生物学通論 第10回講義

遺伝子組換え作物

第10回の講義では、遺伝子を増幅したり組替えたりする技術の紹介の後、遺伝子組換え作物の現状を紹介しました。


Q:この授業では、遺伝子組み換えが食品に行われているということと、それに関連した問題点と遺伝子組み換え食品の認識について学んだ。この授業を受けて出た疑問は、遺伝子組み換えを食品だけでなく他の目的でも使えないかという事である。そこで他の目的で植物を利用する生活について注目したところ、木材が浮かんだ。では、木材に遺伝子組み換えを行った場合、どのようなメリットが起こりうるかという事を考えたところ、まず浮かんだのは木材の強度を高めることができるのではないかという事である。もし遺伝子組み換えで木材の強度が高められれば、より頑丈な建物や断熱性のより優れた建物ができるだろう。そして、その建築物は火災や地震に強い建物になり防災に貢献できるのでは無いかと考える。もう一つ浮かんだこととして、生長速度を早めることができるのではないかという事である。生長速度を早められればより多くの木材を使って建築物を作ることができる。ただし、強度が増す代わりに強度を高めるために生長が遅くなる場合や、成長が早い代わりに強度が低くなる事が起こるのではないかと予想される。なので、両立したものを作る事は難しいかもしれないだろう。

A:進化については、また別に話す予定ですが、ちょうどよいので少しだけ。進化の末に現れた現在の樹木は、おそらく生育にちょうど必要な強度の幹を持っているでしょう。しかし、人間にとっては、もっと強度があった方がよいでしょうから、品種改良なり、遺伝子組換えによって強度を上げることは可能かもしれません。しかし、生育速度はどうでしょう。植物にとって生育が遅いことはメリットがあるようには思えません。そのような場合、植物の生育速度は進化の過程で最大になっている可能性がありますから、人間が改良するのはかなり難しいように思います。なお、樹木は生長するのに時間がかかるので、草本などに比べると品種改良にしても遺伝子組換えにしても格段に大変です。


Q:今回は今までの遺伝子の話を基に、組換えDNAの話題で、人間による遺伝子組み換えの仕組みや、その欠点と利点などについて学んだ。遺伝子組み換え食品の是非が世間でよく話題になっているが、理科の教育者としてその理論的な説明をできるように、正しい知識をもとにした判断をすることが大事という先生の言葉が印象的であった。講義の中で、遺伝子組み換え生物を食品として摂るときの問題点の中に、アレルギー性があるかどうかというものがあった。遺伝子組み換えとはDNAの配列を変えることでアミノ酸の配列、すなわちタンパク質が変化するが、そのタンパク質がアレルギー性を持つかどうかが予測できない。そのため現在は既知のアレルギー性物質との構造の類似性を見つけて予測しているそうだ。ここで私が考えたのは、大人になってからいきなりアレルギーになる人が多い、ということだ。小さい時は食べてもなんともなかったのに、最近になって食べるとアレルギー反応が出るようになった、という話をよく聞くが、もしかしてこれは、遺伝子組み換えの食品の割合が増えているためではないだろうか。今までは遺伝子組み換えでないものだったが、遺伝子組み換えの原料に切り替えたためにアレルギーが出た、というケースがあってもおかしくないと思った。私は普段、遺伝子組み換えかどうかをチェックして食べていないので、特に問題なくいつも買って食べている食品の原料が変わっても気づかないかもしれない。そう考えると、遺伝子組み換え食品の性質を理解して取り入れていくことが重要だろうと思った。

A:以前、田舎から東京に出てきた友達が「東京に出てきたら鼻毛が伸びるようになった。田舎にいたときにはこんなに鼻毛が伸びなかったのに。東京の空気が汚いので、体がそれに反応して少しでも異物を排除しようとして鼻毛が伸びたに違いない。」と言ってたのを思い出しました。事実としては鼻毛が伸びるようになったのは間違いないとしても、それが東京に出てきたせいなのかどうかは、もう一度田舎に帰って鼻毛が短くなるかどうか確認しなくてはわかりません。単に年をとると鼻毛が伸びるのかもしれませんからね。「最近になって食べるとアレルギー反応が出る」という話も、そのような点を考えてみる必要がありそうです。


Q:今回は制限酵素や遺伝子組み換え生物について学んだ。遺伝子組み換え作物が思いのほか浸透していることを学ぶことができた。今までとは少し異なった疑問だが、遺伝子を組み替えることは進化させることであると言えるのだろうか、と思った。進化とはそもそも遺伝形質が世代を通じて変化することである。遺伝子組み換え作物は遺伝子を組み替えて同じ特徴を待った形質だけを示すようなものにして、世代を通じて少しずつ改良していくものであるから、これはまさに進化ではないか、ということである。「遺伝子組み換え作物」と表現するよりも、「進化した作物」と表現した方が消費者の反応は良いだろうから、このような表記にする方が消費者は安心でき、生産者や国は良いイメージを持ってもらうことができて優れているのではないだろうか。

A:進化については改めて話すつもりですが、遺伝子が変化した、というだけでは普通進化とは言いません。たいていの遺伝子の変化は個体の生育にとってマイナスです。そのような変化は、そもそも集団の中に広まらないので。通常は、特定の環境の中で、より子孫を残せる変化を示したものが生き残り、それが進化ですけど、遺伝子組換えの場合は、子孫は少なくとも人間が栽培すればよいわけですから、その点からしても進化というにはちょっとはばかられるように思います。


