生物学通論 第11回講義

光合成の初期反応

第11回の講義では、光合成の初期反応において光エネルギーをATPのエネルギーに変換する仕組みについて紹介しました。


Q:最初の生物が地球で誕生したのではなく、宇宙から飛来したならば同時に飛来してきたとしてもいいので結論は難しい。また、ユーリーミラーの実験からわかる通り、有機物は生物が生まれる前に、地球で形成されていたと考えると、どちらにも生き残る可能性がある。しかし、限りがあると考えれば、生き残る可能性が高いので、独立栄養生物が最初ではないかと考えられる。また、飛来したと考えるとそれだけではなく、別の可能性もあると考えられる。2010年にNASAが発表した細菌は、カリフォルニア州の塩湖であるモノ湖に生息し、これまで炭素、水素、酸素、窒素、硫黄、リンという六つの元素が欠けたような生物は発見されてこなかったが、この生物はリンではなくヒ素を摂取して生きている。このような生物が生息していると考えると鶏が先か、卵が先か、というより、もっと別次元の生物がいてもおかしくないと考えてもよいはずだ。
参考ページ:http://science.nasa.gov/science-news/science-at-nasa/2010/02dec_monolake/

A:実は、NASAの発表した砒素を利用する生物というのは、その後の研究で事実誤認であることがほぼ確定しました。研究というものは、一本道で進むのではないので、なかなか大変です。


Q:今回の講義では、呼吸と光合成について学んだ。これらの反応は電子の供授が深く関与しており、電子の動きも類似している。したがって、呼吸と光合成反応は似ていると述べることができると学んだ。呼吸と光合成の類似性などを見ていくと、どちらが先に起こった現象なのかという議論が登場する。講義において、太古の地球の大気では、二酸化炭素の量が非常に多く、大気の大半を占めていた。よって二酸化炭素量を考慮して、呼吸が先に発生したと考えられると述べられていた。しかし、私の考えでは、太古の地球の大量の二酸化炭素は、脱ガスによるものであると考えるから、これを呼吸と光合成の起源と結びつけるのは正しくないのではないかと考えた。私が考える呼吸と光合成の起源に関連する重要な事象は、シアノバクテリア(ストロマトライト)の誕生である。シアノバクテリアは生物最古であると考えられている。また、シアノバクテリアは嫌気性生物という理論もある。しかし、太古の水中の酸素濃度は高かったことと、シアノバクテリアが光合成を行うことが可能である最古の生物であることを考慮すると、光合成が先に起こったのではないかと考える。しかし、講義でもあったように、呼吸と光合成のどちらが先に発生したかの議論を結論づけることは非常に難しいことは否めない。あくまでも光合成が先に起きたという考えは私独自の考えである。

A:「太古」というのがいつを指すのかにもよりますが、30億年前までに光合成が成立していたのは確かです。一方で、呼吸の成立時期に関する明確な証拠がないところが悩ましいところです。あと、「二酸化炭素量を考慮して、呼吸が先に発生したと考えられる」と言ったわけではありませんよ。むしろ、酸素がない条件で呼吸が成立したと考えるのは矛盾のように思われる、という話をしました。


Q:今回は光合成について学んだ。そこで、光合成と呼吸ではどちらが古いのかという疑問があり興味を持った。まず、光合成と呼吸を比較する。酸素を吸って二酸化炭素を吐き出すのが呼吸であり、二酸化炭素を吸収して酸素を出すのが光合成である。この 2 つは出入りする物質が逆である。そこでそれぞれの反応を詳しく見ると、それもよく似ている。呼吸は解糖系+クエン酸回路+電子伝達系という3つのシステムが連動している。取り入れた酸素で糖を燃やしエネルギーを取り出す働きである。一方、光合成は明反応と暗反応の 2 つのシステムが連動している。そして、呼吸のクエン酸回路を逆に回すと光合成の暗反応とそっくりであり、呼吸の電子伝達系と光合成の明反応は、膜に埋まったタンパク質が電子を授受するという点が同じである。つまりとてもよく似ていて、しかも光合成のほうがやや複雑である。結論の導き方が安易過ぎるかもしれないが、構造が複雑である方が、新しいのではないだろうか。つまり光合成と呼吸では、呼吸の方が古いのではないだろうか。

