながら光度が増しているため、光学フィルターによる分光による光の減衰による明度不足による危険性も小さく抑えることが可能であり、また地域によって関係する生態系やそれに関連する報告に合わせて適宜フィルターの差し替えが可能なものに形状を統一することで、導入のハードルが下げられると考えられる。

A:独自の考え方を展開していてよいと思います。ただ、LEDに関して言えば、そもそもLED光源を適切に選択すれば特定の波長の光を出すことが可能ですから、光学フィルターを入れる必要性自体がなくなるのではないかと思います。


Q:本講義では生物発光と化学発光の事例とそれを用いた測定、および蛍光測定をする上で抑えるべき基礎を学んだ。このうち、生物発光を行う生物の持つルシフェリンおよびルシフェラーゼの構造が生物種によって異なる点が気になった。ルシフェリンは発光生物自身が生合成する場合と、捕食する餌を由来とする二種に大まかに別れ、ルシフェラーゼは各生物群が独自に、全く別のタンパク質を起源としてルシフェラーゼを生み出したとされている。(1)これらを利用することで、ルシフェリンを生合成する生物ならば、生合成にかかわる遺伝子配列の差異を比較することで、捕食する餌が由来ならばその餌の種類でグループ分けすることで、ルシフェラーゼは起源となるタンパク質の種類、ルシフェラーゼの合成にかかわる遺伝子配列の差異を見ることで、発光生物の分類をより正確に行うことができるのではないかと考えた。
(1)生物発光と進化 ルシフェリンの由来・ルシフェラーゼの起源,大場裕一;井上敏化学と生物,45巻,2007,10号

A:これも、アイデアが独自のものであるという点では評価できますが、分類というもののあり方をもう少し考える必要があると思います。分類によって系統関係を推定しようとする場合、個々の種が置かれた生態的地位による影響は少ない方がよいですよね。そうであれば、ルシフェリン・ルシフェラーゼの情報を分類に使うことは、余計な影響を導入しかねないように思います。