生物学通論 第10回講義
代謝とエネルギー
第10回の講義では、呼吸によるエネルギー獲得を中心に、代謝の概要を紹介しました。
Q:二日酔いを治す?では、アミノ酸含有飲料を、飲むことによって二日酔いに効くと言うことを学んだ。筋トレをしている友人が筋肉に良くないからとお酒を控えていたのは、糖新生によって、筋肉からアミノ酸が取り出されることを言っていたのだと言うことが今日の授業で分かった。また、ダイエットの際にはこの糖新生が大きく関わってくると思った。例えば絶食した時などはおそらく糖新生をするために筋肉を破壊して行くので、絶食によるダイエットは危ないのかな?と考えた。
A:絶食やアルコールはあまり健康によくないのは確かだと思いますが、それらをタンパク質分解によるアミノ酸の供給だけで説明できるかどうかはわかりませんね。
Q:植物性タンパク質と動物性タンパク質ではそれぞれの役割があるが現代の人々に対して必要なのは植物性タンパク質であると思う。近年、若ハゲの人口が非常に伸びており、この傾向の原因は小さい頃から十分な植物性タンパク質をとっていないのが原因であると思う。髪の毛は主にタンパク質からなっており、特に植物性タンパク質が重要である。親が子供を甘やかした結果、野菜嫌いな子が増えたのだと思う。
A:この講義のレポートで求めているのは論理です。「思う」ではだめで、なぜそのように考えるのかのロジックをレポートの中で展開してください。
Q:生体の活動で必要なATPの合成は膜、細胞小器官、などのシステムにより作られることを習ったが、必要な場合に応じて貴重なエネルギーであるATPを効率的に作るために選択的な膜の透過を利用したり、細胞小器官の性質で調節していると考えられる。特に、細胞小器官の合成酵素は回転の方向を変えることで選択的に合成を進めると考えられる。
A:「考えられる」とありますが、どう考えたらそのような結論になったのかは全くわかりません。科学的なレポートは、きちんと論理をおって記述しなければなりません。
Q:本日の講義内で、タンパク質、糖類、脂肪は体内で一度分解されてから合成されるので、「牛肉を食べても牛にならない」とありました。ここで、では動物由来の油も植物由来の油も、体内で分解されてから合成されるなら、同じものなのか、という問いに対し、やはり動物性と植物性では違いがある。と知り、そもそも動物性油脂と植物性油脂の違いをはっきりと把握していなかったので、これについてもっと知りたいと思いました。まず、動物性油脂より植物性油脂のほうが優れたものである。と短絡的に決めつけるのは間違いだとありました。大事なのは脂肪が飽和脂肪酸か不飽和脂肪酸、つまりその脂肪酸の構造です。一般に動物性油脂は飽和脂肪酸を多く含んでいるものが多いと考えがちですが、バターや鶏卵など不飽和脂肪酸を含むものもあります。また、植物性油脂も不飽和脂肪酸を多く含むものが多いと思われがちですがヤシ油など飽和脂肪酸を含むものもあります。不飽和脂肪酸を優先して摂取することが大事なように思われますが、脂肪酸にはそれぞれ特徴があるものなので、さまざまな食品から多くの脂肪酸をバランスよく摂取することが大事だと思いました。
参照:公益財団法人 日本食肉消費総合センターhttp://www.jmi.or.jp/qanda/bunrui3/q_058.html
A:きちんと調べて記述しているところは評価できます。ただ、ここまでだと、自分なりの論理がほとんどありません。この講義のレポートでは、調べたことではなく、調べたことをもとに、自分で論理的に考えたことを記述してください。
