植物生理生化学特論 第13回講義

人工光合成

第13回の講義では、さまざまなタイプの人工光合成について紹介しました。


Q:今回の講義において、太陽電池や人工光合成の話があった。そこで、宇宙太陽光発電について考えてみた。現にプロジェクトとして存在するが、コストパフォーマンス、エネルギーの移送方法など難点は多い。そこで、なんの解決にもならないが、植物をモデルとした宇宙太陽光発電について述べる。今回は多くの人が知っているであろう「マリモ」をモデルとしたい。マリモは水の回転運動と上部のみに光が当たり光合成が起き、年月が経つにつれて丸くなるという性質を持つ(文献①)。地球全体を常にパネルなどで覆ってしまうことは必要な光を地上に伝わる光を阻害することになり、地球環境のバランスを崩してしまうことにつながる。しかし、マリモのように地球の回転に準拠した、ある時間にある場所にパネルを展開し、その影響を最小限に抑えられるのではないか。この方法ではパネルが鉛直上方にある時、暗く何もできないのではないかと考えられるが、隠れる間を休期とし、植物同様エネルギーを蓄える時間にすれば良いのでないか。今後人類は、常にエネルギーを使うのではなく、いつ効率よくエネルギーを使うのかを考えなければならないと考える。
①http://www.marimonokai.com/marimotoha/kyuuka.htm

A:宇宙太陽光発電であるならば、まずは、発電衛星の軌道をどのように設定するかを最初に考えないと、そもそもマリモ方式が必要なのかどうかがわかりません。確かに「地ky空前体を常にパネルなどで覆ってしまう」場合には、マリモ方式も考えなくてはいけないと思いますが、通常の宇宙太陽光発電では、そのようなことは想定されていないと思います。


Q:人工光合成に関する研究では、太陽光を利用したエネルギー変換効率の向上を目指す研究や生成産物の多様化など植物の光合成を模倣した様々な取り組みが行われている。こうした人工光合成の実用化に向けて将来的には実験室に留まらず、自然界で人工的に光合成を行うことを考えた際、エネルギー変換効率に加えて変動光下での光捕集効率にも注目する必要があると考える。実験室での一定光だけでなく、自然条件下で変動光に適応するため植物の光合成の光捕集を模倣した人工光合成で応用できる光捕集機能について考察した。変動する光環境下で光合成効率を維持するために陸上植物やシアノバクテリアは、葉の向きや葉緑体の運動、ステート遷移など様々な調節機構を持つ。人工光合成でも利用可能な波長領域を広げる研究は進んでいるが、変動光下では光吸収を担う装置の構造や向きを調節することで最適な光捕集に繋がると考える。太陽光パネルのようなパネル一枚あたりの表面積を大きくする方法ではなく、植物体のように上から光が満遍なく当たる葉の付き方である立体構造を模倣することで装置を小型化できる。更に、光強度に応じて光捕集を担う装置の向きや位置を調節することで光エネルギーの吸収量が最適化できるのではないかと考える。

A:植物の光合成における変動光の影響は、光合成の出力が光吸収の入力に追いつかないために起こります。一方で、物理反応は基本的に出力が入力にほぼ比例するという話をしたと思います。そのあたりをきちんと結びつけて考えましょう。


Q:今回の授業では光合成の反応系を模すことにより有機物や水素、アンモニアの合成を目指す人工光合成について学んだ。電子供与体と励起される色素、電子受容体を並べる光合成の反応系におけるそれぞれの役割を白金や酸化ルテニウムなどを利用することで実用化を目指しているとのことであった。その際に酸化末端部分は電子を四つ同時に用いる事が難しいなどの問題があるという事であった。そこで考えたのは、光合成に用いられているタンパクを大腸菌により合成し、それらを活用できないかという点である。しかし、この手法にも問題点はある。光合成に使われるタンパクや酵素を合成し一つの容器に入れたとて、正しい順番で電子伝達は起こらないのではないかという事。つまり、植物における光合成とは違い余計なエネルギーロスが生じやすそうまたは電子伝達が最終地点まで到達しにくいと考えられる。つまり、電子受容体を正しく順序で配置できる構造体が必要となってくると考えられる。

A:安定性に欠けるタンパク質を使わなくて済むという点が人工光合成の利点の一つなのですから、そこでタンパク質を持ってきてしまったら、結局は植物を使ったほうがよい、という話にもなりかねない気がします。


