植物科学I 第4回講義

光エネルギーの獲得と消去

第4回は植物が、クロロフィルやフィコビリンなどの光合成色素によって光エネルギーを獲得するしくみ(=アンテナ系)と、逆に過剰になったエネルギーを消去するしくみを説明しました。後者のしくみは一見無駄に見えますが、植物のように環境の変化を避けることができない生物にとっては、その生存にとって不可欠なしくみです。


Q:今日はクロロフィルの吸収スペクトルや光子など、全体的に物理の知識が要求される内容でした。高校では化学と生物しか履修しておらず、ICUでも物理学入門を取った程度なので少しつらくなり、だんだんと眠気に襲われ始める始末でした。だからはっきり記憶に残っているのは授業の後半のみです。申し訳ないです。授業の感想の前に、勉強以前の質問をさせてください。園池先生のホームページで読みましたが、大学で生物学を勉強するなら早いうちに物理と化学も勉強しておいたほうがよい、ということですが、それは生物学全般に言えることなのですか?僕も生物学で大学院まで進みたいと思っているのですが、もし物理をまったく使わない分野があれば教えてください。そんなあまい分野がなく、どうしても物理の勉強をしなければならないのなら、どの分野をどのくらい勉強すればいいのですか?酸素発生の量子収率のグラフから、エマーソンの光化学系に関する考察を導き出すところは特に興味深かったのですが、あそこも物理のバックグラウンドが必要ですよね?

A:国際光合成会議という3年に一度開かれる国際会議がありますが、そこでは、物理の人や化学の人も大勢います。その意味では、光合成の分野は生物の中ではむしろ特殊と考えてよいかと思います。ただ、それ以外の生物の分野でも物理や化学のものの見方(知識ではなく)があると、有利なことはいくらでもあります。また、生物のものの見方は大学院に入ってからでも身に付きますが、物理のものの見方などは、ある程度年をとってからだとなかなかバリアが高くなります。その意味で、若いうちに物理化学をやっておいた方がいいですね。要は知識ではなく、ものの見方なので、物理や化学のすべての分野をカバーする必要はありません。
 エマーソン効果は「物理のバックグラウンド」というほどの話ではない気がしますが。


Q:虹から今日の講義は始まった。勿論、可視光は見ることが出きる全ての色が含まれているのは知ってはいたが、光と言うと何だか色なんて付いていなくて、ただの明るさだけのような気がしていた。やっぱり光のない世界じゃ、色もなくてつまらないから、それに植物の育たないから、生物なんてほとんどいなくなるし、だから神さんも最初に‘光あれ’っていったのかも。植物が緑なのはそれ自体がその色を出しているようだが、逆に赤色域及び青色域の可視光を吸収しているということに改めて気が付かされました。反応中心についてですが、大部分のクロロフィルaが反応中心に励起エネルギーを伝えると言う事は、同じクロロフィルの中でも、機能するのと機能しないのがあるということですか?それは、元々機能がないのか、それともその時の条件によって、その能力を起動させたり、させなかったりしているという事なのですか?補助色素はエネルギーを集めるだけかと思っていたら、実は逆にエネルギーを逃がす働きもしていたとは。キサントフィルサイクルは熱の放散になって、過剰な光のエネルギーを伝達しないようにしているが、植物体としては、太陽光の光のエネルギーによるダメージと、太陽の熱によるダメージはどのようになっているのでしょか?なんとなく、光が強いと,熱も強い気がするのですが、自ら熱を放散しても平気なのでしょうか?

A:反応中心のクロロフィルは特殊な存在状態にあるので、その他のクロロフィルが勝手に反応中心になることはできません。ただ、その他のクロロフィルもアンテナとしての立派な働きをするので、「機能しない」というのはかわいそうですね。高温ストレスというのは確かにありますが、気温が低いのに光が強くてそのエネルギーが熱となって植物にダメージを与えることはまずありません。基本的に光は光エネルギーとして害を与える場合の方が圧倒的に多いと言ってもよいでしょう。


