植物生理生化学特論 第5回講義
発光測定の方法
第5回の講義では、発光測定の原理を、発光の分類や特徴、その応用例を解説し、ついでに光学フィルターについても説明しました。
Q:今回の講義では、ホタルの発光など生物発光について少し興味を持ったので関連することを書くことにした。講義では、ルシフェリン(基質)がルシフェラーゼ(酵素)によって分子状酸素で酸化され発光するとならった。ホタル繋がりで発光する生物「ホタルイカ」と「ウミホタル」も同様な仕組みで発光しているのか。ほたるいかミュージアムのHPによると、「ホタルイカの発光は、発光物質(ルシフェリン)に発光酵素(ルシフェラーゼ)が作用することによっておこります。」と記されている。また、ウミホタルの発光能力のHPでは、「海中に射出された酵素、基質は海水中の酸素と反応して波長460nmの青色光が発生します。」と記されている。生物によってルシフェリンやルシフェラーゼの構造が異なることはあるが、このような細胞内での発光と細胞外での発光の違いが生じた経緯について考察してみた。そもそも、ウミホタルは甲殻類でミジンコなどの仲間であり、ミジンコはかがくナビによると、「魚が住めないような酸素濃度が低い湖にもミジンコはいる。」と記されている。つまり、ミジンコの仲間であるウミホタルも自身の細胞内にはそれほど多くの酸素を保持していない可能性は高く、ルシフェリンの酸化を細胞内で出来ないから細胞外で行っているのではないと考えられる。また、淡水に生息するミジンコは発光せず、海水に生息するウミホタルが発光する理由として考えられる外敵から身を守るという側面から考えても細胞外での発光は効率的といえるかもしれない。
ほたるいかミュージアム http://www.hotaruikamuseum.com/museum/knowledges.htm
ウミホタルの発光能力 http://umiho.net/sow/umiho_light.html
かがくなび http://www.kagakunavi.jp/booknavi/show/25
A:できたら、レポートは一つの論理でパシッと議論をまとめてほしいと思います。この場合、論点は細胞内と細胞外の発光の違いでしょうから、酸素に関しては、細胞内と細胞外の酸素濃度の差を議論してほしいところです。また、外敵の話も、最後の一行だけでは論理にならないので、もう少し複数の文で、一つ一つ論理を展開してください。
Q:今回の授業では生物発光と蛍光について学んだ。研究室でも発光・蛍光遺伝子を組み込む事は日常的に使われているように思う(自分は遺伝学実験殆ど行っていないが)。そこで、今回は発光遺伝子と蛍光遺伝子、それぞれの選択基準について考察する。ある遺伝子Aと同じプロモーターに蛍光・発光遺伝子を付与した時、遺伝子Aの発現について、発光遺伝子は授業で学んだようにプロモーターの発現を確認することができる。また、ある程度の発現量についても光量から推測できる。では、この機能は蛍光遺伝子では代用できないのか。この問いに対し想定される問題は2つある。まず蛍光は励起光強度にある程度依存する事が考えられ、同様に数々のフィルターにより分光する必要がある。分光の際に光量が減衰する可能性も高い。つまり、発現量以外に数々の変数が関連しており、蛍光量による定量化は不可能でなくとも難しいと思われる。 ただしフィルターの特性、光量等を緻密に測定した場合定量が不可能とは言い切れず、これらの条件をクリアした場合には様々な課題がクリアできるかもしれない。例えば互いの発光による影響や、励起光域が含まれない擬似的な明条件下での発現量測定などである。
A:発光測定と蛍光測定の損得を比較していて、よいと思います。ただ、これだけだと、発光測定の方がよいという結論になってしまいそうです。世の中で、蛍光測定もあちこちで使われている以上、蛍光のメリットもあるはずなので、そのあたりまで議論できれば申し分ありません。
Q:抗原抗体反応を用いた物質検出方法を勉強する度に毎回思うのですが、何でこんなに手間のかかる手順を踏む必要があるんでしょうか。今回教わったECLについては、検出したいタンパク質に対してまず抗体(第一抗体)を結合させて、また抗体(第二抗体)を結合させて、ようやく過酸化水素+ルミノールを結合させて中間体をつくってエンハンサーで増幅させて、ようやくフィルムでの検出が可能となります。同じ方法を用いるにしても、少なくとも第一抗体と第二抗体、過酸化水素+ルミノールは予め結合させておけば手間は一回で済みます。確かにただ結合させただけでは分子量も大きくなりますし、タンパク質と結合しにくくなる可能性があります。しかしそのまま二種の抗体と反応物質を使うのではなく、人工的に分子量を小さくした特異的な検出物質を作成することでこの問題は解消されます。ただ、このような方法が用いられなかった理由としては、今までの方法であれば検出したいタンパク質によって抗体の組み合わせを変えることで検出が可能になっていたものが、専用の検出物質を用いるとなるとECLで検出可能なタンパク質の数だけ検出物質も必要になります。それは非常にコストがかかることが予想されます。手間とコストの間をとった結果が今日の検出法につながっていると考えられます。
(参考)http://www.toray-research.co.jp/new_bunseki/pdf/TRC114(27-30).pdf#search='%EF%BC%A5%EF%BC%A3%EF%BC%AC+%E7%99%BA%E5%85%89'