A:きちんと考えていてよいと思います。ただ、実際にはクエン酸回路と光合成の炭素同化反応が逆、というのはやや不正確で、解糖系とつながっているペントースリン酸回路の逆が、光合成の炭素同化反応です。


Q:光合成は光合成色素を通して行われるが、先日の光合成の実験では瞬時に行われなかった。これは、光を受容する細胞は反応中心と比べて数が多く、反応中心に光のエネルギーが到達するのに時間がかかるからだと考えられる。ただ、それでも数十分かかる理由としては不十分であり、反応中心に到達したエネルギーは徐々に蓄積されて酸化還元反応ができる励起状態に達するまでの時間もかかると思われる。また、光合成酸素の量変化はこのことから、はじめは0で、数分たつといきなり最大値になり徐々に減っていくことが推測される。

A:実験というのはオオカナダモの酸素発生の実験ですね。光合成の反応速度は速くても、その結果生じる酸素が十分にたまって泡となって現れるまで時間がかかるということは十分に考えられます。酸素が1分子増えるのを検出する方法があれば光を当ててすぐに酸素を検出できるでしょう。


Q:光でH2Oを酸化する植物は光化学系が2つであるということ知った。二つある理由としては、一つ目の光化学系では還元しきれないものを二つ目の光化学系でエネルギーを上げて還元するということである。光合成細菌は光化学系がひとつである。光合成するときに硫化水素を酸化し、酸素は放出しない。ここで、進化の過程で二つの光化学系が存在する植物は一つの光化学にすることはできないのか考えた。光化学系が一つにならず二つに分かれているのは一つ目と二つ目の光化学系で生成されるものはどちらも必要であるからあえて二つに分かれているのではないかと考えた。

A:ちょっと言葉の遊びっぽいですね。もう少し論理的な展開が欲しいところです。


Q:今回の授業は光合成と呼吸の仕組みというテーマだったが、この中で私が一番疑問に思ったことは、地球最初の生物はどのように生まれたかということである。現在の研究において、光合成と呼吸は呼吸のほうが先に行われていたことがわかっている。しかしそうすると最初の生物はどこで呼吸に必要な酸素と有機物を手に入れていたのかということになる。まず、酸素に関しては水の放射線による分解などによって微量ではあるが酸素が生じ、これを利用して徐々に呼吸機構が発達したのではないかと考えられる。一方有機物に関しては、無機物から有機物を合成する独立栄養生物が発生させた有機物を取り込んでいるのではないかと考えられるが、そもそも独立栄養生物自体が生まれるには有機物が必要である。この問題に関しては、まだ明確な答えは見つかっていないが、僕はそもそも最初の生物の呼吸に必要とされた有機物は地球上で生物の力を借りずに自然に作られたものなのではないかと考えた。たとえば、木星は生物の存在が確認されていないガス惑星であるが、ガスには有機物であるメタンが含まれている。また、地球上でも1828年にウェーラーが無機物であるシアン酸アンモニウムを加熱処理のみによって、有機物の尿素の合成に成功している。このことからも、最初の有機物は地球上の何らかの作用(何かはわからないが)により自然に合成された可能性は高いと言える。

A:きちんと考えてはいます。ただ、ある程度常識的な線に落ち着いてしまっているので、もう少し独自のアイデアを盛り込むことができるとよいと思います。


Q:今回の授業では、光合成の仕組みや、好気呼吸以外の呼吸について習いました。 自分が不思議に思ったことは、独立栄養化学合成細菌や、CO2呼吸のメタン合成細菌、嫌気呼吸の生物など、様々な方法で呼吸をする生物がいるのに、現在の地球で大型の生物はほとんど好気呼吸をしているということです。植物も光合成もしますが、好気呼吸もします。その、一番の理由は呼吸材料の存在量だと思います。CO2は空気中に約0.04%とごく少量ですが、酸素は空気中に約20%も含まれているので、簡単に得ることができます。しかし、窒素を使い呼吸をしている生物もいます。窒素は空気中に約80%と多いです。これを使った方がもっと簡単に得られそうです。しかし、実際は窒素を使う際は、生物の死骸など、極端な場所に存在する窒素化合物を用いて、呼吸をしています。やはり、ここにも存在する場所に制限ができます。場所の制限なく、大きい生物でも、安定して空気中から得られる酸素が、呼吸のもとになったのだと思いました。

