植物生理生化学特論 第11回講義
植物と水
第11回の講義では、植物にとっての水の重要性を説明したのち、植物と水の関係をめぐるいくつかの研究例について解説しました。
Q:植物体の葉が濡れると直後に気孔が閉鎖し、光合成速度も低下する。これは気孔が閉じることによって葉内の二酸化炭素濃度が低下し、その状況で光が当たることで光阻害が生じているためである。しかし、一方で、夏季晴れた日にシバに水を散布してもシバはダメージを受けているようには見受けられない。その理由について考察してみた。シバはC4経路を持つ植物であり、炭酸固定の効率が極めて良い。この機能は二酸化炭素濃度が低いときにも機能することが知られている。つまり葉が濡れて、気孔を閉じても低二酸化炭素ストレスにさらされることがなく、光阻害も生じないため、晴れた日にシバに水をまいても、シバはダメージを受けないと考えられる。また、C4植物は乾燥に備えて気孔を閉じ気味にしていることが予測される。授業では葉の濡れやすさで阻害の大小を評価しようとした試みを紹介していたが、通常時の気孔開度と葉濡れ時の気孔開度の比で阻害のされやすさが評価できる可能性があると考えられる。
参考文献:Walter Larcher, 植物生態生理学 第2版, シュプリンガ—フェラーク東京, 2004年
Michael Begon, John. L. Harper, Colin. R. Townsend, 生態学 個体・個体群・群集の科学 第3版, 京都大学学術出版会, 2003
A:すばらしい。「問題点の定義」「きちんとした論理」に「正確な知識」が加わった今年度のこの講義では一番しっかりしたレポートでしょう。考察の最後に新たな実験系を提案している部分も高く評価できます。
Q:授業での蒸散について興味を持った。例えば水量とCAM植物の蒸散による光合成量を比較するにはどうしたらよいのだろうか。蒸散とは、植物の地上部から大気中へ水蒸気が放出される現象である。CAM植物とは、砂漠などの多肉植物や、同様に水分ストレスの大きな環境に生息する着生植物に多く見られる。特徴として、通常の植物は昼に気孔を開け、CO2を取り込む。しかしCAM植物の場合、蒸散と同時に大量の水分を失ってしまうため、夜に気孔を開け、CO2の取り込みを行い、昼は気孔を閉じることで水分の損失を最小限に抑える。そのため蒸散による光合成量を比較するために、今回は水量を変化させ比較すればよいと考えた。CAM植物は比較的に水はけのよい土壌に属しているため、水分の少ない条件でも光合成に影響はないと考えられる。それは水分ストレスに対応するため、夜に呼吸を行い、昼に光合成をおこなうため、光合成による水分消費を抑えているためだ。また水分が多い場合、少ない条件でも光合成のできるCAM植物には不必要量かもしれない。そのためCAM植物は光合成に必要な少ない水分量で、光合成量がピークとなり、水量を増やしても頭打ちになると考えられる。
A:なんとなく言いたいことはわかるのですが、「蒸散による光合成量を比較する」という言い方がややあいまいですね。葉からの蒸散量当たりの光合成量という意味でしょうか。そうだとすると、なかなか専門的な分野に入っていて、水利用効率と普通呼ばれるものです。
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