A:やはり、最後の部分は、なぜそもそも一次抗体と二次抗体が必要か、という根本的なところですから、もう少しきちんと議論が欲しいところです。あと、手間とコスト、という対比になっていますが、たくさんのものを結合させるためには、コストだけでなく、膨大な手間がかかるわけですから、そのあたりも考える必要があるかと思います。
Q:授業中にいくつかの種類の蛍光タンパク質についてお話がありましたが、その中でも特に吸収のピーク波長と蛍光のピーク波長に大きな隔たりがある「ケイマ」という蛍光タンパク質に興味を持ちました。もしこれに類似した特徴を持った蛍光波長域がそれぞれ異なる蛍光タンパク質がみつかれば、様々なことに利用できるのではないかと考えます。例えば、吸収ピーク波長が近く、かつ蛍光ピーク波長の異なるいくつかのタンパク質を使用して、発現を調べたいいくつかのタンパク質に、それぞれ対応して発現するようにしておけば、ある一定の光を当てることで発現を一度に調べることができると思います。一度の測定で数種類のタンパク質発現の有無と、その発現部位を調べることができるのが利点ですが、前提として発現を見たいタンパク質の数だけ蛍光タンパク質が必要で、かつそれぞれの蛍光タンパク質の蛍光波長域があまり被らないことが望ましいと考えられるので、現実的にはそこまで多くのタンパク質の発現の様子を一度に見られる訳でなく、せいぜい数種類になるかと思います。
A:これは、もっともなレポートなのですが、そのまま講義の趣旨なので、もう一息独自のアイデアが欲しいところですね。
Q:今回の講義では蛍光の原理と研究への応用が扱われた。蛍光の応用として、シアノバクテリアの光化学系量比調節遺伝子破壊株(high PSI type)を選別するのにフローサイトメトリー(FCM)が役に立つのではないかと考えたので、以下にその考察内容を示す。一般にFCMでは細胞を蛍光色素で標識する。シアノバクテリアにはクロロフィルが存在するので、クロロフィル蛍光を利用すれば特に標識の必要はない。また、FCMでは細胞1つ1つの蛍光を測定できるので、クロロフィル蛍光の蛍光強度を測れば細胞当たりのクロロフィル量を測定できる。シアノバクテリアは強光にさらすと光化学系I(PSI)量が減少し、細胞当たりのクロロフィル濃度も減少する。光化学系量比調節遺伝子変異株の中には、このPSI減少を行えないもの(high PSI type)があり、それらは細胞当たりのクロロフィル濃度が野生株よりも高くなっている。よって、high PSI typeの変異株細胞ではクロロフィル蛍光強度が野生株(WT)よりも大きくなることが期待される。よって、以下に示す方法によりhigh PSI typeの変異株のみを多数の変異株の中から選別できると推測される。まず強光培養したWTと複数の変異株を用意し、WTをFCMにかけてクロロフィル蛍光強度を測定する。次に、変異株を全てFCMにかけ、WTよりも蛍光強度が大きくなった細胞とそうでない細胞をセルソーターで分取する。そして、WTよりも大きい蛍光強度を示した細胞群をさらに1細胞ごとにソーティング(セルソーターを使うか、希釈するかして行う)してそれらを培養し、光化学系量比調節に異常があるか否かを調べる。以上のようにFCMを利用すれば、目的の表現型を持つ(この場合はhigh PSI)遺伝子変異株の候補を絞り込むことができるだろう。
参考文献:BECKMAN COULTER サイトメトリードットコム FCMの原理入門講座
http://www.bc-cytometry.com/FCM/fcmprinciple.html (2013.05.17閲覧)
A:面白いアイデアだと思います。実験系としては、1細胞のソーティングができるのであれば、むしろランダムな突然変異を誘発した集団をスクリーニングする、といった手段をとる方が普通かもしれませんね。
Q:今回の講義では蛍光研究の応用例をいくつか教わった。その中で理研が発見したkaedeを用いて、葉緑体移動に関係した研究が新しく出来るのではないかと考えた。葉内の葉緑体は吸収する光量を調節する為に、弱光下では葉面を覆う様に配置されるが、強光下では壁面に縦に並ぶ様に配置される。[1] また、葉緑体には柵状組織と海綿状組織の2種類があり、これらは葉の内部で混在している。ここからkaedeを用いて、強光下で葉緑体が移動する際に柵状組織と海綿状組織でどの様な変化があるのかを、リニアにかつ可視化して見ることができると考えた。具体的な手法としては、どちらかの組織に赤色ラベルを、もう一方の組織に緑色ラベルを施した後、弱光下から強光下に移して変化を見るというものである。結果の予想としては、普段から効率的に光を吸収する柵状組織では移動が素早く顕著である一方で、海綿状組織では移動が遅く隠微であると考えられる。
[1] 「光合成とはなにか」 園池公毅 著 2010(第3刷) 講談社
参考URL:http://www.brain.riken.jp/bsinews/bsinews22/no22/research1.html
A:実際の実験がイメージできませんでしたが、これは葉緑体に発現させる、ということでしょうかね。基本的にKaedeは、光照射によって蛍光が変化するわけですから、植物自体の光応答を見ようとした場合には、かえって状況が複雑になってしまうようにも思います。