Q:今回は化学の分野ではなかったのではじめてのことが多かったです。たとえばクロロフィルには2つの種類があることは今回の授業で初めて知りました。また反応中心という名前も働きも初めて知りました。ところで、葉緑体色素の中にはクロロフィルのほかにカロチノイドというのがありますが、その中のβ—カロチン。この名前、野菜ジュースとかでよく目にしてなんとなく健康によさそうだというイメージがあるんですが、これは人体にとって有益な物質なのですか?たしかにんじんに多くふくまれているんですよね?でも授業でも見たようにカロチノイドはクロロフィルに比べ酸素発生の効率はずっと低いのになぜにんじんにはそれが多いのですか?それからずっと前から思っていたのですが、何で人間や動物は光合成細胞を持たなかったのか不思議です。葉緑体を持ったバクテリアですら植物の半分しか持ってないし、なんでなのか気になります。

A:β−カロチンは、人間にとってはビタミンAの前駆体です。ニンジンに多く含まれていると言っても、根っこですから、光合成とは無関係でしょうね。ニンジンのカロチンが何をやっているのか、僕も知りません。動物の光合成については、第1回の講義の感想のページを見てくださいな。


Q:光の獲得と消去という題だった今回の授業は、思い出と新たな発見(それとわからない点)の多いものでした。まず、植物の光合成色素の講義を聞いたとき、高校で行ったクロマトグラフィーによる色素の分離実験が思い出されました。アセトンなどの有機溶媒によってろ紙の上をクロロフィルやカロテンが上っていき、その鮮やかな緑や黄色を見て、スペクトルの異なる光を効率よく吸収するために葉緑体の中にはさまざまな色素が存在しているのかと感心しました。そしてそのときなぜだか不思議な気持ちになったのを覚えています。(これはまったく個人的な見解なのですが)僕は植物と聞いたときにまず思い浮かべるのがあの鮮やかで、何かほっとさせられる緑のイメージがあるのですが、実はその色は植物が必要とせずただ反射している色の集まりなのだという事実に気づき、なぜだかあっけにとられてしまったのです。今思うと当然のことなのですが、植物が必要としている光があの緑色であるような勝手な思い込みがあったようで不思議と驚いてしまい、「そうか、必要ないのか」と寂しいような気分になったのでした。先生はこんな体験はないですか?(無いかな、ふつう、、。)思い出話はこの辺にして、授業での発見はというと、光エネルギーの消去のためにあんなにも複雑な機構が組まれているとは驚きでした。そもそも光=光合成に必要なエネルギーという先入観により、今まで植物がいかにして余剰分のエネルギーを消去しているかということに考えをめぐらしたことがほとんどありませんでした。しかしサイクリック電子伝達や、ステート変化などよくできているなと思いましたが、どうにかこのエネルギーを消去するのでなく別の形にして貯蔵することが可能になればより生産的なのではないか?という問いが生まれました。そしてこれは次回への要望なのですが、今回から僕にとってはかなり親しみのない、難しい単語や働きが多くなってきた気がするので、もう少しゆっくり、そしてできるだけ身近な例と結び付けてくださるとより理解しやすいと思いますのでよろしくお願いします。

A:たしかに、「植物=緑」という頭がどうしてもありますから、緑色の光は植物が利用できない、というのは驚きですね。
 光合成では、基本的にはエネルギーは糖の形に変換されます。従って、炭酸固定が順調に動いているときには、あまり光エネルギーを消去する必要がありません。その意味で、糖として「別の形にして貯蔵する」ことになります。ただ、低温などのストレスによってそれが妨げられると光エネルギーを消去しなくてはならなくなります。従って、一般に植物の場合、温度、乾燥などのさまざまなストレスは光ストレスとの複合障害となって現れます。
 前回の講義は、少し「講義調」すぎたかなと、反省しております。


Q:今回の講義は光エネルギーの獲得と消去についてでしたが、物理(とくに量子物理)に関係することがらが多かったので、高校で物理をやっていた私はちょっとなつかしい気持ちで色と光の吸収スペクトルの話なんかを聞いていました。そのうちだんだんなつかしいどころではなくなっていきましたが。特に最後のほうが少し難しかったです。
 ちょっとひっかかったのがスピン量子数のところ。酸素分子に関して、スピンが平行な不対電子を2個持つ状態で安定するので三重項状態が基底状態となる、というのはわかるのですが、板書でTripletのときs (全スピン量子数?)= 3/2 となっていたような気がします。これは、同じスピンの電子2つで合計1になるのではないでしょうか?

