シアノバクテリアの光化学系IサブユニットPsaKの機能解析
藤森玉輝
シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803において、psaK はゲノム上に複数のコピーが存在する 唯一の光化学系I遺伝子である。PsaK1 は系Iの構成成分であるが、PsaK2 は、実験条件により系I複合体中に検出される 場合とされない場合がある、遺伝子を破壊しても通常の光強度下では野性株との違いが見られない、などのことから その機能は全く分かっていなかった。しかしながら、強光下で psaK2 の発現が特異的に増加することが観察され (Hihara et al. (2001) Plant Cell 13: 793-806)、この遺伝子産物が強光順化に関わる可能性が示唆された。そこで 野性株と psaK2 破壊株を、通常光および強光条件下で24時間培養し、パルス変調蛍光法を用いて光合成パラメーターを 測定したところ、強光下での非光化学消光 qN のみに両株の差が現れた。すなわち野性株では強光下で qN が増加していたが 変異株では変動が見られなかった。このことから PsaK2 が強光下でのステート変化、つまりフィコビリソームから系Iへの エネルギー伝達に関与していることが示唆された。さらに、液体窒素温度でのクロロフィル蛍光測定によって psaK2 破壊株でフィコビリソームから系Iへのエネルギー伝達効率が減少していることが確かめられた。