植物生理生化学特論 第10回講義

植物の低温感受性

第10回の講義では、植物と動物の環境応答の違いを考察したのち、植物の低温感受性の仕組みについて解説しました。


Q:系Ⅰはもともと光に弱く、葉の中では系Ⅰを光から保護する機構がある。しかし、その機構が低温では失活してしまうという。系Ⅰが阻害され分解されてしまうと、系Ⅱからのエネルギーが余剰となり、さらに植物によくない状態が引き起こされるのではないかと思った。そこで、このエネルギーはどのように処理されているのかが気になった。系Ⅰとのバランスを取るために、系Ⅱのアンテナが減らされるのだろうか。冷害が問題になるように、低温ストレスは植物にとって、致命的な要因であると思った。

A:語尾に注目すると「伝聞」「疑問」の場合と後は「思った」「気になった」になっています。そうするとレポートとしてはどうしても評価が低くなります。ここを、例えば、「はずである」といった論理を示す述語にするか、あるいは「結論できる」などの断定を示す述語に変えるにはどのようにしたらよいか、とさかのぼって考えてみるのも、レポートをよりよいものにするための方法の一つとして考えられます。


Q:チラコイド膜を単離すると常温であっても光により系Ⅰの破壊が起こるということだが、葉緑体はシアノバクテリアが進化したものでその時代には独自に光合成を行っていたことやストロマはチラコイドの周囲を満たしていることから、その保護機構は葉緑体内のストロマに存在すると考えられる。ストロマには常時、活性酸素消去系に関する酵素が存在していると考えられるが、低温感受性植物ではその酵素が低温で失活してしまうので系Ⅰが破壊されるのだと考えられる。

A:これは自分なりの論理によってきちんと一定の結論を導き出しているので、よいとおもいます。


Q:今まで、植物にとって光や温度が成長に関わるといったようなプラスの考えはあったが、低温ストレスや乾燥ストレス、さらに光までもが照射時間によれば、ストレスとなってしまうということは考えたことがなかった。日本の気候を考えると、他国では珍しいはっきりとした四季がある。そのことを考えると、他国に比べると植物の種類は、外界のストレス要因がさまざまであるが故の、豊富な種類があると考えられる。このように、外界の影響で植物の種類や、さらに考えると進化が決定すると考えると、自然界では考えづらい人工的な環境をつくることができれば、ガラパゴス諸島や小笠原諸島のような独特な動物のように、植物も独特な種を形成することができると考えられる。

A:最後の部分に持って行くところの論理はやや強引な気がしますが、おそらく少し言葉を足せばよいのだと思います。


Q:キュウリやトマトなどの植物は低温にさらされ弱光を当てられると光合成活性が下がり、室温に戻ると葉が変色するというような反応を示す。この現象は低温障害と呼ばれる。しかし、光化学系Ⅰの活性が落ちたまま光を吸収し続けると活性酸素が生じて細胞を傷つけることになるため葉緑体ごと分解し、エネルギーのバランスを保っているので、防御の意味も持っていると考えられる。しかし、葉緑体を分解することで結局生産性が下がるので、繰り返し低温にさらされた場合は分解される葉緑体の量が増加し、死に至ることが予想される。さらに、分解を行わない場合も結局活性酸素で葉緑体が破壊されるなら、そこまで意味のある防御ではないのではないのだろうか。どちらかというと延命措置の色合いが強いように考えられる。

A:確かにそうだと思います。「延命措置」というより「応急措置」という意味合いが強いかもしれません。長期的に延命を図るというよりは、とりあえずできることをやってみる、という感じのようです。