A:すみません。もう一息体調が悪かったので、細かい心遣いができませんでした。
 植物の講義で、なんと、量子物理学的な質問が出るとは思いませんでした。スピン量子数は、単に1/2+1/2=1という具合にはいかないはずです。ただ、僕もどのように出すのだったか忘れてしまいました。あとで調べてみます。


Q:β-カロチンやキサントフィルは光合成色素の一種だという話しは聞いた覚えがあるのですがβ-カロチンは直接アンテナとして働くことよりも光阻害を防ぐ働きをし、キサントフィルも光が強い時には光のエネルギーを熱として処理する役割があるということは今回はじめて知りました。植物は光のエネルギーを得ることだけに必死になっているという印象があったので余分な光エネルギーを捨てる方法については興味深かったです。また、クロロフィルの光の吸収のピークが2つあるというグラフは今までにも目にしたことがあるのですがこれがクロロフィルの構造から説明できるということは初めて聞きました。
 活性酸素が有害だという話はテレビなどでもよく話題になるので聞いたことがあるのですが、具体的にどのように生物にとって有害なのでしょうか。また、今回、β-カロチンは活性酸素を減らす働きをするという話がありましたが動物は何か活性酸素を減らす働きをする物質を持っているのですか?今回は物理的な話が多く全体的に難しかったです。生物について理解するには物理や化学がベースとして必要だということを身にしみて感じました。

A:基本的に、生物のからだの構成成分、タンパク質とか脂質とかは活性酸素と反応すると、酸化されて機能を失います。これを防ぐため、動物でも、活性酸素を消去するための酵素をたくさん持っています。カタラーゼなどが有名ですよね。


Q:今回の講義は今まで自分が光合成の物理的な側面について考えた事が無かったということを思い知らされるような内容だった。物理的なアプローチをされると苦手意識からか、機構についてどのようになっているのかは考えてもなぜそうなっているのかを考える事が少ないため、光のエネルギーの波長による差や光合成色素の吸収スペクトルについての理屈は単独ではわかっているのにそれを組み合わせることが出来ておらず今更植物が緑に見えることについてきちんと意味があるのだと納得してしまった。考え方に気付けばphycoerythrinやphycocyaninを持っているからシアノバクテリアが藍色に見えるのだとか考えられておもしろく感じた。また光エネルギーの消去のところではまた”エネルギーの無駄遣い”のような反応が多く出てきて、前回の光呼吸なども含めてひとつの反応や機構にこだわらずに全体を見渡さないとなかなか理解しにくい部分が生物には多いのではないかと思った。そういった意味でも普段と違ったアプローチをされるのは難しいが理解のためには良いと感じた。

A:酸化還元電位の式が出てきたときに、理解するには自分で計算してみるのが一番だと言いましたが、それは物理的な側面でも同じですね。講義では全く触れなかったシアノバクテリアの色を自分で考えてみることは、おそらく、光の波長と色の関係を理解する助けになると思います。


Q:活性酸素が毒ということはよく知っていましたし、酸素が嫌気性生物に毒というのも既知でしたが、我々にとっても酸素は基本的に毒という概念は今まで持っていませんでした。我々は毒としての酸素を上手く使えるようなシステムを持っているだけだということでしたが、つまりどんな有害物質でもそれを分解・利用できるシステムの開発、または利用が出来れば我々にとって使える物質になるという当たり前なことを再認識しました。地球はかなり汚染されていて危機的状況にありますが、汚染物質を利用出来るシステムの開発があればまだまだ捨てたもんじゃないなと思い直しました。
 活性酸素と坑酸化を自分で調べているうちに講義で光阻害を妨げるといった文脈で登場したβ-カロチンに行き着きました。考えてみればβ-カロチンは動物の体には大量に含まれていないですね?それは光合成のように大量に酸素を生み出す機構が動物にはなく、そのため坑酸化剤であるβ-カロチンを必要としないのでは?と考えましたがどうでしょうか。また、動物が呼吸の際に触れる酸素は微量なので植物を接種することで補えると考えたのですが、他に坑酸化の機構は動物に備わっているのでしょうか?