A:窒素の場合、窒素分子の反応性が非常に低いので、空気中にふんだんにある窒素分子を、他の窒素化合物に変化させることが難しいのが特徴です。その意味で窒素分子とその他の窒素化合物はわかりやすく区別して議論した方がよいでしょう。


Q:地球と同じような地殻を持ち、水はあるが空気のない星に新たな生命体が誕生したとして、その生命体がどういう生物なのかそしてどのように進化したのか考えてみました。光はあるので光合成をする生物かと思ったのですが、光合成をするには水や二酸化炭素が必要なため化学合成生物となります。化学合成をするには有機物が必要なので従属栄養生物が初めの生命体で共食いをして生きていたと思います。しかしこのままでは絶滅してしまうため、身体の一部から独立栄養生物を作り、分裂したとします。光合成はできないので鉄イオンなどの有機物を摂取してエネルギーにしています。地殻中の炭化ケイ素を摂取するためそこから有機物に大切な炭素を取ります。そして進化の過程は従属栄養生物が独立栄養生物を食べることにより成長し、その二つの生物から新たな独立生物が生まれ、進化していくと思います。

A:面白い考え方だと思います。ただし、化学合成生物も、光合成生物と同様に有機物の原料として二酸化炭素を利用しています。また、非生物的に有機物が作られる場合も、原料は二酸化炭素だと思いますので、やはり最低限二酸化炭素がないときついでしょう。大気がなくても二酸化炭素が水にとけていれば利用可能だと思いますが、それだと光合成生物でも生きていけるのではないでしょうか。


Q:ブラストキノンなどの電子伝達体は、垂直な構造をもつため、垂直なプロトンの流れを生みだし、プロトンに結合したり、分離したりして電子がチラコイド膜に水平に流れて、プロトンが電子の渡し舟としての役割を果たすという説明があった。そもそもプロトンの輸送が垂直方向であるのに対し、電子が本当に水平方向に進むのだろうか。プロトンの流れる方向がストロマ側からルーメン側の一定方向であるならば、プロトンに電子が結合したら、結合したまま電子がルーメン側にいってしまうイメージがあり、電子がルーメン側にすぐに偏ってしまうことになってしまうかもしれない。光化学系Ⅱとシトキロムb6fの間にあるブラストキノン内の電子の動きを考えてみる。電子が水平方向に進むためには、電子はプロトンが垂直に進む過程の中でプロトンからエネルギーを使って離れなければならない。電子がプロトンから離れるために、もし場所によって同じだけのエネルギーが必要とされると仮定すると、ストロマ側にある光化学系Ⅱから放出された電子がルーメン側に移動する過程のどこかでプロトンから電子を離してしまうだけのエネルギーがあれば、その後は同じエネルギーの大きさで、電子の進むスピードが増していき、電子が指数関数的にプロトンから離れやすくなる。つまり、光化学系Ⅱから供給されるある一つの電子の軌跡を考えると、チラコイド膜と完全に水平方向の経路をたどるのではなく、ルーメン側からの距離が指数関数的に減少しながらルーメン側に近づく経路をたどることとなる。おそらくチラコイド膜の厚さは電子をルーメン側にちょうど移動させることのできる厚さになったものと考えられる。

A:電子とプロトンの間の関係を物理的な反応のように考えているようですね。実際には、プラストキノンは電子を受け取ると(=還元されると)プロトンをくっつけるので、酸化還元に伴って起こる化学的な反応です。しかも、プラストキノンは膜に溶けて存在するので、膜の中を垂直方向にも移動することができます。そのあたり、仕組みを勉強すると、光合成の仕組みの精妙さがよくわかります。