Q:二日酔いを防ぐ飲み物について授業で触れたが、これは肝細胞を活性化させることで分解を速めている。他にも食事量が多いときに摂取カロリーを減らすための飲み物がある。これは食べたものが酵素によって分解されるのを阻害することによって体に栄養を吸収させることを防いでいるのだと考えた。つまり代謝経路を邪魔するものを取り込むということである。このような飲み物があるならば、酒に弱い人がお酒を飲む前に飲む酔わないようにする飲み物は存在しないのか。お酒を飲む前から肝臓を活性化させ、酔う前から対策できないのかと考えた。しかし、肝臓はもともと排水、解毒などの働きをしているためまだお酒が入っていない状態で活性化させてしまうとその時に体内に取り込まれていたものが分解されてしまうのではないか。するとやはり酔うことを飲む前から防ぐのは難しいのではないかと考えた。
A:自分で考えようという姿勢は感じられますね。アルコールの分解などは酵素の働きによりますが、酵素は講義の中で取り上げたように基質特異性がありますから、特定の酵素の量を増やしてやることができれば、特定の反応だけを促進することはできます。
Q:今回の講義で一番疑問に思ったことは、タンパク質、炭水化物(糖類)、脂肪は多くの生物種で栄養素であり、そのため三大栄養素といわれるが、その栄養は具体的に生命活動をどのように支えているかということである。調べてみると、栄養が欠乏するとまず筋肉が分解されタンパク質として利用され、次に脂肪がエネルギーとして利用されることがわかった。つまり、人間の生命活動においては脂肪は筋肉が消費されたあとに分解されるということである。ここで、最近やたらメディアで取り上げられている脂肪を燃焼させる食品に対して疑いの目をもった。これらでは、簡単に言えば筋肉等を減らさずに脂肪だけを先に燃焼させるという、本来の生命活動に逆行するような反応を体内で起こしているのではないかと考えられるのだ。具体的にどのような反応を起こしているかまでは調べられなかったので省略するが、売り出されている健康食品に対して多少の疑いの目をもつことは必要なのではないかと思った。
A:「調べてみ」た場合には出典を書いてください。脂肪よりタンパク質が先に分解されるというのはどう考えても間違いです。炭水化物が出てきませんが、それとごっちゃになっているのではないでしょうか。
Q:今回の授業では、代謝や解糖系、クエン酸回路や呼吸の電子伝達、ATPの合成や発酵について学びました。今回、疑問に思ったのは、ATP合成酵素がなぜ、回るのかということです。回らなくともそれで良いのならば、回る構造をする必要はありません。回った方が何か良いことがあるから回っているのだと、まず初めに考えました。ATP合成酵素が回る構造をしていなく、細胞膜の間に存在して、何かを通すだけの管の様な構造であった場合。ATP合成酵素はプロトン(H+)の濃度勾配を利用してATPの合成を行っていることを前提とすると、H+が管を通り抜けるだけになります。H+が膜間の移動をする時のことを考えると、膜の一方から、膜のもう一方へと、小さなATP合成酵素を通っていくことになります。ここでATP合成酵素を通る時、空間から空間へ、何かを運ぶ時にその空間と空間とをつなぐ出入り口が狭いとある種の「つまり」状態を起こすと思います。ふるいに砂をただ落とすだけでは砂が落ちにくいように。ここで、回転する構造の出番です。ATP合成酵素自体が回転をすると、ある種の「うず」のようなものが、そこに出来ると思います。H+が膜の内側と外側を通る力を、プロペラのような構造で、回転する力に変えられれば、その回転によって生じた「うず」がH+やADPの通りを良くするのではないでしょうか。ふるいをふるってあげると砂がきちんとおちるようにです。まとめると、回転によって生じた「うず」が、H+の「つまり」を解消し、反応の効率が上がるので、このような回転構造をしているのではないでしょうか。
A:これも、自分なりに考えているという点で評価できます。ただ、最後の「反応の効率が上がるので」という部分が気になります。提案されたメカニズムで回るとATPができやすい、というのが本当だとしても、別のメカニズムでは回らなくてもATPができる可能性があるとおもいます。回らないとダメ、という結論にはならない気がしました。