A:植物におけるβ−カロチンの役割はクロロフィルの三重項状態を解消する、というものです。ですから、クロロフィルを持たない動物はカロチンを持つ必要がありません。ただし、動物ではカロチンはビタミンAの前駆体として必要です。動物では、クロロフィルの三重項状態は生じませんが、呼吸の際にミトコンドリアで活性酸素が生じます。そのための活性酸素消去系はいろいろ整備されています。


Q:今回の授業では、植物が光をどのように獲得・活用し、また逆に光が多すぎて植物体に害を与える場合(光阻害を起こす可能性がある場合)にはどのように光エネルギーを消去するかを学びましだ。扱うものが光であったためか、物理的な概念が多く出てきて理解に苦しみました。しかし、植物にとって、光やその他の無機的環境というのは、生命を保つうえで欠くことのできないものであると同時に、それにあわせて自らの構造を変えなければならないという、進化においての重要なファクターなので、これを理解することは大切だと思いました。今まですべてのクロロフィルが直接的にエネルギーを伝えるのだと思い込んでいたので、反応中心とアンテナの話はおもしろかったです。アンテナ(テレビのアンテナとほんとに機能が一緒ですね。)が電子を伝えて反応中心に渡して行くほうがやはり効率がいいのでしょうか。それから酸素発生の量子収率の話で、光の波長によって(つまり光のもつエネルギーによって)酸素発生効率は変わらないのに、なぜ緑の光をあえて反射してしまうのでしょうか?他の色でもよかったのでは?(でも、人のように色の区別ができる目をもつものにとっては、緑でよかったと思います。たとえば、木々の葉がすべて赤だったら頭が痛くなってしまいます。)光は直接研究することが難しいものだけれど、植物の光合成機構という媒体を通すことによって、光を実体として扱うことができるということはとても興味深かったです。

A:上の中で「アンテナが電子を伝えて反応中心に渡して」というのは、「エネルギーを伝えて」の間違いですね。アンテナが伝えるのは電子ではなくエネルギーで、反応中心がそのエネルギーを使って電子伝達を行うわけです。クロロフィルが緑色の光を使わないのはただの偶然かも知れませんね。


Q:第一回目の講義で、海洋プランクトンが放出する蛍光を人工衛星で測定し、その生態分布を調べるという話を聞いたとき「プランクトンは蛍光を発するのか」程度にしか(蛍光に関しては)受け止めていなかったのですが、今回の授業で蛍光の放出は植物のクロロフィルが光エネルギーを消去するためのワンステップあり、ちゃんと機能的な意味があることを知りました。この放出された蛍光は何かに利用されないのでしょうか?エネルギー獲得戦略あたりから、生物にとって無駄な物質は存在せず、必ず何かしらに受け渡されて利用されるのではないかという気がしてなりません。また、海洋プランクトンの生育を促すためにFeを散布するという話と、今回の講義の「光化学系Iのアンテナリング」でFeを結合させたら新しいアンテナリングができたということから、非常に安直で大げさですが、生物とFeの絆というか、強い結びつきのようなものを感じました。聞き逃してしまったのですが、「緑色硫黄細菌のアンテナ」の所で2種類のアンテナのひとつであるshallow trapが原始的であるとおっしゃったと思うのですが、それは何故ですか?

A:蛍光は、理想的な生育条件では非常に小さくなりますので、それ自身ポジティブな意味はあまりない気がします。shallow trapが原始的かも知れないと言ったのは、単にその構造が単純だからです。クロロソームでは、色素はタンパク質に結合しておらず、いわば単に集積しているだけです。実際にどの色素系が始源的かはよく知りません。


Q:葉緑体は光阻害を防ぐため、短期的・長期的応答を行う。長期的応答とは、例えば光エネルギーを取り込むアンテナを減らす、と授業であった。これは植物だけでなく動物にも当てはまるのではないだろうか?もちろん動物は直接光エネルギーを使って光合成をするわけではないが、周囲の環境に適合するように短期的・長期的を行っているといえるのでは、と思った。短期的反応とは例えば生理的反応である。これに対し、長期的反応とはいわゆる地域や異なる条件下で見られる特色である。一つ例を挙げてみると、チョウの中には生息する環境の温度によって、黒っぽい翅の色の濃さが変わるものがある。色の濃さはメラニン色素の数によると思われるが、温度によってその数を変えるのは、葉緑体のアンテナの数を変えるというのと同じ意味があるのではないだろうか?