Q:遺伝子組み換え食品は安全かを消費者が気にする必要はない。なぜなら、それが市場に出回っている時点で、安全であることが認められているからである。そうでなければ、すぐにでも健康被害の届けが出され市場を出回ることはない。つまり、消費者が食品が遺伝子組み換えを気にする必要はないといえる。しかし、遺伝子組み換え食品には長期的な健康への影響がもしかしたらあるかもしれない。これについても、遺伝子組み換え食品が出回ってから数十年経つ今では統計的に安全か危険かを断じることができるはずである。

A:性善説に立てばそうかもしれませんが・・・。例えば、水俣病の場合などを考えると、健康被害が報告されてから、実際に対策がなされるまで、極めて長い時間がかかりました。しかも、被害を否定したのは原因企業だけではなく、行政側も同じでした。問題として認識されるためには、十分に騒ぎ立てなくてはならない、という事実もあるのです。とは言え、感情だけで騒ぎ立てることは、何のメリットももたらさないと思いますが。


Q:PCRという遺伝子複製の技術がある。PCRは通常生体内でおこる遺伝子複製の反応を人為的に起こし、特定の遺伝子情報を増やす方法である。犯罪捜査において、人の髪の毛などから得られるDNA情報を、解析できるほどまで増やす際などに用いられている。PCRの方法で不思議に思ったのは、化学反応を起こす際の温度である。たとえばDNAの2本鎖を1本ずつに分ける際には約94度必要となり、反応全体を見ても高い温度を維持する必要がありそうだ。なぜこのような高温が必要なのだろうか。DNAの複製は生体内でも起こっている反応ではないのか。実際にDNAの複製に用いる酵素がこのような高温では失活してしまうため、かつては酵素を継ぎ足しながら反応を進めていたそうである(現在は熱に強い酵素が発見されている)。高温での反応が必要となると、温める経費や温度を維持する経費や冷房にかかる経費などが余計にかかりそうだから、室温でDNAを複製できる方法があれば、役に立ちそうである。
参考HP 役に立つ薬の情報~専門薬学 PCR法の原理、http://kusuri-jouhou.com/creature2/pcr.html

A:そういえば、耐熱性の酵素の話をし忘れました。紹介してもらって助かりました。温度を使うメリットは、反応を簡単にコントロールできる点です。生体内では、さまざまな酵素がDNAの複製に関わっていますから、これを入れれば、複製反応自体は室温でもできると思いますが、今度は、その反応を外から繰り返し制御することは非常に難しくなります。温度だけだったら、外からいくらでも上げ下げできますから、その点が大きいでしょうね。


Q:遺伝子組み換え食品を扱う上では「リスクと利点」とを比較的することが大事という結論を得た.利点は少々であっても,リスクにおいては,人命を失うというような取り返しのつかないことを起こさないのかどうかを真剣に考える必要があると思った.というのも,企業が利益を最大化することだけを考えて,結果的に社会問題となったことがすでにあるからだ.アメリカの自動車会社Fordが1970年代に起こした自動車訴訟である.Fordの開発したPintoに欠陥があったにもかかわらず,将来的にPintoが炎上事故を起こすことで,自社が支払うことになる損害賠償の期待値とPintoの欠陥を修正するために必要な費用とを比較して,Pintoの欠陥を見て見ぬふりをしたことだ.結果的には,Pintoは炎上事故を起こし,本来の損害賠償に加え,多額の懲罰的損害賠償をFordは課せられたために,この試算は意味がなかったわけだが.このように,結局,人間としてのモラルを捨ててしまうのは最も人間らしくないように思える.組み換え食品を扱う際も,人間としての倫理感を持っていきたい.
参考文献:確率がわかる本,山本誠志,学研パブリッシング,2011

A:僕が思うに、期待値の計算は、確率が0に近くなると意味をなさなくなるのだと思います。その極限として、0×∞は一定の値をとらなくなりますから。原発事故など、まさにその例でしょう。


Q:講義内において、家畜の飼料に遺伝子組み換え飼料を用いているという話があった。バイオテクノロジーQ&Aというサイトによると、その資料の家畜への安全性も確保されているとある。すなわち一般的な解釈では、家畜に影響が無いのであれば安全といえるようだ。しかし私はこれだけでは不十分であると考える。次の事案を例にとって検証してみる。毒性・アレルギー性の無い遺伝子組み換え飼料を家畜に食べさせると、その飼料は家畜によって咀嚼され、消化・吸収される。しかし、咀嚼時に歯の隙間に入ったりした飼料は長時間消化されずにあるため、口腔内の細菌や家畜の細胞などが形質転換を行うことが可能であると考えられ、通常では無い遺伝子を持った家畜の細胞が発生してしまう。これは既述の通り家畜には安全であるだろう。次にこの家畜がヒトに食べられると、上記の食機構により異常な遺伝子が口腔内の細菌や家畜の細胞などにより取り入れられる。ここで問題となるのは種によって、または個によって発現の仕方が異なることにある。すなわち家畜の時点では安全である塩基配列が、ヒトが食べた以降では毒性・アレルギー性をもたらす可能性が示唆されるのである。またこれは家畜のみでなく、この飼料を食べた野生の鳥類や昆虫類などこれらを捕食する野生の動物が毒性・アレルギー性を持ってしまったりと被害が拡大してしまう可能性も十分考えられる。以上が私が不十分であると考える理由である。
参考文献:バイオテクノロジーQ&A 遺伝子組み換え食品から環境まで、http://www.jba.or.jp/top/bioschool/seminar/q-and-a/qa_04.html

A:実際に形質転換が起こるとした場合、それは遺伝子組換えではない飼料によっても起こりますよね?だとすると、家畜は飼料を食べるたびに「通常では無い遺伝子を持った家畜の細胞が発生してしまう」ことになりませんか?遺伝子組換え作物以前に、通常の条件でそのような遺伝子組換えがしょっちゅう起こっていたら、それ自体問題のような気がしますが。