以前、大学関係者ではない、堅気の職業の人と話していて「今日は、教授会などの雑用が多くて仕事が進まない」といった話をしたら、驚かれたことがあります。一般的な意味での雑用は「本質的ではない細々とした用事」という意味なのに、学部の最高意思決定機関である教授会への出席が雑用というのはどういうことだ、というわけです。確かに一般的な意味からはやや外れるかもしれませんが、大学の教員の間でアンケートを取れば「教授会への出席」は雑用だと言う人の方が多数派なのではないでしょうか。多くの研究者は「雑用」という言葉を「研究には直接関係のない」場合に使っているようです。まあ、大学の中でだけ通用する一種の業界用語ですね。
ある仕事が雑用かどうかは0か1で決まるものではなくて、0から1までの連続的な雑用度が定義できそうです。研究のための実験は、研究そのものですから雑用度は0、実験データの整理や結果を発表するための論文執筆もほとんど雑用度0でしょう。学生の研究指導も、研究成果に直結しますから、これも雑用度は0に近いと考えられます。一方、研究のために使う研究費を獲得するためには、研究費を申請する書類を書くことが必要ですが、これはやや雑用度が上がって0.2ぐらいでしょうか。その時の懐具合にもよりますが。一方で、大学の多くの会議は、組織運営には必要でも、多くの場合、研究の進行には直接影響しません。会議の雑用度は0.9から場合によっては1になります。
では、この雑用度が高い仕事はやらなくてもよいかというと、なかなかそうはいきません。いくら大学といっても、社会常識が少しは気になります。実際には、0から1の非常識度を掛け算した結果が判断基準になるでしょう。全く世間のことを気にしない非常識人だとこの非常識度が1なので、それを掛けても変化しませんが、非常識度が下がるにつれて、やらなくてはならない気になってきます。実際の仕事の優先順位を決めるにあたっては、これにさらに「締切余裕度」が掛け算されます。締切までに余裕がある場合には、すぐにはやらなくてもよいかなと思う仕事でも、締切が切迫してくると「締切余裕度」が小さくなってやらないといけなくなります。
「やらない度」=「雑用度」×「非常識度」×「締切余裕度」
というわけで、この「やらない度」の低いものから優先的に仕事を進めることになります。この公式を見てわかるのは、「雑用度」は短い時間では変化しないので、やりたくない仕事をやらないでいるためには、常識を捨てるか、あるいはやりたい仕事に自分で締切を設定するかだということがわかります。このコラム「陽だまり」を「目標:週一更新」としているのには、そのようなわけがあったのです。
2013.09.30(文:園池公毅/イラスト:立川有佳)