A:そうですね。動物でも環境に対する応答はありますし、その応答の仕方には短期的なものと長期的なものがあります。適応とか順化とかいった言葉がありますが、狭い意味では、即時的な変化を「応答」、自分の体を作りかえる反応を「順化」、世代にまたがって遺伝子の変化を伴うものを「適応」と呼びます。温度によって翅の色を変えるのは、順化になりますね。もし、カメレオンのように色素の形を変えて色を変えるのならば応答ということになるでしょうし、そのような色の変化が遺伝子の変化として固定されれば適応ということになります。


Q:今までは全てのクロロフィルが反応中心の働きをすると思っていたのですが、今回の授業でどうやら間違った認識であったことがわかりました。葉緑体には反応中心とアンテナがありアンテナから反応中心に光エネルギーが届けられるようだ。おどろいたのがこのシステムは植物だけでなく、緑色硫黄細菌や紅色光合成細菌などの光合成細菌にもみられる。確かに植物も光合成細菌も同じ光合成によりエネルギーを得ているのだから同じシステムを持っていてもおかしくないのだが、細菌は植物よりは動物に近いという個人的な認識があるので少し抵抗があります。そういう細菌がいるのであれば、逆に光合成をせずにエネルギーをえている植物はそんざいするのでしょうか?自分の思いつく範囲では存在しないように思えるのですが。植物=光合成という固定観念にとらわれているので、もし存在するのであればかなり衝撃的なのです。
 酸素が生物にとって毒性の高い物質であるというのにも驚きました。酸素ラジカルであれば納得いくのですが、普通の酸素もそれと同じくらい毒性があるのには驚きました。活性酸素が生物にとって毒性を示すようですが、具体的にどのような毒性をしめすのかとても気になるところです。

A:実は、地球上の光合成生産のかなりの部分が、皆さんが植物としてイメージするものとははずれる単細胞の藻類やシアノバクテリアによっています。光合成をする生物の一部が植物なのです。一方、寄生植物の中には光合成をしないものがいます。そのような植物では、光合成関連の遺伝子が、そもそも失われている例もあります。
 活性酸素の毒性は、基本的には、生体物質を酸化してしまうことによります。例えば、脂質は酸化されて過酸化脂質となって通常の生体膜としての機能を果たせなくなります。


Q:今回はクロロフィルの分化とエネルギーの伝達方法を知った。クロロフィルにはおおまかに2通りの役割分担がされており、それらはアンテナと反応中心である。反応中心にむけてすべてのアンテナが電子状態のエネルギー差を用いてエネルギーを流していき、反応中心がまとめて電子を引き渡す、という概念は、なにかベルトコンベアーのようで面白かった。その動力がエネルギーそのものであるからなるほど効率がいいと思った。これって導線を直流電流が流れるみたいなものですよね?
 反応中心がある、ということは、光合成の効率の良いエネルギーを人間のために役立てる、ということに役立つのではないか。アンテナの概念を用いて、いろいろな波長を持ったクロロフィルを一つの板にして、外部にエネルギーの大きい、内部にエネルギーの小さいクロロフィルを配置する。そして中心は反応中心である。全く葉緑体と同じ構造で、大きく、多段的なものをつくれば、一カ所からプロトンを取り出し、陰極につなぐことによってかなり効率の良い太陽電池が出来るのでは・・ってな妄想をしてみたりして。でも電荷の偏りが生じるから反応が止まってしまうから無理か・・と妄想してみました。
 あと、空の色の話や、赤外線が暖かい理由が面白かった。後者の赤外線が暖かい理由は、水が吸収しやすい波長だ、ということだったが、そうすると逆に紫外線を吸収しやすいものは何なのでしょうか?黒い紙かとも考えたが、紫外線を黒い紙に当てて熱くなった覚えもないし・・

