日本植物学会シンポジウム
藻類で挑む地球環境問題
オーガナイザー: 白岩善博、園池公毅
地球環境問題が、人類の解決すべき喫緊の課題であるとの認識は広く共有されるようになったものの、その解決の手法については必ずしも意見の一致を見ておらず、また、単一の手法によって解決が図られるものであるとも思えない。人類のエネルギー消費を削減する努力が進められている一方で、実際のエネルギー消費は、今後もしばらくの間増大し続けるものと予想されている。そのような状況のもので、化石資源に頼らない太陽エネルギーの利用の推進は極めて重要な選択肢の一つである。太陽のエネルギーは光合成を通して地球上のほぼ全ての生物の生存の基盤となっており、地球環境と光合成生物は、相互に影響を与えながら現在の地球環境を形づくってきた。また、現在、人類が化石燃料として用いている石炭・石油も、太古の光合成生物により固定された太陽エネルギーであることは言うまでもない。過去の長い年月に固定されたエネルギーを短時間に消費することにより生じる諸問題を避けるために、地球に現在降り注ぐ太陽エネルギーを利用することは妥当であろう。昨年出されたヨーロッパ科学財団からの科学政策提言においても、太陽エネルギーの利用が政策目標として強く打ち出され、特に光合成微生物の活用が強調されている。しかも、光合成微生物、つまりシアノバクテリアを含む藻類の地球環境問題に対する貢献は、エネルギー生産系として利用に留まらない。現在の地球環境の成り立ちと現在進行しているその変動を理解する上で、また過去の地球環境の変化がどのようなものであったのかを推測する上で、藻類の研究はさまざまな手段を提供してくれる。本シンポジウムでは、地球環境問題解決へ向けてのアプローチとしての藻類研究を取り上げ、多面的な視点から今後の方向性を議論したい。
日時:2009年9月19日(土) 9:00−12:00
場所:山形大学
「はじめにー光合成と地球環境問題ー」
園池公毅(東京大)
「気候変動と海洋生態系ー円石藻の海と珪藻の海ー」
原田尚美(JAMSTEC)
「藻類のバイオマーカー研究から地球環境の変化を知る」
沢田健(北大理学部)
「藻類の代謝から見た海洋酸性化のメカニズム」
白岩善博(筑波大生命環境)
「微細藻類のオイル生産」
渡邉信(筑波大生命環境)
「光合成を利用した水素生産」
桜井英博(神奈川大)