Q:人工光合成とは可視光線を用いて水を分解したり有機物を合成する技術のことである。本物の植物の光化学系をモデルに“人工光化学系“なるものの研究開発が進められているが、いずれも効率が低すぎるので実用には至っていない。しかしながら、光エネルギーを受容する「色素」、色素から電子を受け取る「電子受容体」、電子を失った「色素」に電子を渡す「電子供与体」の3つを並べて、可視光線によって電化分離状態を引き起こすことには成功している。さて、もし紫~赤のどの波長にも偏ることはなく、どの波長の可視光が来ても電子を流すことが出来れば、本物の植物の光化学系の効率を超えることが出来そうである。問題は、光を吸収したことによる発熱である。太陽光電池も発熱によってエネルギー変換効率が下がる。多くの人工光合成技術では、”人工光化学系“を水に浸しているので発熱による影響を下げることは出来るが、光の一部が水に吸収されてしまう。さらにもう一つの問題は、水を分解して得られる酸素である。発生した酸素が“人工光化学系”を酸化して、電子伝達が行えなくなってしまう可能性もある。よって、可視光線の全ての波を吸収できたとしても、その分だけ弊害も強まってしまうので、エネルギー変換効率は自然の光合成と同じ程度に落ち着くのではないだろうか。

A:少し論理の組み立てが雑然としていますね。前置きからスペクトルの話、そして発熱の話と発生した酸素の話がばらばらに出てくる感じがします。もし、変換効率がどうなるか、という点を結論にしたいのであれば、最初にそれを問題設定として明示し、「その変換効率に影響を与える要因として(1)スペクトル、(2)発熱、(3)酸素、という3つを考える」といった前置きのあとに論理を展開すれば、見通しの良いレポートになると思います。


Q:今回は人工光合成に関しての授業であった。光合成では糖が生成される。糖はアルコールの生成に用いられるが、植物を用いたお酒というのはあまり出回っていない。理由として考えられるのがアルコールの純度の低さなどがあげられる。人工光合成は光合成の効率は低いものの、糖の生成効率は挙げられることが考えられるで、今後改良が考えられる。

A:2文目と3文目の間には、かろうじて論理の片鱗が感じられますが、全体としては、レポートという感じではありませんね。


Q:今回の講義では人工光合成について学んだ。植物と同じく光エネルギーを用いて二酸化炭素と水から有機物を合成するものもあれば、水を水素と酸素に完全分解するような事例が挙げられる。特に後者は本多-藤嶋効果と呼ばれるもので、水中内で酸化チタン電極と白金電極を入れ、酸化チタン電極に光を照射すると水が分解されて酸素が発生する系だとを講義で紹介されていた。しかしながら、当時は注目を浴びたものもエネルギー変換効率が極めて悪く実用化には至らなかったという。例えば、前者のような植物と同じような光合成を人工的に発生させることができれば、二酸化炭素を固定できる上にエネルギーを産生できるため、環境面にも優しく非常に変換効率が良いようにも感じる。しかしながら、それが実現しない(されない)のは、人工光合成をしてまでエネルギーを作る必要があるのかということ問題が生じるからだと考える。現在では半導体を用いた色素増感型太陽電池などのような技術が発展はしているものもやはり効率の悪さが目立ってしまって実用化には程遠いと講義でも紹介があった。変換の際に生じるロスを最低限に留め、エネルギーを何らかの形で貯蔵できるようなシステムが存在すればある程度は解決できるのかもしれないが、やはり困難であると考える(それならば、むしろ人工光合成に頼らず植物を増やし、従来の既存の光合成に頼ったほうが遥かに二酸化炭素の固定も捗りそうである…。)

A:よく考えてはいますが、結論が「困難」で終わってしまうと、なんとなく消化不良ですね。突拍子もないアイデアでもよいので、その困難を突破する方策を提案して欲しいところです。


Q:講義では、人工光合成について扱った。人工光合成と呼ばれる分野の中でも、光エネルギーをもとに水を完全に分解して水素を生成する研究に対して、疑問を持った。なぜならば、講義で色素増感太陽光電池などが紹介されたが、もし水素を発生させることが目的ならば、一般的な太陽光電池で生じた電力で、水の電気分解を行えばよいのではないか、と思ったからである。また、水素の生成に需要があるならば、現在の技術レベルの太陽光電池であったとしても、水の電気分解による水素の生成に用いられているはずではないだろうかと考えた。まず、後者の疑問について考えた。現在用いられている水素の工業的な製法は、水蒸気メタン改質と呼ばれる方法で、メタンと水蒸気を金属触媒と共に500~1100℃の高温で反応させるものである。この方法は、(具体的な文献値を見つけることはできなかったが)一度に大量の水素を生成できることが利点であると考えられる。一方、太陽光発電による電力で大量の水素を電気分解によって生成しようとすると、太陽光発電のために広大な面積が必要になることが予想される。したがって、人工光合成による水素の生成における、実用化への最大の壁は、時間当たりの水素の生成効率にあると私は考える。

