生物学教室公開セミナー
日時:2015年1月23日(金)13:00-14:30
場所:早稲田大学50号館、3階、セミナー室1
シロイヌナズナエコタイプの形質と生息地環境の関係
尾崎洋史博士(東北大学大学院生命科学研究科生態システム生命科学専攻)
植物の形質は、その生息地の環境と密接な関係があると考えられている。すなわち、生息地の環境条件に適していない表現型をもつ植物は排除され、特定の範囲内の表現型をもつ植物のみが生存でき、フィルタとなる環境とその対象となる形質の間には関連があることが期待される(Keddy 1992)。環境と形質の関係を知るために単回帰分析を行った先行研究が多く存在するが、それと比較すると多数の環境を用いて重回帰分析を行った例は少なく、適切なモデルで重回帰分析するためのモデル選択が行われていない。そこで、我々は様々な緯度・標高で採取されたシロイヌナズナジェノタイプの29の形質(乾重、窒素含量、ガス交換速度など)と9の採取地環境(気温、降水量など)について、モデル選択をした後に重回帰分析を行った。その結果、通常大気条件で栽培した場合には16の形質でNull modelではないモデルが採用され、この中には気孔伝導度や葉重あたりの光合成速度が大気飽差(乾燥の指標)と負の関係にあるといった、よく知られている関係もあった。高二酸化炭素条件で栽培した形質データでも解析を行ったので植物の形質の高二酸化炭素応答と採取地環境についても紹介する。
Keddy (1992) Journal of Vegetation Science 3: 157-164