なぜ光合成では緑色の光を使わないのですか
第一に、クロロフィルが緑色の光を吸収しづらいといっても、全く吸収しないわけではありません。実際には、葉の中では、光が何度も反射するようになっていますから、その間に徐々に緑色の光も吸収されて、結局厚い葉などでは緑色の光でも8割程度は光合成に使われます。あくまで、赤や青の光に比べて多少効率が悪い、というだけで、緑色の光では光合成が進行しないというわけではありません。
クロロフィルは主に赤と青の光を吸収しますが、代わりに緑色を吸収する色素をつかっても光合成は動きます(もっとも、赤外線では酸素発生型の光合成にはエネルギーが足りませんし、紫外線では、他の分子にダメージがおきますから、可視光線でないと困りますが)。現に、シアノバクテリア(ラン藻)の仲間では、フィコビリンという色素をエネルギーを吸収する色素として使っていて、600-650 nmぐらいの光を吸収します。基本的には、吸収は、分子の構造に依存します。クロロフィルはおおざっぱに言うと四角にしっぽがついた形をしていますが、四角の対角線の方向に、光に共鳴しやすい構造があり、光を吸収すると、エネルギーを持った状態になります。このエネルギーを持った状態には、主に2種類あり、それぞれ別々の光(つまり赤い光と青い光)を吸収します。この中間の波長に、大きな吸収を持とうとしたら、そのような構造を分子内に、新しく付け加える必要があります。ですから、全ての光を吸収するような単一の分子というのは、あちらこちらに光に共鳴しやすい構造を持つ必要があり、ものすごく複雑な分子になることが予想されるので、事実上、使えないのだと思います。それよりは、クロロフィルとフィコビリンの例のように、複数の色素を使い分けて、吸収帯を広げる方が、植物にとっては、楽だったのではないでしょうか。