A:光を利用する場合の最大の問題点は、いつも面積ですね。その意味では、水蒸気メタン改質と太陽電池を比較すると、どうしても水蒸気メタン改質に軍配が上がってしまうかもしれません。ただ、メガソーラーが市民権を得てくると、少し変化があるかもしれませんね。


Q:今回の講義では人工光合成に関する話題であった。その概念図では水分子から酸素と水素が発生するが、この技術が今後実用化されたらどのような影響を与えるのかを考えていく。まず何よりの利点は酸素と水素が光を当てるだけで産生できることである。水素はそれ自体を燃やすだけでなく酸素とともに燃料電池として発電できるエネルギー源となるので、光からエネルギーを取り出せるために需要は高くなると予想できる。特に燃料電池は水素と酸素が同時に発生するこのシステム上どちらも獲得できるのでとても相性がいい。しかしこれらは混合ガスとなると爆発的な燃焼を起こすようになる性質があり、同時に発生する以上は混合する危険性が高まる。また輸送のために液化しようとも融点が-200℃を下回り、通常の燃料用のガスと比べて極端に低いのでむしろそこにエネルギーを使用してしまうことでその性質上全体的なエネルギー効率が低下することにつながることが考えられる。エネルギーの獲得という面では気体の性質上課題が多いが、電気分解で生成していた気体が容易に獲得できる点でも実用性は大きく高まる。また光合成は電子の受け渡しの反応であり、酸素と水素だけにとどまらないので早い実用化のみを目指すのであれば三大人工光合成の他の二つに焦点を絞る、特に有機物の合成などは大きな需要が見込まれるのでそこに絞ることがいいと考えられる。しかし様々な技術の研究なしでは様々なアイデアを想起させることができないので実用化が遠いものでも研究する意思が大事である。

A:アメリカはしばらく前に水素社会化を目指す方向でエネルギー省などの予算配分先も変わりましたが、水素は貯蔵・運搬が必ずしも簡単ではないので、そこが問題ですね。水素吸蔵合金というのがありますが、重いのが玉に瑕です。


Q:今回の講義では人工光合成について学んだ。たしかに光エネルギーから水を分解し、酸素を得られるという反応は人類にとって非常に有用である。これを実現させるためには酸化還元反応を電子伝達により効率良く起こす必要がある。それを実現するためには酸化チタンのような光エネルギーによって酸化還元反応を効率よく起こす物質が必要であると考えた。

A:もう少し考えてレポートを書いて欲しいところです。


Q:酸化チタンは紫外線でのみ電荷分離がおこるという話から、紫外線を減衰させるオゾン層の外ならどうなるか、という疑問を持った。オゾン層を通過し地表に到達する紫外線は、紫外線の中でも波長が長いものであり、よりエネルギーの高い短波長の紫外線を反応させれば、エネルギー効率に希望が持てるのではないか。wikipedia「太陽光」「太陽放射」によると、地表に到達する紫外線は90%カットされており、オゾン層の上での発電の効率は単純計算で10倍である。しかし、太陽放射に含まれる紫外線はそもそも約7%しかない。やはり、太陽放射の約47%を占める可視光線での人工光合成を可能にする技術を開発した方が、エネルギー効率は高いと予想できる。

A:これだけだと問題設定の段階ですね。ここから、やはり可視光を使わなくては、と引き返すのではなく、何でもよいので、紫外光を使って引き合うような技術を考えてみてください。


Q:今回の講義では人工光合成について学んだ。人工光合成では水を酸素と水素イオンと電子に分解する。このときの酸素が活性酸素がなり酸化的に他の物質を破壊するため、扱いにくいとのことであった。しかし何でも酸化してしまうということはそれだけ大きなエネルギーを持っているということだと考えられる。このエネルギーも使える形のエネルギーに変える方法も同時に考えたらよいのではないであろうか。そのような人工光合成の機構を構築できれば、植物よりも多くのエネルギーを獲得できる可能性があるうえ、生産するエネルギー量も調節でき、よいのではないかと考えられる。

A:これも、発想はよいのですが、その後の展開が、抽象論で終わっているので、科学的なレポートの感じがしません。何でもよいので「活性酸素をむしろ積極的にこのように使えば」といった感じの提案をしてほしいところです。