生物学通論 第7回講義

遺伝とDNA

第7回の講義では、メンデルで有名な遺伝の法則と、その物理的な基盤であるDNAの構造についてを紹介しました。


Q:私は、生命の起源はRNAワールドであるという説に疑問を持った。DNAの合成にはタンパク質が必要であるためDNAが起源とは考えにくいこと、RNA→DNAの逆転写が起こりうることがこの説の根拠として挙げられていたが、逆転写はあくまでセントラルドグマの例外であり、少数派である。生命の起源がRNAであったとして、最初はRNAからDNAに転写が行われていたにもかかわらず、現在は逆のDNA→RNAの流れが主流になっていることの説明がつかないと思う。生命の起源はDNAでもRNAでもない何かで、そこからDNAが作られ、セントラルドグマの流れが出来ていったのではないかと私は考える。

A:面白い考え方ですが、逆転写がセントラルドグマの例外なのでRNAを生命の起源として考えづらいということであれば、「DNAでもRNAでもない何か」というセントラルドグマには存在すらしないものが関与する可能性は、もっと考えづらいのではないでしょうか。


Q:今回の授業では遺伝子が伝わる仕組みについて学んだ。授業中、遺伝子を伝えるのがどの物質なのかという話題で、タンパク質のアミノ酸は20種類あり、DNAやRNAは4種類しかないため、配列の種類であればタンパク質の方が多く、暗号化が容易だということだった。それでも実験でDNAが遺伝子の設計図であることが分かり、それをRNAがコピーし、タンパク質へ翻訳している。私が疑問に思ったのはなぜ直接タンパク質のアミノ酸配列で遺伝子を伝えずに、DNAやRNAを介しているのかということだった。セントラルドグマのシステムが理にかなっていて、複製を作りやすそうだとは思うが、遠回りな気がする。原始的な生物は有性生殖ではなく、分裂などで増えて子孫を残したと思うが、分裂ならば自分と同じ構造を作ることができればよいだけなのでわざわざDNAを通さなくても、自分のタンパク質の一部を分ければよいのではないか。それでも実際はDNAを利用しているのは、変異があるためではないかと考えた。wikipediaでDNAのところを見てみたのだが、DNAを通して遺伝子が伝わる際に変異が起きて、それが種の保存につながることがあるそうだ。それを見て古生物学の授業で、種の保存には、変異が大きな役割をもつという話を聞いたことを思い出した。タンパク質ではDNAを介さない、タンパク質によって直接遺伝子情報を伝えていると、変異が起こらず、生き残っていけなかったのかもしれない。しかし、セントラルドグマの説明の際に先生がおっしゃっていた、最初の生命はこんなに複雑ではなかったはず、というのに私も賛成で、最初からあんなシステムだったのではなく、タンパク質があるところからはじまって、その配列を伝え、かつ生き残るための変異も起こすDNAが出てきたのだと思う。

A:DNAを複製するのは簡単そうだけれども、タンパク質を複製するのは難しそうだ、という点が根底にあるのだと思います。要は、タンパク質を直接複製する何らかの方法を思いつければ、その可能性を考慮する必要がありますが、現実にはなかなか難しそうです。


Q:講義で、肺炎双球菌の形質転換について扱った。ここでは、病原性のS型菌を加熱殺菌したものを非病原菌のR型菌に混合してマウスに注射したところ、マウスは発病し、その死体からはS型菌が発見された、という実験が紹介された。ここで、この形質転換の機能は、生物の多様性を保つのに役立ってきたのではないか、と考えた。たとえば、ある局所的な範囲で、ある生物の絶滅が起きたとする。そのとき、その生物の死骸の中にDNAが保存され、それが同じ生物体の所に運ばれ、形質転換が起これば、絶滅した範囲の遺伝子は復活することになる。絶滅が起こった場所が湖などの閉鎖された空間の場合は、DNAが運ばれることは少ないかもしれないが、捕食者によって運ばれるなど、条件が揃えば可能かもしれない。また、海で起これば(たとえば、局所的にガスが噴出する、などが起こったとき)、海水の循環によってDNAが運ばれることは考えられるだろう。ここで問題になってくるのは、DNAが壊れてはいけない、ということだ。調べたところ、DNAの壊変は紫外線照射などで高エネルギーが与えられた時に起こるようだ。これは、熱や酸・塩基で壊れてしまうタンパク質よりはずっと壊れにくいと思う。講義の中で、「ほとんどの生物学者たちは、遺伝子の本体をタンパク質だと考えていた」とあったが、遺伝子の正体がタンパク質ではなくDNAであるのにはここに理由があるのではないだろうか。仮に遺伝子の本体がタンパク質だった場合、絶滅が起きて生物体が死ぬと同時に遺伝子も破壊されてしまうだろう。以上より、種の存続、遺伝子の多様性を保つためには遺伝子の本体がより壊れにくいことが必要であり、このためにタンパク質ではなくDNAに遺伝情報が保存された、と考える。

A:一般的にDNAの方がタンパク質より安定性は高いと思います。その意味で、このレポートで展開されている考え方は非常に面白いと思います。一方、この下に紹介するレポートでは、生きることに失敗した生物に学んで得があるのか、という疑問が取り上げられています。そのあたり、さらに考察する必要性があるかもしれません。