A:アンテナ系と導線が違うのは、アンテナから反応中心へ流れるのは、エネルギーであって、反応中心で初めて電子の流れになるところです。アンテナでは、確かに色素の電子状態によって光のエネルギーを吸収しますが、その電子は励起状態になるだけで、別の色素に渡されるわけではありません。渡されるのはあくまでエネルギーです。
 人工光合成の試みはかなり古くからなされていて、現在でも研究が続いています。ただ、なかなか植物のレベルに達するまではいかないのが現状です。
 紫外線は、普通の透明なガラス板によっても吸収されます。ただ、紫外線は、波長が短いので散乱されやすく、特に空気の汚い都会では、もともとかなり弱くなっています。紫外線ランプなどももともとあまりワット数が高くないので、もっと強い紫外線を使えば熱くなるのを観察できるかも知れません。


Q:今回の講義で印象的だったのは、光エネルギーの消去のための応答です。私にとっては前回から出てきた光阻害にも驚きがあったので、今回植物が大きすぎる励起エネルギーを消去するために様々な機構を備えていることを知り、植物って賢いなあと思いました。強すぎる励起エネルギーで植物の体がダメージを受けるのもなんだか意外です。光がいっぱい当たれば元気そうに見えます。それも消去の機構が働いているからであり、だからこそ私たちが日頃目にする植物が元気そうなのも当然なんですね。
 それにしても、キサントフィルの相互変換(脱エポキシ化)がプロトンの濃度勾配が大きいとき(光の強いとき)に起こるのに対して、β−カロチンが常にphotodamageを防ぐ役割なのはどうしてなんでしょう。なんだか保険のような感じもします。
 正直、光化学系Iの構造についての図はよくわかりませんでした。反応中心の周りに色素が散りばめられている(…周りのクロロフィルはアンテナの役割で励起状態になったのが反応中心まで伝わっていく…)これらの構造をみることで、(自分でも)どのような仕組みになっているのか推測したり、わかったりするようになりたいものです。

A:キサントフィルは電子伝達を働かせない、つまり、還元力がたまってスーパーオキサイドなどができないようにするものですし、β−カロチンは一重項酸素を生成させないためのものなので、そもそも対象とする活性酸素の種類が違うのです。やはり両方必要だと思います。
 反応中心の周りのクロロフィルの配置を見ただけでしくみが理解できるというのは僕でも無理です。「きれいにならんでいるものだ」ぐらいの印象で結構です。


Q:反応中心の概念が面白かったです。光エネルギーを捕らえたpigment molecule(クロロフィルなど。適切な日本語訳がわからないのでこのままの表記にします)は励起しますが、その数は全体のpigment moleculeのうち1/100くらいで、このエネルギーをpigment moleculeが次々に受け渡してゆき、反応中心まで伝えることで光合成に電子を供給するという仕組みのことです。pigment moleculeが光エネルギーを受け渡していくということは、励起するpigment moleculeが反応中心に向かって次々に変わっていくということであり、電光掲示板を文字が右から左に流れていく感じを連想しました。電光掲示板はマクロ的には、文字が動いていると見えますが、実際は個々の電球がon/offを繰り返している、というところに共通の仕組みを感じました。ここで、励起される(光エネルギーを受け取る)pigment moleculeはランダムで規則性がないと、授業でおっしゃっていたと思うのですが、偶然に光エネルギーが反応中心に行き当たるまで、光エネルギーはpigment moleculeを移っていくのですか?deep trapの場合は、なにかの勾配によって反応中心に集まりやすいようになっているようですが、shallow trapの場合は反応中心に光エネルギーが辿り着くのを待っていたら効率が悪いと思うのですが。このランダムなエネルギーの移動はなにか利点があるのでしょうか。

A:pigment molecule は直訳で「色素分子」で構いません。電光掲示板のイメージというのはいいですね。確かに励起エネルギーの移動のイメージにぴったりです。
 エネルギー移動がランダムであることの利点というのはあまりない気がします。ただ、エネルギー移動の効率が光合成では非常に高いので、移動のステップの数が増えても、そう損はしません。移動するたびにエネルギーの何割かが失われる、などという場合は、ランダムに反応中心にたどりつくのを待っているわけにはいかないと思いますが。