植物生理生化学特論 第4回講義
光合成の測定
第4回の講義では、蛍光タンパク質を利用した測定方法について少し話したのち、様々な光合成の測定方法について解説しました。
Q:今回の講義を聞き、私は様々な蛍光色素をもつ動物、たとえばクラゲなどの美しさに興味を抱きました。調べてみればまさに生命の神秘としか言えない光り方をしており、大変感動しました。そこで思ったのが、こんな色鮮やかに体を装飾する動物の蛍光色素を使って、テレビやモニターを再現することができるのかということです(蛍光なので暗室でしか使用できないでしょうが、映画館のスクリーンをプロジェクターによる投影ではなくスクリーンそのものを発光させて映像を作ることはできるのではないでしょうか)。普段私たちが使っているテレビは光の三原色である赤青緑の強弱の組み合わせで色を再現し画面を形成させています。画面を細かく分割し、その中に三原色それぞれの蛍光極大をもつ蛍光たんぱくを入れ、そのたんぱくに観測者の反対側からレーザー光を当てれば映像を映すことができるのではないでしょうか。そこで使用する蛍光たんぱくの候補として、講義の中でも話されたKeimaと、CFPいうたんぱくが挙げられます。この二つの励起波長は440nmでほぼ重なっており、蛍光波長はKeimaが620nm(赤)、CFPが480nm(青)となっています。さらにHyperという蛍光たんぱくは励起波長が420nm、蛍光波長が520nm(緑)となっており、この三つのたんぱく質それぞれを納めたセルををスクリーンに規則的に配置し、430nmのレーザー光を各セルに照準してあとはレーザーごとに強弱を調節すればブラウン管に似た原理でスクリーンに像を映すことができるのではないかと思います。
A:原理的には可能な感じですね。ただ、これだけ苦労してやるからには、何か付加価値がほしい所ですが・・・。
Q:今回の授業ではGFPの他にも様々な蛍光タンパクがあることを知った。遺伝子改変により人工的に作りだされたケイマはストークスシフトが長いということだったが、このようにストークスシフトが長い蛍光タンパクを遺伝子組み換えによって植物に発現させ、この蛍光タンパクとクロロフィルなどの光合成色素と複合体を形成するようにできれば、植物が光合成に利用できない波長の可視光や紫外光を利用することができるようになるのではないかと考えた。紫外光を吸収し青い蛍光を発するタンパクも開発されている。高エネルギーの紫外線を利用することができれば光合成の効率が上がり弱光環境でも生育できる大型の植物や光合成のみで生存できる光合成動物も生み出すことが可能である。しかし実際には、生体内で上手く複合体を形成させたうえで、さらにはFRETが起こるようにしなければならないため実現は難しいと考えられる。
参考:http://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/2009/04/post-6.html
A:面白いアイデアだと思います。また、これは技術的にはそれほど難しくないのではないかと思います。ただ、地上での太陽光に占める紫外線領域の光の割合はそれほど高くはありませんので、この方法によって光合成速度が高くなる割合はそれほど大きくないように思います。
Q:光合成で行われる反応経路はほとんどが、酵素活性により一段階ずつ反応し、様々な酵素活性により反応が進んで反応経路となる。自分が研究しているテーマも反応経路の解析なので、通ずる部分がある。では、この酵素活性が一段階ではなく、一気に二段階進行することはあるのだろうか。植物では、バイオトランスフォーメーションという二段階進行が確認されているが、無脊椎動物では未だ確認されていない。これが、確認されれば、様々な反応経路の研究の幅が広がるであろう。
A:講義との関連性があまり読み取れませんが・・・。
Q:光合成の測定について学んだ。酸素電極は陰極で酸素の還元が起こり、陽極では酸化が起こり、電流が流れる。電流は溶液中の酸素濃度に比例するため、光合成による酸素発生を測定できる。酸素電極を使えば、植物の日照時間と光合成の関係を調べることができると考えられる。例えば早朝と昼と夕方に植物の葉を採取し、各サンプルに対して酸素電極を用いて光合成による酸素発生を測定する。一日の中で光合成がもっとも活発に行われる時間を調べることができると考えられる。
A:それはそうなのですが、今回の講義では複数の光合成の測定方法を紹介しました。ある目的で実験を行う際に、その目的を達成するために一番よい方法をとる、ということは研究の基本です。光合成速度を測定するために、この場合、酸素電極が一番よい方法なのだろうか、ということをまず考える必要がありますね。
Q:今回の授業では光合成の測定法を学んだ。一般的に測定されることのは、地球上に多いC3植物およびC4植物がほとんどであり、CAM植物について取り扱っているものは少ないように思う。CAM植物は夜間にCO2を吸収し、日中に光合成を行う。そのため、授業で取り上げられた測定法で単純に測定するだけでは、光合成速度が測定できないのではないかと考えた。例えばオープンシステム、クローズドシステムでCO2の濃度変化を測定する場合、CAM植物に光を当てて光合成を行わせても、CO2濃度は変化しないことが考えられるからだ。ではどのようにすればCAM植物の光合成を測定できるだろうか。単純に暗所においたCAM植物のCO2吸収量を測定し、その分だけ光合成を行えるとすれば、光合成量は推定できるかもしれない。しかしこれでは速度までは測定できない。例えば、精密なpH測定器を利用し、葉にさしておくことでリンゴ酸の増減をpH値の増減で評価して呼吸速度を推定するといったことはできないのだろうか。
A:これは、きちんと考えているレポートですね。ただ、最後は、評論ではないので、「だろうか。」とオープンクエスチョンで終わるのではなく、「できると考える。」と言い切るか、あるいは、その疑問に自分で答える形で終わるレポートにしてほしい所です。