Q:今回の講義では、遺伝とDNAについてであったが、なかでも形質転換という外部からほかの生物の遺伝情報を挿入して性質を変えるという現象について驚きがあった。そもそも形質転換が生物にとってどのように利益になるのかが疑問に残った。たとえば、講義では、死んだ生物の性質を生きている生物が得るというものがあったが、生きている側からすればそれは生き残れなかった生物の性質を得ているという点では、生き残りにプラスにならないのではないかと思った。そこで、この現象は死んだ生物が自分の性質を残そうとするためのものなのではないかと思った。もしくは周りの環境にたくさん繁栄している生物の性質を得ようという働きであって、この実験ではたまたま死んだ生物から性質を得ただけなのかもしれない。

A:これも面白い考え方だと思います。もし、この考え方が本当であれば、DNAを取り込む形質転換をする生物の方が、いわば「標準」で、死んだ生物からDNAが取り込まれては困る場合に、形質転換できなくなった生物が生まれた、ということになるでしょう。


Q:セントラルドグマを考えると古生物をクローンとして復元するのは可能ではないかと考えた。最近ニュースでマンモスの化石から血液が出てきたというニュースを見た。血液からDNAを調べ次にRNAそしてタンパク質という風に作り出していけばマンモスの復元も近い将来可能ではないかと考えた。またマンモス以外でも恐竜やアンモナイトなどにも応用出来るようになれば多種多様な動物や生物を復元し現代の生物のなぞを解明出来ると考えた。

A:ここまでだと、「考えた」といっても、連想という感じで、論理とは言えないように思います。もう少し、なぜそうなるのか、なぜそう考えるのか、という論理を前面に出したレポートを書いてください。


Q:高校のときは、生物を選択していなかったので非常に難しい内容だった。一般的な知識しか持ちえていない自分が疑問に思ったのは、遺伝子というものがすべての遺伝情報の伝達を担うのだろうか。また遺伝とは形質が伝わるということで、体のつくりが主なものだと思うが、それ以外の感情についてはどうなのだろうか。たとえば大まかなもので言うと、信仰であったり、具体的なものだとある困難(いじめ、受験、就活など)に対しての挑み方も伝わるのだろうか。よくまわりで言われているのは、虐待を受けた人は自分の子供にも虐待をしてしまうという。これは遺伝によるもの?それとも外的環境に影響を受けたのなのか?もちろん必ずしも虐待を受けた人が自分の子にもするわけではないので、外的環境によるものが大きいと思うが、ストレスに対する対処法などの傾向にまで遺伝が関係しているのならこの可能性もある。自分にとって遺伝というのは非常に興味深いものである。

A:人間の遺伝の例は、今後の講義で取り上げます。生物を選択していなかったというのは、生物1もとらなかったのかな?新しい指導要領では、メンデルの遺伝法則は中学で習うことになっています。


Q:メンデルの法則は必ずしも適用されるのかを考察してみた。答えは恐らく、ノーである。そもそもメンデルが研究として豆の丸型とシワ型、葉の色、茎の長さなどを選んだのははっきりと明確に判定する為だったといえる。つまりメンデルが選んだ形質は、偶然対立形質だったとのではなく独立の法則が当てはまる様に形質を選んでいるのではないだろうか。実際にエンドウの染色体数は2n=14で、それぞれの形質は、別の染色体上にある。メンデルのの法則は遺伝子が、明確な対立形質であり、別の染色体上にあることが、必要である。つまり分離の法則以外は法則とは言えないと考えられる。 

A:講義の中で、メンデルの実験における「純系」の概念の重要性を強調したと思いますが、これがまさに対立形質の概念と表裏一体になっているわけです。


Q:今回は遺伝について学習した。高校時代に生物Ⅰを学習した際、一番印象に残っているのが遺伝であったこともあり、とても興味深かった。本レポートでは肺炎双球菌の実験について疑問に思ったことをレポートに書きたいと思う。様々な比較実験より病原性のS型菌を熱処理をすると発病せず、形質転換を引き起こすのはDNAでありということであった。S型球菌は熱に弱いため、と考えられるが、R型球菌との比較が不足しているように思えた。R型球菌を加熱殺菌しネズミに注射するとどうなるか、という比較実験も必要でないか、と思う。加熱処理によってR型球菌がどうなるか、ということを調べることで、S型球菌が加熱によって破壊される要因(たとえば構造など)がわかるのではないか、と思う。

A:このように、確かめる必要性がある実験条件をきちんと考えるということは非常に重要です。研究者としての第一歩といってよいでしょう。


Q:今週の授業ではメンデルの法則について扱った。その中で、受験によくでてくるというひっかけ問題についての説明があった。その問題は、純系Y(種子の形:丸AA(優) さやの色:緑BB(優))と純系y(種子の形:しわaa さやの色:白bb)をかけ混ぜたときにはAaBbという、種子の形が丸でさやの色が緑な優性のものはできないということだ。先生がこの理由を説明してくれていたが理解ができなかったのでこの場をかりて質問したいと思う。種子の形が丸ではない理由いうのは純系Yとyを第一世代目とした際に、混ぜ合わせて新しくできたもののさやは第二世代目であり、種子は孫の存在にあたり第三世代目であるという解釈でよいのか。また、この場合、授業中でも説明があったように種子は四分の三の確率で丸の形をしており残りの四分の一の確率でしわの形をしているのか。

A:質問はよいのですが、あくまでレポートはきちんと別に書いてください。レポートを書いたうえで、質問を書き足す分には全く構いません。質問に関して言えば、「掛け合わせた時に」という言葉が正確に何を指すかが重要になります。掛け合わせてできた種子は子の世代になりますし、その種子が発芽してつけた実の莢もやはり子の世代です。しかし、その莢の中の種子は孫の世代になる、ということですね。世代をきちんと考えさえすれば、単純にメンデルの法則を適用して予測した結果となります。